164話、またやってしまいました。心を繋ぐ圧力鍋
本日二話目となります。よろしければ読んで下さいね。いつもありがとうございます。
蛇人族の集落、つまりはパピィさんの群れで開かれた大宴会が終わり、部屋に差し込む光。
外は既に星が輝いていた夜空から青空へと変わっていた。
昨晩は料理を作り続けた後に、蛇人族の人達が作ったデンジャラスな雰囲気のドレインワームの肉を使った煮込み料理を食べさせてもらい、そこら辺から記憶が曖昧になっている。
「ありゃ、なんだったんだ? ふぁ〜、とりあえず起きないと……ん?」
俺が朝の伸びをしようと手を伸ばした先にモチモチのフワフワな何かの感触が確かに触れる。
触れたというよりは、掴んだというべきだろう。
「うぅ……ん、お! 起きたのかい? ふふっ。昨日は本当に素敵だったねぇ。アタシ達、アマゾネスもアンタの前じゃホネ抜きにされちゃいそうだよ」
俺が掴んだ感触の先には横に寝っ転がり、軽く微笑むリリーの姿があった。
辺りを見渡してから俺は愕然として、顔から血の気が引くような感覚に襲われた。
実際に俺の顔面は真っ青になってしまっていただろう。
それ以上に、俺がこの状態という事実に嫁達のことが心配になり慌てて立ち上がる。
だが、そんな心配を吹き飛ばすようにベッドの上には嫁ちゃん達が気持ち良さそうに寝息を立てていた。
ホッと、安堵のため息を吐いた瞬間、俺達が眠むっていた部屋の扉が叩かれる。
慌てる俺に対して、リリーが扉に向かい軽くドアを開いて、話を聞いていく。
「わかったよ。皆が起きたら向かうから、少し待ってくれるかしら?」
「ああ、わかった。新しい仲間の長も子作りで疲れただろうから、そう伝える」
そんな聞いてて、恥ずかしくなる会話が終わり、リリーが静かに扉を閉じるとこちらに向かって歩いてくる。
「話は終わったわよ。蛇人族の長が話があるみたいよ……人気者だねぇ、本当にアンタをアマゾネスの里に攫いたくなっちゃうよ」
小悪魔のように笑うリリーという名の褐色肌のアマゾネスに、俺は顔面が軽く熱くなるような感覚に襲われてしまう。
しかし、そんな俺の背後から無数の腕が全身を包むように、そして、俺を吸い込むように背後に引き寄せられる。
「何よろこんでるんだよ? なあ、オッサン?」
「間違いないわね……キンザンさんってば、本当にポワゾンの言う通り、野獣になってるのかしら?」
「奇遇ですね。わたしもベリーさんと同じ意見ですね。女神としてしっかりと正しい道に修正してあげないといけないですね」
「ニアもさすがにドン引きだにゃ……まだメスが足りないのかにゃぁ?」
「「主様は、野獣でも素敵です! (だよ)」」
「浮気野郎は浮気野郎だから仕方ないけど、堂々とされると、イラつくがな! 躾てやんよ旦那様! ガルル!」
「ミトちゃんの言う通りなの! マスターは悪いお馬さんだから、しっかり躾けるの!」
「仕方ありませんね。ワタシ達のご主人様ですから、本当に性欲の魔人、種馬の魔神に格上げというべきでしょうか?」
「ナギはそれでも、マイマスターが好きだから、気にしない! 皆も同じだって分かる」
背後から語られる声に俺は視線を背後に向けられなくなっていた。
それとは真逆にリリーと騒ぎを聞いて目覚めたアマゾネスの女戦士達が若干引き気味な表情を浮かべて固まっているのが分かる。
リリーは脱ぎ散らかした服と装備を素早く集めると、アマゾネスの女戦士達も同様に装備や服を集めてから、軽く手を挙げてきた。
「じゃ、アタシ達は先に広場に行くよ。また後でな」
扉を開いたと同時にリリー達が急いで部屋から飛び出していく。
部屋に残された俺は恐る恐る、後ろに視線を向ける。
当然ながら、女性が怒っているのだろうと思うと、嫁ちゃんといっても恐怖しかない。
だが、振り向いた先には、優しく笑う嫁ちゃん達の表情があった。
ミア、ニア、ドーナの3人は、してやったりとニヤけており、ベリーとフライちゃんも困ったように笑っていた。
ミトは多少、プンスカとして、むくれていたが、それでも少し照れくさそうな表情を浮かべている。
ペコ、グー、ナギの3人はどこか頬を赤らめていて、信頼の表情を向けている。
ポワゾンはそんな皆を見ながら、防音の魔導具をどこかにしまい、最後に大量の“避妊の魔符”を破り消滅させていた。
「これで、誰にも先を越されることも、外の女性に子孫が残ることもありません」
一礼するポワゾンに、ドーナが不思議そうに視線を向けてから、メイド服のポケットに隠された一枚の紙を引っ張り出す。
「あ、それは!」と、ポワゾンが珍しく慌てたように取り乱す。
ドーナが取り出した紙は“避妊の魔符”であり、ドーナが不思議そうに見つめていると、ベリーがそれを手早く奪い、ビリビリに破いていく。
「あ、あぁ……」
「ポワゾン、抜け駆けは許さないわよ?」
ベリーの言葉に嫁ちゃん達が顔を見合わせて、一斉に「「「アァァァァァッ!」」」と声を上げた。
ポワゾンは自分の“避妊の魔符”を処分せずに持ち出そうとしていたのだ。
それはつまり、一人、嫁ちゃん達の中で一歩先に抜けようと考えたということであり、さすがのみんなも怖い笑みを浮かべていた。
俺は早々に着替えを済ませてから、可愛く言い争いをする嫁ちゃん達を見つめていた。
ポワゾンの行動はある意味、俺を助けるためにしたのか、自分のためにしたのかは、正直分からないが、それでも俺はそんな嫁ちゃん達が大好きだと気付かされる。
再度、部屋の扉が叩かれると蛇人族の青年とリリーが扉の前に立っていた。
「すみません。長が待っていまして、そろそろ……」
蛇人族の青年が困った表情でそう口にしたと同時に、リリーが喋り出す。
「なんだい? アンタ以外はまだ準備もできてないのかい? 仕方ないねぇ、なら、アタシがアンタと行くしかないかねぇ?」
リリーの言葉に、軽く口論になっていた嫁ちゃん達が一斉に鋭い視線を向ける。
「待ってなさい! 今行くわ」
「だな、オッサン! 絶対に動くなよ!」
リリーと蛇人族の青年が慌てて扉を閉めてしまい、動くことのできない俺はその場で直立で待つことになった。
ベリーとミアの言葉にすぐに着替え始める嫁ちゃん達、堂々すぎる着替えに俺は視線を逸らしたくなるが視線を逸らすことすら許さないという視線が無言で向けられる。
それからしばらくして、嫁ちゃん達が服装と装備を整えるとすぐに俺を先頭にして移動を開始する。
俺達が寝泊まりした部屋はパピィさんの家の一室であり、地下に並んだ部屋の一つだったようだ。
最初に案内された巨大な扉のある部屋に再度案内され、俺達が中に入るとパピィさんと奥さんが座っていた。
「よく来たな。ガハハハ! 昨日は嫁達だけでなく、アマゾネスの戦士まで、本当に豪快な息子を持ったものだ」
豪快に笑いながら、楽しそうに胡座をかいた膝をバンバンと叩き、嬉しそうに微笑むパピィさん。
そんなパピィさんの横から奥さんが“ゴホンッ!”と諌めるように咳払いをする。
「いかん、いかん! 本題を忘れておった。新たなる息子よ。お前に言わねばならぬことができたのだった!」
ただならぬ雰囲気に俺も緊張した雰囲気でパピィさんを見つめる。
鋭い眼光が俺に向けられ、鉾を手に上体を起こすパピィさんの姿があり、俺は心拍数が跳ね上がるような感覚に襲われる。
「新たなる息子よ! 我ら蛇人族は新たなる決断をすることになった……ヌシが持ち込んだ圧力鍋を我らが里に譲ってもらえないか?」
「え?」
俺は緊張して跳ね上がっていた心拍数が落ち着くのを内側から感じながら、再度確認した。
それから、昨晩に食べたドレインワームの角煮が最高の料理だったと蛇人族達が一斉に口にしだして、長であるパピィさんに何とか、圧力鍋を頼むと懇願されたらしい。
驚いたが、俺達が旅立つ前に圧力鍋の使い方や、注意点をしっかりと教え、さらに予備も含めて6つの圧力鍋を置いていくことになった。
だが、それ以上に俺はパピィさん達、蛇人族の皆と心が繋がったような気持ちになれた。
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