183話、ギルドのホントに駄目な奴
[ボルドール]の『冒険者ギルド』に到着した。
既に旨味のあるクエスト依頼などは早朝に取り尽くされているのか、ギルドと併設した酒場に数名の冒険者達が酒を手に、賭け事をしているようで、『冒険者ギルド』は静まり返っていた。
すぐに受付カウンターに向かうと、退屈そうな受付嬢が俺達を応対してくれる。
「いらっしゃいませ。ボルドール冒険者ギルドへようこそ、依頼についての質問でしょうか? クエスト報告でしょうか?」
俺達の装備や人数から冒険者だろうと思っての質問だろう。
「いや、どちらかと言えば、忠告と報告になるかな」
「えっと、忠告ですか? 失礼ですが、一度、冒険者カードか冒険者証明書のどちらかをご提示いただけますでしょうか」
少し面倒くさそうな顔をしたのが分かったが、それでもしっかりと業務をしているため、余計なことは言わずに冒険者証を提示する。
「バリオンの冒険者様ですね、名前が……キンザン……? 少々お待ちください。少し確認するので、そのままお待ちくださいね!」
やる気の無さそうなイメージを吹き飛ばす勢いで二階への階段を駆け上っていく。
ギルド職員達は受付嬢が走り出し、二階へと急ぐ姿になにごとかと俺達へ嫌でも視線が集まってしまった。
正直、あまり視線を向けられるのは嬉しくないんだけどな、そんなことを考えていた俺の横から、修道娘こと、リーフが語りかけてくる。
「すみません……私はここまで来られたら大丈夫です。僅かばかりですが、護衛の対価を」そう言い、リーフは金貨を手渡してくる。
普段見慣れた金貨とは違い、古く見慣れない絵柄が彫られた金貨だったが、この世界にもバッカス以外の国があることは理解しているため、あまり気にせずに【ストレージ】へと収納していく。
「本当に大丈夫なのか? 王都までって話だったのに」
「キンザン様、大丈夫です。本当にありがとうございました。教会の転送陣を使って王都近郊の街に飛んでから、目的地を目指します。私から頼んだ依頼なのにすみません」
「いや、俺もこのまま、あの森を放置したらヤバそうだって考えてたから、すまないな。むしろ、リーフの判断はありがたいまであるよ」
互いに申し訳ない雰囲気を出しながら、頭を下げた後に、握手をしてから、リーフは『冒険者ギルド』から出ていった。
そんな俺に見て[ボルドール]の冒険者達がニヤニヤと笑い、大声を上げてくる。
「あはは、なんだよ。あの女連れの冒険者、女に逃げられて頭下げてやがるし、あはは!」
「笑うなよ。可哀想だろ? それに他の女がいるから、痛くも痒くもねぇんだろうさ」
「だな! おい、オッサン! 俺達にも貸してくれよ。あははは」
二十代くらいだろうか? ガラが悪く粗暴な態度の冒険者の3人組がバカにしたように笑ってくる。
俗に言う三馬鹿トリオみたいな奴だろうか? まあ、[バリオン]でも最初の頃はこんな感じに絡まれたから、あまり気にもしないが……
そんな呆れた俺の視線を見て、肩を軽く落としたポワゾンが一歩前に出ると汚物を見るような冷めた目で男達を見下していく。
「モテない殿方は惨めですね。言葉は下品で顔もそこそこ、何よりも、こんな時間から酒を飲んで負け惜しみのおねだりだなんて、見ていて無様でしかないですね」
うわぁ……言っちゃったよ、この毒メイド……
冒険者側の3人組も真っ赤になってお怒りのようで、俺達に向かって歩いてくる。
ただ、俺も話し合いで解決なんて、甘い結果にする気はないため、ポワゾンの前に出て、後ろに下がらせる。
「おうおう、言ってくれんな! メイド服のネェチャンよ。冒険者なめてると痛い目に合うってわかんねぇみたいだな!」
「みたいだな、おい、オッサン! 黙ってその女を置いて行けば、他の女は許してやるから、消えろよ」
「優しい提案してやってんだ! 早く消えろよ。オッサン! メイド女は、たっぷり遊んでやるからよ」
冒険者とは思えない、いや、冒険者だからなのか、凄まじいゲスっぷりに俺はただ、怒りに拳を握り、眉間にシワを寄せた。
「言いたいことはそれだけか? なら、表に出ろよ。さすがに俺の大切な嫁をバカにして、五体満足でいられると思うなよ!」
争っている場合じゃないだろうが! と、普段なら冷静な判断もできただろう。
相手の強さや実力を確かめずに戦うなんて愚かなこともしないだろうが、今回は久々に絡まれたこととポワゾンが言い過ぎたとしても返し方が許せなかった。
冒険者側は俺を軽く見ているのか、さらに悪態をついて口を開く。
「言うじゃねぇか! なら、オッサンが負けたら、俺達はお前の女を今から明日まで一晩好きにさせてもらうかな」
「お、いいねぇ。胸が無いやつもいるが、それはそれで楽しめそうだな」
「文句は無いよな! あははは。楽しい夜になりそうだ」
俺は冷静に考えていたら、こんなことにはならなかっただろうが今さらと思う。
仮に黙っていてもポワゾンをよこせと言われていたので、俺からすればその時点で我慢の限界だったことに変わりないだろう。
「悪いが、負けた時は金で解決させてもらうことにするよ。いくら欲しいか先に言えよ? 嫁は賭けられないが、お前らが好きな女を好きなだけ抱けるくらいの金は賭けてやるよ」
「生意気なオッサンが、今さらビビってんじゃねぇよ」
「まあ、待て。なら金貨1000枚だ。間違えんなよ! 一人に1000枚だからな!」
「そんな大金あるのかよ? あはは、払えない額を賭けても仕方ないだろうが?」
「払えないなら、女を奴隷娼館に売れば済むだろう。その金で俺達が遊んでやるからよ。だははは!」
俺は何にも言い返さず、ギルドから外に移動する。
本当に、なんでこんな奴しかいないんだろうな……冒険者ギルドには、性格診断も入れた方が絶対にいいと思う。
俺と距離を取るようにして身構えた3人の冒険者達は武器を構える。
長身の大男が両手斧を構え、太った男が盾と剣を構えており、最後に槍を構えた痩せた男がニヤリと笑っていた。
「とりあえず、聞いておくが、命のやり取りをする気じゃないんだよな?」
俺の言葉に男達はニヤニヤと笑う。
「構わないさ。確かに命のやり取りなんてして、警備兵団に捕まるのは面倒だからな」
「いいから、早くやろうや? てか、1人でいいのかよ! なんなら、女達を参戦させるか? ひん剥いちまうかもしれないがな」
互いに笑い合う男達に俺は黙って、『調理用ゴーグル』を着ける。
「いいから、早く来いよ。ギルドの受付が帰ってくる前に終わらせたいからな」
挑発されたと思ったのか、男達は一斉に走り出してくる。
両手斧を力いっぱいに振り下ろしてくると、地面に刃先が触れて、抉るように地面が削られる。
だが、その一撃を容易く回避した俺に次は剣を構えた男が駆け出してくる。
単調な剣筋であり、普段から嫁ちゃん達と戦いを共にしている俺からすれば子供のチャンバラにしか見えない。
「はぁはぁ、くそ、なんて速いやつなんだ! 逃げてんじゃねぇぞ! 」
「チッ! 3人でかかるぞ!」
一斉に襲い掛かる3人組に俺は武器を【ストレージ】から取り出すことにする。
取り出した武器は愛刀である竜切り包丁だ。
料理以外に使うのはあれだろうから、刃先には鞘がついたままにしてある。
早い話が、竜切り包丁として使うのではなく、鈍器として今回は使用する。
3人組も予想外の武器を目の当たりにして、足の運びが僅かに遅れたのが理解できる。
そのため、俺は容赦なく、その隙を狙わせてもらうことにする。
正面から並んだ3人組を横薙ぎ払いで一気に吹き飛ばし、さらに駆け出して吹き飛んだ3人組に向けて【身体強化】をした拳を叩き込んでいく。
「悪いが、俺の女に手を出す奴に手加減はできないんだよ!」
既に気絶寸前で地面に転がる3人組の冒険者に鬼の形相の俺がそう口にして近づいていく。
周囲からは悲鳴に似たような声が叫ばれていたが、今の俺は、そんな視線など、まったく気にする気はないのだ。
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