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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
8章 王都に潜む影と信じる者

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201話、反省と癒しの笑顔

 △△△△


 朝日が差し込む小窓、部屋の空気を入れ替えるために施設のメイドさんが窓を開いて挨拶も早々に次の部屋へと向かって移動する。


 まだ肌寒さを感じる青い空と清々しい風が室内に流れ込んでくるのを全身に感じながらの朝を迎える。


 昨日の賑やかさが嘘だったかのような静かな室内を軽く眺めながら、 俺はベッド横に置いてある車椅子に視線を向けた。


「ふぅ、何とかしないとだよな……よし!」


 一旦、自分の弱腰な内面に喝を入れていく。


 最初にやるべきは『防音の魔導具』の設置だ。

 昨日の作業で見張りの兵士さん達に散々迷惑をかけてるからな。

 ただ、この防音の魔導具は必ず床に置くことを忘れない。


 それはなぜか、単純に自分を守るためだ。


 一、危険予知──自分から危険な行為をしないための推測を立てる。


 二、危険予測──既に怪我人だが、さらに酷くならないために、自分でどうしようもできない状況を作らない。


 三、困った時の予想──自分が困った状況になった際、どうしたら、助かるかを考える。


 まさに──俺が考える『K・Y』(キンザン・やらかし)回避の安全対策だな。


 ということで、俺は防音の魔導具を手を伸ばして床に置いた。


 準備も整ったため、まずは転倒をしないように考えて、古くてサイズの小さい上履きを“買い物袋”から取り出していく。


 ここでいう、上履きとは小学生なんかが履くサイズだが、足首から下がないため、入りさえすれば何とかなるのだ。


 さらに上履きの中にジールさんからもらった義足をそこに合わせていく。

 この義足という名の棒は、簡単に言えば、海賊の片足が木の棒状態のあの義足だ。


 そして地面側の接触面が少しだけ広くなった作りになっている。

 この“小さな上履き”と“棒の義足”を足首につける前に組み合わせていく。


 組み合わせる際に足首のアソビを創るための鉄の薄板を金具で連結した部品も入れていく。

 この部品に関しては名前が分からないのだが、過去に扉をつけるためにホームセンターで買った何かだろう……


 そして、やはりというべきか、上履きの先端が空洞になっているため、そこを何とかしたいので、贅沢に飾り石(ダイヤモンド)を使うことにした。

 日本なら絶対にできないだろうが、この世界では、ダイヤは価値がないゴミ扱いのため、詰め物として使っても問題ないのだ。


 重さにすると、三キロくらいだろうか? つまりは、1.5カラット程のダイヤ (飾り石)を【ストレージ】から取り出していき、接着して義足へと加工していく。


 慣れない作業をできる限り、手早く済ませてから、両足の義足の高さを合わせてやり、見た目は上履きと少し弱々しいイメージだが、強度がダイヤモンドという本当に不思議な義足を完成させる。


 日本なら、晒されて炎上するかもしれない使い方だろうが、かなり上手くいったので良しとしたい。


 長めのズボンで義足との連結部分を上手く隠しつつ、コックシューズに義足上履きバージョンを入れていく。


 さすがに難しいかと考えていたが、思ったよりもあっさりと履くことができた。

 上下にスライドするようにわざと固定せず、上履きの内側に鉄金具で繋いだ薄板を忍ばせたのが正解だな。


 俺は、【ストレージ】から、ロング麺棒を取り出すと支え代わりに杖として掴み、ベッドフレームを反対の手で掴む。

 そこから深呼吸をして、ゆっくりと重い腰を浮かすように立ち上がろうとする。


 しかし──立ち上がれなかった。

 義足はコックシューズにより、バランスを保つが、立とうとするとバランスがまったく取れずに立ち上がれないのだ。


「おいおい……嘘だろ! ちくしょう、マジか……」


 ロング麺棒を杖にしても前にフラつき、また、ベッドに座ることになる。

 コックシューズが転倒を防止してくれているが、それ以上に倒れることすらできない。


 最悪なのは、履くのは楽だったが、脱ぐことができなかったことだ。


 綺麗にハマったコックシューズを脱ごうにも足を上げられないからだ。

 足の筋力だけで上げようとするが、どうしても上手くいかず、それは防音の魔導具を解除できないことを意味していた。


 結果からいえば、食事を運んできたメイドさんに助けてもらった。

 自分で外せなかった義足を外してもらい、防音の魔導具を止めてもらうことで何とかなった。


「キンザン様、次からは私達に一声掛けてから、色々とお試しください」とメイドさんから言われてしまった。


 嫌そうな顔はしていなかったのが救いだが、イタズラっ子を見る姉か母親みたいな表情だったため、罪悪感が半端ないな。


 そうこうしてるうちに、昼を告げる鐘がなり、俺の午前中の努力が失敗した事実をさり気なく実感させられた。


 失敗は成功の母、みたいな言葉があるが現実で向き合うとなんともやるせない気持ちになるものだ。


 今も冷静なのは、俺には嫁ちゃん達という信頼できる強い存在がいるからだろう。


 そこまで思った時に扉が叩かれ、返事をする前に開かれる。


 部屋に入ってきたのは、ナギとベリーの2人だった。他の嫁ちゃん達の姿がないため、少し不安になるが、そんな不安はあっという間に無用だと理解した。


「キンザンさん。2人でお見舞いに来たわよ。具合はどうかしら、落ち着いた?」


「ベリー、悪いな。ナギもありがとうな。何とかな、っても、朝から大失敗で中々だがな」


 朝からの流れを話すと少し呆れ気味にベリーが喋り出す。


「1人でなんでもやろうとするからでしょ、まったく、それで新しい怪我とかしたら、笑えないからやめてよね? まぁ、未遂なら良かったわ」


「マイマスター、ナギ、泊まろうか? それなら、無理しないでいい!」


「ナギ、ありがとうな。ただ、さすがにそれはアレだから、ベリーも心配かけて悪かったな」


 そんな会話をしながら、俺の横に置かれた車椅子を見たベリーがナギに何かを指示する。


「わかった。マイマスター、少しごめんね」


 謝ると同時にナギに抱えられる俺、久しぶりのお姫様抱っこスタイルになると、すぐに手作り車椅子へと座らされる。


「うんうん。これなら、移動も楽ね」


 そんなベリーの呟きにナギが不服そうに車椅子に視線を向ける。


「マイマスターを運ぶのはナギの役目だったのに、残念……」


「違うわよナギ? アナタが車椅子に乗ったキンザンさんを連れてくのよ! 安全に動かすために練習するのよ。頼めるかしら?」


 不満そうな表情から一変して、明るくなるナギにベリーが親指をグッと立てる。


 こうして、午後は車椅子に乗せられた俺を部屋の中だけになるが、ナギに押してもらい移動の練習をすることになる。


 広くない部屋でありながら、車椅子を走らせる程度には広いのだから、俺が使っているこの部屋には驚かされる。


 そうしてるうちに、昼食が運ばれて来ると、ナギとベリーの2人もさすがに一旦、退出するようだ。


「私達も少し食事をしてくるわ。また来るわね。あと必要なものとかがあれば言ってね」


「ナギは、マイマスターといたい……でも、我慢する。また来るから、ナギを忘れたらダメ!」


「ベリーありがとうな、今は多分大丈夫だから、必要なものがあれば伝えるよ。

 ナギ、忘れたりしないし、また来てくれるのを楽しみにしてるからな、むしろ来るのを忘れないでくれよ」


 2人に挨拶を済ませてから、俺はベッドに寝かされるとベリーとナギは部屋を後にした。

 少し寂しそうなナギが可哀想に見えたがこればかりは仕方ないな。


 そうして、ベッド横のテーブルに置かれた昼食を食べることになる。


 一つわかったことがある。車椅子だが、尻がかなり痛くなるため、クッションが絶対に必要だという事実とベリーとナギの2人が見せる笑顔にまた癒されて救われたという事実だろう。

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