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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
9章 女神の遊技 不始末の照らす先へ

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243話、まさかの共闘? 三位決定戦・下

(夕方に投稿した分になりますm(_ _)m)

 ウィル・アクシオンは俺達が手を組むことを理解してなのか、再度、両者を狙える位置に移動していた。


 さっきまで視線だけを向けていたデジールが不意に声を掛けてくる。


「アンタ、本気で私と手を組む気?」


「え、そのつもりだけど、そっちも、雷が相手じゃ、守りきれないだろ?」


 俺は不思議と返事を返してしまった。


「調子狂うなぁ、組むならエトランジュ様のことをなんでアンタが知ってるかも話してもらうからな」


「なら、お前が負けられないって言ってた理由も話してくれるか? それってエトランジュさんのためか?」


「……話はあとだよ!」


 俺達が軽く話している間にウィル・アクシオンが馬鹿みたいな魔力を剣に集めていく。


「あれ、やばくないか……」


「最初より、かなりヤバそうね……」


 魔力を貯め終わったのか、ウィル・アクシオンが勢いよく振り払う。


 再度の稲妻が巨大な雷を放ち、迫るが俺は相手が稲妻なら……まぁ、なんとかなる気がしていた。


「デジール! いくぞ!」


「え、は! あぁもう!」


 俺はすぐに走り出していた。最初同様に【ストレージ】から複数の金属を取り出すと轟音を放つ雷に向けて投げ放つ。


 ウィル・アクシオンの稲妻が自然の雷だったら、こんな無謀な策は無意味だっただろう。


 ただ、初撃であの雷は中華鍋が触れた瞬間に降り注ぐ落雷に変化した……つまり、触れたら落雷になるスキルって話だよな!


 金属製の調理器具を投げようと思っていたが、中華鍋をダメにした時に、やはりズキッとしたため、俺は今回もボコボコの黒鎧を使わせてもらう。


 バゴン! 落雷が一斉に降り注ぎ、俺の考えが正しかったことを改めて確認できた。


「よかった……」


「は! アンタ、自信なかったわけ!」


 デジールは俺にツッコミを入れられるくらいには、余裕があるらしいから、まぁ大丈夫だな。


「頼みがある! アイツのいる場所に大量の水を出してくれないか」


「あ? なんでだよ、そんな大量の水を出したら、私だって、まさか……アンタ、私の魔力切れも狙ってるの!」


「違う、あぁ! 説明が面倒だから、これもやるから!」


 俺は手早く【ストレージ】に手を突っ込むと、魔力回復薬を取り出して渡していく。


「回復薬をやるから、頼む!」


「わかったけど、裏切ったら、許さないからな!」


 落雷を再度放つためにウィル・アクシオンがスキルを発動する僅かな隙にデジールが大量の水弾を次々に放っていく。


 水弾の嵐に、ウィル・アクシオンはスキル発動を中断すると、すぐに回避に入る。


 ただ、俺達側にこないように俺は俺ができる行動を取っていく。


「食材にごめんなさいだな、いけ!」


 【ストレージ】から大量の調理用油をリングの中心から奥へとぶち撒ける。

 本当に食材を無駄にしちまうなんて、あぁ……俺は料理人失格だよ、ったく!


 激しく撒かれる油と水弾の嵐がリング半分、つまりはウィル・アクシオン側へと降り注ぐ。


 最初こそ、回避していたその動きが次第に悪くなり、次の瞬間、水弾がウィル・アクシオンに直撃するとリングギリギリまで吹き飛ばされていた。


 ウィル・アクシオン本人はなんで、自分が止まれなかったかが理解できないようで、その清々しいまでに整った顔を歪ませている。


「まあ、分からないよな……」そんな俺の言葉にデジールが何をしたって驚いた表情を浮かべる。


「水と油ってやつだ。ついでに、鎧姿でそんな上を移動なんて無理だろうしな」


「水と油って、なんだよ? 本当に意味わからないんだよアンタ!」


 分からないから、イライラして俺を睨んで来るが、今はスルーさせてもらう。


 ただ、もっと俺が狙ってることがある。現代社会に生きてた奴なら誰でもわかるだろうが、この異世界では非常識って奴なんだがな。


「おい! ウィルさんよ。一つ、提案だ!」


 俺の言葉にウィルが睨みつけてくるが、俺はとりあえず捲し立てるように早口で要件を伝えていく。


「雷を使うのはやめないか? そいつはお前にとって、良くない結果になるからな」


「何を言うかと思えば、何を考えているか分からないが、敵に対して、スキルを使うなだと! 笑えない話だな」


 剣を構える動作を見た瞬間、俺はため息を吐いた。


「忠告はしたからな! あと、風魔法もお勧めしないからな」


 試合中だと思えないような僅かな会話が終わりを迎えるとウィル・アクシオンは忠告を無視して、剣に雷を纏わせようとした瞬間、それは起こった。


 パチッと火花が起こった瞬間、リングから一気に炎が上がると同時に、ウィル・アクシオンの全身に雷が駆け上り、炎に包まれていく。


「うわぁぁぁ! なんだこれは、ぎゃああああ、な、何をしたぁぁぁ!」


「水と油だ。水は雷を通して、感電を誘発されるんだ。油は可燃性だ。火がついたら、燃え上がるんだよ。揚げ物もなければ、魔石で光を生み出す世界だから、油なんてあまり知らないよな」


 何を言われてるか分からないようで、苦しそうに剣を振り、炎を振り払おうとするウィル・アクシオン。

 ただ、逆にその動きが炎を強めていく結果に繋がっている。


 死なないリングだからなのか、忠告を無視した結果だからなのか、俺は何を言うべきか、一瞬、思考が停止してしまっている自分がいた。


「うおぉぉぉ!」と剣を握り、俺に駆け出してくる。


 炎が燃え上がったため、先程まで滑っていた足元をしっかりと踏みしめて迫る炎の聖騎士。


 俺に斬り掛かろうとする刃が一気に近づいて来た瞬間、真横から拳が突き出されて、ウィル・アクシオンの腹部の外装が陥没する。


「じっとすんな!」


 デジールの声が叫ばれた瞬間、俺は我に返るとすぐに魔物包丁を【ストレージ】から取り出して構えて向き直る。


 吹き飛ばされたまま、炎に包まれたウィル・アクシオンを見て、俺は慌てて駆け出していた。


「デジール! 火を消してくれ、早く!」


「え、なんで?」

「いいから早くしろ! 手遅れになる」


 リングでは死なない、死なないが、傷は治っても、失われたものは元の形になるが、酸欠による障害なんかは残る可能性がある。


 ウィル・アクシオンが意識を失っていることは明らかだ。なら、やるべきことはやっておかないとな。


 言われた通りに、デジールが水をぶちまけるとひどい火傷が無残に刻まれている。


 ただ、外見的な傷はリングを出れば治るだろうが、僅かながら時間は掛かる。

 心臓や、脳といった部位から次に外見になる。逆に言えば、生命活動に必要な部分を最初に直してから外見になる。

 ただ、皮膚が復活する時間や喉や肺の火傷は傷として、優先順位が分からない。


 デジールが炎を消した直後に、俺は大量の回復薬をぶち撒ける。

「デジール、これを口に流し込んでくれ、むせても構わないから、流し込むんだ!」


 反論はなく、デジールと共に試合を無視して、ウィル・アクシオンの火傷と皮膚を治しながら、喉に回復薬を流し込む。


 同時に使われた回復薬が火傷を治していくと同時に、呼吸が再開されていることを確認して、ホッと息を吐いた。


「これで大丈夫だな、悪かったな、デジール」


 俺はウィル・アクシオンを抱き抱えるとリングの隅に連れて行き、ミクロ・フォーノに運ばせる。


 リングに戻るまで、デジールから攻撃がされなかったことには感謝しかないな。


「悪かったな。待ってくれて感謝するよ」


「本当にアンタは変わってる……でも、負けてられない……いや、もう意味ないだろうけど」


 改めて向き合った時、デジールは何かを考えるように辛そうな瞳をしていた。


「なあ、戦う前に聞いていいか?」

「なんだよ! もう、敵同士だぞ」


「いや、デジールがなんで、優勝したかったか知りたくてさ、終わった後だと話がしにくいからさ」


「……優勝以外、意味なかった……“癒しの滴”じゃないと、治せないから、ミトロ・ジーア様のためだったんだよ」


 少なくとも、病の女神であるエトランジュじゃ治す流れにならない内容みたいだな。


「なら、俺達が治してやるって言ったらどうする?」

「嘘つくな! エトランジュ様でも、無理だったのに、お前なんかが!」


「出来るさ、フライちゃんは俺の仲間で嫁だからな、フライちゃんは勝つよ」

「……ほんとだな、約束だからな」


「俺が嘘ついたら、嫁ちゃん達に話してくれて構わないよ。まぁ、怖いから、嘘なんてつけないしな」


 デジールは、笑って見せてくれた「約束だからな、嘘だったら、襲われて手篭めにされたって言いまくってやるからな」と元気なく笑うと場外にむけて駆け出していった。


「私は3位なんかいらない、約束だからな!」


 すべてが嵐のように吹き荒れて過ぎ去ると、俺は結果的に勝利してしまった。



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