247話、ラーメンの後にデザートを。どら焼きの思いとエトランジュの囁き
4人でラーメンなんてのを、まさかの神様の待合室みたいな場所で食べたあとは、“買い物袋”からフルーツポンチの袋パックを取り出して、デザートとして食べて出していく。
「す、すごいよ……さっきのラーメンも綺麗だったけど、こ、これも、凄く綺麗」
「そうですね、器もスケスケで、色が見えてて、形も……ナナカミ様、これは……凄すぎです!」
硝子の器にフルーツポンチを入れて、サクランボを添えたあたりからリーフとナナカミの2人は俺の傍から離れず、ずっとズボンを掴みながら、驚き賑やかになっている。
「はぁ、本当にアンタって、仕掛け箱みたいなやつね……なんか、私……アンタに文句言うの怖くなってきたんだけど」
辛口混じりのデジールもそんなことを言いながら、器が4人分あるかを確かめ、3つしかないことに気づいて、少し心配そうなのが笑えてしまう。
デザートは女性3人のために用意しているから、まぁ3つなんだが、デジールは自分の分がないと思ってるのか、拗ね始めている。それもまた、可愛らしく感じてしまう。
「ほい、3人とも食べてくれ、俺は珈琲と一服だから、少し離れるよ。煙が嫌だって言われたらあれだからさ」
そう言い、目の届く位置で煙草に火をつけていく。
習慣とは恐ろしいもので、食後の一服があるから、毎日頑張れるなんて人も意外にいるんじゃないだろうか、まぁ俺も食べたら吸いたくなるため、そんな1人なんだろうがな。
俺の視界に映る3人はキラキラした笑顔でフルーツポンチのゼリーや小さくカットされた果物を味わってはスプーンを天高く伸ばしたり、体を小刻みに動かして、喜びを表現している。
デジールも明るい顔で味わっているし、逆に席を外して正解だったな。
タイミングを見計らい、2本目の吸い殻を“リサイクル袋”へと入れてから、缶コーヒーの最後の一口を飲み干していく。
俺が戻ると綺麗に空っぽの器と満足そうな3人の笑顔があり、食器やらを【ストレージ】にしまってから、俺は話し合いを開始する。
話し合いをするにあたり、しっかりと飲み物としてジュース(甘いオレンジのヤバイース)を用意しておく。
そうして、始まる話し合い、少し警戒や緊張が解れたのか、ナナカミは俺を見つめてから、質問に答えてくれている。
質問の内容だが、今はナナカミが何をした罪で管理者を辞めなければならなかったのか、その部分について聞いていく。
「……あたしがしたのは……リーフへの干渉、でも、あのね……後悔とか反省しなかったから……もっと怒られて、管理者を剥奪された……」
「リーフへの干渉って何をしたんだ?」
質問にリーフをチラッと見たナナカミ、リーフも自然とナナカミを見てから、頷くと弱々しく小さな声で教えてくれた。
「リーフは、1人だった、から……あたしが見つけた時、下を向いて、雨に打たれてて、震えてて……」
出会いの部分の話をまとめるとこんな感じか?
フライちゃんの後任に選ばれたナナカミは、世界を知ろうと複数ある大陸から、バッカス大陸を選び、街や人を見ていた。
そこで、雨の中、1人震えるリーフを見つけて声を掛けてしまった。
ただ、この行為はナナカミの立場だとNG行為だったようで、天界側から注意をされたらしい。
早い話がリーフを助けても無意味だと言われたようだ……
それでも、ナナカミはリーフを見捨てられなかったらしい。
本来は次の転移と転生が始まる数百年を静かに過ごし、世界を見て見ぬふりをしないとならない事実を破り、リーフに神託を与え、眷属化をしてしまった。
それが原因でナナカミの本体は天界に連れてかれてしまったようだ。
「1つ、いいか? ナナカミの話はわかった。なら、本体は今、どうなってるんだ」
「ほ、本体は……既に、新しい神に転生させられてる……あたしみたいな、名も無き神は……罪を犯したら、そうなるのが決まりだから」
その言葉に怒りが芽生えた。少なくとも、ナナカミは、なんにも悪いことをしていないじゃんか、人助けが罪だってのか……
「俺には納得できない話だよ、本当にさ」
「ううん……神ってね、助け過ぎたらダメなの……優し過ぎたら世界が壊れるから……でも、リーフをね、見捨てられなかった」
そこまで話すと、我慢していたリーフが俺に向けて声を掛けてくる。
「ナナカミ様は悪い女神様じゃありません……私がお腹を空かせた時にパンをくれました……
雨が冷たい時に頭に布を掛けてくれました……
寂しいって言ったら……ずっと傍にいてくれました……」
泣き出してしまいそうに、小さく必死に訴える声、俺は2人の頭を両手で撫でていた。
「わかってるから、大丈夫だから、いっぱい話してくれて、理由がわかったから俺は嬉しいよ」
今回ばかりは、デジールも何も言ってくる気はないらしい。
そうして、落ち着かせた後、俺は別の質問を問い掛ける。
それは、リーフのスキルや姿についての質問だった。
「それは私から話します!」とリーフが説得を開始した。
「私が、ナナカミ様を認めてほしくて、力を望みました。キンザンさんが私と戦った時の【反転】がその力です──」
リーフが教えてくれた【反転】の内容は言葉を裏返す力、ただ、これには思い込みの力が必要になるらしく。
強く願えば願うほど、強く反転するし、思いが弱ければ、効果は弱まるらしい。
冷静な相手には不向きなスキルであり、強い気持ちがない人にもあまり効果はないらしい。
狼人族のウルグが精神まで幼くなった理由を考えてしまうと、“強く立派な女戦士”という気持ちが裏返った結果だったんだろうな。
「私が無理を言って、ナナカミ様は私のためにスキルをくれただけなんです……だから、ナナカミ様は悪くないんです」
「まあ、わかるよ。今のリーフを見てたら、あの姿もスキルの力なんだろうし、性格も違うしね」
そうして、リーフとナナカミの話を聞いてから、最後の質問を聞いていく。
「2人に質問だ。俺達と一緒に帰らないか? もちろん、2人に寂しい思いなんてさせないからさ」
そこまで言って「おい、いいのか?」と、デジールが困惑した表情で聞いてきた。
「大丈夫だ。俺からしたら、2人を残して行くとか、1人だけ残すなんてしたくないんだ」
リーフとナナカミは悩むように互いを見つめていたが、不意に俺へと聞いてくる。
「本当に、いいの……リーフと一緒にいられるの?」
そんなナナカミの声に俺はしっかりと頷いた。
そうして、2人の説得が終わり、最後の問題だ。
「さて、どうやって、帰るかな?」
そう、俺達は帰り方を知らないのだ。
ただ、そんな時にデジールが不意にガクッと揺らめいた。
「おい、大丈夫か!」
「大丈夫ですか……ナ、ナナカミ様」
「あわわ、この感じ……」
リーフが心配そうにデジールを見つめ、ナナカミが怯えている。
そうして、デジールが立ち上がると、その雰囲気が別人になっていることに気付かされる。
「あら、キンザンさんたら、説得できたみたいね? さて、話を聞かせてもらう前に、こっち側の言いたいことを言わないとなのよね?」
口調が変わり、鋭い視線を向けるデジールに俺は問い掛ける。
「エトランジュか?」
「あら、キンザンさんたら、さすがね? デジールと鎖を繋いでたでしょ? キンザンさんが帰りたいって考えたら、アタシに伝わるようになってたのよ」
「あの鎖、そんな理由だったのかよ……最初に説得しろよな?」
「悪かったわよ。それより、なんでアナタに2人がしがみついてるわけ?」
俺はエトランジュに2人を連れて行きたい事実を伝えることにした。
「はぁ……アンタねぇ、何言ってるかわかってるわけ? 本当に信じらんないわね……本気なのかしら?」
「本気だ。今の管理者のエトランジュなら何とかできるだろ」
「できなくはないけど、アタシが何を考えてるか、全部素直に受け入れると思うわけ?」
俺は“買い物袋”に手を伸ばし、“どら焼き”を両手いっぱいに取り出してから再度頭を下げる。
その行動が理解できないのだろう、リーフとナナカミは不安そうに俺達を互いに見ていた。
「ふっ、はは、どら焼きね……本当に、裏がないのね、こんなにあっさり信じてあげるのは最初で最後よ? あと、ナナカミは、消させてもらわないとならないわ、これだけは悪いけど、確定なのよ」
デジールの姿をしたエトランジュの言葉に俺は両手を伸ばし、2人の前に身構えていた。
昨日は体調不良で0時に更新が出来ず、すみませんでした。夜にまた更新予定で書いていますので、読んで頂ければ幸いです。
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