177話、まさかの教会と修道娘
俺達は、店の心配も無事に解決したので、いよいよ目的地に決めた王都に向かうことにする。
今回は王都が目的地なので、フライちゃんの転送陣を使わずにしっかりと教会を使って向かうことに決めた。
ただ、俺は[バリオン]の教会を使うのは少し嫌だったが、仕方ないとため息を吐いて支度を済ませていく。
準備を済ませてから、俺達は全員で教会へと向かう。
以前に長く屋敷を空けてしまったため、ひどい状態になってしまったが今回は、[カエルム]に向かった際にダイン達に暇があれば、屋敷に出入りしてくれるようにも頼んでいる。
ダイン達は、最初は首を左右に全力で振っていたが、理由を話すと、屋敷を一周して戻るということで話がついている。
「なぁ、オッサン? 王都ってどんな感じなのかな?」
「え、いや、俺も行ったことないから分からないが、多分、綺麗なんじゃないかな?」
「綺麗って、そりゃそうだって話だろ、まぁ確かにボクと出会った頃は迷子だったし、知らないよな」
「皆様は、王都に行かれたことがないのですね? ご主人様なら、一度はあるかと思いましたが、想定外ですね」
「「ポワゾン様は、王都に行かれたことがあるんですか!」」
「ありますよ。まぁ、ちょっとした仕事でしたが、危ない追いかけっこや、騙し合いを楽しんだ思い出がありますね」
うーん、仕事でって話だが、以前のポワゾンを思い出すとロクなことしてないだろうな……
「誰もじゃないにゃ! ニアは行った事があるのにゃ!」
これでもかと、少ない胸を張るニア、そのドヤ顔は堂々たるものであり、何より、予想外の言葉に俺も他の嫁ちゃん達も口をポカンと開いてしまった。
「な、なんで、そんな顔をするのにゃ! ニアはこれでも猫人族の部族長の娘なのにゃ! なんか、悲しいにゃ〜、納得いかないにゃ〜!」
少し可哀想な気もしたが、まぁ、今回は気にしないようにしよう。
なんというか、扱いが可哀想だが、嫁ちゃん達も気にしてないようなので悩むのをやめた。
そんな会話を若干一名を除いて楽しみつつ、教会に到着……ん? 教会がない?
俺達が到着した教会があったはずの場所は、ひどくボロボロの廃墟になっており、周囲には無惨な姿の瓦礫が散らばり、派手な戦闘でもあったのかと疑う程の光景が広がっていた。
「なんじゃこりゃ!」
「キンザンさん、変なシリアス顔しないでよ、キンザンさんがやってもさまにならないわよ?」
ベリーからの辛口なツッコミをもらいながら、俺達は何があったかを調べることにした。
本当なら、諦めてフライちゃんの作った転送陣で癒しの街[カエルム]か、砂漠のオアシス都市[ガルド・ゼデール]に飛んでから、あちらの教会を使ったり、他の移動手段を使えば済むが……
さすがにこの状況を見て無視なんてできないため、ため息を吐きながら、瓦礫の山になった教会だった場所を調べていく。
ただ、気になるのは、こんなに激しい状態で教会が破壊されているのに、なんで騒ぎになっていないのか、さらに言えば、どう見てもここ数日の出来事だろうことは明らかなのに、俺達も気づかなかったのかってことだ。
この教会の位置は、『調理師ギルド』に向かった際にも軽く遠回りした際にも確認していた。
ちなみに、ベリーとポワゾンと共に遠回りをしたのは、他の嫁ちゃん達には内緒にしてある。
理由はベリーとポワゾンから、「珍しく独占できたんだから、付き合いなさい!」と言うことらしい。
そんな、こんなで間違いなく、教会の存在を俺は[バリオン]に戻ってから確認しているのだ。
それから、俺はずっとこの街にいたため、こんな派手なことがあったなら、気づかないはずがない。
瓦礫をどかして先に進むと、以前に来た女神像の置かれた礼拝堂だった場所に辿り着く。
見てみれば、歴代の女神像には傷一つなく、美しい姿のまま微笑むようにして並べられていた。
「不思議な話だな……こんだけ派手に壊れてるのに女神像はそのままって、不思議な防御スキルか魔法みたいなのがかかってるのか?」
疑問ばかりが次々にみつかるが、答えがまったく見えない。
すべてのピースを見ても、形が分からないパズルをやってるような気分になる。
日本にいたなら、絶対に考えないような思考の仕方になるが、それでも考えないといけないと感じてしまうのが現状なのだ。
嫌な予感と悪寒を感じながら、慎重に調べていくことになる。
「なぁ、なんで、このミト様まで、瓦礫掃除をしないとならないんだよ! フライのやつに飛ばしてもらえばいいだろうが!」
「わたしを“やつ”扱いはやめてください! まったく、それに、わたしも王都に直接、転送陣を作るような愚かな行為は、さすがにしないですよ」
軽く言い合いをする2人、本気でないのはわかっているが、俺の嫁ちゃん達は本当にマイペースだよな……
瓦礫をどかしながら、何があったかを調べていると背後から声をかけられる。
「あ、あの、何をしているんでしょうか……」
俺達が入ってきた礼拝堂の入口側からの声はひどく震えていたが、こちらに届くか分からないような声量で言葉が向けられていた。
声の方に俺が振り向くと、“ビクっ!”と全身を震わせる女性が立っており、歳で言えば、17、8歳程度だろうか?
修道着であろう服を纏っているため、この教会の関係者であることは間違いないだろうが、俺の記憶には、女性を見た覚えがない。
「あ、あの、アナタ達は、本当に誰ですか! ここは教会ですが、見ての通り金銭なんかありませんよ……」
力なく、最後には泣き出しそうな声になってしまった修道娘に俺が近づきながら、愛想良く声をかけようとすると、ナギが凄いスピードで入口付近に移動する。
「ナギ達は悪い人じゃないよ?」とナギが言い終わる前に修道娘が白目を向いて後ろ向きに倒れてしまった。
幸いナギが素早く抱き抱えたので、頭部を強打することはなかった。
ただ、慌てるナギが「マイマスター大変、死んじゃったかも」なんて言い出すから、本当に焦ったが、単なる気絶だとわかってホッとしたのは言うまでもない。
修道娘が目覚めるまで、できるだけ礼拝堂の片付けをしていくことにする。
やはりと言うべきか、この教会は天井から何かをされて破壊され、正面入口も同様に内側から吹き飛ばされているように感じた。
感じたままの感想になるが、何かが、天井を破壊して、なんの目的もなく、出るために出入口を破壊して去っていったのだろう。
俺の考えに嫁ちゃん達も同様の考えを持っていたようだ。
答えが分からないが、仮にだが、この場にそんな 奴が舞い戻ってきたら、俺は嫁ちゃん達を守れるか不安になる。
だが、そんな不安と覚悟を決めた俺の背中に左右から“バンっ”と、強い衝撃が走る。
「おい、シケタ面してるんじゃねぇよ! 悩みまくりの暴走野郎が!」
「考えすぎたらだめなんだぞ! 皆いるんだからなオッサン」
背中に衝撃を与えたのはミアとミトであり、僅かな痛みを感じながらも、頼りになる嫁ちゃん達の笑顔に悪い思考が一気に吹き飛んで行くのを感じた。
「ふぅ、悪かったな。確かに悩み過ぎだったみたいだな。とりあえず、修道娘が起きるまで待つしかないな」
嫁ちゃん達が頷いて見せると俺も改めて頷く。
そこから、少しして修道娘が目覚めるのだが、そんな彼女は状況が分からないと言わんばかりに震えていた。
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