251話、家族の時間 フライちゃんにご褒美を
賭け金騒動もヒヒ様と教会側の聖騎士達によって、しっかりと回収が終わり、すべてが問題なく進むように見えた。
俺達は関係者だが、その場にいると色々と面倒なので早々に退散した。
次はフライちゃんとの合流だな。今は優勝者として、王都の記者達と話しているが、合流する頃には終わっているだろう。
それにフライちゃんを連れて、早く帰りたいってのが本音だ。
俺達は良くも悪くも目立ち過ぎるんだよな。囲まれたり、声を掛けられたりでドーナやポワゾンも軽くイライラしてるのが雰囲気で分かるんだよなぁ……
そんな雰囲気を察して欲しいが、野次馬の皆さんは安全よりも好奇心が勝っているらしく、どいてくれる様子はない。
案の定、ポワゾンの行動を止めるのが、一瞬遅れてしまい、麻痺毒による被害者とドーナやミトからのリアル暴力でこちらも物理的な被害者が出てしまっている……
これ、問題になるよな……はぁ、しゃあないな。
「それくらいにして、フライちゃんに会いに行くぞ? それに大人しくないと晩飯抜きだからな」
「な、ご主人様……それは悪虐非道の極みですよ!」
「いや、ポワゾン、どこで覚えたんだよ、それ?」
軽くやり取りをしていれば、野次馬根性も鎮火したのか、絡んでくる奴らも減り始めてくれた。
と言っても問題になるのは避けたいし、今から警備兵団の屯所に連れてかれても敵わないので、しっかりと回復薬で犠牲者を回復してやった。
自業自得だが、嫁ちゃん達がやり過ぎたため、必要経費として諦めた。まぁ、賭け金で稼げてるから問題ないだろう。
やっとの思いで優勝者待機室と書かれた部屋の前にたどり着く。
フライちゃんが待つ部屋の前まで来たが、ここにも僅かながらの障害が立ちはだかる。
部屋を警護する見張りの兵士に止められた。
「止まってください。この部屋になんの用でしょうか?」
若い兵士さんと、年配の兵士さんが俺達を見て、槍でバツ印を作るようにして扉を塞いでくる。
フライちゃんの家族だと説明するが簡単には入れてもらえず、部屋の前で今も待機している。
「確認するまで通せません」
「今は誰も通す訳には行かないんです」と俺達を中に入れてくれる気はないらしい。
そんな兵士の行動と発言に嫁ちゃん達が顔を見合わせる中、ミトが一歩前に出る。
「おい? 妻に会いに来た旦那様を通さないってんなら、無理矢理通るのが砂鮫人族のやり方だ! 後悔すんなよ、見張り野郎ッ! ドーナ武器を頼む!」
「わかったの! ミトちゃんのハンマーを出すの〜!」
「待て、ミト──」と俺が口にした時には既にドーナの影から取り出した巨大なハンマーが兵士2人を扉ごと殴り飛ばしていた。
俺の嫁達は、改めて言うが、本当に喧嘩っパヤイ……壊された扉の先には、気を失った兵士さん達の姿があった。本当にすまん。
「あちゃ……なんで、そうなるかな」
頭を抱えた俺に室内からは、装備をしっかりとした複数の兵士から視線を向けられた。
室内を見れば、ルフレ殿下とメフィス、エオナ中佐と他数名の兵士さんがおり、フライちゃんは話の真っ最中だったようだ。
「きんざんさん? どうしたんですか」
「悪いフライちゃん、手違いってやつかな?」
当然ながら、兵士さん達が身構えるが、ルフレ殿下はそんな兵士を手を挙げることで動きを止めた。
「随分と乱暴な登場じゃのぉ? 余が居るというに、本当に呆れるぞ? そんなに奥方に会いたかったのか? キンザンも嫁には相変わらず甘いのぉ」
「騒がせてすみません。それより、なんで殿下が?」
「ふむふむ、余が奥方に会いに来たのは、まぁ明日の授与式について話をするためじゃ、メフィスとお主も明日は同じように参加してもらう予定じゃからな」
俺も3位に入っていた事実を思い出し、苦笑いを浮かべるが、メフィスがそれを見てニヤリと口角を吊り上げた。
「明日は晴れ舞台ですからなぁ、夫婦揃っての素敵な授与式になることを……いえ、お子様方に素敵な姿を見せて差し上げてください。我輩からすれば、フライが母親になるなど、今世紀最大の驚きですなぁ」
色々と茶化されてしまいながら、ルフレ殿下は「なんじゃ? キンザンに世継ぎができたのか!」と慌てていたので、いきなりだったがナズナとリーフの2人を紹介していく。
「なんと、可愛らしい娘じゃな! 余は、ルフレ・イルミネイトじゃ! このバッカス大陸王国の王にして、最強の防御を司る存在なのじゃ!」
ルフレ殿下がそう言うと2人が挨拶をする。
「よ、よろしくね……ルフレちゃん、あたしは、ナズ……ナ、ナズナだよ。パパの娘……だよ」
「よろしくお願いします。リーフです。ナズナ様と姉妹です」
「あ、リーフちゃん……ナズナ、で、いいよ……様はいらないよ」
2人が挨拶を口にするとルフレ殿下が俺に声を掛けてくる。
「さすがに娘と聞いて安心したぞ。余はまた、嫁として迎え入れたかと」
「冗談でも、良くないですよ、娘の前なんで、勘弁してください」
「そうじゃな、まぁ、話も済んだのでな、余は行くとしよう。メフィス、皆も行くぞ!」
ルフレ殿下が元気に声を出しながら去っていった。
そこからは、みんなで軽くお喋りをしてから、ヒヒ様が馬車を用意してくれた数台の馬車で屋敷に戻ることになった。
ヒヒ様って、変に気遣いしてくれるんだよな、あのギャンブラーみたいな性格からは信じられないが、本当に聖職者なんだよなぁ。
そして、屋敷に辿り着くと、一緒に馬車に乗っていたナズナとリーフが目を輝かせている。
デカイ門に広い庭、中庭もあるが、何より無駄にデカイ屋敷は子供心に色々とぶっ刺さるらしいな。
「すごい、たくさん……花が咲いてる」
「ですね、ナズナさ──ナズナちゃん! あっちにもありますよ」
2人が賑やかに走り回るので、ここはペコとグーの2人に任せることにした。
理由としては、ペコとグーが2人を見て、珍しくポワポワした表情を浮かべていたからだな。
普段は狩りにしか興味を示さない2人がそんな表情をしているなら、触れ合う時間、つまりは2人から見ても娘であるナズナとリーフと話す親子タイムみたいなのがあればいいと思ったからだな。
「2人とも、ペコとグー……いや、ママ達のいうことをしっかり聞くんだぞ?」
「はーい」「わ、わかった」
「「主様! あわわ、ママですか……」」
ペコとグーの二人は予想外の発言にびっくりしたんだろうな、そんな表情が見られたから、よきよきだな。
ナズナとリーフが駆け回り、それを追い掛けながら、花の説明をするペコとグーの姿、いい感じだな。
俺は屋敷の中に戻るとすぐに厨房へと移動する。
他の嫁ちゃん達は、屋敷の中でナズナとリーフの部屋をどこにするかや、シーツの準備と既に母親モード全開だった。
俺は今日の夕食を麻婆豆腐にするため、食材を取り出していく。
他にもラビカラや、もどき野菜でコールスローサラダなんかを作るつもりだ。
そうして、用意をしていると、不意にフライちゃんが俺の傍にやってくる。
俺にだけ聞こえるくらいの小さな声で「辛さは控えめでいいですよ」とつぶやいてきた。
「え、フライちゃん、具合でも悪いのか?」
「違いますよ! わたしが辛い物を食べている時に、2人にほしがられたら、あげられないじゃないですか」
「ふふ、フライちゃんから、そんな言葉が聞けるなんてな、なら、中辛と甘口で作って、後から辛さを足せるようにしとくよ」
「はい、あと……わたし、頑張りましたよね?」
「ああ、最高に格好よかったよ。惚れ直したくらいには輝いてたな」
そう言って、みんなにバレないようにフライちゃんの頭を撫でていく。
優勝パーティーは明日にして、今日の麻婆豆腐は最高に美味しくできたと思う。
家族の温もりってやつを改めて噛み締めてしまったな。
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2025/12/13二回目の投稿ですm(*_ _)m




