263話、防衛戦を突破しろ、キンザンの秘策2
俺の三つ目の考えは不安がないわけじゃないが、一つ目の案よりは安全で、二つ目の考えよりも確実だろう程度だろうと感じている。
ウィルとロゼ君の2人がいるからこそ、できる科学的な方法……
「ウィル、ロゼ、2人に今から話す作戦はこの大陸で一般的か分からないが、改めて協力してくれ、頼む!」
「わかっている。だから、お前の話を聞いているんだ! 早く話せ」
「そうそう、僕とこのウィルさんに、何を頼みたいのさ〜まあ、僕ってば、お兄ちゃんのためなら、何枚でも一肌脱いじゃうタイプだからさ〜」
「おい! 本当にこんな、羞恥心のないような奴と組まないとならないのか! 」
「なんだよ〜? 堅物は頭もガチガチなワケ〜、冗談ってやつじゃんかぁ〜まったくぅ」
2人が互いのダメ出しをしているが、俺からすれば、ギスギスした状況で互いに会話がないよりはずっとマシだと感じたので、そのままの状態で話を続けさせてもらう。
「ロゼ、頼みたい仕事は、雨が降ってきたように偽装して、空から水を降らせてくれ」
「え、それだけでいいの? せっかく、エトちゃんから許可が出たんだしさ、派手にドカンってやろうよ〜お兄ちゃん〜」
「ダメだからな……絶対に派手になんか動くなよ」
「ちぇっ、まぁ仕方ないなぁ、お兄ちゃんの頼みだから、僕ってばしっかりと聞いてあげるよ〜」
ニコニコ顔で俺に向ける無邪気な微笑み、素直に可愛いらしいが、しっかりと同類のため、コロッと流されることはない。
疑いたくなるが、ロゼ君なのだ、っと、自分にしっかり刻んでおく。
こんな状況であり得ないだろ! みたいな気分になるが、破壊力しかないのも、また事実なのだから仕方ない。
「何をするかと思えば、男が男に色仕掛けとは、本当に、困った奴らに借りを作ってしまったな……」
頭を片手で抱えるような仕草のウィルが残念な人に向ける視線を感じながら、俺は確認の意味を込めて口を開く。
「そうだ、ウィル、本当にできるんだよな?」
「なんべんも聞くな、間違いなく身体の自由を奪う程度に威力は抑えてやる、本来なら、丸焦げにしても構わないと思うのだがな」
「まぁ、死なれたら困るのと、相手に気づかれたくないんだ。だから、一瞬で頼む」
「わかってるが、生憎とそんな微量の攻撃をしたことがないんだがな、威力は抑えるが、求める威力までは約束できないぞ」
ウィルの言葉に俺は慌てて、ガキの頃に買ったイタズラグッズの存在を思い出して“買い物袋”から取り出すことにする。
シャーペン型のそれをウィルに頼み、手の装備品を外してもらってから持ってもらい「痛いかもだが、上の部分を押してくれ」と伝える。
「よく分からないが、押せばいいんだな?」と押した瞬間“パチ”と音が鳴る。
当然だが、予想外の痛みだったのかウィルの口から「うっ!」と声が短く漏れると睨むような視線が向けられる。
「悪いが、これくらいの威力の電流を数秒流してくれるだけで構わないんだ」
「威力はわかった、だが、魔導具なら魔導具だと先に言え!」
ウィルに軽く怒られたが、準備が整うと俺達は行動を開始する。
指示通り、ロゼ君が水を吸い上げるように渦を作ると、空から雨のように騎士達に降り注いでいく。
ただの雨だと思ったのか、俺達の策略とは気づいていない様子で微動だにせず、守りを固めている。
そうして、降り注いだ水が次第に地面から浮いた状態で騎士達の周囲に広がっていく。
「ウィル、頼む! 絶対に数秒だからな! 十秒はダメだからな!」
「わかってる! しつこいぞ!」
ウィルが剣を構え、大会の時とは違う、小さな光を作り出すとロゼ君の力で伸ばされた水の線に電流を流していく。
「ぬぉ!」
「ひぎ!」
「あが!」
小さな悲鳴が一斉に響くが、それは本当に一瞬だった。普通に生活していれば気づかない程度の叫びが終わってみれば、横倒れになった大軍勢の姿があった。
「な、なんなんだこれは……」
「わからないよ、何これ、こわ!」
電気を流した張本人のウィルとロゼ君が同じような顔で俺を見つめてくる。
「小さな電流も、時間と状況が揃えば、まあ、こうなるよな」
俺がやったのは単純な話で感電だ。
ライターの着火装置くらいの電気でも数秒間流し続ければ、人間を気絶させるくらいの威力になる。
水場で鎧なんて着てたら、100%感電するだろうからな。
まぁ、石灰使うよりは、マシだろうから、人道的だよな?
ロゼ君に水をすべて霧散させてもらい、俺達はそのまま、王城まで進んでいく。
「パパ……でかい門だね……」
「ナズナちゃん……これ、パパ何人分だろ?」
何人分かは分からないが、取り敢えず、城門は強固で俺達の行く手を阻んでくる。
「こんな門など! このウィル・アクシオンの前では無意味だ!」
ウィルが剣を構えようとした時、背後から「やっちまいな!」とヴェルデが声を張り上げる!
「いいかい! 王城の門を破壊するチャンスなんて、中々ないよ! ギルド冒険者の底意地を見せてやんなァ!」
「おおぅぅぅう! ぶち壊せ!」
「姐さんに逆らったら終わりだ!」
「そうだ! 姐さんにやられるか、門を壊すかだ!」
そんな声に呆れるヴェルデが軽くため息を吐く。
「本当に手の掛かる連中だよ。たく」
そんな言葉に俺も内心で、静かに騎士を気絶させたのに見ていなかったなぁ、などと思うが、今はこの勢いがありがたい。
ウィルを置いてきぼりに、Bランク冒険者達が一斉に攻撃を開始した結果はまるで攻城戦のように門にヒビが入り、大斧や戦鎚により、門が破られる。
門を突破した時、俺達の視線に入ってきたのは、戦闘には不釣り合いなプヨプヨボディの貴族達だった。
剣を握る手は震え、引き攣った顔を見てみれば、明らかに俺達を恐怖の対象にしたように視線を向けている。
「き、キサマら、こ、ここをどこだと……」
聞きづらい声で必死にひり出したような声を放つ貴族に、冒険者達が荒くれ者らしい睨みを効かせていく。
「どこかだと! 構わねぇから、やっちまうぞ!」
「「「おおぉぉぉぉぉッ!」」」
裏切り者の貴族達が捕まる最中、城の方から重音を鳴らしながら、複数の人影がこちらに向かって歩いてくるのがわかった。
「やっとだな……やっとテメェをぶっ潰せるぞ! 料理やろう!」
「まじか、またかよ、ダミオ!」
俺を睨む視線と同時に向けられた戦斧、それを手にしたダミオがニヤリと笑っていた。
「我の力を見せてやる! テメェらをすりつぶして、二度と前に現れないようにしてやるからな!」
大会の時、同じように寄生鎧を身につけたダミオは既に、人間をやめてるように見える。
複数のパーツが鎧のように張り付いているが、不気味な虫の手足が見え隠れするそれは、本当に気色悪い。
ただ、俺を敵としていたダミオに対して、ウィルが前に出る。
「時間の無駄だ。奴の相手をしてやる。先に行け」
「まじか、わかった。ウィル、ありがとうな、絶対に負けんなよ!」
「当たり前だ、あんなダミオに負けるなどありえないさ」
その言葉に俺達は、城の中に向かって駆け出していく。
「待て! ここは通さ──ぐあ!」
「邪魔だゴラァ!」
「姐さんが通るんだから、邪魔すんなよ!」
ダミオが連れてきた重装兵を相手に暴れるBランク冒険者達が俺達に声を向ける。
「早く行け!」
「お前が始めた喧嘩ならしっかり決めてこいや!」
「あんた達、ありがとうな! 行くぞ」
冒険者達の声に背中を押され、俺達はアルノ・マーレが待つであろう、最上階へと向かって駆け出していく。
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