161話、予期せぬ乱入者?
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何とか、ドレインワーム(メス)を殺すことなく、倒すことができたので、俺も一安心して、緊張の糸が切れたように安堵の息を吐いた。
俺の方に駆けてくるペコとグー、その表情は明るくニッコリと笑みが浮かんでいる。
本来のサイズなら、抱きしめて2人の頭を全力で撫でて無事を喜びたいくらいだ。
ただ、今はそれすらしてやれないのだから、早く元のサイズに戻らないとな。
そんな考えが頭によぎったと同時に、俺の視界に吹き飛ばされて動けなくなっていたドレインワーム(メス)が微かに動いたように見えた。
生け捕りが目的なので、生きている事実は何ら問題ないが、急がないとな。
俺がそんなことを考えた瞬間、ドレインワーム(メス)が不意に体を上向きにする。
それを見て、慌てた蛇人族の戦士達が動き出した瞬間だった。
「ピィィィギャァァァァッ!」と笛から不協和音をならすような不快な声がドレインワーム(メス)から発せられる。
慌てて耳を塞ぐ俺達、それと同時にドレインワーム(メス)に向かっていた蛇人族の戦士達が無数に広がる通路へと体の向きを変えた。
先ほどまで勝利を喜んでいた雰囲気が一変し、ただならぬ緊張が全体を包み込むのが理解できる。
すぐに複数の通路から、地鳴りのような音が鳴り響き、それが凄まじい勢いでこちらに向かっていることが理解できた瞬間、パピィさんが声を上げる。
「戦士達よ、来るぞ! 気を抜くなよ」
その言葉に、武器を構える蛇人族の戦士達、その表情は緊張にも似た険しいものになっている。
地響きの先、無数の通路から一斉にドレインワーム(オス)の群れが姿を現す。
1つの通路から各1匹ずつ、現れた大量のドレインワームがペコ、グーが吹き飛ばしたドレインワーム(メス)を守るように凄まじい勢いで移動していく。
咄嗟に俺の方に飛んできたペコとグーがナギにしがみついて、呼吸を荒くしていた。
「主様、危なかったです……もう少しでペコと一緒に潰されちゃうかと思いました」
「はぁはぁ、グー、間違いなく2人とも潰されて、ぺしゃんこになっちゃうところだったよ」
2人が互いを心配しながら抱き合って安堵する最中、パピィさん達が武器を構えて、姿を現したドレインワーム達へと駆け出し一斉に襲いかかる。
蛇人族の剛腕から放たれる大斧が振るわれ、さらに槍や大剣サイズの片手剣が振るわれていく。
群れをなしたドレインワームが蛇人族に向けて、視線を向けると大きく口を開き、酸弾を発射していく。
蛇人族の片手に装備された樹木から作り出された盾に酸弾がぶつかり弾けると“ジュァァッ!”と盾に酸が染み込み溶けるような音が周囲に響いた。
普通の冒険者達が同じ行動をされたなら、怯み逃げ腰になってしまうかもしれない。
だが、蛇人族にそんなことは起こらない。むしろ、そうなることなどありえないのだ。
この場にいるのは、蛇人族の群れの中で最強を目指す若き戦士達であり、長であるパピィさんが前に出て戦う戦場で逃げるような臆病者はこの場に誰1人としているわけがない。
前衛が酸弾に後退すると同時に、両手持ちの大盾を構えた蛇人族の戦士達が酸弾を一気に受け前に盾を構えていく。
無数の酸弾により溶けていく大盾、しかし、酸弾の勢いが次第に弱まると後退した武器を手にしていた蛇人族の戦士達が一斉にドレインワームへと襲いかかる。
数分の攻防であったが、1体、また1体と、ドレインワームが倒れていく。最後に残ったドレインワーム(オス)が想定外の暴挙に出た。
あろうことか、守ろうとしていたドレインワーム(メス)に大きく口を開き、噛み殺したのだ。
「あ、な、なんで……」
さすがの俺もドレインワームのまさかの行動に驚愕すると同時に背筋に冷たいものが駆け抜けるのを感じた。
蛇人族すらも、予想していなかったのだろう、僅かながらの困惑とざわめきが広がる。
「ワームが、メスを殺した!」
「奴らはメスを守るハズなのに?」
「どうなってるんだ?」
蛇人族の戦士達が目に見えて、動揺する姿にパピィさんが鉾を地面に叩きつけて、その場を諌めるように声を発した。
「落ち着けいッ! 蛇人族の戦士が狼狽えるな! 若き戦士達は知らぬだろうが、過去になかったわけではない!」
その後の説明から、ドレインワーム(オス)は、メスを守るために戦うが、仮にメスを守れないと判断した場合のみ、最後にメスを噛み殺して、敵にメスを奪わせないようにするようだ。
人でいうなら、敵に家族を奪われるなら、殺めてしまえって感じなのだろうが、狩りに来た俺達が言えることじゃないが、酷い話だと感じてしまう。
ただ、これは良くない流れになっている。
メスのドレインワームを見つけても、オスが集まりだして、最後は全滅に繋がってしまうかもしれない。
どうするべきか、小さくなった頭を悩ませる。
そんな俺が悩む姿にナギが声をかけてきた。
「マイマスター、大丈夫。パピィ達は強い。だから、安心して、蛇人族は約束は絶対に守る」
俺の心配を多分、勘違いしたナギの言葉に俺は身勝手な悩みを浮かべていたことに申し訳ない気持ちになる。
「いや、違うんだ。俺なんかのために、パピィさんや蛇人族の人達が危ない目に遭うのが、申し訳なくてな……」
拳を握り、奥歯を噛み締める俺にナギが不安そうな表情を浮かべるとパピィさんが顔をグイッと近づける。
「心配するな。新たなる息子よ! ドレインワームに殺られるような者はいないからな! ガハハハ!」
そんな会話が終わり、複数ある通路に視線を向けるパピィさん。
しかし、予想外な出来事は本当に続くものであり、一つの通路から、凄まじい地響きと共に粉塵が一気に広場へと噴き出し、周囲に土煙が舞い上がる。
「何事だ! 皆、武器を構えよ!」
パピィさんの声を聞いて、蛇人族の戦士達が武器を構え、大盾を構えた蛇人族が前に出ると盾を地面に突き立てる。
その場の全員に緊張が走った瞬間、土煙の先から勢いよく、壁に向かって、ドレインワーム(オス)が“ドガンッ!”と、叩きつけられるように吹き飛ばされてくる。
土煙が次第に収まり、そんな通路の先から、声が聞こえてくる。
「ミト! なんでいつも、いきなりぶっ飛ばすんだよ。もう少し、やり方があるだろうが!」
「ミアは細かいんだよ! 甘ちゃん野郎と同じで甘々だと、本当に危ない時にやられちまうだろうが!」
ん? なんか、間違いなく、聞き慣れた大声の会話が反響するように、ここまで響いてくる。
明らかに知ってる名前なんだが……いや、でも、なんで通路側から?
俺が悩む間に声が次第に近づいてくると同時に、次々に通路からはボロボロになった状態のドレインワームが吹き飛ばされ、壁にドレインワームが叩きつけられる。
本来、スキルを奪い、冒険者や実力のある者達からすれば、最低最悪な相手であったはずのドレインワームが、ただ、無慈悲に吹き飛ばされ、絶命している姿に俺は口をポカンと開けてしまっていた。
そして、現れた十数人の人影に俺は目を疑った。
先頭から現れたのは、ミアとミトの2人であり、その後ろから、数名の見慣れない褐色肌の女性達の姿があり、さらに後ろ側からフライちゃんとポワゾン、ドーナとベリーの姿が続き、最後に再度、褐色肌の女性達が続いていた。
目を凝らしたそこにいたのは、嫁ちゃん達と楽しそうに会話をしながら、豪快に笑うアマゾネスの女戦士であるリリーと仲間であろう、アマゾネスの女戦士達だった。
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