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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
10章 バッカス大陸に吹く風

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273話、魔法学園に呼ばれました。

 魔法学園の生徒、カリーノと出会った朝から既に一か月が過ぎようとしている。


 この一ヶ月の間に何があったかといえば、まぁ色々なんだが、1つ言えるのは、シンク風呂の運用を魔法学園とバッカス大陸国に任せることになったってことだろう。


 こうなったのには、魔法学園とルフレ殿下からの強い申し入れがあったからだ。


 経験上、上の人間が出れば出るほど、問題は厄介になるため、国のトップであるルフレ殿下が話し合いに参加した時点で、俺からすれば、話は決まっていると言えただろう。


「いきなり、すまぬなぁ。朝に其方と学園の生徒が接触した事実はこちらにも届いておるでな」


 午後に一度、昼を食べるために屋敷へと戻った俺達を待っていたのは、ルフレ殿下とメフィス、他数名の兵士達だった。


 リビングのソファーに腰掛け、紅茶を口に運ぶルフレ殿下を見て、俺は言葉を失った。


「なんじゃ、余が会いに来たのは、迷惑であったか? メフィス! 余はキンザンに嫌われておるのか!」


 なぜかアタフタしだした姿を見て、背後に立っていたメフィスが渋い表情を浮かべる。


「大丈夫です。むしろ、理由が分からないから慌ててしまった。っと言った感じでしょうなぁ」


「そ、そうか……余は、焦ったぞ」


「ですので、先ずは説明と目的を話すことが有益かと、我輩ならば、そう選択しますなぁ」


 まぁ、お約束の展開を見ながら、俺は反対側のソファに腰掛けて話を聞いていく。


 わざわざ、ルフレ殿下が足を運んで来た理由は、やはりシンク風呂についての話で、風呂の仕組みや今あるシンク風呂を国営にしたいと言ってきたのだ。


 正直驚いたが、今の王都では、風呂の素晴らしさが完全に理解されてしまったため、後々、娯楽になる風呂を取り上げるような真似はしたくないようだ。


「まぁ、其方からすれば、自身の考えた叡智の結晶を国に売ってほしいと言われれば、いい気分はしないじゃろうが、考えてくれぬかのぅ」


 俺は難しい顔を浮かべていた。話の内容が嫌とか、渡したくないなんて、考えはないが、ないからこそ、悩んでいるというべきだろう。


「まず、湯の入れ替えはどうするつもりでしょうか?」


「ふむ、それについては、魔法学園側から、水を大量に吸い尽くす厄介な植物がおるらしくてな、ほれ、キンザンの奥方、ナギの故郷である[マーシュマレ]の沼地の植物じゃ」


「はぁ、つまり、その植物に水を吸わせると?」


「なんでも、土から栄養を吸い上げるらしいが、水ならその何倍も早く吸い上げるとか、現物を見ていないため、余もあまり説明ができんがのぅ」


「ちなみに、その植物はどうなるんですか? まさか、巨大化するとか、言わないですよね」


「いや、話では、数時間(数鐘)で水を綺麗にして吐き出すようじゃ、まぁ沼地の水を吐き出すのに数時間(数鐘)だが、普通の水なら、一時間(一鐘)の間に吐き出すらしい」


 つまり、一時間で湯が入れ替わるって話か、最悪、強力ポリマー(オムツ)なんかを考えてたが、ずっとエコだな……異世界半端ないな。


「分かりました。一旦、その植物の確認と学園側の話も聞きたいんですが、いいですか?」


「うむ。其方ならそう言うと信じておった。場所はどうするかの? 余としては、王宮で話すのも良いかと思うが」


「いえ、できれば学園側に直接出向いて、話を聞いて、現物を見たいと思うんで」


 そう告げるとメフィスが素早く指をパチンと鳴らす。

 控えていた兵士がすぐに移動を開始すると屋敷から出ていった。


「早ければ、この後、つまりは、すぐに迎えが来るでしょうなぁ……我輩は殿下を待たせるような無能を学園長に座らせておくつもりはありませんからなぁ」


 おいおい、いきなりブラックだな……職権乱用なんて、可愛いレベルじゃないぞ。


「ふむ、余も此度に関しては、学園側から是が非でもという形で相談されたのでな、待たされるくらいなら、国営でと考えておるのも事実じゃからな」


 俺が知らない間に、委託された後の流れがいくつか作られてるみたいだな……


 そうして、新しい紅茶がポワゾンによって入れられ、飲み終わるまでの間に馬の声が屋敷の外から響き、ルフレ殿下が残念そうな表情を浮かべた。


「やれやれ、余としてはこのまま国益にしたかったが、さすがに独り占めには出来ないようじゃな、キンザンと奥方。メフィスよ、向かうとしようかの」


 ルフレ殿下の言葉にポワゾンとナギがジャンケンに勝ったのか、同行することが決まった。

 嫁ちゃん達のジャンケン大会も最近は白熱するパターンが増えてきたので、何か新しい方法を探さないとな。


「馬車は一台か……ナギは乗れないサイズだな、どうする?」

「ナギは自分で向かえる! マイマスターと行く」


 そうなると、ナギに掴まるとミアとニアが言い出し、影に入るとドーナが胸を張る。


 馬車は小さくはないが、6人乗りのため、俺とポワゾンの他に4人が乗れることになると残った嫁ちゃん達から誰が行くかの話し合いになっていく。


 それを見兼ねたルフレ殿下が溜め息を吐いてから「余の乗ってきた馬車にキンザンともう1人か2人乗れる。早く決めよ」と助け船ならぬ、助け馬車を出してくれた。


 結果的に、ルフレ殿下の馬車には俺とポワゾン、娘達の4人が乗せてもらうことになり、膝の上に座るナズナとリーフはウキウキだった。


 家族全員で向かった魔法学園は巨大な門と塀に囲まれた立派な建物で、魔法を使う映画の学園をそのまま引っ張って来たような印象を受けた。


「デカぁぁぁい!」とリーフが声を上げるのも、理解できるくらい立派な物だった。


 門が見張りの兵士により開かれると馬車が通され、地面に作られた石畳の上を進んでいく。


 手入れされた花壇と薬草園と書かれた看板、馬車を見つめる学生達の姿も印象的だったが、何より、校庭で的を狙った攻撃魔法を扱う授業には驚かされてしまったな。


 そうして、学園の入口に到着すると、教員らしき男女が緊張した様子で待機しているのが見えた。


 馬車が停車するとすぐに男性教員が「よくお越しくださいました」と姿勢を低くして出迎えられる。


 内心、俺はそんな身分じゃないから、逆に申し訳なくなるんだが……


 そんな俺とは違い、ルフレ殿下は堂々と馬車から降りると話し掛けてきた男性教員に声を掛けていく。


「挨拶はよい。学園長はどこじゃ?」


「あ、はい。学園長でしたら、只今、殿下にお見せするために“オループ”を用意しているかと」


 “オループ”ってのが、その植物の名前なんだろな。俺の知らない植物ってだけで少しワクワクはするよな。

 学園長が出迎えないことにメフィスは少し眉間をピクピクさせていたが、ルフレ殿下はそれを見て「よいから、抑えよ」と止めていた。


 馬車から嫁ちゃん達が姿を現すと授業をしていた学生達からも視線が集まり、次第に学園の窓からも下を覗く姿が目立つ。


 俺も馬車から降りようとすると、なぜかルフレ殿下から悪い笑みが向けられた。


「キンザンよ。其方は鎧を身に付けよ。あるのだろう?」


「鎧ですか、いや、でも」


 俺はルフレ殿下に【ストレージ】について直接話したことはないが、使い過ぎているからだろう。既にバレてしまっているらしいな。


「はぁ、分かりました。よく分かりませんが、着ますね」


 そうして、学園にやって来たのにも関わらず、俺は黒騎士として振る舞うことになってしまった。

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