1話、異世界転移って、言うか人攫いですよね?
「それで、なんで俺が断ったらダメになるんだ?」
「私、今回が初めての転移担当なんです、神にも交代の時期がありまして、今回は私が任命されたんですが……」
「なにかあったのか?」
「はい、皆さん『勇者じゃないなら嫌だ』とか、『スマホが使えないとか無理』とか言われて、断られてばかりで……」
ああ、何となく理解できた。確かに今の時代なら、そういうパターンもあるんだろうな……
「その結果、召喚回数がどんどん減ってしまいまして、何とか、2人は転移を決めてくれたんですが、ノルマの3人まで、あと1人足りなくて、金山さんが最後の1人なんです……」
確かに、死んで転生とか、転移なら、文句も言わないんだろうけど、コンビニでいきなり攫われて、転移しろは無理がある。
「早い話が、異世界転移っていうか、人攫いですよね?」
「違うんですよ、誰でもいいわけじゃないんですよ……今の世界にこのまま生きていたら、酷い未来しかない人を集めて、助けるつもりだったんですが……」
「つまり、俺もその対象なのか……」
「そうですね、生命の危機につながる不幸が押し寄せていました。あのままですと……」
「はぁ、わかったよ。その代わり、特権はちゃんとくれよ。期待してるからさ」
「ありがとうございます。金山さん」
表情が明るくなるのが目に見えてわかった。可愛く見えるフライちゃんを泣かせるのは、違う気がする。
「フライちゃんなんて、初めて言われました。なんか照れくさいです……じゃなかったですね。特権を選んでもらわないとですよね」
「何があるんだい?」
「はい、特権ですが、オプション1つとスキルが5つになりますね。最後に引いたクジの枚数分で決まります。まずは基本の【言語理解】です。こちらはオプションなので、すみません……」
まぁ、仕方ないな……言葉が分からないと生きられないしな……
「それと定番の【ストレージ】がオススメになります。鑑定系は【食材鑑定】しかありませんが」
ん?
「なんで、食材鑑定なんだ? 普通の鑑定はないのか?」
「すみません、普通の鑑定が今は、品切れでして、先の2人が鑑定スキルと鑑定眼を選びまして、すみません」
まぁ、確かに食材だけでも鑑定できたら、何とかなるか。
「わかったよ。ならその2つを貰うよ。あとは何がもらえるんだ?」
「あとの3つは……むしろ、ストレージを諦めたら、少しはマシなスキルになると言うか……」
どうやら、スキルにもランクがあるみたいだな、ストレージは、かなりいいスキルなんだろう。
他の2人がストレージを選ばなかったのも、それが理由なんだろう。
「ふぅ、元がただのオッサンだからな、もらえるだけでもありがたいって思わないとな」
「今の段階で選べるスキルを確認してみますか?」
「え、フライちゃん、いいのか?」
「はい、本来はダメですが、今回の金山さんが最後ですから、サービスです……」
【水魔法】【火魔法】【風魔法】【土魔法】【回復魔法】【鷹の目】【身体強化】【筋力アップ】【料理時短】【掃除時短】【獣化】【槍術】【剣術】【弓術】【短剣術】【斧術】【盾術】【双剣術】【探知】【解体】【念話】【扉開け】【透視眼】【調理器具マスター】【掃除用具マスター】【メイドマスター】【速読】【動物語理解】【快眠体質】【異常耐性】
思ったより、いいものがなかったな……
とりあえず、スキルの説明を聞いていくか……
「フライちゃん、スキルの説明を頼めるか?」
「はい、まずはわかりやすいものからですね、【火魔法】や【水魔法】と言ったスキルは、後々、魔術ブックや才能があれば、鍛錬で習得できるスキルになります」
「つまり、剣術なんかも同じなの?」
「はい、【剣術】なども、才能は必要ですが、訓練などで習得可能ですね……なんか、すみません」
「いやいや、大丈夫だよ。その情報も大切だから助かるわ」
ただ、そうなると、後から手に入るスキルを最初から持って有利を得るか、後から手に入らないレア物を取るかになりそうだ。
「【鷹の目】ってのはどんなスキルなんだ?」
「はい、鷹の目は目が良くなります! 望遠鏡がなくても、しっかり遠くが見える感じですね」
少しドヤ顔なのが可愛いが、鷹の目はいらないかな……次だな……
そこから、次々にスキル内容を聞いていくが、どれも余り物なだけあって、いいスキルはなかった。
なので、後で簡単に取得できるスキルと、本能的にいらないスキルを除外することにした。
悩んだのは、透視眼だが、フライちゃんの手前、絶対に使い方を想像しなかった。
それに説明を聞いたら、随時、衣服などが透明化してしまうそうで……
俺も男だから、女性ならウェルカムだが、野郎がマッパはノーサンキューだ。
なので、俺は【解体】【身体強化】【調理器具マスター】を選ぶことに決めた。
【異常耐性】も気になったんだが、このスキルは、食中毒が少し楽になるとか、麻痺しても指が僅かに動かせる程度の効果しか期待できないらしい……それでは使い物にならない。
「決まったんですね。【言語理解】【ストレージ】【食材鑑定】【解体】【身体強化】【調理器具マスター】ですね。攻撃スキルとかないですが、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。【身体強化】スキルで何とかなるさ、こう見えてオッサンは腕っ節強いからな」
「なら、安心ですね。では、早速、スキルを固定しますね」
フライちゃんがそう語ると俺の身体が輝き、体内に熱いものを感じた。
サウナの中に入った時のような感覚が過ぎると水風呂に入った後の整った感じがする。
「これがスキル取得です。転移先でも、同じ感じになりますから、安心してくださいね。あと最後に女神の祝福を授けます」
フライちゃんが両手を俺に向けた。
「祝福って、何をくれたんだ?」
「はい、[バッカス]でお酒や食べ物で困らないように何でも食べられるようになる加護です。食中毒、麻痺、毒と何でも大丈夫になりますよ」
「なら、異常耐性よりいい内容じゃないか」
「はっ、そうですね……私としたことが……」
少し抜けてるが、可愛いから、ありだな
「ありがとう、フライちゃん。スキルも貰えたし、これから、どうしたらいいんだ?」
「私が金山さんを転移させたら終わりですね。あと名前ですが、金山は発音が難しいかと……どうしますか?」
名前か、あんまり変えたくないんだよな……
「なら、キンさんとか? キンザンなら、多分、通じますよ」
「はは、なら、キンザンって名乗るよ。本当にありがとうなフライちゃん」
「いえいえ、キンザンさん、そろそろお別れですね。素敵な人生にしてください」
「オッサンのセカンドライフか、悪くないな……ありがとう」
俺の全身が光に包まれて眩いフラッシュが起こったと思うと俺はだだっ広い草原に寝転がっていた。
「本当に転移したのか……草の香りがリアルで意識がしっかりする……やっぱり、夢、じゃないんだな」
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