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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
8章 王都に潜む影と信じる者

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221話、ベリーの屋台は大騒ぎ。グーの戦い

 聖騎士団員を相手に抜刀した扱いらしく、俺を睨みつけてくる。


 ギャラリーが多く、引くに引けない状況だろうと思う。


 ただ、そんな彼らからしたら、俺が魔物包丁(武器)を取り出すなんて考えは微塵もなかったことだろう。


 周囲からも声が聞こえ出す。


「やばいぞ……見ろよ、あのバカでかい剣」

「バカ、ありゃ、魔物包丁って化け物みたいなサイズの包丁だ」

「は? 包丁って、そんなサイズじゃないだろうが……」

「龍は無理でも、並大抵の魔物ならバッサバッサ切れるって話だぞ」


 そんな話し声に次第に聖騎士団員達も慌て出すが、周囲からは期待と“逃げるな”という視線が突き刺さっていく。


 堪らなくなったのか、聖騎士の1人が剣を抜くと、あろう事か、見ている周囲の人間に向けて声を上げる。


「な、何を見ているか! どけ、くそ!」


 威嚇するように向けた剣が少年を掠めそうになった時だった。

 鈍い衝突音が──ガンッ! と周囲に響き、剣を振るう聖騎士が手首を抑えながら手から剣を落下させる。


「何をしてるんですか! 危ないって分からないの!」


 少年を守ったのは、ペコの盾だった。恐怖に蹲る少年も無傷なことを確認した俺もホッとする。


 それと同時に苛立ちが溢れ出した俺は、手首を抑え顔を歪ませている聖騎士に向かって歩き出していた。


「おい……知ってるか? 因果応報って言ってな、悪いことは自分に返ってくるんだ」


 目の前に対峙する聖騎士に片手を伸ばし、勢いのままにその場に顔面を叩きつける。


 ドガンッ!


 そんな鉄の塊が落下した音が響くと同時にコロシアムの観覧席にめり込む聖騎士。


 誰が見てもオーバーキルなんだが、それを口にする者はいない。むしろ、心配よりも僅かにピクピクと手足を痙攣させる聖騎士に酷い視線を無言で送っている。


 だが、それで終わるようなら、この世界も平和だと思う。ただ、そうはならないのがお約束であり、俺にやられた聖騎士の仲間達が剣を抜く。


 俺は平和的な展開を諦めて、再度拳をしっかりと握ると、ペコが速攻で1人の聖騎士に向かって【シールドバッシュ】を発動して壁に向かって吹き飛ばす。


「な、ぎゃあ!」

「ぬ、がはぁ!」


 残る1人だが、そこにはベリーが魔法を付与させた拳を握り締めると、容赦ないアッパーを炸裂させる。一瞬空を舞ったように見えた聖騎士団員が地に伏せられていた。


「いい加減迷惑よ。しつこいと本気でぶっ飛ばすわよ?」


 既にぶっ飛ばされた後なんだよな、とツッコミたくなったが、辞めることにした。

 

 単純な力なら間違いなくベリーが不利だったはずだが、拳に纏わせた魔法が何か分からないが未だに光る拳を俺に向けられたら溜まったもんじゃないからな。


「どうやら、終わったみたいだな……」


 俺はベリーに視線を向けると、静かにこちらに歩いてくる。


 やっぱり、今の俺も敵に見えてんのか……マジに勘弁してくれよな……


 ただ、ベリーは俺の横を通り過ぎると「キンザンさん、変装するなら言葉には要注意よ」と、小さく呟かれた。


「な! 何を」


「因果応報なんて、この世界にはないのよ? 覚えといて……ふふっ」


 笑うベリーに俺が無言で軽く下を向く仕草をするが、それ以上の追求はない。


「さて、オススメはラビカラのピリ辛炒めよ。勿論、注文でいいわね?」


 ベリーの言葉に俺が頷くと、あっという間に調理が終わり、入れ物に盛られたラビカラのピリ辛炒めを受け取ると、俺はその場を後にした。


 ナギだけは何でベリーに正体がバレたのかが分からずにいるみたいで、首を傾げていた。


 ヒヒ様の観覧席に戻ると、手早くベリーが作った料理を食べていく。


 そうして、昼休憩が終わると俺は試合参加者の控え室に移動することになっていた。


 ただ、控え室にいる間は、試合の観覧はできなくなる。

 控え室が十室あり、その室内の一部屋に俺を含め、5人の参加者が待機している。


 この5人は各試合に参加するため、俺と当たるのは、勝ち残った場合のみだが、同室の選手は冒険者が2人と王国騎士が1人、教会関係者が1人。


 この教会関係者は“アルノ・マーレ派”ではなく、

“ミトロ・ジーア派”の選手みたいだ。


 そんなミトロ・ジーア派の選手が俺に声を掛けてくる。


「アナタ様がヒヒ・クラーレ様の騎士ですか。本当にお会いできて嬉しく思います!」


 俺に声を掛けて来たのは、身長の低い少女であり、先の戦闘で見たフード姿の選手と同様の雰囲気を感じさせている。

 フードから見えるダークブルーの髪がかなり印象的で顔が見られないのが本当に残念に思ってしまう。


「あ、失礼しました。アタシはデジール・ルミエールと言います。ミトロ・ジーア様の派閥に所属してる者です」


「丁寧な挨拶に感謝する。ただ名を名乗れない立場でな、許して欲しい。お互いに健闘を祈ります」


「はい。その言葉だけで感謝です。それでは、第六試合が出番ですので失礼します!」


 元気な挨拶を終わらせると青髪フードが駆け足で去っていく。


 そうして、試合開始となった第六試合。


 参加選手の中にグーの名前があることに気づく、試合を見てやれない嫁ちゃん達には後で謝らないとな。


 グー、ポワゾン、フライちゃん、ミトの4人の試合を観てやれないことに軽く罪悪感があるが、それでも俺の嫁ちゃん達が簡単に負ける未来なんて想像ができない。


 そうして、ミクロ・フォーノが次々に名前を告げていき、試合開始の合図が控え室まで響き渡る。


「さぁ、試合開始だァァァッ! 今回の試合には先の戦いで惜しくも敗北をしてしまったペコ選手の姉妹、グー選手が参戦しており、その実力や如何に!」


 ミクロ・フォーノが一気に盛り上げると会場から歓声が上がる。


 マイクから放たれる声に力が込められていくと、最初に誰が動いたのかがよく分かる。


「最初に動いたのは、冒険者ギルド所属のライオネル選手! 手甲に(イカヅチ)を纏わせた拳がグー選手に向かって突撃だァァッ!」


「おっと、グー選手も同様にガントレットを重ね合わせての戦闘スタイルを構える! 両者がぶつかり合う姿は正に、武人と武人の一騎打ち! 周囲の視線もフル無視だァァァァッ!」


 ドガンッ!


「ぶつかった! 力と力! 誰も横槍を入れることのできない凄まじいぶつかり合い! 衝撃波で場外に吹き飛んだ選手には申し訳ないが! 勢いが止まらない!」


 そこから、激しい殴り合いになっているようで、ラッシュの音が生々しく、鉄が潰れていくような音になっている。


「素晴らしい猛攻! ライオネル選手の獣を思わせる猛撃にグー選手、防戦を強いられる!」


「他のスペースでは、え、凄いッ! デジール選手が次々に参加選手をノックアウト! 騎士団の実力派、バレンテ選手の大盾を吹き飛ばしたッ! なんて試合だ! 拳による制裁、制裁、制裁による拳の横行ッ!」


 かなり盛り上がっており、実際に目で見れないのが残念だと感じてしまう。


「ここで、バレンテ選手が場外に吹き飛ばされたァァァ! デジール選手が先に勝負を決め、さらに歩き出す! 向かった方向は正に嵐のど真ん中! ライオネル選手とグー選手へと一直線だ!」


 まさかの結果だな、グーは、かなり強くなっているんだが、そんなグーを相手にしっかりと相手してる奴は間違いなく強いな。


 そんな感想を思っていると、ミクロ・フォーノがさらにテンションをあげていく。


「さらに、ライオネル選手に対して、グー選手からのカウンターが炸裂だッ! 強烈な一撃にライオネル選手! 立ち上がれない! リングに残るのは、グー選手とデジール選手の一騎討ち!」


「互いに睨み合う両者、動いたッ!」


 会場からの歓声が一気に響き渡り、会場すべてを振動させる。


「凄まじい粉塵! 立っているのは……デジール選手! 互いの拳がぶつかった瞬間、全てが決まったッ! 勝者はデジール選手だァァァ!」 


読んでくださり感謝いたします。

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