256話、警備兵団本部、娘達の覚悟
相手からしたら、突然の乱入者ってワケだから、後ろがガラ空きだよな!
娘ちゃん達の前で不意打ちなんかしないといけない事実が本当に悲しいよ、まったく!
「ぐぁ」
「なんだ! うわぁー」
俺とアクティが聖騎士に斬り掛かり、不意を突いた一撃に数名の聖騎士を戦闘不能にしていく。
ただ、相手も数が多いため、最初の不意打ち以降は、こちらにも剣を向けてくる。
だが、逆を言えば、俺達が聖騎士を相手してる間は、警備兵団と裏切り者同士がぶつかり合う構図ができ上がるわけで……
「ぎゃあ!」
最後の聖騎士が竜切り包丁の横薙ぎに吹き飛ばされて、意識を失う。
「安心しろよ。娘ちゃん達の前だから、手加減してやったんだからな!」
もちろん、強がりだ。むしろ、魚の皮を剥ぐ時に身を切らないかを気にする程度には緊張した。
分かりやすくいえば、鎧ごと相手をカットしないかハラハラで仕方なかった。
身まで巻き込まないギリギリを意識した人間相手の戦闘は本当に疲れるんだよな。魔物相手(ゴブリン以外)が楽だって改めて感じるな。
「さて、次だな。中に突っ込むぞ、アクティ!」
「はい、キンザンオーナー!」
──警備兵団本部──
王都の治安は本来、三分割されている。
一つ、王族騎士団による首都防衛。
二つ、教会聖騎士団による王都教会本部と王都の防衛。
三つ、警備兵団による各街の防衛。
本来なら、王都の鉄壁を作るべき防衛戦力が今は見るも無残だな……
本部前に倒れていた警備兵団の兵士に回復薬を手早く渡しながら、俺達は入口へと進み、扉を開く。
中には負傷した警備兵団の兵士が複数いて、中には重傷者も確認できる状況だった。
「こっちも酷いな……なんで、こんなことに」
そんな俺の呟きを掻き消すように通路の先にある曲がり角から明らかに警備兵団の装備とは異なる武装をした男達が姿を現す。
「なんだ! 表の奴ら、しくじったな!」
「逃がしたら、厄介だな、構わねぇから始末しろ!」
一斉に武装した男達が向かってくると、アクティが一歩前に出る。
鞘に手を伸ばし、柄を握った次の瞬間には、先頭の2人組がその場に倒れていた。
「弱いな、鍛錬が足りてないようだな?」
その言葉に次は槍を手にした細身の男が凄まじい突きでアクティを仕留めようとするが、そんな槍の先端に剣を当て、さらに弾いたその一瞬で槍使いを切り伏せてみせた。
正直、普通に戦ってたら、嫁ちゃん達といい勝負になるくらいの凄まじい剣撃に驚かされてしまう。
俺は嫁ちゃん達が規格外すぎるため、忘れがちだが、アクティは元警備兵団の団長でその実力は、比べたら悪いが知り合いの警備兵団、団長のブルーノより遥かに上だろう。
そうして、俺も戦闘に参加する最中、再度複数の鎧が擦れるような金属音が鳴り響いてくるのがわかった。
「新手か?」
「分かりません、ただ、こんな連中がいくら現れても相手にはなりませんが」
「心強いねぇ、なら、派手にやるか!」
さらに十数人の武装した男達が現れると俺達の行く手を阻んでくる。
正直、面倒くさいし、男に迫られるのは、本当にノーサンキューなんだよな!
ただ、そうしていると背後から突然──
「パパ達に」
「「触るなぁ!」」
そんな2人の声が聞こえた。
「私の弱い拳が外れたら……怪我しないかもだよ!」
「……【反転】、リーフちゃん! よわよわパンチだから、当たらないかもね……拳も無事じゃすまない……かも」
俺の真横を駆け抜けた美女が、鎧姿の男達、数人を纏めて壁へと吹き飛ばしていく。
まるで、突風が吹き荒れて、真横を掠めたような速度の先に、服が破け、あられもない姿の大人バージョンのリーフがいた。
「は、【反転】……解除……パパ、大丈夫?」
「よぅしぃ! パパ、大丈夫!」
俺は片手で目を隠しながら、もう片手で【ストレージ】からポワゾンの予備の服を取り出して手を伸ばす。
「あ、ありがとうな。パパは大丈夫だから、リーフ、服を着なさい……」
「あ、あぁぁぁぁ! ポワゾンママがくれたお洋服……壊しちゃった……」
ポワゾンが作った服を少し前まで嬉しそうにしてたからな……
「俺も説明するよ。大丈夫だから……」
「あ、あぁ、リーフちゃん……ナズナも謝るから、お、落ち着いて……」
緊迫感が消え去ったと同時に、俺は後ろから2人を追いかけてきたデジールに「服を任せた。あと、なんでこうなったんだ?」と聞いてみる。
「はぁはぁ、悪い……突然、2人がなんか決めたみたいで、そしたら、いきなり……リーフちゃんの姿が大人になって、2人が消えたんだよ!」
さっきの行動と今の姿は【反転】のスキルだよな……でも、なんでだ? リーフに与えた加護は使えないんじゃ?
「あ、あたしが……【反転】を使えるから……リーフちゃんと、話して……勝手に決めて……」
泣き出しそうに訳を話すナズナ。
「そうか、2人で助けに来てくれたんだな、本当は、危ないから叱らないとなんだけどな、嬉しいからありがとうしか、言えないな。2人ともありがとうな」
俺が残りの兵士に斬り掛かろうとした時、不意に影から「ふぁ〜終わったの?」とドーナが顔を出してきた。
突然のことに驚く俺、ただ、男達は悩まず剣を振りかざしてくる。
「マスターに、なにしてんの〜ッ!」
影から飛び出したドーナが無慈悲な大鎌を一振する。
壁が砕け、男達が鎌に攫われるように反対の壁に叩きつけられ、その勢いで砕けた壁から外へと弾き出されていく。
「まったくなの! マスターを襲うなんて、おバカさんなの! って、リーフちゃんが成長してるの! ナズナちゃんも泣いてるの!」
ずっと寝てたのか、ドーナは状況が分からないようで慌てていたが、俺からしたら、ドーナが知らずに俺の影で寝てた事実に感謝しかない。
「悪い、ドーナ、皆も改めて力を貸してくれ」
俺は皆からの返事を確認してから、奥に進むことにする。
リーフとナズナの行動には驚いたが、ドーナも加わった今なら、むしろ、一緒にいる方が安全だろうと思い一緒に行動する事にした。
道なりに進んだ先で、剣がぶつかり合う音と若干の火花が見える。
「ざけんな! 警備兵団の団長クラスをなめんなよ!」
聞きなれた声にホッとした。
「おーい! ブルーノ、大丈夫か!」
「あ、兄弟!?」
戦闘に勝利したブルーノが俺達の姿に豆鉄砲でもくらったような顔を向けてくる。
「ブルーノ、生きてたんだな。良かったよ」
「おう、それより、街の様子はどうなってるんだ、兄弟!」
俺は見てきたままをブルーノに話し、この警備兵団本部にやってきた目的も伝えることにした。
「そうか……そんな事に、兄弟も大変だったな。俺はあの声を聞いて、本部に来たんだが、蓋を開けたら、仲間割れみたいになっててな……街に出れなくてすまん」
「いや、ブルーノ……頼む、牢屋を見せてくれないか……俺の考え通りなら、戦力になる奴らがいるはずなんだ!」
「あぁ、ただ、俺は余所者扱いだから、鍵なんかの場所はわかんねえぞ?」
「案内だけで大丈夫だ。時間が無いから、頼む」
俺達はブルーノの案内で牢屋へと向かい、地下へと進んでいく。
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