249話、素直な報告、娘二人と嫁ちゃん達の顔合わせ
俺は悩んでいる……可愛い娘ができた。幸せな日々になることは間違いないだろう。
ただ、今回も、俺が1人で決断してしまった事実が問題なのだ。
今回も嫁ちゃん達に相談なくやらかしてしまった事実は間違いないだろう。
エトランジュの奴が急いで決めさせた理由も、多分ここだ。フライちゃんが理由を知れば、間違いなくエトランジュに怒りの拳を振るうだろうしな。
「よし! 2人とも、行くぞ」
俺は医務室にいるヒヒ様やエトランジュ達に挨拶を手早く済ませると、2人を連れて部屋を出る。
「行くのかい?」
扉を開くと同時にヒヒ様から声を掛けられた。
「はい、親になったなら、早く話さないとなんで」
軽く頭を下げてから俺達はすぐに歩き出していた。
そう、既にエトランジュにより、俺は2人の管理者こと、保護者として女神の名のもとに繋がりを作っている。逆に言えば、2人を今更どうこうする気もないので無駄な契約にも見えるが……そこは天界に色々と制約があるらしい。
「あ、あの……本当に、ナナカ……じゃなかった、ナズナは、家族に……なれた?」
「私も、うう、リーフも、なれた?」
やはり不安なのか、ズボンを掴みながら質問をしてくる。
歩きづらいことを除けば、可愛すぎる光景だ。
「大丈夫だよ。新しいママ達を紹介するから、心配しないでいいよ。多分、なにかあるとすれば、俺にだからさ、はは……」
そうして、俺は2人の娘達、ナズナとリーフを連れてベリーの屋台まで急いで向かう。
当然ながら、俺が小さな子を2人も連れて帰るとベリー達が何があったのかを聞いてきた。
「実は……」
俺は嘘なく、すべてを話していく。
説明が終わると最初にベリーが俺に詰め寄ってきた。
「あのね、キンザンさん……私は足がなくなろうが、店の経営が杜撰だろうが構わないのよ。ただね、ただよ! いきなり、子供を連れて来るのは予想外なんだけど!」
そう言いながらもベリーは2人に視線を向けると、すぐに屋台に戻ってしまった。
「あ、あの……やっぱり、あたし……嫌われてるよね……」
ナズナがそう口にして「やっぱり」と言葉を続けた瞬間、ベリーが慌てて戻ってきた。
「はい。ウチの子になるなら、この味を覚えなさい。私達は食べ物を売ったり作ったりするのよ。どうせ、キンザンさんは、説明なんかしてくれてないでしょ?」
ベリーが持ってきたのは、小さくカットされたラビカラだった。
冷ます目的と食べやすくするためだろう。カットされたラビカラを見ながら、ベリーの言葉に俺はやっぱり、色々と抜けてるんだなと再確認した。
そうして、ベリーが2人にラビカラを差し出すと、次はミアが「あ、つけダレも出してやれば?」と声をかける。
「なら、マヨマヨがいいにゃ〜。あの味は最高だにゃ」
ニアも参戦すると結果的に、ペコとグーがマヨネーズを小皿に乗せ、一緒に水を2人に持ってくる。
「「はい、どうぞ」」と優しそうに笑う。
結果、思った以上に嫁ちゃん達はナズナとリーフを受け入れてくれた。
2人はナギの大きさにびっくりしたり、ミトのギザギザの歯に触ろうとしたりと、本当に興味に対して、全力だった。
「なんか、心配した俺が一番情けないな……」
「オッサン、今更だって、それにさ、ボクからしたら、オッサンが決めたなら、間違いないと思うしさ。娘が2人なんて、楽しみじゃない?」
「ん? ミア、何が楽しみなんだ」
「だってさ、こっから先、誰かが、子供を産んだ時にさ……お姉ちゃんがいるわけで、それなら、子育てにもいいかな……なんて」
ミアの不意打ちの発言に俺まで真っ赤になってしまった。
そんな会話にポワゾンが口を挟む。
「ご主人様、今は娘ですが……将来は分かりませんよ? 嫁に行かれることも忘れてはいけません。父親になるという事実は同時に送り出す存在になるということですから……」
「いきなり、現実に引き戻すなよ……ただ、確かにな……」
2人が成長して、嫁に行くことを考えた瞬間、急に寂しさがやってくるんだから、親になるって言葉は本当に凄まじいと思う。
俺がいきなり親になったからなのか、本質的に子供を持ったことがないからなのか分からないが、2人の親になると決めてから、一時間も経たずに嫁に行く事実を考えてしまう俺がいるのだから不思議だ。
そうして、フライちゃん以外の嫁ちゃん達にナズナとリーフを改めて娘にした事実が受け入れられた。
一方でこの事実を知らないフライちゃんは今、正にリングにいた。
メフィスと向かい合い、両手を伸ばす仕草をして、かなりリラックスしているのが俺達の位置からも見てわかる。
そんなフライちゃんが俺達の方に視線を向けたと同時にナズナとリーフが俺にしがみつき、膝に座ってくると、リングにいたはずのフライちゃんが突然視界から消えた。
次の瞬間、俺の目の前に現れたフライちゃんが笑みを浮かべて質問を投げ掛けてきたのだ、ただ、笑顔なんだけど、笑ってない笑顔? って、やつで……
「きんざんさん。なんですか……この子達は? なんで、神力で繋がってるのか、説明してもらってもいいですかね?」
「えっと、色々あって、娘が2人できました……」
「……え? 誰のですか」
「2人が俺の娘になりました……」
「えっと、本気ですか? また、わたしが知らない間に……あなたって人は……なんでそうなるんですかねぇ」
頭を抱えるような様子に俺が「なんか、ごめんな」と口にしてから話し続ける。
「俺は2人を見捨てられなかったし、2人が俺を選んでくれたから……だから決めたんだ。フライちゃんにも許してもらえたら嬉しいんだけど」
そんな会話を不安そうに見つめる2人が俺にぎゅっとしがみつき、シャツには強く握られたシワができていく。
「わかってますよ。ただ、相談なしにまたやらかしたことは怒ってますからね? あと、2人も娘ができたなら、しっかりしてください! わたしも、娘ちゃん達のために勝ちますので、2人ともゆっくり話をしたいですから」
「ゆ、許してくれるのか?」
「何を今更? きんざんさんが、優しくて年齢や種族関係なしで、たらしなことは今に始まったことじゃないですから、嫁より娘として受け入れてるから許すんです。“嫁として”なんて、言ってたら、ハサミでチョキン! と、してますよ、まったく」
最後に俺の大切な部分にヒヤッとする感覚を与えたフライちゃんはナズナとリーフに微笑む。
「わたしはアナタ達のママとして、勝つので、きんざんさん……いえ、パパが、浮気しないように見張っててくださいね」
「あ、はい……見張ります……」
「ママ達以外についてかないように、つかまえとくね」
そうして、フライちゃんは、リングに戻っていくと、先程までのリラックスが嘘のように素人から見てもわかるような闘志をみなぎらせていく。
既にリングで待っていたメフィスも同様に見えたが、試合が開始されるとそれは圧倒的なものだった。
メフィスが複数の魔法を使いフライちゃんの動きを阻害し、大火力の炎弾を放ったが、そんなメフィスの攻撃を軽く錫杖で弾き、試合開始位置から動かずに圧倒していく。
「ふざけてるんですか! フライ!」
「ふざけてなんていませんよ。メフィス、わたしは強い母としての背中を見せているんです!」
その会話にメフィスが固まる。実際に動きが止まり、人差し指を力なく伸ばしている。
「いやいや、アナタに子供なんていないでしょうに……何を言っているのですか……」
そんな時、俺にしがみついていた2人から「せーの」とリーフの掛け声が入り、同時に──
「「ママ頑張って!」」と小さいながらに強い意志のこもった応援が入る。
次の瞬間、メフィスの顔面に錫杖が炸裂する。本当に一瞬の出来事だった……
メフィスはその一撃で吹き飛ばされ、場外ギリギリで停止するが、フライちゃんは悩まずに再度猛攻を掛ける。
防戦一方のメフィスはそこから、魔法やスキルを使うタイミングすら与えてもらえず、最終的にフライちゃんの拳が決定打となり、あっさりと試合が終わりを迎えた。
会場の誰もがフライちゃんの強さに驚き、勝利した瞬間に立ち上がり歓声と拍手が鳴り響く。
そんなフライちゃんは俺達に向けて、ピースをすると、2人も嬉しそうにピースをしていた。
優勝決定戦でありながら、フライちゃんという、チートな嫁は、期待を裏切らないんだから、本当に凄いよ。
俺は帰ってから、何を作ってお祝いするかを考えながら、にっこりとフライちゃんに笑みを向けていた。
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