203話、武闘大会の予選? キンザン王都の街へ
ポワゾンが落ち着いてから話が再開する。
話とは、“武闘大会”の内容だ。
俺が意識を失ってから過ごした数日間の中で嫁ちゃん達によって話し合われた内容も含まれていた。
この武闘大会の賞品が俺の足を治すために必要なアイテム“癒しの滴”であることは既に理解していたので、嫁ちゃん達の参加理由も俺のためであることは想像がついている。
ここから、ポワゾンが口にした「参加した七割」という言葉についての説明になる。
「七割ってのは、この場にいる皆を含めてってことだよな?」
「はい、そうなります。ただ、ナギに関しては、大会の規定により、足か二本ないため、大会に参加ができないので、最初から数には含まれておりません」
そう言われて俺は軽く混乱した。
ならば、嫁の数は、ミア、ニア、ベリー、ポワゾン、ドーナ、ペコ、グー、フライちゃん、ナギ、ミトの10人だ。
最初からナギが参加できないため、9人の嫁ちゃん達が参加している。
ペコとグー、ポワゾンは口ぶりからも既に一次予選を突破しているはずだろう……誰が予選落ちしたのかが逆に気になるところだな。
「ご主人様、悩まれてるようですが、補足しますと今回の武闘大会に参加した者達はワタシ達だけでは御座いません」
「え?」
「早い話が、ワタシ達の他に大勢のご主人様に関係ある方々が参加を名乗り出ましたので」
ポワゾンがそう補足してくれた直後、ヒヒ様が呆れたように話に割って入って来た。
「なんだい、なんにも知らずにいたのかい? 仕方ない男だねぇ。王都じゃ、アンタの存在を危険視する奴らや、恐れてる奴、尊敬する奴と大人気だってのに」
「なんの話なんですか、マジに分からないんだが」
「まぁ、アンタのためって、武闘大会に参加を決めた奴らが、強すぎて本来なら余裕で通過予定だった冒険者や腕に自信があった連中が一次予選で敗退してるのさ」
ヒヒ様は悪い笑みを浮かべながら話を続ける。
「しかも、裏でこそこそと予選通過の賭けをしてた連中は大慌てみたいだよ。
なんせ、自分達で用意したA級クラスの冒険者が軒並み敗退してるんだからねぇ。まぁ、アタシからしたら、ボロ儲けだから、悪くないけどね」
サラッとヒヒ様、裏で賭け事してることを話しているが大丈夫なのか……
「とにかく、今、アンタはかなり人気者なんだよ。表からも裏からもねぇ、だからこそ、王都でゆっくりしてなって話に繋がるんだがね、王都以外だと危ないからねぇ」
「あ、あはは、そうなんですね……」
軽く笑ってはみたが、あまりよろしくない状況らしいな……
俺の平和な日常がどんどんなくなっている気がするな、はぁ……
「ご主人様、話を戻しますがよろしいでしょうか?」
ヒヒ様の発言が途切れたと同時にポワゾンが話を再開する。
「ああ、頼むよ」
「はい、七割についてですが、ワタシ達は全員、二次予選へと進んでおります。落ちた三割は、猫人族からの参加者や狼人族の戦士達と[バリオン]や[ボルドール]から参加した冒険者の方々になります」
「え、なんか、思ってたよりもすごい数になってるんじゃないかそれ?」
「はい、そうなりますね? 単純に猫人族からは大量の参加者がおりましたし、[バリオン]、[ボルドール]、[カエルム]の冒険者ギルドからも“クエスト”扱いで冒険者達が大勢参加しましたので」
「クエスト扱いなのか? 武闘大会だよな」
「“クエスト”として、参加するだけで大会参加費である金貨一枚の保証と、一次予選、二次予選を突破して本戦に進んだ場合は各ギルドから金貨10枚が約束されているようです。
そのため、参加者はC級冒険者以上が条件みたいですね。逆に言えば、C級以上の冒険者が腕試し感覚で参加しています」
「はぁ、後で各ギルドからの参加者人数を調べてくれないか、さすがに申し訳ないからな」
「かしこまりました。既にある程度は調べましたが、金貨にして1600枚分(3200万リコ) の参加費になっておりますが?」
金額を聞いて驚いた。[バリオン]から、そこそこ大きい屋敷が軽く買えるくらいの金額じゃないか……
「はぁ、わかった。ひとまず、参加費は俺が出す。さすがにギルド相手にそんな貸しを作りたくないしな」
「逆に各ギルドからすれば、ご主人様との繋がりを深くするいい機会として見てるようですが? よろしいのですか?」
「当たり前だ、こんなデカイ借りを作るなんて、ごめんだからな、“持ちつ持たれつ”にも限度があるって話だ」
「もちつもたれ? 分かりませんが、貸し借りは嫌だという認識でよろしいでしょうか?」
「そうだな、だからすぐに金貨で精算しないとな」
「御意、ならば早速支払いに向かいますが、よろしいでしょうか?」
ポワゾンに聞かれたので、早々に頷く。そうして、[ボルドール]の冒険者ギルド経由で各ギルドに参加者に掛かった金貨を返金することにする。
かなりヤバい使い方だと思うが、無駄使いしたわけじゃないし、ギルド側からすれば、負担額が帳消しになるため、文句は無いだろう。
とにかく、俺のために多くの人達が動いてくれた事実に感謝だが、一つ分からないのは、俺がやられて足を失ってから十日と時間が経ってないのに、スムーズに話が進み過ぎてる事だ。
考えすぎかもしれないが、意図しない力の流れに乗っているような気がしてならない。
昔から、いい事が続くと疑う癖があるため、今回も悪い癖だといいが……
意図的に、って流れで、バミューダトライアングルみたいな危ない方角に向かうのだけは勘弁だな。
ただ、何と言うべきか、ありがたいと言うべきか、良くも悪くも皆が集まり、助けてくれている今の状況は暖かい。
「あ、イケナイねぇ、伝えることがまだあったんだったよ。歳を取ると、大切な要件を伝え忘れそうになるからやだねぇ。
もし退院するなら、殿下が空き家があるから、使えって言い忘れてたよ。気に入ったなら褒美でやるって話だから、見たいなら行ってきな」
いきなりの発言に鳩が豆鉄砲を食らったような顔になってしまった。
「空き家ですか?」
「そうだよ。殿下はアンタを[バリオン]の商業都市から、王都に移させたいらしいねぇ。まぁ拠点は王都の方が箔が付くってもんだ。悪い話じゃないし、タダならもらっときな」
ヒヒ様はそう言うと懐から地図を取り出していく。
地図は王都専用のもので、細かく描かれたそれは写真や印刷技術がないにも関わらず精巧な作りになっているのがわかる。
示された位置から今いる場所までの時間を軽く説明される。
「ここからなら、半時間程度かね、まぁ往復で鐘一つ分程度だから、近いとは言えないが、住宅街からは離れているが、市場なんかには近い場所さ」
「ヒヒ様? なんでルフレ国王がこんな場所に空き家を持ってるんですか? どう考えてもおかしいというか……」
「さぁ、まぁ話に聞いたら、先代の国王陛下、つまりはルフレ陛下の父君の個人的な所有物だったらしいねぇ、王族ってやつは不思議な奴も多いのさ、よくも悪くもねぇ」
意味深な発言だが、とりあえず、気分転換にもなるだろうと考えて、ポワゾン達に聞いてみる事にした。
「悪いが、空き家を見に行きたいんだが、頼めるかな?」
「内見でしたら、ワタシが済ませて参りますが?」
「ポワゾン、ありがたいが少し外に出たいってのが我が儘ながら、本音なんだ。ダメかな?」
「分かりました。ナギ、悪いけれど、ご主人様をこの、えっと、移動式の椅子に座らせてもらってもよろしいでしょうか?」
「わかった。ナギが押すから大丈夫任せて」
「わかっています。ワタシとペコとグーが護衛役になります。2人もよろしいですね?」
「「はい!」」
元気な返事をする2人、そうして俺達は王都の街へと移動する。
車椅子での初外出になる。そのため、色々な改善点等も見つかるだろうが、とりあえず今は、王都の街を見て、これからのことをしっかりと考えようと思う。
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