167話、湯けむり女子会
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「ふぅ、やっと終わったよ。ニアの方は上手くいってる?」
「大丈夫だにゃ! ミアの方こそ、やり残しはないのかにゃ?」
「ないよ! ボクも今さっき終わったからさ」
「にゃにゃにゃ〜。お疲れ様だにゃ」
ボクとニアの作業が終わって、集めた草をミト達が掃除してる庭側に運んでいく。
正直、草の臭いがキツい、本当に家を空けるだけでこれだから困るんだよなぁ。
「お、そっちも終わったみたいだな! ウチらの方もバッチリだからな! しかし、人使いの荒い旦那様め! 庭の手入れは庭師に頼めって話だろうが」
「ミトちゃん、マスターの考えがあるはずなの! 悪口は、メッなの!」
そんなやり取りをしてたら、オッサンの姿が外側に見えた。
「オッサン! 店の片付けは終わったのかよ? まさか、1人でサボってたんじゃないよな! それなら許さないよ」
「違うからな、店舗側もしっかり掃除してきたよ。みんなの様子が気になって見に来たんだよ」
「ならいいけどさ、まぁ、ボク達も掃除が終わったからね」
「そいつは丁度いいな、ならベリー達が風呂に入ってるはずだから、みんなも入って来てくれ、疲れただろうから、汗を洗い流して来てくれよ」
屋敷に巻き付いた草を剥がし終わったら、突然、風呂に入るように言われて、仕方なく風呂に向かうことにした。
風呂場には先に入ってたベリーとフライの2人が入れ替わりで風呂から上がるところだった。
フライはともかく、悔しいけど、ベリーには「何を食べたら、あんなにデカくなるんだよ!」って言いたくなるんだよな、まぁ言わないけどさ。
ボクだって、少しはあるんだけど、女として、完全に負けてるんだよなぁ……
「なによ? ミアどうしたのよ、気分でも悪いの?」
「大丈夫ですか? ベリーとわたしが、回復スキルを使いましょうか?」
「いや、大丈夫だよ。ボクのキズは回復スキルじゃ癒せないからさ、はは……」
不思議そうに首を傾げる2人に軽くため息を吐きながら、洗い場に向かう。
ニアとドーナはボクと違ってあまり気にしてないみたいだし、ミトとナギはそれこそ、最初からまったく気にしてないみたい。
なんか、ボクが一番小さい気がしてきた……いやいや、違うよな、違うはずだよね……
そんなことを考えていたら、後ろからニアが抱きついてきた。
「にゃにゃにゃ? ミアどうしたにゃ! 本当に疲れて眠いのかにゃ」
「うぅ、違うよ……ボクが、その一番、小さいかなって……」
どこかポカンとするニアの視線が軽く下に向けられる。
「はにゃ〜どんまいだにゃ。だ、大丈夫だにゃ、すぐに大きくなるにゃ!」
慰められた事実がさらに悲しくなるけど、それでも気にしすぎるボクが悪いと反省する。
少しして、湯船に体をつけていく。普段はオッサンの膝の上に座る形で入っているが、今回はナギの尻尾を借りて座らせてもらった。
それからすぐに、風呂の扉が開かれると屋敷掃除をしていたポワゾンとペコ、グーが脱衣場で休むベリーとフライに飲み物を持ってきていた。
そのまま、ボク達にも、飲み物を配ってくれた。
渡された飲み物は変わった味の紅茶だった。少し苦味が強いが、嫌な感じはしないため、ゴクゴクと飲んでいく。
ボクを含めて皆が飲み物を飲み干すとポワゾンが軽く手をパンっと叩いて全員の視線が向けられる。
「せっかく皆様で集まったのですから、少し話をしませんか? ご主人様も今は屋敷におりませんし」
「え、オッサン居ないのかよ! どこに行ったんだよ!」
「はい、ご主人様は[バリオン]の領主であるエヒト様の元に挨拶に向かわれましたので」
ポワゾンは長らく挨拶に行くと言いながら、行けていなかったため、領主エヒト・ダーノの屋敷に向かったと説明をしてくれた。
その話を聞いて、ボクはまた置いてきぼりにされたような感情に襲われていた。
ただ、皆も留守番だから、あまり考えたらダメなんだよな。
「そういえば、ご主人様と最初に出会ったのは、ミア様でしたね。ワタシが出会う前の話はあまり知らないので、よろしければお聞かせいただけたら嬉しいのですが」
その言葉に予想外にフライ以外の全員がボクに視線を向けてくる。
「な、なんだよ! ベリーだって、ボクとあんまり知り合った時期って変わらないだろ!」
「あら、そうだったかしら? でも、私が2人と知り合った時は凄く仲良くなったものね?」
ベリーの悪い笑みを見て、少し悔しくなったけど、ボクだけが知ってるオッサンを自慢したいし、何より、ボクが一番だって再確認することができる。
少しズルい気持ちがあるし、なんなら、皆からしたら、嫌な奴になっちゃうかもしれないけど、話さないと逆に嫌な奴になるかもって、わけわかんない!
「はぁ、オッサンとの出会いはすごい偶然だったんだよな」
ボクは[ヤヌンバの町]まで冒険者仲間のアンリと魔物の間引きをするためのクエストをした帰りに出会ったことを話していく。
「アンリって誰だ? ウチは見たことないけど?」
「あ、そっか、ミトとかナギは見たことないんだっけ?」
「話し声は聞いた。でも姿は知らない、誰?」とナギも首を傾げている。
「アンリは、エルフとドワーフのハーフで、簡単に言うとイケメンで高身長のドワーフ? って感じかな」
話が逸れたけど、それからオッサンに出会った頃の話を続けていく。
「最初に会った時、オッサンってば、すごい声で叫んで逃げ回っててさ、声を聞いて、慌ててアンリと向かって走っていったんだよ」
その話を聞いて、ベリーとフライちゃん以外の全員が凄い勢いで視線を向けてくる。
「おいおい、マジかよ? あの無茶苦茶野郎が逃げるようなヤバい奴がこの辺にいるのかよ!」
[バリオン]から[ヤヌンバの町]まではそんなに離れていないことを考えてだろう、ミトが大声をあげる。
その様子にベリーが軽く苦笑した。
当然だけど、ボクとベリーは、オッサンと会ったのは、ほとんど同時期なので最初の頃のオッサンを知っているんだよな。
「いや、ヤバい魔物なんていないよ。オッサンが叫んで逃げてた相手はウルフに乗ったゴブリンライダーだったからね」
「は? ゴブリンライダー……あのヤバヤバ野郎が? 叫んで逃げた相手が?」
理解できないと言った様子で困惑するミト。
「話を続けるよ。出会った頃のオッサンって、戦闘経験0でさ、ゴブリン相手に必死に逃げてたんだよな? ほら、一般人が魔物と対峙したら、そうなるだろ?」
そこから、ゴブリンを倒して助けた話をしていく。
「ドーナはびっくりなの! マスターが逃げる姿は見たことないの、ズルいの! ドーナも見たいのぉー」
「いやいや、落ち着いて欲しいにゃ、キンザンが逃げるような化け物なんて、ごめんだにゃ……」
「はいはい、話を逸らさないの? それで、ミアは助けたキンザンさんとどうして、あんなに仲良くなったのよ?」
ベリーがそう言い、話を続ける。
「それから、見張り役をして……それから、まぁ色々あって! そう、オッサンが作った飯が世界一美味かったりさ、フレンチトーストってやつが本当に美味しかったんだ」
そこから話をしていくと、フレンチトーストの味を懐かしく感じていた。
他にも皆には、話せないがオッサンの初めてをいっぱい持っているんだから。
だって、初めてオッサンと寝たのはボクだっていう事実だったり、アメってやつを食べさせてもらったり……お風呂だって、ボクだけの思い出がいっぱいなんだよな。
ボクの表情を見てから、ベリーが悪い顔をする。
「でも、一番最初に、肌を見られたのは私だと思うけどね?」
ベリーからの言葉にボクはすぐに口を開いていた。
「違うし! 最初に見られたのはボクだから!」
湯船から立ち上がりそう口にした瞬間、すごく恥ずかしくなって、すぐに湯船に座る。
「ふふ、本当にミアは全部一番なのよね? でも、キンザンさんの子供は誰が一番になるかは分からないけどね」
少し攻撃的なベリーに驚いたけど、ボク達は嫁って立場だから、そこに怒る気はない。
「負けないからね! ボクはオッサンの一番だからね」
「皆、同じ考えよ。だから、皆が幸せにならないとだものね」
会話がひと段落したと同時に「ただいま」と、オッサンの声が入口側から聞こえた。
気づけば、長く風呂に入っていたことに気づいて皆が慌てて服を着替えていく。
改めて、皆がオッサンを愛してるんだなって再確認することになったお風呂タイムだった。
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