31話、お茶漬けのロマンと怪しい男が……
ミアの居ない夜はなんか落ち着かず、夜中に目が覚めてしまった。
ペコとグーの2人だが、今日は静かに眠れているようで安心した。
夜中の屋敷は少し不気味に感じてしまうな……
不気味と言えば、ドーナと出会った奥の部屋は今も空き部屋にしたままだったな。
未だに【ストレージ】の中にいる『白い何か』の大群と、天井に貼られていた御札みたいな物をどうするか……すっかり忘れてたなぁ……
「そういえば、前に『調理師ギルド』のルンダさんがお祓いみたいな事を頼んだとか言ってたよな、明日辺り、聞いてみるかな」
どうにも腑に落ちないんだよな……本来のドーナがナニモンなのかも気になるしな。
「はぁ、とりあえず、小腹が空いたな……なんか食うかな」
とりあえず、夜中に米を炊くのは、おっくうだからな、“買い物袋”から、“和食セットのご飯大盛り”と“お茶漬けの素”を取り出して、湯を沸かしていき、お茶漬けの素を振りかける。
「夜に内緒のお茶漬けは、ロマンがあるよな……うんうん」
「うんうん、じゃないわよ?」
「ひゃあ!」
「しー、静かに、みんなが起きちゃうでしょ、何やってるかと思ったら、まったく」
俺の心臓をビビらせたのは、ベリーだった。
本当にびっくりして、心臓が止まるかと思ったが、ベリーの顔を見てホッとした。
「ベリーも食べるか?」
「当たり前でしょ、懐かしいわね。何十年ぶりの再会かしら」
「自虐ネタは、ツッコミに困るんだが……」
「悪かったわね、でも、なんでお茶漬けなのよ?」
不思議そうに質問されたので、とりあえず「ロマンがあるからだ」と答えると軽く溜め息をつかれた。
夜中のお茶漬けって、ロマンないかな?
そんな感じに騒いでいたら、結局みんな起きて来てしまったので、夜中のお茶漬けパーティーになってしまったが、コチラには夜食という文化がないらしい。
だからなのか、ニアとポワゾン、ドーナにペコとグーの5人は、かなりのハイテンションでお茶漬けを食べている。
「美味しいにゃ〜熱々だにゃ」
「はじめて食べましたが、本当にご主人様は不思議な料理を知っているのですね」
「美味しいの〜幸せの味がするの〜」
そんな感想を言うニアとポワゾン、ドーナとは対照的に、ゆっくり味わいながら、泣きそうになっているペコとグー。
「ありがたいです……」
「夜中にご飯だよ、暖かいね」
お茶漬けを拝むのはやめて欲しいが、あまり言うのも可哀想なんで、そのまま、見守る事にした。
因みに一番お茶漬けを楽しんでいたのは、やはり、ベリーだった。
確りと薬味も出してやり、鮭茶漬けにネギを入れて楽しんでいた。
結局、みんな「おかわりッ!」となったので、追加の米とお湯を用意する事になった。
ミアが聞いたら怒りそうだな……アイツは今、見張りの最中か? 帰ってきたら、沢山食わせてやらないとな。
「俺も二杯目を頂くかな」
夜中のお茶漬けは罪な味がするが、たまになら、ありだな。
片付けを明日の朝にして、全員で歯を磨いてから眠りにつく。
腹も膨れて、みんなあっさりと寝てくれた。
△△△
朝になり、俺は洗い物を片付ける為にキッチンに向かう。既にベリーが起きており、使ったお椀を洗ってくれていた。
「ふぁ、おはよう、ベリー。早いな」
「あら、おはよう、キンザンさん。みんな朝から待ってるわよ」
ベリーが笑いながら視線を向けた先には、ニアとドーナが昨晩に使ったお椀を持って俺を待ち構えていた。
「お茶漬けにゃ〜」
「なの、なの、お茶漬けなの〜」
どうやら、余程、お茶漬けが気に入ったみたいだな。
ペコとグーの2人もちゃっかり、お椀を持ってるのが少し笑えるが、とにかく、朝食が決まったな。
「わかったから、待ってろ、流石に夜中の勢いを考えたら、米を炊かせてくれ、みんなはその間に味噌汁に入れる野菜を切ってくれるか」
【ストレージ】から、喧嘩しない食材を選び、取り出していく。
ペコとグーに関しては、ベリーとポワゾンが横で野菜の切り方を教えていき、ドーナもニアに教わっている。
「いいかにゃ! 野菜はシュパッと切って、ザクっとするのにゃ!」
「わかったの! シュパでザクなの!」
「待て待て! ニア、ダメだろ、ドーナ、ベリー達に教えて貰いなさい」
「ハイなの!」
ニアに任せるのは少し早かったかな?
「ニアは、こっちで湯を沸かしてくれるか?」
「はいにゃ〜!」
朝から賑やかだが、これがやっぱりいいんだよな。
皆が切った野菜をニアが鍋に入れていき、最後にベリーが出汁と味噌を入れていく。
余談だが、海藻を皆が消化できるのかわからないので、ワカメなんかを使えないのが残念だ。
日本人として、ワカメと豆腐の味噌汁を食べたくなる時があるんだよなぁ。
朝食をみんなで食べてから、俺は『調理師ギルド』へと向かう事にする。
ベリー達は今日もペコとグーの勉強を見るそうだ。ドーナとポワゾンの2人に加えて、今日はニアも狩りに同行するようだ。
俺は足早に目的地に移動して、手土産に“スティックシュガー100本入り”を1袋持参する。
慣れたもので『調理師ギルド』の受付嬢さんは、俺の顔が見えた瞬間、頭を下げるとルンダさんの部屋へと案内してくれる。
「やぁ、キンザン殿、屋敷の住み心地は大丈夫かい?」
明るく出迎えてくれる長身の銀髪ボブ美人に俺は軽く頭を下げる。
「ルンダさん、どうも、屋敷は快適に過ごせてますよ。その屋敷について聞きたいことがあって来たんです」
「屋敷について? あの幽霊屋敷については、あまり詳しい話はないんだよね?」
少し困ったような表情で顎に手を当てるルンダさんに俺はそのまま話を進めていく。
「あの屋敷に除霊のような、悪霊退治を頼んだ話があったじゃないですか?」
「確かにあったんだがね、最近もいきなりやってきたから、よく知ってるさ」
少し、疲れた表情で語るルンダさんに俺は首を傾げていた。
「そうさ、アポもなく、いきなり来て、ソイツらは『除霊ギルド』なんて名乗ってたが、依頼して本当に失敗したと後悔したよ。まったく」
「その話、もう少し聞かせてください」
「構わないよ。実はね……」
俺が屋敷を購入(貰う)前に悪霊退治を頼んだ先が『除霊ギルド』と言うギルドで、本来は『教会ギルド』など、光魔法に特化したギルドに除霊を依頼するのだが、都合が合わなかった為、とりあえずお願いしたそうだ。
結果は失敗したと言う報告だったらしく、屋敷の価値を一気に下げる形になった。
これは俺が屋敷について相談しに来た日から見て、3ヶ月程前の話らしい。
そして、先日、また、いきなり現れた『除霊ギルド』の男は屋敷を買いたいと言ってきたそうだ。
ルンダさんの話も聞かずにいきなり「金貨250で引き取りましょう」と図々しく言っていたらしい。
しかし、既に手放した事を伝えると怒りを隠す事もなく『調理師ギルド』を後にしたそうだ。
「なんか、かなりヤバい奴に聞こえるんだが……」
「アタシもそう思うよ、気になって調べたら、似たような話がチラホラあってね、困ってたのさ」
「つまり、詐欺野郎ですか、どの世界にもいるんだな……話は分かりました。ありがとうございます」
俺は手土産を置いて、直ぐに屋敷へと戻る。
屋敷に到着すると不審な男達が屋敷を見ている事に気づき、俺は近くの建物へと移動して身を隠す。
何を喋ってるか分からないが黒ローブの4人組が明らかに怪しい動きをしている。
様子を監視していたが、遠目からでも分かるくらいに悪い笑みを浮かべていたので、不安は確信に変わった。
そして、あろう事か、屋敷の庭に入ろうとしていた。
流石に見てる場合じゃないな。
「おい、ウチになんか用か?」
いきなり、声を掛けられて、驚く男達は俺に視線を向けてくる。
「いや、なに、前に除霊を頼まれた者でな、今が大丈夫か心配でな……命に関わる事だからな」
そんな言葉を言いながらも口は笑っているのが分かる。
「そいつはどうも、だが、問題は無いし、むしろ、今の問題はアンタらだ」
俺は脅しも込めて怒気を込めた口調でそう言うと【ストレージ】からオークジェネラルの巨大な肋骨を一本取り出して、地面に突きつける。
「あ、アンタ、『冒険者ギルド』の『チームフライデー』のキンザンか……」
何故か俺の事を知ってるらしい。
「そうだが? それが何か」
「いや、済まなかった、我々の心配など不要みたいだな、失礼するよ」
そそくさと帰ろうとする男達の前に移動する。
「話は終わってねぇだろうが? 俺達の屋敷に無断で足を踏み入れたよな?」
俺の言葉に意味が分からないと言う表情を浮かべる男。
「立派な不法侵入だわな……なぁ?」
昔見たヤクザ映画の口調と顔を必死に真似て、低い声で話すと男の仲間達が慌てて逃げ出していった。
「あ、待つんだ、お前たち、私を置いて行く気か!」と男が慌てて声をあげるが逃げた男達は止まる事はなかった。
「チッ! 誰か、そいつ等を止めてくれ!」
動けば、目の前にいる男も逃げてしまう為、動けない俺は必死に叫んでいた。
しかし、止まる様子はなく、建物の角を曲がろうとした時、それは起こった。
走る男達がその場で倒れ込み、身体を震わせていたのだ。
「ご主人様の声がしたので、悩まずに痺れさせましたが、軽率でしたかね?」
「大丈夫にゃ〜、だってキンザンが捕まえろって言う相手なんだにゃ〜」
「間違いないの!」
男達を軽々と捕まえたのは、うさぎ狩りの帰りだったニア達だった。
俺が叫び、それから逃げるように走る男達を見て、ニア、ドーナ、ポワゾンの3人が悩まずに男達を取り押さえたのは圧巻だった。
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