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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
10章 バッカス大陸に吹く風

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276話、図書館とキンザンの料理教室

 ベリーが俺とバトンタッチで話し合いに参加することになり、俺達は完全に蚊帳の外になってしまったため、カリーノに頼んで学園内を案内してもらうことにした。


 嫁ちゃん達や娘達も、魔法学園は初めてのためか、カリーノの案内に耳を傾けながら、廊下を歩いていく。

 学生時代を思い出してみるが、あんまりいい思い出はないなぁ。


「ここが、魔法学園の図書室になります。中には魔導書の写しや、薬品の作り方の文献や薬草についての本などもありますね」


 カリーノは親切に案内してくれるので、こっちまで楽しい気分になってしまうな。


 本が並ぶ図書室に娘達も大興奮で、許可をもらって、挿絵の入った本を少し見せてもらうことにした。


「みて、カエルだよ」

「こ、こっち……すごく怖いゴブリンだね」


 挿絵があるからか、絵本感覚で魔物図鑑を見ている。


 嫁ちゃん達も珍しい本を見つけたのか、各自で本に手を伸ばしていた。

 ミアは自身の種族である鬼人族について調べており、ペコとグーは魔法武器について書かれたものを選んでいる。


 結局、二十分くらいでナズナとリーフが飽きてしまったので、次の場所への案内をお願いすることにした。


 そのまま、色々な部屋を案内してもらい、次に案内されたのは、『1Gクラス』と書かれたボロボロの教室だった。


「ここが私のクラスになります。他の子達も居るので、教室には入れませんが……なんか、すみません」


「いやいや、それはそうだろうから、気にしないでくれ、むしろ、色々な場所の案内を頼んですまなかったな」


「あ、いえ、こちらこそ、黒騎士様と娘様達をご案内できて、嬉しく思っています」


 笑ったカリーノに軽く頭を下げる。

 そうして、Gクラスから移動しようとした時、教室に向かってくる男子生徒の姿が目に入る。


 酷く痩せこけた感じの顔は、学生だというのに、危なっかしい足取りと風が吹けば飛んで行ってしまうようなイメージを受けた。


「ファム? どうしたのよ」


 フラフラの学生に駆け寄り、心配そうに声をかけるカリーノ。


「カリーノ、はは、少し……食事を抜いてて、大丈夫だよ。食堂に行けば、何とかなるから」


「何言ってるのよ、もうお昼はとっくに過ぎてるわよ、食堂は夜まで開かないわよ」

「そ、そんなぁ……」


 いや、待て……確か、炊き出しとかしたよな? 水とパンを配ったりしたよな?


 言いたいことはいっぱいあるが、それよりもやるべきことをしっかり確認しないとな。


「カリーノ、この教室で授業はいつから始まるんだ?」


「え、いえ、今日は……ルフレ殿下が来られた時点で自習になってますが……」


「なら、授業の邪魔にはならないな」


 ファムと呼ばれた学生に視線を向ける。


「おい、いつから食ってないんだ?」


「え、あぁ……悪霊騎士か、死ぬんだなオレ、母ちゃん、悪ぃ」


「勝手に死ぬなよ、で、いつから食べてないんだ? 早く言え」


「多分、四日前くらいから、王都の外にある森に魔物の素材探しをしに行ってて、戻ったらなんか、凄いことになってて」


 つまり、王都のクーデターを知らないし、炊き出しもスルーしてしまったと……どんだけ、運がない、いや、クーデターに巻き込まれてないなら、運はあるのか?


「すまないが……カリーノ、教室()の生徒に教室を使っていいかだけ確認を頼めるか?」


「え、あ、はい。聞いてきます!」


 教室に入っていくとすぐにざわめいた雰囲気と驚きの声が廊下にいる俺達にも聞こえてきた。


「あの、皆、言いそうですが……何をされるんですか?」


 確認ができた時点で頷くとナギが腹ペコ学生のファムを担いで中に運んでくれた。


 教室内は黒鎧を身に付けた俺とナギや嫁ちゃん達の姿に一瞬、引き攣ったような表情を浮かべられてしまい、ナギが不思議そうに俺を見つめてくる。


「ああ、そうだな、この姿だからなぁ」


 俺は【ストレージ】に入れてある白煙を出すと全身を隠すように展開して、素早く黒鎧を【ストレージ】へと収納する。


 黒鎧を収納すると同時に白煙も【ストレージ】へと吸い込めば、一瞬の早着替えが完成する。

 まあ、脱ぐだけの一方通行だから、また鎧を付けないとならないんだがな。


「えぇ! あれって、収納系のスキル?」

「分からない、チェンジの魔導具じゃないの」

「チェンジだとしたら、早すぎるよ」


 知らない魔導具の名前がちらほらとあるみたいだな、着替えに使える魔導具があるなら調べる価値もありそうだ。


「いきなり悪いな。少し教室を使わせてもらうよ」


 教室の作りは、大学の講義室を思わせる作りで、教卓の前は広い空間がある。

 そこに調理台を取り出し、魔導コンロを置いてから、すぐに調理を開始する。


 大きめの両手鍋を設置して水を沸かしていく。


 手早く取り出したネギ、白菜、人参、カボチャなどの野菜を刻み、キノコ類をカットして入れていく。麺ツユや出汁を入れて、しっかりと味付けをしてから、きしめんを入れていく。


 これは好みになるが、俺はきしめんに肉を入れたいタイプなため、しっかりと一口サイズにカットしたオーク肉と油揚げも入れていく。


 ちなみに野菜のサイズだが、かぼちゃは5ミリのくし切りにしてやり、見た目を良くしてある。

 白菜はザク切りに、大根、にんじんは、いちょう切りにした。

 ねぎの長さは5センチくらいがいいだろう、しめじは小房に分け、しいたけは薄切り、油揚げも細切りにしてある。


 きしめんを見た学生達からは悲鳴に似た驚きの声が向けられた。


 まぁ、薄い袋に青枠に黒字の文字が書かれたそれを割いて、中身を入れてるんだから、知らなければ不気味に見えるよな。


 最後に味噌を溶いて、味を確かめ、さらに火を通してやれば、ほうとうの完成だ。


 山梨の代表的な郷土料理で、野菜もたくさん食べれるし、何より暖かい味と消化にも優しいため、食べやすいだろう。


 見たことのない料理に興味の視線が集まる中、ナズナとリーフから“ぐぅ〜”と腹の虫が鳴いたのがわかった。


 大量に作る方が美味しくできるので、教室にいる10人前後の生徒さん達も含めて、食べれるくらいの量がある。


「そんなに興味があるなら、皆も食べてみるか?」


 ファムとナズナ達に、きしめんの入った器を手渡しながら声をかけてみる。


 互いの顔を見合わせながら、ヒソヒソと話す姿を見ていると、俺の横から小さな声が聞こえた。


「あ、あの、いただいてもいいのでしょうか?」


 カリーノの言葉に笑いながら、きしめんを盛った器を手渡すと、席側から見ていた生徒の1人がこちらにやってきて「く、ください」と言ってきたので手渡していく。


 それを合図に列ができると、ほうとうが次々に手渡されて、教室での食事会が開始された。


 ファムはきしめんを口に運ぶと、すぐにフォークの勢いが加速していた。

 熱いため、火傷しないか心配していたが、しっかりと冷ましながら食べる余裕もあるようで安心した。


「美味しい」

「不思議な味だね」

「初めて食べる野菜だよ。なにこれ?」

「分からないけど、甘い野菜だよね」


 そんな学生側からの声と娘達から「パパは凄いね」という声に俺も笑顔になっている。


「マイマスター、おかわり!」


 ナギの声にドーナ達も含めて、おかわりの声が出てきたので、次のほうとうを作ることになる。


 ただ、二回目は学生も参加して作ることになったので、まさに料理教室になっちまったな。

読んでくださり感謝いたします。

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