180話、冒険者パーティー“烈火の牙”
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商業都市として名高い夢を叶えるための足がかりの街、ここは[バリオン]。
私達は16歳になり、[ヤヌンバ]の町から、この[バリオン]にやって来た。
目的は一攫千金つまりは、冒険者になることだ。
[ヤヌンバ]の町にたまに来る冒険者達を見て、私は幼馴染みである4人でパーティーを組んで冒険者になるとずっと決めていたんだ。
私はハウル、新米の冒険者として、この街にやって来た。
冒険者になる前の話だが、角ウサギと偶然出くわした時は人生が終わると思った。
子犬サイズの一角が生えたウサギ、真っ赤な目に長い前歯、見つかった際には、かなり距離があり、逃げようと考えたけど、魔物の速度を初めてその目にした時、逃げるのは無理だって空っぽの頭でも理解できた。
私の震えた手から落ちた汗で地面が濡れていくのを感じる。
嫌な汗だったのを今でも忘れないし、二度と忘れられる気もしない。
一気に私に向かってくる角ウサギ、鋭い角が眼前に迫り、咄嗟に身体を左に寄せた。
その判断がなければ、私の片目は失明していたかもしれないし、その一撃で即死してるなんて、結末もあったのかもしれない。
真横を鋭い槍が掠めるように通り抜けた角ウサギが地面を蹴り、再度こちらに振り向くと同時に駆け出してくる。
再び感じる命の危機……こんな簡単に私は殺されるのか、死にたくない、死にたくない! 死にたくなんかない、助けて、助けて、助けてよ、誰か……
一瞬で多くの思考が駆け巡る、いや、通り過ぎていった。
「諦めんな! バカハウルゥゥゥゥッ!」
私の耳に聞こえた声、聞き間違うはずがない、レイトだった。
普段、喧嘩もするし、一緒にイタズラもする。今日の朝だってつまらない喧嘩をしたばかりの幼馴染みだ。
「レ、レイト……駄目!」
「うるせぇぇぇッ! いいから、目を開け! 諦めてんじゃねぇ!」
予想外だったし、誰にも知られないまま死んじゃうんだって、思った……なのに、なのに……私は泣いていた。
レイトに言われた通り、目をしっかりと開く。既にターゲットは私からレイトに移っていたのだろう、一角ウサギは悩まずに走ってくるレイトに向かっていく。
「だ、だめ! レイト、逃げて!」
「ハウルを泣かしてんな! バカうさぎ!」
レイトの手に握られた木の棒が力任せに振り下ろされる。
そんな全力の一振が簡単に回避され、武器を手にしているためか角ウサギが距離をとるように後ろに後退していく。
このまま引いてくれたらっと、2人は頭で考えていた。
しかし、別に方向から私達に向かってくる人影が2人、アルラとハインだった。
角ウサギが再度、ターゲットを2人に向けた瞬間、私は体内が焼けるような感覚に襲われた。
助けたい、大切な友達を、幼馴染みを死なせたくない……そう思ったと同時に小さな火球が頭に思い浮かび、私は悩まずに手を角ウサギへと伸ばしていく。
一瞬で体内からすべてを搾り取られるような感覚が全身を襲い、伸ばした腕へと収束する。
私の手から放たれた火球が一直線に角ウサギへと向かい、炎が角ウサギを包み込んでいく。
力が全身から流れ出したような感覚に私は力なくその場に倒れ込んだ。
すぐに3人が私を担ぐようにして、町に連れ帰ってくれた。そのまま治療院に運ばれた私、その際には既に意識はなかったため、後にこっぴどく両親に叱られた。
スキル取得ができたことを3人は黙っていてくれたようだった。
大人達は誰も私のスキルについて聞いて来なかったし、なんなら、角ウサギは逃げていったと言う風に伝えられていた。
それが私達が初めて、魔物と全員で倒した日の思い出だ。
それから数年が過ぎて、私達は自分達なりに木製の武器を作り、模擬戦を繰り返していく。
仲間の1人に魔法の才能があったこともこの時の模擬戦で判明した。
才能を開花させたのは、アルラだった。
しっかりと勉強していたようで、魔法詠唱を毎日繰り返していたため、本当に喜んでいた。
レイトとハインは、魔法に対する才能がなかったけど、元々2人は前衛希望だったので魔法には興味ないようだ。
レイトは剣士を目指し、ハインはタンクを目指して鍛錬をしている。
私は微かな回復魔法を取得することができていた。回復役と戦士役を兼用する立場の私はスキル所有者であり、皆の指揮をする立場になってしまっていた。
そうして、さらに月日が流れて、私達は16歳になった。
全員が16歳になったと同時に私達は[ヤヌンバ]から拠点を[バリオン]に移すことに決めた。
ゴブリンや角ウサギなんかに負けることもなくなり、私達は冒険者パーティー『烈火の牙』として活動を開始した。
そうして、『烈火の牙』は簡単な討伐依頼をこなしていく。
先日、私達はFランクからEランクに上がり、幾つかのクエストをこなして、いよいよ次のランクつまりは、Dランクに上がるために護衛任務を経験する必要があった。
条件クリアのために乗り合い馬車の護衛を引き受けることに決めた。
護衛任務なのに報酬はかなり安い。
中級冒険者なんかは受けない不人気依頼の一つだ。
ただ、それは中級冒険者から見た視点で、安くても下級冒険者からすれば、安全に護衛任務経験ができるので新米には人気な依頼なのは間違いない。
新米冒険者が護衛任務を担当できることは少ない。さらに複数混合の護衛依頼になれば、間違いなく邪魔者扱いされて、ひどい場合は働きに難ありと、『冒険者ギルド』に報告される場合まである。
普段はすぐになくなる護衛依頼だったけど、運良く今回はそのクエストにありつけたというわけだ。
皆で気合いを入れていく。
「よし、この依頼クリアでオレ達もGランクになれるんだ!」
「ちょっと、レイト? まだクリアしてないし、気を抜かない。護衛任務が終わるまでは、気を抜いてミスしないのが大切なんだからね」
「そうだよぅ! アルラちゃんの言う通りだよレイト君! 護衛任務は泊まりも含めて二日の任務なんだからね」
私以外の3人が賑やかに騒ぐ姿に少し不安もあるが、私達は既に多くの魔物を倒してきているからだろうか、護衛任務でも問題はないだろう。
乗り合い馬車自体にも、『魔除けのランタン』と言われる魔物避けの魔導具がつけられているので、護衛任務として、相手をするのは基本、野盗や山賊といった対人戦がメインになる。
少なくとも、人を相手にしても負けることはないので、まぁ問題はないだろうから、あるとすれば、予想外のトラブルだけだろう。
どちらにしても、全力でやるだけだろう。
「さぁ、皆時間だよ『烈火の牙』として、やり遂げるよ!」
「「「おおぉ!」」」
馬車の後部にある4人用の席に座り、[バリオン]から馬車が進んでいく。
馬車がガタガタと揺れていくのが少しキツいが、それでも、何ら問題はないだろう。向かう先は、隣街である[ボルドール]だ。
長い護衛任務なら、数日から数週間なんてものもあるため、一日、二日なら可愛いものだろう。
馬車が数名の冒険者パーティーだろう人達を追い越していく。
二度見するほどに大きな亜人の女性を連れており、パーティーメンバーの半数が亜人種という不思議なパーティーだった。
猫人族に鬼人族、大きな女性の種族は分からないが蛇のような尻尾があり、鋭いギザギザの歯を剥き出しに笑う女性、先頭を歩くのが冴えない男性だったのもかなり印象的だった。
「冒険者も色々だよね? 複数混合クエストにでもいくのかな?」
「ハウル、さっきのパーティーが気になるの? どうかなぁ、だって、みんな固まってたし、一つの大所帯パーティーとか?」
「ありゃ、間違いなく奴隷商人だろ? オレにはわかる。男が主で、きっとスケベ野郎に違いないな」
「はぁ、レイト君……ハウルちゃんにアルラちゃんも、あの人達を知らないなんて仕方ないなぁ。多分、あの人達が有名なキンザンパーティーだよ」
「ん? キンザンパーティー、誰だよそれ? オレは知らないんだけど」
レイトが不思議そうにハインに質問する。
「まったく、[バリオン]の英雄パーティー[フライデー]って言えば分かりますか? 先程の方々が多分、そのフライデーの方々かと」
「マジかよ! 英雄パーティーがハーレムパーティーなのか!」
そんな会話が終わろうとしていた時、“バリンッ!”とガラスが砕けるような音がする。
いきなりのことに身体を震わせた瞬間、急な浮遊感が身体を襲い、馬車が大きく傾くのを感じた。
倒れた馬車から素早く外に出て周囲を警戒する。
馬車を見ると『魔除けのランタン』が割れており、馬車が通ってきた道には大きめの石が置かれており、その先に深い穴が掘られていた。
「馬車を倒すためにあんな穴を掘ったの!」
「おい! ハウル、ゴブリンだ! ゴブリンアーチャーもいるみたいだ」
「わかった。ハインは、アルラのカバーを頼む! レイトは私と正面からぶつかるわよ!」
ゴブリンの大群が私達に迫ってくるのがわかる。
嫌な笑い声が周囲から響き、私達に緊張が走る。
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