250話、ヒヒ様のわるだくみ?
試合が終わり優勝者が決定した。
ただ、授与式の準備があるため、本当の授与式は翌日になるらしい。
それも仕方ないだろう、なんせ、リングがメフィスの攻撃魔法とフライちゃんの錫杖でゴリゴリに削られ、見るも無残な光景が広がっているからだ。
そして、会場が未だに盛り上がっている理由とすれば、メフィスに賭けた大半の連中が財産を失い、絶望している事実とフライちゃんに賭けた連中は僅かな額が大金に化けたらしく大盛り上がりになっている。
まあ、俺やみんなも、疑うことなくフライちゃんに賭けていたため、大勝のハズだったが、まさかの元締めから──
「お願いします! 賭け金は倍で返しますから、勘弁してください」と泣きつかれてしまった。
俺が賭けたのは、金貨100枚(200万リコ)であり、本来なら賭けを取り仕切る元締め側からしたら、痛くもない額に感じる。
単純に言えば、二倍の支払いをしてくれるなら、構わない話なのだが、なんで俺に泣きついている連中がいるかと言うと少し前の話になる。
俺達はフライちゃんが優勝した事実を喜び、同時にミアから声がかけられる。
「オッサン、ボク達が賭けた分の賞金を取りに行こうよ」
そう言われ換金所に向かったのだ。
娘ちゃん達の手前、ギャンブルをしてる事実を見られるのは、なんか罪悪感があるが、娘ちゃん2人が家族になる前のことなので、仕方ないと自分に言い聞かせ、次から賭け事はやらないと、心で誓う。
「ひひひ、オッサン、実はさ、ボク達、全員でオッサンが三位になる方に賭けてた分の勝ち分をそのまま、フライに賭けたんだよね」
「そうなのか? そりゃ凄い額になってるんじゃないか?」
「だろうねぇ、まぁ、そこでヒヒの婆ちゃんにあったからさ、ボクとニアで話し合って、オッサンの買う分にも追加したんだよ。楽しみにしてなよ」
「そうにゃ〜! ニア達がた〜くさぁ〜ん、増額したのにゃ、キンザンは普段から金貨に執着がないから、少しびっくりしてもらうのにゃ〜」
話を聞けば、ベリーが普段から他の嫁ちゃん達にお小遣いという形で給料を渡していたらしく、今回はそこからも、恩返しの意味を込めて、俺の買うはずだった分に上乗せがされていたらしい。
「それで、いくら賭けたんだ?」
「ふふん、聞いて驚け! ボクの稼いできた冒険者時代の分も合わせて、金貨50枚だよ。どうせ貯めてても使わないしね」
「うにゃうにゃ、ニアは皆と同じで30枚出したにゃ〜」
ミアとニアがドヤ顔混じりの笑顔で俺に賭けチケットを渡してきた。
「なんか、悪いな、みんなが好きな物を買えばよかったのに……ありがとうな」
そんな会話をして辿り着いた賭け金の換金所は凄い勢いで暴言が叫ばれていた。
「金返せ!」
「あんなのありかよ!」
「ふざけんな!」
「飯食べたいよ〜」
「生きてけねぇ」
そんな多くの叫び声が交差していた。
割合で言うなら、喜び二割、恨み節八割という雰囲気だろう。罵倒や殺伐とした声は正直、頗る教育に宜しくない雰囲気になっていた。
ただ、俺達が傍まで歩いていくとすぐにそんな声はピタりと静かになり、大半が視線を向けてきていた。
まぁ、当然だよな……なんせ、ウチの嫁ちゃん達、試合で顔がモロバレだしな……
「おい、見ろよ……あれって、ポワゾンさんだよな?」
「ミアさんもいるし、ニアさんまでいるぞ?」
「あの男はなんだよ、チッ、女はべらせやがって」
「女に働かせて、金稼ぎかよ、情けねぇなぁ?」
色々な声が聞こえできたが、取り敢えずスルーだな。
喧嘩は2人の教育に良くないからな。うんうん!
「謝れ……パパに舌打ちした人……謝れ!」
「そうです、ナズナ様の言う通り、です……」
まてまて! なんでウチの子達が、喧嘩売るかな……
言われた側も、賭けに負けたからなのか、前に出てきてるし!
「なんだ、チビ? お前の父ちゃんが情けないから、情けないって言ってんだよ!」
前に出てきたのは、冒険者だろう防具を身につけた大柄の男で、腰巾着が数人おり、本当にこの世界は世紀末みたいな奴がたまにいるが、勘弁して欲しいなぁ。
「パパは……強い、アンタなんかに負けない……」
それでもナズナは引かないようで、俺の服を掴みながら、しっかりと俺のために声を上げてくれている。
「ナズナ、リーフ、ありがとうな……みんな、2人を頼めるか?」
らしくない言葉だが、俺なりに父親ってやつを見せたいって思う。いや、本来はこんな形の父親なんてダメなんだろうが、娘にカッコイイ姿を見せたいって思っちまったんだよな。
「【ストレージ】……魔物包丁、さて、本気でやり合うって意味でいいんだよな?」
わざと、魔物包丁と口に出して、【ストレージ】から魔物包丁と黒騎士のヘルムを取り出して、頭に被る。
当然、鎧なんか着てないが、それでも黒騎士のヘルムに巨大な魔物包丁を見れば大会を見ていた奴なら、気づくだろう。
「嘘だろ、黒騎士……ひぇぇ!」
「待ってくださいよ、うわぁぁぁ」
3位になった黒騎士が目の前にいたら、チンピラ連中が蜘蛛の子を散らすように引いてくれた。
娘2人に嫁ちゃん達からも「パパ凄い」と「やるじゃんか、オッサン」と暖かい言葉が掛けられる。
そうして、換金所でチケットを渡したのだが、俺のチケットを見た換金所の男が青ざめた顔で土下座を始める。
「すみません、どうか! 賭け金の払い戻しと謝罪料で許してもらえないでしょうか!」と頭を下げられる結果になった。
とりあえず、理由を尋ねると、渡したチケットの賭け金は金貨で5500枚という馬鹿げた枚数だと分かり、俺も嫁ちゃん達も唖然としてしまった。
そんな俺達の横から、不気味な笑い声と共にヒヒ様とデジールがやってきた。
「ひひひ、面白い結果になっただろう? アンタが屋敷を買った際の5000枚を勝手に使わせてもらったよ」
「え、どういうことですか……それって」
「安心しな、屋敷をタダにするってルフレ殿下が言い出してね。ただ、アンタは素直に受け取らないだろうから、ならアンタの愛する嫁に賭けてやったのさ──確か、倍率は33倍だったかねぇ?」
ヒヒ様が大会中一番悪い顔をした。
それと同時に俺も頭をフル回転させる。
金貨5500枚✕33倍……181500枚、一枚が2万リコだから、36億3千万リコ……って、馬鹿な数字じゃねぇか!
「その顔、やっとわかったみたいだねぇ……さて、アンタら! 賭けを取り仕切る元締めが聞いて呆れるよ! さぁ、大人しく出せるもん全部吐き出しな!」
「いや、ヒヒ様……それは横領ってやつじゃ?」
「ふん、金貨が溶けたら、アタシの財産から返す予定だよ。ほれ、ルフレ殿下のサインがあるだろ?」
確かに、存在するルフレ殿下のサインに俺は改めて、この世界の変にガバガバな部分を垣間見た気がした。
俺は賭け金の回収だけでよかったんだが、聖職者とは思えない銭ゲバなヒヒ様が元締めからむしれるすべてを奪っていく。
「なんだい、まったく、全財産差し押さえても、ギリギリ足りないじゃないか? 足りないとなると、規約違反だねぇ……さて、どうするか」
「お願いします! 屋敷の権利書も、財産も、もう出せるもんなんかありませんから!」
ヒヒ様に慈悲を求める元締めの頭、ただヒヒ様は優しく微笑む。
「爵位があったねぇ? よこしな!」
俺はナズナとリーフの視線にやり取りが入らないように両手で2人の視界を塞いだ。
ちなみに、ペコとグーが2人の耳を塞いでくれている。
そうして、元締めは大会で稼ぐはずが、すべてを失うことになった。
どうやら、この元締めは、王国の反対派貴族の資金源だったらしく、余罪が出ないため、手を焼いていたらしいが、俺への賭けの賞金を払わせる名目でヒヒ様が暴れたらしい。
ヒヒ様は、俺に爵位と屋敷以外のすべての権利を渡してきた。
まあ、屋敷は既に王都とバリオンにあるため、これ以上は必要ない。
結局、俺は大量の金貨だけを受け取り、他の魔導具や装飾品は全てヒヒ様に任せ、売却額を孤児院などの寄付に使うようにお願いした。
蓋を開けてみれば、俺は最後まで、ヒヒ様に使われてしまったようだな。
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2025/12/13 休みで何話か書いたので出させて頂きます。よろしければお付き合いくださいm(_ _)m




