229話、ささやかな夜に
ベリーのモツ煮込みを味わいながら、楽しい夕食が終わりを迎えた。
そこから俺は大会についての話を嫁ちゃん達としていくことにした。
負けてしまったペコやグーは申し訳なさそうに下を向いてしまっていた。
そんな姿に慌ててしまったが、2人の頭を優しく撫でてやることで少し明るい表情を取り戻してくれた。
「よし、2人も含めて、気持ちを切り替えてトーナメントについて考えよう」
試合一日目の十試合が終わり、明日からのトーナメントについて話し合う。
「みんなとウルグ、メフィスに関しては、味方って枠組みで問題ないと思うんだ。問題は戦力が未知数の2人だな」
そう口にするとミアが何が問題か分からないといった様子で喋り出した。
「未知数って、オッサン? よく考えてくれよな、ボクとニアにドーナ、フライにポワゾンまでいるんだよ? 負けるわけないじゃんか」
ミアの言葉にフライちゃんが口を挟む。
「ミア、甘いです! 勝負はいつも、予想外のことが起きるものですよ。ウルグやメフィスだって油断ならない相手ですし、未知数の2人に対しても油断してはダメです!」
しばし、意見の交わし合いになる2人。
空気を入れ替えるためだろうか、ポワゾンがペコとグーと共に紅茶の入ったティーカップをテーブルに置いていく。
「落ち着いてください。ご主人様が言いたいのは、ワタシ達が絶対に勝たねばならない事実についてです。
だからこそ、全力で敵をつぶすための話し合いをしているのですから」
ポワゾンの言葉にミアが素直にフライちゃんに謝ると、フライちゃんも「言い過ぎました。すみません」と謝ることで一段落した。
話し合いで出てきた未知数の2人とは──
◆四戦目勝者、フード姿の女性──すべてが謎のままの選手の1人で未知数の存在。
◆六戦目勝者、デジール──こちらも未知数の1人だ。分かってるのは教会三派閥の一つ、ミトロ・ジーア派に属している代表選手。
この2人の選手だろう。
「少なくとも、デジールさんはグーに勝ってるわけだから、油断ならないと俺は思うんだ」
「うぅ……負けてすみませんでした」と力無く俯くグー。
「違うよ! ペコも負けたもん……2人で負けたんだから、仕方ないよ」
ペコとグーが泣きそうになるとニアが立ち上がる。
「ニアとペコが戦いになったんだから、仕方ないにゃ、なんか罪悪感がすごいのにゃぁぁぁ」
3人が泣き出しそうになる姿に俺は頭を抱えるが、解決法は一つしか思い浮かばない。
「3人とも悪くないぞ、ほら、大丈夫だから」
優しく優しく抱きしめると、なぜか、ミトがそっぽを向いている。
「ミト、来いよ。頑張って戦ったんだ。だからなさ」
「ふん! この色ボケたらし野郎が!」
そんな悪態をつきながら、俺にソッとハグするミト。
そうして、一段落してから話を再開する。
話を戻すが、半数以上が“身内”になっている事実には本当にびっくりする。
こんな結果になると正直、既に勝利したと言っていいんじゃないかと思いたくなる。
まあ、普通に考えたら、実力派の集まる大会だってのに、嫁ちゃん達が強すぎる気がするんだよな……
俺の心を読んだのか、フライちゃんが不意に口を開く。
「皆さんが強いのは当たり前です。何せ、単体で倒せないような魔物──つまりは団体で狩る魔物を軽々駆逐してるんですよ。普段団体戦での戦いを基本にする選手とは違いますね」
力強く語るフライちゃんは、そう語り、言葉を続けた。
「だからこそ、そんなグーに勝ったデジールさん。そしてフードの女性。そして忘れてますが……あの黒鎧の騎士は要注意なんですよ」
突然、黒鎧と言われて、ドキッとした。フライちゃんを含め、この場で事実を知っているのは最初から同行していたナギと、屋台で気づいたベリーだけだからだ。
「ははは、黒鎧はそうでもないんじゃないかなぁ……」
そう口にした瞬間、次はミトが口を挟んできた。
「いや、あのダミオって騎士団長を倒したのは事実だろ? 試合みてたけどよ。ありゃ、かなりヤバいやつだった。そいつを倒した鎧野郎は間違いなく強いだろうが」
多くの意見などない……ただ、なぜか、話が黒騎士がダミオをぶっ飛ばした後の話を目の前で嫁ちゃん達が語る姿に申し訳ない気持ちが溢れ出してくる。
そうして、語り合いながら、夜は更けていく。
明日の大会を考えて、早めの就寝にしようと話を切り上げる。ただ、先日の屋敷襲撃のことを考えて、二組に別れて寝ることに決まったのだが……
「嘘にゃあ〜!」
「ニア、諦めなよ。ボクも負けたんだからさ」
「くっ、不覚です……メイドたるワタシが負けるなんて……」
「フライ! 試合は譲ったけど、ウチはジャンケンまで譲ると思うなよ!」
「笑止、わたしがジャンケンに負けるとお思いですか! ミト」
まぁ、こんな感じで武闘大会の前の大ジャンケン大会になり、結果……綺麗に大会勝利組と敗者組に別れる形になっていた。
俺と同室になったのが、ナギ、ミト、ペコ、グー、ベリーの5人。
他の5人の嫁ちゃん達がプンスカしているが、こればかりは仕方ないだろう。
そうして、俺達は眠りについた。
目をつぶるが、なぜか眠れない。瞼と心が混ざり合い重なるような感覚が脳内にイメージとして流れ込んでくる。
色々と複雑な感情、俺の中を掻き回すように蠢いている言葉、それはダミオとの戦いからのイメージだろうか……
もしそうなら、最悪の悪夢だろう……次に浮かんできたのは、ルフレ殿下の姿だった。
ダミオに告げた言葉を、俺の眼前で指を伸ばし、伝える姿に夢や幻と理解しているにも関わらず、俺は息苦しさを感じ、呼吸すら停止してしまうんじゃないかと錯覚してしまう。
「──息が……ハァハァ……うぅぅぅ、ンンン……」
寝苦しさから目覚めた瞬間だった。
部屋のベッド側に寝ていたはずの嫁ちゃん達がなぜか、床で寝ることにした俺の横に引っ付きながら寝ていた。
よく見れば、ミトとベリーまで同様の寝方をしており、結局、俺は全身を抱き枕扱いで眠ることになってしまった。
幸せな反面、【自己再生】のスキルがなかったら、手足が痺れて動けなくなってるだろうから、本当に危なかったと思う。
普段よりも何倍か甘えん坊な嫁ちゃん達を眺めながら、再度眠りにつくことにした。
「明日はとりあえず、勝てたらいいんだけどなあぁ、ふぁぁ……」
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