157話、フライとポワゾン3
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ふぅ、本当に困ったことになりました。ワタシとフライ様が目的地である沼と自然の土地【マーシュマレ】に使おうとしていた転送陣のある小屋に幼い兄妹が住み着いてしまっていたのです……
本来は、ワタシ達も不法侵入に、器物破損、器物損壊と挙げたらなら、きりがありません。
幸いにもフライ様が新たな転送陣を早急に作成していただくことになりました。
かなりの負担になるでしょうが、我が主であり、ワタシ達の旦那様であるご主人様のために必死になるフライ様は本当に素晴らしい方だと言うほかありません。
メイドとしても、女としても、負けたくないなどと、はしたなくも考えるワタシは既に大敗しているのやもしれませんね。
そうなれば、ポワゾンという存在に価値はあるのでしょうか?
価値など最初から自分自身にあるなどとは、思っていませんでした……
ずっと自分の存在意義が分からなく、言われるままに仕事をしていました。
本来は領主を殺してしまえば、あっさりと終わるはずだった“[バリオン]の領主暗殺計画”──あの時点からでしょうか?
ワタシからすれば、少し、ガランのクソ伯爵に抵抗したくて、命令に背いただけの話だったのですが……すべてが変わりだしたと言えるのかもしれません。
ワタシとしたことが、話が逸れすぎてしまいました。まだまだ、自分を完全にコントロールできないというのは、未熟な証ですね。
ゴホン、話を戻しますが、ワタシとフライ様は、新たな転送陣を使い、ドレインワームの生息地である沼地[マーシュマレ]へと向かいます。
ここから先はワタシにとっては未知の領域になるため、ワタシ自身が気を抜くことがないように気をつけねばなりませんね。
転送陣の先に広がる世界は、視界一面に広がる沼地と、不気味な草木が生い茂るものでした。
単純にワタシ、個人の意見としては、虫も多く、ジメジメしているのに、蒸し暑いという最悪の気分になる土地に他なりませんね。
ただ、この土地がナギの故郷だというのですから、あまり文句を言うのはやめにしましょう。
ワタシには、故郷というものはありません。だからこそ、帰るべき場所がある人は羨ましいと感じてしまいますね。
ただ、今はそんな個人の思考に思いを耽らせている場合ではありません。
ご主人様のため、絶対にドレインワームなる虫を生け捕りにしなければいけないのですから。
フライ様も、ワタシと転送陣で移動してからは、真剣な表情で目的地を目指して進んでいるようですね。
正直、ワタシはこの[マーシュマレ]の地図を確認してもワタシ達が使う一般の地図よりも古く、見方もわからない代物でした。
一言で言えば、ちんぷんかんぷんだったので、本当にフライ様の知識の深さには驚かされます。
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わたしは、女神として……今、色々とピンチに陥っています。
そう、向かうべき方向がわからないという事実ですね。
地図を見ても古風で読み取れず、さらに言えば、転送陣で辿り着いた先が地図のどの辺りなのか、見当すらつきませんでした。
ですが、それでも、わたしが迷わずに進めるのは、一緒にいるポワゾンのおかげですね。
ポワゾンなら、わたしが間違った方向に進んだなら、必ず止めてくれるはずですからね。
だからこそ、わたしはただ、進むのみなのです!
さてさて、1時間ほど、沼地を進みましたね。未だに、ポワゾンから間違いの指摘がないのは、予想外でしたが、それでも問題ないなら、よしとしましょう。
沼地も景色が変わって、岩肌のあるしっかりとした感じの地形になってきました。
つまり、ドレインワームの生息する地域に入ったということになります。
後は巣を見つけて、ドレインワームを生け捕りにすればすべて解決となりますね。
探索すること、30分で複数の洞窟を見つけましたが、どれが正解の巣穴なのかが分かりませんね?
よくよく考えれば、図鑑にも地図にも巣穴の特徴らしきものは書いてなかったので、すべてが正解なのか、どれかが正解なのかの、判断は難しいかもしれません。
ただ、こんな時は悩まずに突き進むことも大切です。むしろ、解らないのに悩んで時間を使うより、しらみ潰しに探す方が早い場合もありますからね。
そこから、わたし達、2人でドレインワームの巣? であろう洞穴を次々に調べていきました。
最初の洞穴はハズレですね。コウモリ型の魔物がいましたが、求めているドレインワームはいませんでした。
一つ目の探索は一時間ほど使いましたが、収穫ゼロという形になり、さすがに残念な気持ちになりましたね。
二つ目もハズレでした。こちらはただの縦穴で何もなく、時間のロスはありませんでしたが、体力だけはしっかりと失ってしまいました。
今から三つ目の穴を調査しに行く感じになりますが、本当にドレインワームの巣穴はどれなのか、早く知りたいものです。
わたし達が三つ目の穴に近づいた時、予想外の出来事が起きました。
わたし達が入ろうとしていた洞穴に人影が入って行くのが見えたのです。
慌てて駆け出して、すぐに穴へと声をかけることにしました。
仮に人型の魔物なら、わたし達に攻撃を仕掛けてくるかもしれませんが、それはそれで、容赦無く返り討ちにすれば済むので悩むことはありません。
「待ってください!」
わたしの声に、前方の人影がビクッと体を震わせたのが分かりました。
シルエットから、子供のように見えたので、そのまま、声をかけていきます。
「話をしたいのですが?」
「あ、あ、あの……」と怯えたような声にわたしは、目を凝らし、洞窟の中を見つめると、幼い男の子と女の子が手を繋いで今にも泣き出しそうな顔をしているじゃないですか。
「えっと、あなた達は?」
そんな問いかけに2人は自分達が[ガルド・ゼデール]に住んでいた事実といきなり知らない土地に飛ばされてしまったことを教えてくれました。今は道に迷い、休める場所を探していたそうです。
話を聞いていると、ポワゾンから小さく喋りかけられました。
「フライ様、この少年と少女ですが、小屋にいた兄妹ではないでしょうか?」
そう言われ、顔を再度見てから、わたしは冷や汗が流れ出しました。
ポワゾンの言う通り、転送陣を作った小屋にいた2人の兄妹だったからです。
話を聞く限り、間違いないでしょう……わたし達には、やるべきことがありますが、この兄妹を放置したまま、ドレインワームを探したり、連れ回すような真似をすれば、間違いなく、きんざんさんに怒られてしまいます。
むしろ、呆れられて、嫌われたらと思うと恐怖すら感じます……いえ、この考えすら、話せば嫌悪の視線を向けられるかもしれませんね……
「ふぅ、分かりました。これは悩む必要すらない問題ですね。今から2人を砂漠のオアシス都市[ガルド・ゼデール]に送ることにしましょう。ポワゾンよろしいですか?」
「はい、ワタシは構いませんが? また最初からやり直しになりますね」
そんなポワゾンの言葉にわたしは、肩を落としましたが、それでも、幼い兄妹を連れ回すより、無事に送り届ける方が最優先するべきだと考えています。
「ならば、すぐに向かいましょう。急げばやり直しても問題ないはずですからね」
わたし達は急ぎ来た道を兄妹と一緒に戻ることになりました。
最初に来た際は気がつかなかったのですが、戻る際に小さな集落のようなものを見つけることになりました。
そして、わたしは目を疑ってしまいました。予想外のことは、一日で何度も起こるものだと知った瞬間とでもいいましょうか……小さな集落にあろうことか、ベリー、ドーナ、ミア、ミトの姿がありました。
さらに言えば、なぜか、褐色のガタイのいい女性達に囲まれていたのです。
慌てるわたしは、急いで救援に向かおうと駆け出していました。
わたしが到着して、身構えた時、なぜかベリー達から、驚いたような、「何をしているの?」と、いったような不思議な表情を浮かべられてしまいました。
「え、フライちゃん、どうしたのよ?」
「お! フライじゃんかよ。オッサンの言う通り、やっぱり来てたんだな」
わたしを見て、ベリーとミアが笑いかけると同時に、わたしの知らない女性から声がかけられました。
「なんだいアンタは? って、あの時のメイドじゃないか! 久しぶりだね」
「お久しぶりです。リリー様。お元気そうで何よりです」と、ポワゾンが頭を下げて挨拶をしている。
わたしに声をかけてきた女性は女戦士でしょうか、背中には大きな大剣を背負い、筋肉質でありながら、美しい褐色の女性でした。
ただ、ポワゾン達を知っているみたいで、わたしが慌てているだけで、安全だと分かりました。
リリーと呼ばれた女性はアマゾネスの戦士だと聞いて、わたしは過去にきんざんさんを覗いていた際のことを思い出して、顔を真っ赤にしてしまいました。
そこからは話があっさりと進み、アマゾネスの戦士、リリーさんの協力を得ることができました。
兄妹を無事に送り届けた後に、正しい巣穴の位置を教えてもらうことになりました。
近い巣穴の場所を教えてくれるようで、わたし達は新たにリリーさんを加えて、ドレインワームを捕獲しに向かうことになりました。
ただ、ベリー達も同行するようなので、スキルを奪われないように注意が必要ですね。
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