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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
2章 相棒と強敵・新たな出会い。

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22話、決着の朝、朝の温もり

 本気で俺達を殺そうと考えたのだろう。

 オークジェネラルの表情を見て、俺も覚悟を決めて身構える。


「リリー、コイツに勝てる気するか?」

「嫌な質問はなしにしてほしいね……正直、わかんないね」


 余裕すら感じさせるオークジェネラルは笑ったままこちらに迫り、俺達は身構えることしか出来なかった。


 だが、そんな絶望的な状況で聞きたくない叫び声を耳にする。


「オッサンッ!」


 声のする方に振り向くと合流したのか、嫁達が俺に向かって走って来る。その姿を確認した途端、俺はグッと、歯を食いしばった直後、大声をあげる。


「来んな! いいから逃げろッ!」


 最悪のタイミングだと理解した。仮に俺がコイツを足止めしても、オークに見られた嫁達は次のターゲットにされるからだ。


「俺が何とかする、邪魔だからあっちに行ってろ!」


 泣きたかった、言いたくないことを全力で口にした。

 もしかしたら、いや、間違いなく傷つけちまっただろうな、本当に最低だ。


「うっせぇッ! オッサンの言うことなんか知るかよ!」


 予想だにしない返答に俺は戦闘中だと言うのに振り向いてしまった。


「オッサンが何を言うかなんて、最初から分かってんだよ。分かって来てんだから、黙って協力させろよ!」


 半泣きのミアとニアの姿、それを慰めるベリーの姿があった。


 そして、ポワゾンは指で風の流れを確認しているのが分かると俺はすぐにリリーに指示を出した。


「リリー、風に気をつけろ、なんなら、今すぐ後ろに走れ!」


「え、あ? わかんないが、走ればいいのか!」

「おう、多分、やばい事になるからな」


 リリーは俺の表情を見て、悩まずに走り出した。

 戦闘で互いの力量や発言を理解したからだろう、俺の「やばい」は、本当にやばいと感じたんだろうな。


 俺はポワゾンに見えるように、腕を上げる。


 それを理解したのだろうか、風上から煌びやかな緑の輝きを放つ粉が一気に俺を通り過ぎていく。


 オークジェネラルに粉が吹き付けた瞬間、苦しそうに首を引っ掻き出した。


 何を使ったかは、分からないが間違いなくやばい毒に見える。


 息をするのも辛そうなのに、俺に向かって歩みを進めてくる。


 その姿を見て、俺は息をしっかりと吸い、全力で声を張り上げる。


「ベリーッ! 粉塵爆発だぁぁぁぁぁぁ!」


 その言葉で日本人の記憶があるベリーなら理解するはずだ。


「食料を無駄にしたくはないんだがな……」


 小麦粉を投げようとした瞬間、ベリーから声が返ってくる。


「【アースクエイク】沈みなさい!」


 ベリーの声が聞こえた途端、オークジェネラルの足元が振動し、地面が窪む。


 俺の思っていた【アースクエイク】とは違ったが、まるで落とし穴に落ちたように沈んでいるオークジェネラル。


 目的とは違ったが、再度、大量の小麦粉をオークジェネラルの落下した穴の中に投げ入れる。

 白い煙が中に舞い散っていく。


「キンザンさん、今すぐ逃げなさい! 行くわよ! 燃え尽きなさい灼熱【フルフレイム】!」


 ベリーの声と同時に、夜を照らすような巨大な火球が撃ち放たれる。


 走り出す。何も考えずにただ、できる限りその場から離れる為だけに全力で足を動かしていく。


 火球が粉塵に触れた瞬間、眩い光が周囲を照らし出すと爆発が起こり火柱があがる。


 ドゴオォォォォォォォォォォンッ!


 背後からの爆風で吹き飛ばされ、身体が宙を舞う。


「イてて……威力やべぇな……」


 勝利した事に歓喜の声を上げる嫁達に俺は嫌な予感を感じていた。


 やはりと言うべきか、オークジェネラルが穴から必死にあがってくる。

 しかし、その全身は既にボロボロだった。

 魔法防御があっただろう事を考えても、粉塵爆発と言う魔法とは違う物理的な爆発でダメージを受けていた。


「グアァァァァッ!」と声を上げた瞬間、オークジェネラルの動きが突如停止する。


 よく見れば、オークジェネラルの影をドーナが踏んでいるのが見えた。


「【影縛り】なの、動いたらダメなの」


「よくやったドーナ。本当に助かった」


 周囲に燃え上がる炎に照らされた影をしっかりと踏み、身動きが取れなくなったオークジェネラルに対して、ミアとニアが高速で迫る。


「オッサンッ!」

「キンザンッ!」

「「コイツ仕留めていいよな(にゃ)」」


「おうよ! 全力でぶちかませ!」


 オークジェネラルの首目掛けて、鬼人族と猫人族2人の刃が全力で振り抜かれる。


「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁッ!」


 断末魔のような叫びと共に、オークジェネラルの首が落下して地面に転がる。


 この瞬間、本当の勝利を手にしたのだ。


「やったな、お前ら! すげぇじゃないか」と言いながら俺に抱きついてくるリリー。


 立派なマスクメロン2つに俺の顔が挟まれると、嫁達から一瞬で殺気が放たれたのがわかった。


「落ち着け、リリー! 今は落ち着くんだ」

「なんだよ? 別に恥ずかしがるこたァねえだろ?」


 殺気など気にしないと言わんばかりの行動に俺は焦ったが、リリーから解放された直後、5人から一斉に抱きしめられた。


「オッサンのバカヤロウ、死んだらどうすんだよ……バカ……」

「そうにゃ、キンザンはバカだにゃ、みんな心配したにゃぁぁぁぁぁぁん」


 二人が泣き出してしまい焦る俺、しかし、ベリーも涙を浮かべていた。


「本当よ、酷い事しか言わないし、心配かけるし、喧嘩したまま、お別れになるかと思ったじゃない……」


 慌てる俺を見て、ポワゾンは何故か親指をグッと立てる。


 ドーナは焦る俺に【影縛り】を発動させて、動けなくしていた。


 最後の2人の行動はよく分からないが、それでも俺達は無事に生き残ったんだとホッと安堵の息を漏らした。


 俺達が再会と生還を喜んでいると、リリーから声が掛けられる。


「イチャついてるところ悪いが、アレはどうするんだ?」

 指さした先には焦げて倒れたオークジェネラルの姿があった。


「早くしないと他のモンスターが集まっちまうよ」


 その一言に俺は限界いっぱいいっぱいに膨らんだ腹に再度、回復ポーションを取り出して流し込んでいく。


「よし、あれは直ぐに【解体】する皆も、倒れてるオークの解体を頼む」


 嫁達が頷き、すぐに手馴れた様子でオーク達を解体していく。


 オークジェネラルの表面の焦げた皮膚をカット。

 肉と骨をバラしてから、火が入っていない部分を削ぎ落として【ストレージ】にしまっていく。


 オークジェネラルが、巨大な魔石と大量の肉、立派な骨と焦げた皮に姿を変える。


「おい、リリー、取り分の話なんだが?」

「アタイはいいよ。正直、アンタが居なかったら、死んでただろうし、なんなら、こっちがお礼をしないといけないくらいだよ」


「そんな事は無いさ、俺はリリーから、回復ポーションを売って貰ったから頑張れたんだしな」

「なら、無駄じゃなかったね。救いの女神になれたわけだね」


 ニッコリと笑うリリーに俺も笑い返す。去り際にリリーがこちらにやってきて顔を近づける。


「嫌じゃなければ、アタイもやっぱりお礼がしたいね」っと小さく耳元で呟かれた。


 小悪魔みたいな笑みを浮かべたリリーに赤面してしまった事は言うまでもない。


 そんな赤くなった表情を見たミア達にかなり怒られたが、俺はそんな叱ってくるミア達が大好きで仕方ないと改めて感じていた。


 俺達はボロボロの冒険者達の救護を行い、朝まで防衛戦を守る事になった。


 改めて朝日を全身に感じた瞬間、俺達は勝利に歓喜した。


 笑う月の夜を生き延びたのだから。


 数パーティが一時的に仮眠に入り、残りは再度、モンスターに備えて防衛につく。


「キンザンさん、寝なくて大丈夫なんですか?」

「ベリーこそ、まだ寝とけよ。俺は皆と交代で眠るからさ」

「わかったわ、倒れないでね」


 ベリー達5人を先に休ませて、俺は怪我人に対して、大量の回復ポーションをぶちまけて行く。


 リリーが俺に大銅貨1枚(100リコ)で売ってくれたお陰で“買い物袋”を利用して、金貨1枚で200本の回復ポーションを買う事ができる。


 本来なら詐欺みたいだが、背に腹はかえられないし、今、無駄にケチって死人を出す訳には行かないからな。


 冒険者達も、生き残れるなら無駄に騒いだりはしないだろうしな。


 回復ポーションを配り終えてから、俺は小麦粉とオーク肉、野菜を用意すると大鍋に水を入れて火にかける。

 小麦粉で、すいとんの素を作り、野菜とオーク肉を塩で煮込み酒と醤油を入れて、更に確りと煮込んでいく。


 大根と人参、里芋の三種類が柔らかくなっているかを確認してから、すいとんの素を入れていく。


 白玉のように鍋に浮かぶすいとんに懐かしさを感じながら、味を確かめる。


 出来上がったすいとんを火から退かして、冒険者達に交代で食べてもらう。

 俺の体力にも限界が来たのか、足がもつれてその場に膝をつく、意識が遠のいていく感覚に瞼が閉じていった。

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