174話、やきもち?不安?まさかのご褒美
突然のエトランジュ襲来から、三日が過ぎた。
夜の麻婆豆腐をみんなで食べて、その日は屋敷の空き部屋に泊まってもらい、その次の日には、屋敷を後にしていた。
「いきなり悪かったのよね。長居すると、ずっと居たくなっちゃうから、私はそろそろ戻ることにするのよ」
最初と違い、しっかりと挨拶をしたエトランジュは、最後に俺に二つの袋を手渡してきた。
「えっと、これは?」
見た目は普通の布袋に見える袋を見ながら質問を口にしていく。
「本当は、アナタを[転生と転移の間]に来てもらった時に渡そうと思ってたんだけど、説明するのよね」
俺に渡された袋は“番の袋”という、アイテムらしい。
使い方としては、片方の袋に入れたものをどちらの袋からでも取り出せるというチートアイテムだった。
「誰かに渡すもよし、片方を固定の場所に置いて資材の移動に使っても良しの便利アイテムよ」
「こんな、すごいアイテムもらっていいのか?」
「かまわないわ、少なくとも、数百年は転移や転送みたいなことはこの世界には起こらないからね、使われない道具は不憫なのよ」
満面の笑みを浮かべたエトランジュは、嫁ちゃん達にも挨拶をしてから、クルッとツインテールと同時に踵を返すと歩いて[バリオン]の街へと消えていった。
見送った後にフライちゃんは少し寂しそうな表情を浮かべていた。
「やっぱり、久しぶりの知り合いとサヨナラすると寂しかったりするよな……」
他の嫁ちゃん達が屋敷に戻る中、俺がそう口にするとフライちゃんは不思議そうに俺を見つめてきた。
「なんで、エトランジュに寂しさを感じないといけないのですか?」
そんな返事、強がっている様子もないため、本心なんだろう……なら、あの表情はなんだったんだ?
「わたしは、きんざんさんにとって、唯一の女神だったはずなのに、エトランジュのせいで……その、女神ポジションが揺らいだ気がしただけです」
「はは、そんな理由だったんだな。大丈夫だよ。女神の知り合いが増えても、女神の嫁はフライちゃんだけだからな」
「きんざんさん、なんかフラグっぽいですけど、嘘だったら、本当に許さないですからね?」
「肝に銘じておくよ」
話が終わったので、俺は新しく手に入れたアイテム“番の袋”の性能を確かめていくことにする。
まずは、袋を二つ並べてから、金貨を入れた布袋を【ストレージ】から取り出して、“番の袋”に入れてみることにする。
入口に近づけた結果、金貨の袋はしっかりと吸い込まれていく。
そこから、色々なものを入れてみて、最後に“巨大ダイヤ”を入れても問題がないことを確認していく。
許容量は少なくとも、バス1台分くらいは軽くありそうだ。
外で色々と試すことになりわかった事実を踏まえて、思考を巡らせる。
「なら、やるべきことをやるしかないな、そうと決まったら、話してから行くとするか」
屋敷に戻ったフライちゃんを含めて、嫁ちゃん達に集まってもらい、俺は自分の考えを伝えることにする。
本来はこんな考えを口にするのはダメなんだろうが、今までを考えた結果なので、俺の考えを理解してくれることを願うばかりだな。
リビングに集まった嫁ちゃん達は、俺が真剣な表情で「話がある」と口にして集めたせいか、どことなく緊張した雰囲気になってしまったので、本当に申し訳ないな。
席に着いていたミアが一番最初に質問をしてきた。
「なぁ、オッサン……話ってなんだよ。まさか、ボク達から、その……エトランジュに乗り換える気かよ!」
「は? なんでそんな話に──」といいかけたと同時に不安な気持ちが爆発したのか、ミアの発言を聞いた、ドーナとニアが勢いよく立ち上がる。
「ダメなの! マスターはドーナ達の旦那様なの……捨てられたら、いやなの!」
「そ、そうにゃ! ニア達はずっとキンザンと一緒にいるって決めてるのにゃ!」
「と、とりあえず、話を聞いてくれ、みんな」
的外れな回答だったが、今までを考えると、そんな誤解が生まれても仕方ないかもしれない。
なんせ、嫁を増やしてきたからなぁ。
ひどい誤解を招いてしまったことも俺の行動が招いた結果だろうしな。ただ、今までもこれからも真面目に気持ちはしっかりと伝えていくつもりだ。
だからこそ、真顔で「話がある」って言い方をしてしまったんだが、また要らない心配をさせてしまったと遅れて気付かされた。
既に泣き出しそうなドーナに、不安そうな顔をするナギとペコ、グーの姿もあり、罪悪感がマックスになっていく。
話ができないくらいに泣き出したチビ嫁ちゃん達を前に俺がアタフタしていると落ち着いて話を聞いていたベリー達が声を出す。
「はあ、皆、落ち着きなさいよ? キンザンさんは私達に話があるって言っただけよ?」
「そうですね。ベリー様の言う通りです。皆様もフライ様やミトを見習ってください。ワタシ達が狼狽えることはご主人様に不信感を感じたと言っているのと変わらないかと」
ベリーとポワゾンからの言葉に感謝しつつ、本来伝えるべきだった話を進めていくことにする。
「なんか、誤解させちまったみたいで悪かったな、話ってのは店についてなんだが」
俺の話の内容が店舗についてだとわかるとミア達がホッとした表情を浮かべていく。
「なんだよ、脅かすなよな。オッサンが真面目な顔で「話がある」なんて、いうから本当に焦ったじゃんかよ」
「そうにゃ! 新しい女の子に飯を食べさせた後に「話がある」にゃ、って言われたら慌てるにゃ! 反省するにゃ」
なぜか俺のモノマネをしながら、怒られる理不尽を全身に感じながら、俺はそのまま話を続けていく。
「まあ、悪かったよ。それで本題だが、俺達が長期で出かけたりする際の話なんだが、『調理師ギルド』に頼んで店を開いてもらえないか頼もうと思ってな」
俺が考えているのは、簡単な話が代理販売だ。
そんな考えに行き着いた理由こそ、“番の袋”を手に入れられたからだ。
これがあれば、【ストレージ】から揚げておいた揚げ物や他の食材をその場に居なくても何とかできるからだ。
少し違うのは、品切れやトラブルに直接対応できないことだが、“番の袋”にメモを入れることで、簡単に距離を超えてやり取りが可能なため、リスクは少ないと考えている。
『調理師ギルド』が許可してくれれば、済む話になるため、ここからは『調理師ギルド』のマスターであるルンダさんの判断次第になるが、まぁ大丈夫だろう。
伝えたい内容を伝えると、嫁ちゃん達はなんとも言えない表情を浮かべていた。
「あれ? どうしたんだよ」
「え、いや、なんかさ、週一だし、なんなら、無理に店をしなくてもいい気がするからさ? オッサンって変に真面目だよなぁって感じるんだよな」
「そうね。まぁ、キンザンさんだから仕方ないわね」
「ですね。ご主人様ですから、ワタシはご主人様に従うのみですが、皆様はどうなさいますか?」
ポワゾンが質問をするように視線を動かしていくと、嫁ちゃん達、全員が頷いたのがわかった。
話が終わり、俺はその足で『調理師ギルド』へと向かうことになる。
大人数で行くのは、さすがにマズいという結果になり、今回は同行者として、ベリーとポワゾンがついて来ることになっている。
他の嫁ちゃん達も一緒に行きたがっていたが、今回は留守番と森での食材確保を頼んである。
俺、ベリー、ポワゾンの3人で『調理師ギルド』に向かう。
見慣れた街を歩き、普段と変わらない街並みにどことなく安堵の表情が浮かぶ。
いつも通りに『調理師ギルド』に到着すると受付嬢さんも慣れたもので、頭を下げるとスっと移動して、すぐに奥へと通された。
いつもと変わらない流れだが、ここからが今日の大一番だろうから、気合いを入れて交渉しないとな、頑張れ自分!
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