26話、赤髪の嫁が可愛すぎる話と幸せを噛み締めて
2人きりの空間、先に動いたのはミアだった。
「オッサン、先に寝るから……オッサンも早く寝ろよな……」
何処かツンケンした感じの声でミアは部屋を出ていった。
結局、俺1人になっちまったなぁ……
悩んでもしゃあないから、とりあえずは風呂に入って全てを忘れよう。
早速、風呂の用意をする為の水と炎の魔石を使い、一気にためていき、湯が溜まるのを待っていく。
嫁ちゃん達、全員と入れるくらいの広さがあるので中々に時間が掛かったがやはり、大きさは必要だよな。
既にシャンプーやボディーソープ、石鹸に鏡と必要最低限(俺的に)を全て揃えてある。
タオルを首に装着、いざ出陣ッ!
その瞬間、脱衣所の扉が力強く開かれる。
「オッサン! いつまでまた……せ、るんだ……」
振り向いた俺とミアが正面から向き合うと、真っ赤になったミアが両手で顔を隠す。
「お、オッサン、いいからあっち向け!」
「あ、すまん!」
言われて気づき、慌てて後ろを向く。
「な、何しに来たんだ……」
「オ、オッサンがいつまでも来ないからだろ!」
無言になった脱衣所……俺はミアにとりあえず、声をかける。
「な、なぁ、ミア、とりあえず風呂に入らないか?」
「うん、わかったから、先に入ってくれよ……」
言われるままに、俺は身体に湯を掛けて、静かに湯船に入ってミアを待つ事にする。
脱衣所で服が擦れる音が微かに聞こえてくる。
自然と背を向けてしまう……こういう所がヘタレなんだな……
ガラガラ…………カタン…………
扉が開かれてから、優しく閉じられるまでの僅かな時間すら、俺の鼓動は早送りでもされているかのような感覚で動き続けていた。
背中越しにミアからの問い掛け……
「ど、どう入ったらいいか、わからないんだけど……」
「ふ、風呂は慣れてないのか?」
「風呂なんて、普通は入れないんだよ……いきなり、こんなモン作りやがって……説明くらい、しろよな……」
背中を向けたまま、俺は、なるべく分かりやすく入り方を教えていく。
「まずは、頭と身体を洗ってから……洗う際は、アレだシャンプーと──」
「オッサン、ストップ、待ってくれよ! そんな一気に説明されてもわかんねぇよ……」
確かに……いきなりわかんねぇよな、料理で言うなら、初めてのフランス料理のマナーくらいには分からないよな……
「ならさ、オッサンが……ボクを洗ってくれよ、使い方とか、そうしたら……ボクも覚えられるしさ、い、嫌かな?」
「い、嫌じゃないが、いいのか?」
「いいから、言ってんだよ……オッサン、いつまで背中、コッチに向けてるんだよ? 早く洗ってくれよ」
そこからは、説明なんて、出来ない!
若さとは、すべすべで、もちもちだった。プニプニのツルツルでしたとも!
「オッサン、なんか、顔がヤラシイぞ!」
「すまん……悪かったな」
「別に……ヤじゃないし……オッサンだったら……ボクは嬉しいし」
最後の方はよく聞こえなかったが、頭からつまさきまでを優しく洗ってやり、湯で泡を綺麗に流しきる。
「湯船に入ろう、暖まるからな」
「う、うん、ありがとうな、オッサン」
「今日はやけに素直だな?」
「うるさいなぁ……ボクだって、そんな日もあるよ……」
2人が湯船に浸かり、肩までしっかりと入る俺と膝立ち状態のミア。
「完全に座れないのか?」
「う、うるさい……ボクはこれでいい……」
普段はミアはブーツを履いていて、身長を誤魔化している。
実際はニアやドーナよりも身長が低いのだ。
因みに背の順に並べたら──
◇ベリー──163センチらしい。
◇ポワゾン──155センチらしい。
◇ニア──145センチらしい。
◇ドーナ──143センチらしい。
◇ミア──142センチくらい。
まぁ、こんな感じだ……
「ミア、こっちに来いよ」
「いきなりなんだよ、オッサン、わっ、ちょ!」
ミアを引き寄せると俺の膝の上に座らせる。
「これで大丈夫だな。ミア、肩まで入らないとあれだしな」
「アレってなんだよ……こういう時だけ強引とか、どうなんだよ……たく」
膝の上に座るミアの頭を撫でる。
なんか、小動物感が否めないな、そう思うとついつい笑ってしまうな。
「何笑ってんだよ?」
「いや、本当に可愛いなって思ってさ」
「な、なぁ、ふん……」
後ろからでも分かるくらいに、真っ赤になったミアを再度見て俺は小さく笑った。
そんなヌクヌクな時間がゆっくりと過ぎていく最中、脱衣所と浴室を繋ぐ扉が“バタンッ”と倒れる。
びっくりしたのか、俺に抱きつくミア、そんな俺とミアは視線の先を直視する。
「な、ベリー、それにニア達まで! なんでいるんだよ、今日はボクの番だろ!」
「わかってるけど、お風呂は皆で入るものなのよ、ねぇキンザンさん?」
何故、俺に聞く……しかも、ベリーの後ろから、皆、俺を見てるし……
「ま、まぁ、皆が入れる広さの風呂にしたからな」
「オッサン! あぁ、わかったよ!」
ミアが許可を出した途端、ベリーは、入浴の為にバスタオル姿になり、ニアとドーナは生まれたままの姿で風呂場に走ってきた。
何故か、大丈夫そうに見えたポワゾンが一番恥ずかしがっていたのは、少し予想外だったが、とにかく皆が風呂場に集まってしまった。
ベリーはやはり日本人だった事もあり、しっかりとニアとドーナの身体を洗ってやっていた。
全員が背中を流し合う姿を見て、クスっと笑ってしまったが、とにかく皆が楽しそうなのはいい事だ。
ニアとドーナが、勢いよく、湯船に飛び込み、ミアの顔面にお湯が掛かるとミアも2人に反撃とお湯を掛けていく。
なんか、まだまだ、あれだなぁ……
そんな事を思いながら、湯を楽しんでいく。
「ご主人様、こちらをどうぞ」
ポワゾンが俺に手渡したのは、旅館でよくある、風呂に入ったまま飲む酒のセットだった。
「なんで、こんなんがあるんだよ?」
「はい、ベリー様から、デカイ風呂とはそういう物だと聞きましたので用意致しました。既に皆様も飲んでおります」
ん? みんなも?
慌てて後ろを振り向くと、明らかに真っ赤な嫁ちゃん達の姿があり、ベリーが俺の酒が入ったグラスを奪い取ると、ポワゾンの口に一気に流し込んでいく。
「ふふっ、私は……ジュースを、用意、してって、いったにょよ〜! なんれ、お酒なのよ!」
とりあえず、このままだとヤバイ、よく見たら、ミア達もフラフラで立ってやがる!
慌てて、全員を湯船から洗い場に出していく、怪我がなかったから良かったが、ポワゾンには後でしっかり言い聞かせないとな、まったく……
洗い場に並べられた、艶っぽい表情を浮かべた嫁ちゃん達をみて、“ドキッ”っとしたが、酒に酔った女の子をましてや嫁ちゃん達を襲うような事はしない。
何故なら、オッサンは紳士だからだ!
「はぁ、よし、バスタオルを取りに行くか」
脱衣所に向かおうとした俺の足が無数の手に掴まれる。
「え?」っと、素直に声が出た瞬間、俺は容赦なく嫁ちゃん達に引っ張られて転倒する。
「イテェ……なにすんだよ……あぶな、い、だ……あ、あの、落ち着け、なぁ、落ち着け! うわあああ!」
「逃がさないぞ、ボクのオッサンなんだからな!」
「ニアも大好きにゃ〜キンザン〜」
「ドーナは凄いの〜だから、【影縛り】なの〜あはは」
「待ちなさいよ、キンザンさん、私達を置いて何処に行くきよ」
「ご主人様、ワタシはいつでも、産む覚悟はできてます……」
そこから、酒で思考が回らない嫁ちゃん達が暴走モードに突入して、ラッシュが継続し続けていく、俺はなされるがまま、全てをはき出す結果となった。
風呂の湯が完全に水へと変わり、風呂場から熱気が覚めた頃に、俺が意識を取り戻す。
そこには、可愛くも喜びに満ちた表情の小悪魔な嫁ちゃん達が仲良く寝ていた。
「ふぅ、結局、こうなるんだよな」と呟きながら、【ストレージ】から回復ポーションを取り出し、一気に飲み干してから【身体強化】を発動する。
1人づつ寝室に運び、布団を掛けていく。
誰から最初に運んだかは内緒と、言いたいが……赤髪のお姫様を最初に抱っこして連れていった。
「なんせ、俺の一番なんだもんな?」
普段から、何故か一番にこだわるが、そんなミアの行動も言葉も本当に可愛くて仕方ないんだよな。
全員を寝かし終わった後に、風呂場を綺麗に掃除していき、俺は全ての証拠を文字通り洗い流した。
「結局、ゆっくりにはならなかったが、悪くないよな、賑やかも……たまにならだけどな……」
リビングに戻り、ソファに座ると静かに煙草へと火をつける。
俺は嫁ちゃん達の顔を思い浮かべて幸せを噛み締めていた。
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