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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
9章 女神の遊技 不始末の照らす先へ

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232話、譲れない物。伸ばした手の中に

 大会二日目の第一試合にしては、かなり濃い内容の試合だったと思う。


 そして、次の試合は王国の中で最強戦力として絶対の存在、そうメフィスだ。


 アイツには、控え室でかなり遊ばれたから、是非ともミアにはあの余裕な表情をひっくり返してもらいたい。


 俺は試合前のミアに視線を向ける。


 落ち着いた雰囲気でゲート前に向かおうとするミアが以前に[バリオン]の“ガラット宝石店”で買ったネックレスを見つめていた。


 俺がプレゼントしたそれを見つめるミアの瞳、どこか照れくさくなり、静かに視線を逸らす。


 ミアは俺から向けられた視線には気づいていたか分からないが、ゆっくりと歩き出すとゲートの先、リングへと向かっていった。


 試合前に声の一つも掛けてやれない今の状況がもどかしいと感じてしまう。


 リングで向かい合った2人が睨み合い、第一試合同様にミクロ・フォーノが選手紹介が行われていき、前回の優勝者であるメフィスへと歓声が向けられていく。


「ミアさんでしたなぁ。貴女もついてませんなぁ? 初戦が我輩やフライでなければ、突破もできたでしょうに……」


「ふん、あのさぁ? ボクってば、いつもオッサンが傍にいるから怖がられたくなくて、本気出せてないんだよ。

 だから、ナメてるとそんな笑顔、作れなくなっちゃうよ」


 ミアとメフィスが火花を散らすように軽く会話を済ませると試合開始の合図が鳴り響く。


「さぁ、掛かって来なさいっ! 我輩が上には上がいる事実を教授して差し上げましょう!」


「ボクは、頭より拳を使う派なんだよ! はァァッ!」


 挑発に乗っかるようにミアが駆け出し、メフィスに襲い掛かる。


 速度の上がったミアの拳を軽々と回避するメフィス。

 ニヤついた笑みで、余裕と言わんばかりの表情を浮かべる。


 撃ち放たれたミアの拳を交わしたメフィスが軽く手を振り払う。


 振り払われる瞬間、ミアが慌てたように後方に体を移動させる。


 ミアが今までいた位置が風と共に削り取られ、土煙が舞い上がる。


 舞い上がった粉塵に向かって、勢いよくミアが後方に向かった足をステップを踏むようにして、前方に体勢を移動させて踏み込む。


 メフィスも距離をとると思っていたのか、ミアの踏み込みからの突進に軽く驚いたように視線を向けていた。


 ただ、驚いただけで、余裕の表情を崩す様子はなく、むしろ口角を吊り上げて嬉しそうにすら見える。


 ミアの繰り出した拳をメフィスが片手で掴む。


 拳を掴んだ瞬間、メフィスの手から“ブワァン”と風の音が耳に聞こえてくる。


「これは、予想以上ですなぁ……ただ、まだまだ、我輩達の領域には足りませんなぁッ!」


「うっ、離せよ! うわぁぁぁ!」


 メフィスが掴んだ手の内側から放たれた風圧にミアの体が宙に舞っていく。


 ただ、吹き飛ばされているわけじゃない……ミアの拳を握ったまま放たれているため、片手を伸ばした状態で体が斜めになった状態で空中に持ち上げられてるという感じだ。


 そうしている間に、ミアには無数の切り傷が刻まれていく。


「おいおい……メフィス、くっ! アイツ」


 俺は拳を握り、歯を食いしばる……

 今、俺が飛び込めば、ミアは敗北、俺も間違いなく出場停止になるだろうが、それでも見ていられない光景が広がっていく。


 そんな俺とは違い、ミアの瞳はまだギラついたままだった。

 むしろ、ダメージが増えていくたび、闘志にも似たその瞳のギラつきが激しくなっているように見える。


「鬼人族ってさ……受けた傷に合わせて、身体能力が上がるんだって知ってるかな……今のボクは傷だらけだから、次の一撃はいたいよ」


「鬼人族のことは詳しくありませんが……今の貴女から、どうこの状況を回避するか気になりますなぁ」


 メフィスにミアがバトルジャンキーさながらの笑みを浮かべる。


「いいでしょう、吹き飛ばすのは手を離すのみで済みますが……それでは面白くありませんからなぁ、まずはこの状況から抜け出して見せなさい!」


 さらに風の刃が舞い上がり、ミアに深く刻まれていき、血飛沫が風に流されて後方に鮮血が舞い散っていく。


 生々しすぎる試合内容に、第一試合とは違う意味で会場が静まり返っていた。


 ただ、ミアが一定のダメージをくらったあたりで、突然、奇声を放つ。


 ミアの奇声に俺を含めた会場内のすべてが視線を向ける。


 幼さの残る容姿のミアが片手を前に伸ばした瞬間、届かないはずの拳がメフィスの鼻先を掠めた。


「なっ、なんですかねぇ、ありえませんなぁ」


 メフィスの言葉は間違っていない。俺から見ても先程まで、絶対にリーチが足りなかったはずなんだ。


 ただ、そんなミアの手がメフィスに触れた事実がすべてを物語る。


 そして、俺は眼前に広がる変化に目を奪われた。


 幼かったはずのミアの姿が、成人女性を思わせる姿に変化していき、頭部からは今までになかった真っ赤な角が二本、肘からも鋭い刃のような角が伸びている。


 何より、目のやり場に困る胸部にはベリーに負けないくらい立派な果実が二つ膨らんでいる。


 普段の緩い服が今にも弾けそうな程の膨らみ、それが先の攻撃でダメージが刻まれ、ビリビリに破れかけてしまっている。


 ただ、そんなことなど気にしないといった様子のミアは大きく口を開くと、口から光り輝く閃光弾をメフィスに向けて撃ち放つ。


 まるでアニメキャラの攻撃を現実に持ってきたと言わんばかりの状況に驚かされてしまった。


 メフィスは突然の閃光弾に掴んでいたミアの拳を離すと、回避すると同時に初めて、本当の意味での後方への回避を選択した。


「予想外過ぎますねぇ、本当に脱出させる気などなかったのですが……いやはや、貴女の主は、本当に予想外の人材を(はべ)らせていて、笑えませんねぇ」


 メフィスが距離を取りながら、そう語るが、変化したミアは容赦なく距離を詰めていく。


 急成長したミアの手に握られた双剣が小さく見える。そんな双剣がメフィスからまだ距離がある状態で空中を切るように振り上げる。


 メフィスが放ったような風の刃がミアの身体能力だけで作り出されるとメフィスも慌てて風の刃を撃ち放つ。


 互いの風の刃がぶつかり相殺された瞬間、ミアの手がメフィスの胸ぐらに伸ばされており、回避が遅れたメフィスが初めて攻撃として、胸ぐらを掴まれた瞬間だった。


「ぐあっ、ぬかりましたねぇ、ですが、時間を我輩に与え過ぎてしまいましたなぁ! 最初からこうしていれば、勝敗も違っていたでしょうにぃ!」


 メフィスが胸ぐらを掴まれたまま、ミアの眼前に手を伸ばすと今までとは違う凄まじい竜巻が手から放たれる。


 ミアが片手だけで顔面を守るように腕を盾にした瞬間、上半身側の衣服が吹き飛ばされる。

 ただ、ミア本人は問題ないように見えた瞬間、突如、ミアがメフィスの胸ぐらを離し、素早く後ろ側に体を向けて手を伸ばした。


 攻撃のためじゃないと理解できたし、その行動により、振り向いた背中にはひどい斬撃の嵐を当てられたような傷が刻まれていく。


 そんな最中、俺の中で天秤が一気に傾き、誰よりも早く飛び出すと、【ストレージ】から、グリド商会で買った持ち手付きの屋台用の鉄板を盾がわりにリングに飛び込んでいた。


 すぐに【ストレージ】から魔物の毛皮を取り出し、ミアに掛けてから、メフィスに視線を向ける。


「やめろ、メフィス! 勝負はついた……違うか?」


「予想外の乱入ですなぁ、黒騎士殿。ただ、勝敗はまだ告げられていませんが、困りましたなぁ?」


 メフィスの言葉に俺はミクロ・フォーノへと視線を向ける。


 久々に俺は怒っていた。ただ、試合だってのも理解してる。ここで試合続行を宣言されたら俺は堪忍袋が破裂してしまうだろう。


「ミクロ・フォーノ。宣言しろ、今すぐだ!」


 俺の言葉にミクロはルフレ殿下達に視線を向けた。許可がおりたのか、勝者としてメフィスの名が叫ばれる。


 俺は少女の姿に戻ったミアをしっかりと毛皮に包み、医務室に向かって歩いていく。


 ミアの手には、俺が渡したネックレスがしっかりと握られていた。


「馬鹿だなぁ、ネックレスより、ミアが傷つく方が俺は辛いんだってのに」


 意識のないミアを見つめながら、俺は愛の深さを知ることになった。



 ・第一試合〇──フライちゃん 対 ポワゾン──✕


 ・第二試合〇──メフィス 対 ミア──✕


 ・第三試合◆──ドーナ 対 黒騎士──◆


 ・第四試合◆──ニア 対 デジール──◆


 ・第五試合◆──リーフ 対 ウルグ──◆


 ・第六試合◆ウィル・アクシオン 対 アタンティフ・ヴァールハイト──◆

読んでくださり感謝いたします。

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