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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
10章 バッカス大陸に吹く風

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278話、愛する家族と、俺の異世界ライフ

 夜も深くなり、学生さん達には、早めに作業を終えてもらい帰宅させることにした。

 こちらの世界には労働基準法なんて存在しないため、学生さん達は止めない限り働こうとするから、本当に驚いたよ、まったく。


 頑張ってくれた学生さん達には、帰る前にしっかりとラビカラ定食の大盛りを学生用に作った食事スペースで食べてもらった。


 さすが、学生と驚く勢いで食べてくれて、作ったこっち側まで嬉しくなる食べっぷりだったな。


 今日はまだ正式な教務ってわけじゃないため、俺から銀貨を三枚ほど手渡したんだが……。


「え、こんなにいただけませんよ!」


「いやいや、カリーノ達はしっかり働いたわけだし、労働に対しての対価はしっかり渡さないと俺が嫌なんだよ」


「分かりました……なら、皆で分けさせてもらいますね」


 カリーノに手渡した銀貨三枚を全員で分けようとしたので、待ったを掛ける。


「いやいや、それはカリーノの分だからな、ほら、次の子も来てくれ、手渡しで悪いが人数分は用意してるからな」


 そうして、1人1人に銀貨を渡すとなぜか、困ったような顔をされてしまい、俺は逆に困惑してしまった。


 そこにミアとニアがやってくると、酷く世間知らずに向けるような視線を向けられた。


「オッサン、何してんだよ……はぁ、いや、何も言わなくていいよ……学生さんも驚かせてごめん……えっと、それは七日分の給金だから、安心してもらって大丈夫だから」


 ミアの言葉にホッとした様子の学生さん達は深く頭を下げてから、帰っていった。何がなんなんだ?


「わかってない顔だにゃ? キンザンはお馬鹿さんなのにゃ」


「ニア、言い過ぎだよ。まぁ、ボクもそう思うけどさ」


 再度向けられた視線が冷たく突き刺さると同時に理由が分からないため、質問することにした。


「どういうことなんだ? 教えてくれないか」


「えっと、オッサン? 冒険者の報酬って、雑務を一日やって報酬がいくらかわかる?」


「いや、あまり分からないけど」


「説明してあげるにゃ! 宿屋での一日仕事で大銅貨四枚にゃ! ちなみに、これが一日仕事場にいるための支払い額で働いた内容に上乗せがあるのにゃ」


「だから、学生さん達からしたら、夕方から少ししかいないのに、銀貨三枚も払われたら、焦るって話なんだよ。オッサンからしたら、分からないだろうけどさ」


「なんか、すまん。本当にわかってなかったよ」


「はぁ、必要以上の支払いなんかしてたら、相手からしたら「お前は俺のモノだ」って言われてるようなもんなんだよ」


「でも、学生さん達も満更じゃにゃい顔をしてたにゃ〜」


 2人の言葉に金銭感覚を見直さないとダメだなと思わされてしまう出来事だったと言える。


 学生さんが帰ってからは、兵士さんが手伝いに来てくれて、風呂に使う魔力が無くなり次第、終わりを迎えた。


 そうして、数日こんな感じで学生さん達には、夕食を振る舞い帰宅させるようになり、朝は新たな風呂施設の建設の手伝いが俺の仕事になっていく。


 一週間が過ぎ、俺の朝の作業である風呂施設の土台部分が完全に完成した。


 個浴タイプを最初は使おうと考えていたが、鉱山の街[ボルドール]の職人さん達がシンク風呂を見て、巨大なシンクを作ってくれたのも、予定より早く作業が終わった理由の一つだ。


 早い話が、本当に銭湯を作ってもらえたって話になる。


 巨大シンク風呂にはスノコが設置され、火傷防止も完璧で、さらに洗い場にも工夫がしてある。


 椅子に座った位置に湯を流すための水路のような作りにしてもらい、身体をしっかりと洗った際にもお湯で汚れを流せるような作りにできているので大満足だ。


 そうして、裏側のスペースには大量の“オループ”が配置され、火魔法を使うスペースもしっかりと椅子が置いてある。


「完璧だな、これなら任せて大丈夫だろうな」


 設備の確認を済ませ、壁などに絵を描いてもらい、オープンまでの間もシンク風呂側でオループを使い、問題がないことを再確認して、改めて全ての業務を学生達に任せることができた。


 やっと開放された喜びを噛み締めてから、街の様子を確認しに行くことにする。


 まあ、ただ見に行くわけじゃなく、目的としては、冒険者ギルドに用事があるからだ。


 街中を歩いていると色々な変化を感じた。


 既に日常が戻り始めていることが目に見えて明らかだからだ。大袈裟ではなく、人々は逞しいと感じさせる光景が広がっている。

 商売を再開した店、壊れていたはずの壁が塞がり営業を再開した宿屋など、見れば見るほどに人々の笑みと活気が戻っているのを肌で感じられた。


 そうして、歩いていけば、俺の目的地であった冒険者ギルドに到着する。


 ちなみに今回は依頼についての話のため、俺1人でやってきているので普段が賑やかなせいか、少し寂しさを感じてしまうな。


 冒険者ギルドの扉を開けば、相変わらず柄の悪い男連中がたむろしている。


 ただ、何もしてないわけじゃなく、揉めごとなんかがあった際に駆けつけるためのいわば待機組ってやつだな。


「お、キンザンのアニキ! いらっしゃい」

「「「いらっしゃいませ!」」」


 俺が扉から入ると、ギルドマスターのヴェルデによく殴られていた冒険者を筆頭に頭を下げられ、挨拶をされた。


 なんで、この冒険者ギルドだけは、いつも仁義なきシリーズみたいなノリなんだよ……。


「アニキ、どうしたんですか? なんかトラブルですか!」

「トラブルなら、オレ達がすぐに解決しますぜ!」


 ムキムキな肉体がピクピクと自己主張している中で俺は「いや、依頼の件で来たんだ」と伝える。


 俺がわざわざ、冒険者ギルドに出した依頼はシンク風呂の清掃をする日雇い募集だ。


 駆け出しの少年少女の冒険者でもできる最低ランクのクエストになるが、今の王都だと、最低ランクのクエストすら出ていないため、依頼を出している。


「アニキは優しいですね! しっかり下の連中にも仕事を割り振るなんて、感動です!」


 なぜか懐かれてしまったのは、誤算だが、根がいい人達のせいか悪い気はしないな。


 ギルド内が賑やかになったためだろうか、奥の扉が開かれるとヴェルデが顔を出してきた。


「ん? なんだい、キンザンじゃないか! 来たなら、すぐに顔出しな、まったく」


「あ、いや、依頼を出して、すぐに帰るつもりだったから、そっちは元気そうで何よりだな」


「何を言ってんだい、アンタから大金をもらって、王都の何でも屋をやってやってんだから、元気がなかったら、罰が当たるってもんさ」


「なら、依頼のことは任せたよ。ヴェルデは信頼できるからな、本当に感謝だよ」


「まったく、任せときな! あと、次からはちゃんと顔出しなよ」


 冒険者ギルドで依頼を出してから、俺は次にベリー達のいる広場へと向かう。

 嫁ちゃん達は炊き出しをしているので、その手伝いって感じだ。


 朝からバタバタしたが街の様子を見て、俺は自分が選んだ道が間違ってなかったと確信できた。


 炊き出しに並ぶ人達も日に日に少なくなっているように感じる。

 そのうち、炊き出しなんかは要らなくなるだろう。


 ただ、いきなり無くすような真似はできないから、それも含めて、 ルフレ殿下とは話し合う必要があるかもしれないな。


 でも、改めて言える。王都は日常を取り戻したんだ。


 俺達の一か月が瞬く間に過ぎていく、そうなれば、次第に救援に来てくれていた多くの友人達も自分達の生活へと戻っていくことになる。


「色々と助かりました。頭領、建築ギルドの皆さんにも本当に感謝してます」


「おうよ。旦那の頼みだからな、あっしらはやれる仕事をしただけだからよ」

「キンザンの旦那が作る飯も美味いから、いい仕事でしたよ」


 今日、商業都市[バリオン]から来てくれた建築ギルドの頭領と大工衆が転送陣を通り帰って行った。


 少し寂しくなるが、こうして無事に見送れる事実も大切にしないとな。


 既に何組も見送る日々が続いているため、俺達の見送りも慣れたものだ。


 王都[ウトピア]は既に日常を取り戻し、復興も上手くいっている。

 家具職人を派遣してくれた鉱山の街[ボルドール]の職人さん達から始まった帰還の見送りも、建築ギルドの皆で最後だった。


 色々な手助けに感謝しながら、俺は一緒にこの場に来ていた嫁ちゃん達と娘達に笑いかける。


「さて、俺達も『フライデー』として、働くとするか」


「そうね。あ、キンザンさん? 『フライデー』をチェーン店化しましょうよ」


「ベリー、チェーン店って、なんにゃ?」

「鎖でも売るんじゃないか? まぁオッサンの店なら何が置いてあっても売れるから大丈夫だろ?」


「ミア、ニア、違うわよ。フライちゃんの転送陣って今は普通じゃ使えないわけだし、安全に物流が作れると思うのよ」


 ベリーの説明は、今は女神のエトランジュさんが転送陣の管理をしているため、一般の転送陣はエトランジュの管理下にあるが、フライちゃんは独自に転送陣を作れるため、それを店の物流システムにしてしまおう、って話だな。


「無茶な考えだな。バレたら怒られそうなんだよなぁ」

「きんざんさん、大丈夫ですよ。エトランジュにバレたら、わたしがシッカリ記憶ごと吹き飛ばしますから、安心してください」


 いやいや、女神が女神をぶっ飛ばすとかダメだろ!


「はぁ、まぁ……やるだけやるか、まったく」


 俺は暇な日に揚げもん屋をやるくらいが一番だと思ってたのにな。


「なら、久しぶりに[バリオン]の屋敷に戻るか。店舗を増やすにしても、色々決めないとならないからな」


 まだまだ、忙しい日が続きそうだな。でも、こんな毎日があるから、俺は幸せを噛み締めることができるんだろうな。


「よしゃ! 家族のために頑張るか!」


「オッサン? “大切な”が抜けてるって」


「はは、悪い、なら、改めて、大切な家族のために頑張るか!」


「「「「「おおぉー!」」」」」


 明るい声に囲まれた俺は幸せだ。心から、愛する家族に感謝しかない。


 小さな幸せから大きくなった。幸せを俺は絶対に手放さないし、奪わせない。


 これが俺の異世界ライフだからだ。


 

 みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。


 ──END──

お付き合い頂いた皆様に心から感謝致します。

本作品は、まだまだ、物語を書くことができる状態ではありますが、ここで終わりになります。


皆様の中で、登場人物達が更なる物語を紡ぎだすことを願っております。


改めて、読んでいただきありがとうございました。


また、別の作品で出会えた際には、よろしくお願い致します。


素敵な読書ライフをお過ごしください。


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― 新着の感想 ―
お疲れ様でした。 投稿前に見直す事をオススメします。 ここまで誤字脱字が酷い作品は初めてです。
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