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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
3章 料理の道、キンザンのこだわり

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36話、ハンバーグへの情熱・オークコロッケを作る

 夜が明ける。窓を開け、朝の一服を済ませていく。

 しっかりと手を洗い、エプロンを装着する。


 いつもより少し早い時間から、朝食の用意をしつつ、昼食の用意も同時に作っていく。


「昼に手を抜いて、手伝わせたら本末転倒だからな、いい仕事には、素敵なご褒美が必要だからな」


 昼食に考えているのは、『熱々チーズハンバーグ』だ。


 ハンバーグはオーク肉ではなく、“買い物袋”から取り寄せた牛豚合挽のミンチを使う。


「こっちの世界だとか『メルメル羊』の肉が似たような味だったが、やっぱり牛には勝てなかったな」


 一人、感想を言いつつ、“買い物袋”からパン粉や繋ぎになる玉子を用意する。

 ハンバーグで大切なのは冷やすことだ。


 手の温度もそうだが混ぜる際にも氷水で肉の入ったボウルを冷やしてやる必要があるからだ。


「まずは、玉ねぎを炒めてやらないとな!」


 油を引いて温めたフライパンに玉ねぎのみじん切りを炒めていき、飴色になったら、粗熱を飛ばしておく。


 次に牛乳とパン粉だが、少量の牛乳(大さじ6)にパン粉(大さじ8)を浸しておく。後々、いい感じになるから必要な作業になる。


 ここまでが下準備で今からが肉の仕込みだ。


「ここからスピード勝負だな」


 ボウルに牛豚合挽き肉(500g)を入れていく。

 氷水で冷やしながら、肉の脂が溶けないようにしっかりと混ぜていき、塩コショウを加えていく。


 そこに、粗熱を取った玉ねぎのみじん切りと、牛乳に浸したパン粉、溶き卵を加える。

 しっかりと“ねっとり”するまで混ぜたら、ハンバーグのタネが完成する。


 面倒くさそうに思うだろうが、料理はやる気と情熱だからな、やり始めたらなんてことない作業だったりする。


 そこからは形作りになる。

 手に油をつけてから、ハンバーグの形にしていく。


 好みは別れるが、ハンバーグって、形にしたらいい。

 この際に、中の空気を抜かないと割れたりしちまうから、しっかり両手でキャッチボールするのを忘れたらダメだ。


「最後に形を綺麗に整えてっと、これで3つか、頑張らないとな、あと2回、急がないとな」


 手早く同じ工程を繰り返し、ハンバーグのタネを9つ作ると蒸らし焼きにしてから、しっかりと中まで火を通していき、熱々のハンバーグを【ストレージ】へと入れる。


 そこからは、油揚げと豆腐、ネギの味噌汁を作り、卵焼きを焼いていく。

 砂糖を入れた甘い卵焼きを作る為、焦がさないようにフライパンへと伝わる熱に注意して流した溶き卵を巻いていく。


「綺麗に巻けたな、焦げたら見た目も台無しだからな、もう1つも上手く焼けてくれよ」


 長皿に2回分の甘い卵焼きをドンと並べていく。


 そして、こちらの世界でもお馴染みのソーセージをカットしてソーセージステーキ風に焼いてやる。

 味付けはシンプルに塩コショウだが、むしろ、胡椒多めがオススメだ。


 サラダを盛り付けた皿にソーセージステーキを2枚ずつ並べて、見栄えを良くする。

 目で楽しむのも料理の醍醐味だからな。


「朝から、やり過ぎた感はあるが、今日は忙しくなるからな……しっかり食べてもらわないとな」


 朝昼で食べる大量の米も炊けたところで匂いに誘われて嫁ちゃん達が起きてくる。


 最初に来たのはポワゾンだった。


「ご主人様よりも早く起きねばならなかったのですが、申し訳ございません」


「朝から、気を使いすぎだ。それより、みんなに朝飯ができてるって伝えてくれ」

「かしこまりました。すぐに」


 素早く移動したが、髪の寝癖がそのままだったんだよな……


 嫁ちゃん達がリビングに集まったので朝食にする。しかし、テーブルを見て、ベリー以外の全員が固まってしまった。


「キンザン! 朝からご馳走だにゃ!」


 ニアは卵焼きを指さして叫んでいる。


「ニア、食べ物を指ささない。ダメだぞ?」

「わかってるにゃ! でも──」


 ずっと喋りそうなので、開いた口に甘い卵焼きを1つ入れてやる。

 頬っぺたに両手をあて、ニンマリしている姿に俺もニヤッと笑ってみる。


「甘いにゃ〜口が幸せの味でいっぱいだにゃ〜」


「素敵な食レポをありがとうな。さぁ、皆も食べてくれ」

 言われるままに卵焼きを食べた全員が幸せを表情に現してくれて俺も嬉しくなった。


 ソーセージステーキも好評でご飯のおかわりが発生するくらいには朝から皆、しっかりと飯を食べた。


「さぁ、食休めが終わったら、全員で明日の仕込みだからな! 食べた分頑張ったら昼も美味いもんが食えるぞ」

「ホントかにゃ!」

「頑張るの〜!」


 やる気は十分だな! よし、気合い入れてやるかな。


 “食の祭り”で使った挽き肉機の『挽きに君』を取り出して、オーク肉をミンチにしていく。

 茹でたジャガイモと塩コショウを加えて混ぜていく。

「シンプルな説明だが、これがオークコロッケ『オーコロ』の基本になるんだ」


 作り方を簡単に説明しながら、手順を見せていく。


「まずは、みじん切りにしたキャベツと玉ねぎ、オークミンチをしっかり炒めて塩で整える。その間にジャガイモも塩入りのお湯で煮ていく」


「皮は、剥かないのかにゃ?」

「ニア、皮を剥いたら崩れちゃうからな」

「マスター味は塩だけなの?」

「ドーナ、これは下味みたいなもんだ。本当の味付けは後でしっかりやるからな」


 肉と玉ねぎ、キャベツに火が通ったら、一旦置いておき、茹でたジャガイモに取り掛かる。


「熱いうちに皮を剥かないとダメだから、火傷に注意しろよ?」


 皮を剥いたジャガイモをゴムベラで潰しながら、塩コショウを少量入れる。


 しっかり混ぜたジャガイモと肉を合わせていき、塩コショウと砂糖を加えて混ぜ合わせていく。


「にゃ! さ、砂糖を入れたにゃ」


「砂糖を入れると更に美味くなるんだ。まぁ、後で試食して貰う予定だから、今からコロッケのタネを冷ましていく」


「え、どうやって冷ますのよ?」


 流石のベリーも不思議そうに聞いてきたので、俺は“買い物袋”から巨大な発泡スチロールとアルミホイルを取り出していく。


「何よ、発泡スチロールじゃない?」

「そう、これが秘密兵器なんだよ。発泡スチロールは保温性に優れてるし、冷やしたい物を氷と入れれば冷やせるからな」


 発泡スチロールにアルミホイルを引いてから、氷と塩水を入れて軽く掻き回していく。


 完成した冷え冷え発泡スチロールにボウルに入ったコロッケのタネを入れて冷ましていく。


「理科の実験みたいなことするわね……」


 少し驚いた様子のベリーだったが、使える知識は使わないとな。


「コロッケのタネが冷えたら、次は形作りだ。丸めていくぞ」


 そうして、タネの仕込み方を教えていき、全員で手分けして、同じ作業を繰り返していく。


「もう皆に『オーコロ』の仕込みを任せて大丈夫そうだな」


 俺は一人、オークカツ『オーカツ』の仕込みを開始する。

 オーカツは六ヶ所程度、スジ切りをしてしまえば済むので、あっさりと仕込んでいく。


 時間が過ぎて、次第に仕込みが完了していき、嫁ちゃん達の集中が途切れ始めた辺りで昼休憩を挟んでいく。


「そろそろだな、飯にしよう。それにそろそろ帰って来るだろうしな」


 俺は仕込んだ『オーカツ』『オーコロ』をすべて【ストレージ】にしまっていく。


「疲れたにゃ〜」

「なの〜」


「今から美味い飯を作るから待ってくれよ」


 【ストレージ】から朝に作ったハンバーグを取り出していく。

 湯気をあげて、出来たて熱々のままのハンバーグにチーズを乗せてやる。

 ご飯を取り出してから、並べたチーズハンバーグにドミグラスソースをかけてやれば完成だ。


「よし、出来たぞ!」


 湯気ととろけるチーズに混ざり合うドミグラスソースに嫁ちゃん達の表情がパッと明るくなっていく。


 リビングテーブルに全員が座ったタイミングで、屋敷の扉が開く音が鳴り、全員が扉側に視線を向ける。


「お、帰ってきたな!」


 俺が待っていたのは、ミアだ。


 扉の前には、アンリさんとミアの姿があり、久しぶりに見るミアに笑いかける。


「おかえり、ミア」

「オッサン、ただいま、なんか久しぶりだな……」


 何処かぎこちないミアの後ろから、イケおじのアンリさんが声を掛けてきた。


「ミアも照れているのだね。キンザンさん、お久しぶりなのだよ」

「お久しぶりです。開店した際は、あまり挨拶もできなかったので、すみません」


 お互いに軽く頭を下げていると、ミアが少し不機嫌そうに呟いた。


「べ、別に照れてねぇし……アンリはいつも、余計なことばっかりなんだからさ……」


「はは、ミア、ご飯たべるだろ? テーブルに並べてあるから、席につけよ。最高に美味いからな」

「オッサンの飯! 食べるに決まってるだろ!」

 走り出すミアに「手を洗ってからな!」と俺は声をかける。


「アンリさんも食べませんか?」


「いや、お誘いは嬉しいのだがね。妻が待っているのだよ」

「そうですか、奥様は肉料理は食べれますか?」

「肉は大好物なのだよ。まぁ、中々食べさせてやれないのだがね」


 その言葉に俺は「少し待ってください」と言い、キッチンに向かう。


「ミア、俺の席にあるハンバーグを食べてくれ、冷めたら台無しだからな。みんなも食べてくれ」


 そう言い、俺はすぐに2人前のハンバーグを【ストレージ】から取り出して、アルミホイルで包むとドミグラスソースを小瓶に入れる。

 ハンバーグとドミグラスソースを二重にした紙袋に丁寧に入れていく。


「お待たせしました。アンリさんと奥様に、良かったら食べてください。中に料理とソースが入ってますから」


「そ、それは悪いのだよ、流石に頂けないのだよ」

「奥様にお土産は必要ですよ。遠慮なくどうぞ」


 アンリさんは深く頭を下げてから、屋敷を後にした。


 俺がリビングに戻ると、何故か全員が料理に手をつけずに俺を直視してくる。


「どうしたんだ? なんか、ダメだったのか?」


 そんな言葉にベリーが返事をした。


「違うわよ、お皿を出してくれる?」

 よく分からないが、言われるままに1枚の皿を渡す。


「はい、キンザンさんの分」と、ハンバーグが1切れ皿に置かれ、嫁ちゃん達が1切れず切ると同じように皿に乗せてくれた。


「いいのか? また作れば済むんだし……」


「いいのよ。皆で食べたいの、ほらぁ、座りなさいよ!」


 言われるままに席につくと食事が始まる。


 久々のミアが戻った食卓は明るく賑やかだった。


「オッサンの飯はやっぱり最高だな。一週間の飯は本当に酷かったからなぁ」


 旅の愚痴を聞きながら、嬉しそうにハンバーグを頬張る姿を見て、俺は笑っていた。


 昼食を済ませてから、作業を再開する。


「オッサン、みんなで何してんだ?」

「ああ、ミアは昨日居なかったから、あれだよな。皆で明日の仕込みをしてるんだ」

「え、なら、ボクもやるよ!」

「帰って来たばかりだろ? 無理すんなよ」

「いんだよ! 早く教えてくれよ、ダメなのか?」


 子犬みたいな目で見つめられたら、断れないわな……


「わかった。なら、魚の仕込みを頼む」

「おう、任せろよ。しっかりやるから、安心してくれよ」


 ミアとニアが魚を捌き、骨を取っていく。

 そんな感じに魚フライの下処理を進めていき、その間に俺はウサギ肉を捌いて『ラビカラ』を仕込んでいく。


 その日の作業は夜まで続き、前回の三倍程の仕込みを終わらせる結果になった。


 明日はいよいよ、2回目の決戦だ。気合い入れないとな。


読んでくださり感謝いたします。

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