246話、温かいひとときは親の味
体調不良で、0時前に更新しました。すみません。
俺とデジールの前に姿を現した黒フードの少女に視線を向ける。
何を話すべきだ? とりあえず、誰が話を聞くべきか……ただ、デジールみたいに、いきなり話しかけて冷たい視線を向けられたり、不審者扱いされても面倒なんだよな……
「おい、き、聞いてるのか、リーフに……ち、近づいたら、ゆ、許さないからね!」
黒フードの少女は俺達、もしくは俺を完全に敵扱いしてんだよなぁ……
「あのさ、自己紹介からしていいかな? 俺はキンザンだ。こっちはデジールって言うんだ」と試しに声を掛けてみる。
「え、えっと、名前は……ナナカミ……だよ」
小さいながらもしっかりと名前を教えてくれた。コミュニケーションが取れるなら何とかなる気がする。
ただ、問題は、会話が続かないことだった。なので、まずはリーフとの関係を聞いていくことにした。
「俺達は、目覚めないリーフが心配でここに来たんだ。ナナカミちゃんでいいかな? 良かったら、リーフとどんな仲か教えてくれないかな?」
「……あ、リーフは、その、あたしの大切な信徒──うぅん、友達だと思ってる……あたしは……」
確かに、信徒って言ったな、名前からわかってたけど、この子が名も無き神様ってことなんだろうな。
「そうか、ならリーフもそう思ってると思うよ?」
「そ、そうかな……でも、怖いの……あたしのせいで、リーフが、リーフがね……」
泣き出しそうな表情に俺は咄嗟に頭に手を置いていた。ビクッと体を震わせたナナカミを優しく撫でていく。
「ゆっくりでいいよ。話してくれたら嬉しいし、ナナカミちゃんの話を聞きたいからさ」
「あ、あの……ナナカミ……で、いいよ……やじゃなかったら……」
「ありがとう。なら、ナナカミって呼ぶよ。改めてよろしくな」
「うん、よろしくね、キンザンしゃん──!」
あ、噛んだ……いや、気にしないのが一番だよな。聞こえないフリだな。
「よろしくな、ナナカミ」と笑顔を向ける。
俺がスルーしたことで、何かが引っかかったのか、チラチラと俺に視線を向けてくる。
「キ、キンザンしゃん?」と今度はわざとだろう、しっかりと呼ばれて俺は普通に「なにかな?」と反応する。
何が嬉しかったのか分からないが、突然パァッと明るい笑みを浮かべてくれた。
そんな様子を見ていたデジールが俺に酷く冷たい視線を向けてくる。
「この子供たらし……警備兵団に突き出してやるからね」
「待て待て、酷くないか? 俺を犯罪者扱いするのは、マジにやめてくれ」
俺達の会話を聞いていたナナカミがデジールに視線を向けて、グッとフードの裾を掴むと声を出した。
「あ、あたしは、子供じゃないよ……だって、もう、ずっとずっと、生きてる……ずっと1人だったから、百年くらいから、数えなくなったけど……2人よりお姉さん……だよ」
デジールが訳が分からないといった顔をしているので、小さく「エトランジュと同じ女神様だよ」と耳打ちする。
それがいけなかったのか、ナナカミが「秘密の話……仲間はずれ……」と下を向いてしまった。
「仲間はずれじゃないよ。デジールにナナカミがお姉さんだって教えてあげたんだよ」
「ほ? 本当に……仲間はずれじゃない?」
俺は視線を合わせながら頷く。
ここまで話して、ナナカミが話に聞いていた悪い女神ってことが本当なのか、分からなくなってしまっている。
「ナナカミ、リーフにも友達になれたことを教えてあげたいんだが、ダメかな?」
少し悩みながら、ナナカミがリーフに視線を向ける。
「……ねぇ、キンザンしゃん? リーフが目覚めたら、帰っちゃうんだよね……」
この質問の答えを間違えば、きっとナナカミは俺達への心を閉ざしてしまうように感じる。
だからこそ、俺は嘘をつかずに素直に話す選択をした。本当なら落第点の答えだと自分でも思うが、嘘をつくより100倍マシだ。
「リーフを連れて帰りたいな、それは間違いないよ。それにナナカミも一緒に連れ出したいかな」
「え、あたしも……本当に、あたしも行っていいの……」
「泣きそうな顔はズルいぞ。リーフもナナカミも1人は寂しいよな、だから2人とも連れて帰るつもりだよ」
「──わかった……あたし、キンザンしゃんを信じるよ、信じるから、裏切らないで、ずっと1人だったから、リーフといたいの……みんなといたいの」
「大丈夫だよ、一緒にいよう。だから、信じてくれて嬉しいよ」
話が決まり、頭を優しく撫でてから、リーフの鎖がナナカミによって解除されていく。
鎖から解放されたリーフがゆっくりと目を開く。
「あ、あれ……ナナカミ様、と誰ですか?」
「分からないか、これを見たらわかるか?」
俺は【ストレージ】から黒騎士のヘルムを取り出していく。
リーフの顔が青ざめ、身を震わせた。
「あ、待ってくれ、俺達はリーフ、君を目覚めさせたいって思って来たんだ。焦るだろうが、話を聞いてくれないか?」
「私を殺しに来たんじゃないんですか」
「違う違う、落ち着け、本当に怖いことを考えるなよ」
そこからは、リーフを落ち着かせて、ナナカミが笑顔でリーフに俺達と友達になったと話していく。
ある程度の時間が過ぎた時、リーフから急に腹の虫が鳴き出した。
全員の視線がリーフに向くと恥ずかしそうに真っ赤になる顔と視線が重なってしまった。
「……また、キンザンさんに、恥ずかしい姿を見られました……私はなんで……」
落ち込むリーフの姿、試合でのやり取りを思い出して、さらに罪悪感が溢れ出したため、俺なりのやり方で解決することに決める。
「まぁ、腹が空くよな。なら飯を食べるのが一番だよな」
全員が何を言っているんだ? みたいな顔をしてきたが慣れっこのため、俺はお構いなしに【ストレージ】から調理器具や魔導具、折り畳みテーブルと敷物を取り出して並べていく。今回は魔導コンロを使うことにする。
これはルフレ殿下が屋敷に用意していてくれた便利魔導具だ。
魔導コンロに大きな鍋を置いて、湯を沸かしていく。
お湯が沸騰してきたら、“買い物袋”から袋麺を取り出し、茹でていく。まぁ、腹がすいたら、カップ麺でも良かったが、人数的にカップ麺より袋麺の方がいい気がしたので許せ──カップ麺よ。
キャベツもどきをザク切りにして、一緒に茹でていき、麺が軽くほぐれたら、人数分の卵と、同時にウィンナーを入れていく。
ひと煮立ちしてから、スープの袋を混ぜ、水を足してやる。
水を足した理由は熱すぎて火傷したら嫌だからだ。俺の親がよくやってくれたやり方なのでお湯は最初少なめにしてある。
器を【ストレージ】から取り出し、分けて盛っていく。
ウィンナーは2本余るので、半分に割り、みんなで味見として食べていく。
「キ、キンザンしゃん、これ……お、美味しい……至福の味がする」
「ナナカミ様、これが至福なんですね……私、初めて食べました 」
「確かに、美味い……普通の腸詰めと違って、生臭くないし……なんだよこれ!」
各自、素敵なコメントをありがとうだな。さて、最後の仕上げだな。
最後に刻みネギパックからひと摘みの彩りを加えてやる。皆が大興奮で騒ぎ出していたから、落ち着かせたが、完成した“俺の家ラーメン”を見せたら、さらに騒がしくなってしまった。
テーブルに並べたラーメンを4人で座り「いただきます」と食事を開始する。
ちなみに皆フォークで美味そうに食べていき、半熟玉子が割れた瞬間は喜び、キャベツもどきの甘さに感動したりと、本当に賑やかなラーメンタイムになった。
美味そうに食べてくれる姿に、ラーメンの修行をしとけば良かったかもな、と欲張りなことを考えてしまったのは内緒だ。
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