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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
7章 繋がりの先に、女神の心と紡がれる道

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188話、戦場の調理

 俺達と反対側に逃亡したゴブリンライダーに対して対処に向かったのは、ナタリーさん率いる女性中心のパーティーであり、俺達より先に森の中に向かったようで、若干心配したが間もなくゴブリン達を討伐して戻ってきた。


 大剣を使ってるが、ゴブリンライダーに追いつく脚力は素直に化け物だなと女性相手に失礼なことを考えてしまったことは内緒だ。


 どちらにしても、最初の奇襲で早くも数名のサポート役の冒険者に怪我人が出た事実がその場に広がっていた。


「くそ、索敵してた奴らは何してやがったんだよ!」

「見張りの連中も、なんであの数のゴブリンどもの接近に気づかねぇんだよ!」


 声を荒らげたのは、素行の悪そうな冒険者達だった。しかし、彼らの発言にも一理あるんだよな。


「黙らんか! 文句を言うなら、お前らが次の見張りをやるのか! 命を懸けてるのはお前らだけじゃねぇんだぜ」


 ジールさんの強い口調と言葉、しかし、今の状況では、この発言は悪手だろうことを俺は理解していた。


 性格から考えれば、悪気はないであろうジールさん。だが、受け取る側はそう思わないだろう……


「ふざけんな! ギルマスだからって黙ってりゃ! 金貨数枚でこんなことやってられっかよ」


「俺達『邪龍の爪』は今をもってレイドクエストを放棄する。レイドクエストには、参加拒否の権利と離脱の自由があるからな? 文句はないよな、ジールさんよう?」


 不敵に笑う冒険者の男達、反対にジールさんは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。


「キサマら……本気で言っておるのか、今は緊急事態だってのに」


「俺達は別に[ボルドール]の生まれってわけでもなけりゃ、愛着もねぇんだわ。冒険者は自由だからな」


「クッ……」


「──っと言っても、俺達も心が無いわけじゃないからよぅ、報酬で俺のパーティー『邪龍の爪』のメンバーに、そうだな……一人、金貨20枚出すなら、残ってやるよ。本来なら30枚って言いたいが、優しいだろ?」


 男と他のメンバーと見られる連中が悪い笑みを浮かべていくと、ジールさんの目が怒りに見開かれるのがわかった。


「返事なしかよ? なら、俺達は行くぜ。じゃあな」


 男と『邪龍の爪』のメンバー達が立ち去ろうとした瞬間、ジールさんが口を開こうとしたが、それをキールさんとナタリーさんの両者が同時に静止した。


「ジールさん。ダメダメ、あんな奴ら、どうせ使えないからさぁ、数は減っても問題ないさ。そう思うだろナタリー?」


「だね、正直、あんなヘナちん共なんて、いても足でまといにしかならないさ、いなくなって正解さ」


 問題が起きてからの『邪龍の爪』の発言と行動はその場に不穏な空気を漂わせていた。


 俺はその場の空気を過去に経験していた。プロジェクトのミスから、大勢に責められた先輩、新人の俺はなんにも言えずにただ、無言で見ていることしかできなかった。


 人はこの空気の中では本来の気持ちや感情を表に出すことができなくなるし、出したとしても、上手く言葉を運ぶこともできなくなることを嫌って程に俺は知っている。


「はぁ、ジールさん。火を使わせてもらっていいですか?」


「ん? あ、あぁ、構わねぇが……まだ夜には早いぞ」


「温めるための火なんで……ミアとニア、ナギとペコ、ミトとグーのペアで警戒を頼む。もしなんかあれば、派手に教えてくれ」


「「え、私達は別々ですか?」」とペコとグーが質問をしてくるので、優しく微笑んでから返事をする。


「今回は戦闘より索敵や警戒がメインだ。だから2人にはその際のサポートとして、二手に分かれてもらうが、ダメか?」


「「だ、大丈夫です!(だよ!)」」


 この組み合わせの理由としては、やはり戦力的なことを考えてだ。

 ナギとミトを組ませた場合、冷静な判断は期待できないというのが理由だ……この二人は好戦的過ぎるからな、同様の理由でドーナは俺の側に待機させている。


 見張り役を6人の嫁ちゃん達に任せ、他の冒険者達も同様に動いていく。


 『烈火の牙』の4名も同様に周囲の警戒を行い、攻撃隊として、キールさん指揮のチームとナタリーさん指揮のチームがゴブリン狩りを開始する。


 俺はその間に、干し肉入りの鍋を温めていく。既に塩気がたっぷり流れ出した湯から干し肉を取り出していく。


 干し肉を柔らかくする際には水を入れ替えるのが大切になるため、再度水を入れ替えた鍋で柔らかくなるまで煮ていく。

 ちなみに水を変える理由としては、臭いの問題もある。よくも悪くもニオイが強いため、最初の水で煮込み続けると全てが台無しになりかねないからだ。


 そこから取り出した干し肉だったものを休ませている間に大量のパスタを“買い物袋”から取り出して茹でていく。


 茹で上がりは、柔らかめにする。アルデンテもいいが、硬めの麺にするといざって時に詰まったりしたら目も当てられないから、柔らかめを選択する他ないのが理由だな。


 パスタはベリー達に任せて大量に作ってもらっている間に、俺は手早く、干し肉だった物を刻んでいくことにする。

 刻んだ肉に胡椒と“買い物袋”から取り出したマヨネーズを加えて混ぜ合わせていく。

 次に細切りにした玉ねぎをフライパンで大量に炒めていくことにする。

 玉ねぎの匂いとニンニクの香りが森に広がるが、本来この二つの香りは魔物避けに使われる植物に似ているため、逆にガンガン使うことができる。


 俺の知識にあるゴブリンってのは、この匂いも好みそうだが、こちらでは違うらしいな。


 次第に食欲を掻き立てる匂いに冒険者達からも興味深そうに視線を向けてきている。


「なに作ってんだ? 細い紐だよな?」

「わかんねぇが、腹がすく匂いだな。ちくしょう」


 そんな言葉がちらほらと聞こえる最中、俺は調理の手を早めていく。


 炒めた玉ねぎとニンニクが入ったフライパンにパスタを加えて炒めていき、数人分の皿にパスタを盛り付けていき、その上に肉とマヨネーズのソースを乗せていく。


 この工程をひたすら繰り返し、大量の皿に盛られたパスタが出来上がっていく。

 周囲に広がるニンニクのスパイシーな香りとマヨネーズが軽く溶けだした香りが胃袋を刺激していくのがわかる。

 それは見ていた冒険者達も同様なのだろう、パスタを見る冒険者達の視線がそれを物語っていた。


 冒険者から“ゴクリッ”と、音が聞こえてくるようだったので、そろそろ声をかけることにする。


「見張りの方は後になりますが、食べられる方は順番に食べてください」


 悪い空気に包まれたこの場の雰囲気を吹き飛ばすのに十分なインパクトを放つパスタが次々に振る舞われていく。


「なんだこりゃ、美味すぎるだろう! 食べたことねぇぞ」


「こんな美味い飯は初めて食べたぞ」


 冒険者達は笑みを浮かべ食べていく。ジールさんは危うくなっていた空気が変化した事実にホッと安堵をしていたように見える。


 そうしている間にキールさん達のチームとナタリーさんのチームが戻ってきた。


「おいおい、なんで皆、皿を手に頬膨らましてんだよ……」


「本当になんなんだい。アタシ達が必死にゴブリン狩りしてるって時に……」


 状況が分からない様子の二人とチームメンバーに冒険者達が笑いながら声を掛ける。


「ナタリー、キールも、食べてみろよ! これ、本当にすげぇんだよ」

「俺達は食い終わったから、ゴブリン狩りに向かうからよ! 美味い飯食ったら、働かねぇとな」

「おう、ならしっかり働いて、また美味い飯くいに戻れぞ!」


「「「おおぉッ!」」」


 食事を終えた冒険者達の異常な士気の高さにキールさんが呆然としていたが、ジールさんが二人のチームメンバーも含めて飯を食べるように口にする。


 こうして、キールさんとナタリーさん、チームメンバーの皆さんも特別即席パスタを食べることになる。


 残念なくらいにキールさんが頬を膨らませて食べる姿を見て、ナタリーさんが無邪気な笑みを浮かべる姿はこの殺伐としたゴブリン討伐クエストに新たな光を差し込ませたように感じた。


 俺達も全員で食事を済ませるとゴブリン討伐に向かうため、森の奥へと足を踏み込むことになる。


 腹を満たしたら、食後の運動といくかな。まぁジョギングと違って命懸けなんだがな、気合い入れないとな。

読んでくださり感謝いたします。

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