158話、蛇人族の雄叫び、ドレインワーム討伐へ
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俺はナギの父親であるパピィさんとこの地(沼と自然の土地【マーシュマレ】)に来た目的を語り、互いの意見を話していく。
目的が『スキルキャンセラー』こと、『ドレインワーム』のメスによるスキル解除だと伝えた時は、パピィさんが訝しげに目を細めた。
「ドレインワームは確かにいるが、奴らはただ大きいだけの魔物だぞ?」
予想外のパピィさんの言葉に俺はナギに視線を向ける。ただ、向けた視線に気づいたナギは申し訳なさそうに頷いて、俺を手の平に乗せると眼前まで近づけた。
「マイマスター……パピィは嘘を言わない。ただ、ナギ達、蛇人族はスキルを使わない。だから、スキルが無くなるのか、分からない」
「疑ってるわけじゃないんだ。ただ、それだと本当に俺の姿が戻るか、少し不安になっちまってな、自分勝手な理由で不安になって悪かったな」
「ううん、不安になるのわかる。ナギも騙されて、それからマイマスターに会うまでの間は色々悩んだ。だから、大丈夫だよ」
優しい笑みを浮かべて俺を見つめるナギ。
「なに! 2人の世界に入ってるにゃァ! ニア達もいるのにゃ、キンザンはドーンとニア達に任せるにゃ」
「私達もいます。主様のため、絶対、役に立ちます!」
「うんうん、グーの言う通りです。役に立ちます!」
3人がナギ同様にニッコリと笑いかけてくれて、俺は改めて、嫁ちゃん達の優しさに触れていると実感した。
「おいおい……あまり見せつけるな、我の存在を忘れて、若さとは困ったものだな?」
パピィさんの言葉にハッとして俺は嫁ちゃん達から視線を離して、パピィさんに向き直る。
「えっと、なんか、その、すみません……」
「いやいや、構わんさ、若い時は特にあるからな。我も妻を前にすれば、未だに──ゴホンッ! 話がずれてしまうな、さて、いつから向かうつもりなのだ?」
パピィさんの問いに俺は再度、嫁ちゃん達に視線を向けていく。
今までなら、悩まずに「今すぐ」と答えていただろう──だが、今の俺は自分では何もできない、ましてや、嫁ちゃん達に相談もなく勝手に決めるような真似はしないと心に決めている。
今までの事件や出来事からの学びというやつに他ならない。
それが一番大切だと気づかせてくれた嫁ちゃん達を失望させたくないってのが一番の理由かもしれないな。
俺の視線に気づいた嫁ちゃん達が微笑みを浮かべると、まるで示し合わせたかのように、一斉に声が重なる。
「「「「今すぐッ!(にゃ!)」」」」
嫁ちゃん達の言葉にパピィさんが、巨大な蛇の尻尾を立ち上がらせて、置いてあった鉾を握る。
パピィさんは頭上に向けて、顔を上げると、雄叫びのような大声を出していく。
「聞けッ! 蛇人族の戦士達よッ! 我らが娘の群れの長である新たなる息子達が『ワーム』を討ち取りに向かうッ!
我こそはと名を上げたき戦士は共に戦場を駆けることを許そう! 蛇人族の戦士達よ! 戦に向かう者は武器を手に、声を上げよおぉぉーーーーッ!」
パピィさんの叫びに似た言葉が終わった刹那、大地を振動させるような“ダン、ダンッ!”と、地鳴りが響いていく。
「なんだッ!? 地震か!」
慌てる俺を見てパピィさんが「ガハハハッ!」と豪快に笑い出す。
「よく聞くのだ。新たな息子よ! 耳に響く真なる音を──」
「「「ウオォオオゥゥゥゥゥゥッ!」」」
「「「オオォォォォォォォォォッ!」」」
俺の耳に響いてきた地鳴りとは別に大勢の戦士達の声が叫ばれていることに気付かされる。
「パピィさん、これって?」
「うむ。新たな息子よ。戦士達がお前の戦に参加すると雄叫びを上げているのだ。ついて来い。新たなる息子と娘達よ」
パピィさんに言われるがままに、地下から地上へと上がっていく。
巨木に作られた扉を開いた先に、武器を手に勢揃いする蛇人族の戦士達の姿。
戦士達の後ろには蛇人族の女性達が両手を合わせて、祈りを捧げるように、小さな囁きを歌のようにして奏でている。
「えっと、これは?」
俺の驚愕した表情にパピィさんではなく、ナギが答えてくれた。
「コレは狩りと戦の前に行う儀式。戦士の勝利と、無事を祈り、祈りを捧げた者が無事に帰れば、強い子が授かる証にもなる」
最後の方は何を言ってるか分からなかったが、とりあえず、強い子ってのは、父親を待ってる子供達が“父の背中を見る”みたいな話なんだろうか?
そんなことを考えながらも、俺に協力してくれるために集まってくれた蛇人族の戦士達を見て歓喜に包まれていた。
50人ほどの蛇人族が武器を手に戦うことを想像する。
言わずもがな、巨大な蛇人族が戦う姿はそれだけで、SF映画や『〇〇の惑星』シリーズもびっくりな光景となっている。
雄叫びを上げる蛇人族の戦士達と共に俺達は『ドレインワーム』の生息地である湿地帯の先にある洞窟を目指して進んでいく。
俺に協力してくれた蛇人族の戦士達は若い戦士達で、話を聞けば、新婚や未だに子供がいないらしい。話からも、子孫繁栄の儀式に近いのだと改めて感じた。
向かった先に広がる巨大な洞窟、奥は暗く先に光が届くことはないようだった。
完全な闇が広がる世界にナギの父親であるパピィさんは、灯りもない状態にもかかわらず悩まずに洞窟内を進んでいく。
夜目というやつだろうか? もしも、俺が最初にフライちゃんから【鷹の眼】のスキルをもらっていたら、こんな風にスタスタと暗闇を移動できたのだろうか?
そんなことを考えながら、俺は暗闇を1人で歩く自分を想像していく。
あ、ダメだ……いきなり魔物に襲われて、美味しくディナーにされる姿しか浮かばないな……
自分が食べられて、骨まで美味しく食べられる姿を想像して、げんなりする。
「はぁ、どちらにしても、今のスキルがないとダメだっただろうし、最後に悩んだ【調理器具マスター】を【鷹の眼】にしてたら、竜切り包丁も使えなかっただろうしな……」
俺の小さな呟きを聞いていたのか、ニアがナギの首に掛けられた俺の入っていた籠に声をかけてくる。
「キンザン、今更、悩みごとかにゃ? 悩むよりもスキル解除のために皆を信じるのにゃ!」
暗闇の中で視界を失いながらも、俺はニアを感じながら、軽く微笑んでいた。
「あ、あの……あ、でも、ねぇ、グー、やっぱり言わない方がいいかな?」
「大丈夫だよ。ペコの考えを主様に伝えた方が絶対にいいはずだよ」
近くで話すペコとグーの声に俺は耳を傾ける。
「なんか、あるなら言ってくれ? ペコ、グーの考えを知りたいんだ」
「「主様、分かりました!」」
「えっと、主様なら前に使ったあの不思議な眼鏡があれば、見えるんじゃないかと?」
「そ、そうです! あのゴーグルっていう魔導具があれば、見えるんじゃないかと!」
2人が言っているのは、調理用ゴーグルだろう……俺は言われて初めてその存在を思い出した。
「確かに、その手があったな! よし、試してみるか」
言われてすぐに調理用ゴーグルを取り出して、付けていく。
ずっと暗闇に支配されていた視界の先がクリアになり、ライトで照らされたようにゴーグルから見える世界が輝きに包まれる。
俺の目に映る暗闇の世界が変わると、新たな世界が広がり、そのあまりの変化に脳がエラーを起こしたような感覚に襲われる。
広い洞窟内は、ドーム型の通路になっており、俺の想像するそれとは違っていた。
俺が考えていた光景は鍾乳洞のような光景だったが、そんな雰囲気は一切なく、なんなら、本当に土をただ掘り固めたというのが正しいだろう。
こんな視界の中でナギ達について歩く、ニア、ペコ、グーの3人が心配になりながらも、今更、「危ないから、引き返してくれ」などとも言えないため、罪悪感が半端ない。
本当に感謝と謝罪の気持ちが溢れ出しそうになっていた。
読んでくださり感謝いたします。
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