150みんなで餃子を作ろう3
色々と厄介な展開から始まってしまったが、俺のこの小さくなっていなければ、もっと上手く物事が運んだと改めて感じる。
そう言い切れるくらいには、咄嗟に思いついた餃子作りがいい雰囲気を作り出していた。
ちなみに、この時点でナギとベリーには別の作業を頼んでいるため、グリド商会の中庭に移動してもらっている。
2人が移動してから、ずいぶん時間が経っているため、任せた作業も無事に終わっている頃だろう。
「のぉ? この皮包みの食べ物はどうするのじゃ?」
ルフレ殿下が質問を口にすると、手伝っていた兵士さん達からも気にするような視線が向けられる。
俺はベリーに頼んで巨大な鉄板を用意してもらっている。
鉄板は、今いるグリド商会に並んでいる販売商品の一つであり、何に使うか分からないが、屋台の鉄板と変わらないサイズだったので使わせてもらうことにした。
早い段階で頼んだことにはいくつか理由が存在する。
屋台の鉄板や飲食店の鉄板には普段から『油ならし』がされている。
普段聞き慣れない言葉だろうが、この作業が鉄板に食材がくっつかない理由であり、必要な作業になる。
・作業1:鉄板を洗う──まず、鉄板に付着した汚れを洗い落とすことから始まる。
日本なら洗剤を使うこともあるだろう、その場合は、しっかり洗剤を洗い流すことになる。
ただ、こっちの世界には洗剤はないため、ナギに全力で磨いてもらうことになる。
・作業2:加熱して水分を飛ばす──鉄板を中火で加熱し、水分を完全に蒸発させる。後に油を使うため、しっかりと蒸発させないと火傷などにつながるため、大切になる作業だ。
・作業3:油を塗る──しっかり水分が蒸発したら火を止めて、鉄板が熱いうちに食用油を薄く塗り、表面だけでなく、側面や裏面にも塗る。
正直、ここが一番大変な作業になるだろう。男の俺が本来ならやらないといけない作業なんだが、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
・作業4:余分な油を拭き取る──キッチンペーパーなどで余分な油を拭き取る。まあ、今は“買い物袋”から普通サイズのキッチンペーパーが取り出せないため、布を使って拭き取ってもらうことになる。
・作業5:再度加熱する──再び中火で加熱し、油がなじむまで数分待つことになる。最後に火を止めて自然に冷ますことになるが、ここはベリーの風魔法を弱めに使って温度を少し早めに冷ましてもらうことにした。
この5つの作業を数回繰り返してもらうことになっている。
正直、かなり大変な作業だ。自分でやれないことがもどかしいし、申し訳ないと思う。
俺は近くに居たミアに声をかける。
「ミア! 悪い、ベリーとナギの様子を見に行きたいんだ」
2人が居ない理由を知らないミアが不思議そうに俺に顔を近づける。
「なんの話だよ? 確かに2人とも居ないけどさ、オッサン、また、ボク達に内緒で、2人に何かやらせてんの?」
「別に内緒にしたかったわけじゃないって、まぁ、頼めるか、中庭に居るはずだからさ」
「わかったよ。まぁ、今は、ボクとオッサンが離れても大丈夫そうだしね。さぁ、行こ」
会話が終わると同時に可愛く悪戯な笑みを浮かべたミアに摘み上げられ、胸ポケット部分に優しく下ろされる。
「行くよ! 落ちないようにつかまっててね!」
ポケットの中にいる俺の返事を聞く前から、勢いよく走り出すミア。
俺は必死に手でポケットにつかまりながら、高速のジェットコースターに乗せられて、安全バー無しの最前列気分をこれでもかと体感させられた。
階段を大ジャンプで飛び降り、ノーモーションで駆け出した瞬間は死ぬかと思ったが……
視界に流れる景色、その先に鉄板の準備を終えたベリーとナギの姿が飛び込んでくる。
「おーい! 2人とも、オッサンを連れてきたよ」
ミアの声にこちらを振り向いた2人。
ただ、ベリーが慌ててこちらにやってくる。
「ストップ! ミア、ゆっくり止まって!」
ミアが言われた通りに止まり、俺は無事に静かな視界を取り戻して安堵した。
「はぁはぁ、ベリー……ありがとうなぁ、さすがにあの速度で止まられたら、ヤバかったよ」
「でしょうね、ミアが止まった途端、地面に向けて投げ出されてたでしょうね? キンザン煎餅にならなくて良かったわ、ふふふ」
冗談が冗談に聞こえないため、苦笑いを浮かべながら、ポケットから鉄板の状態を確認する。
しっかりと油が塗られた鉄板は即席でこしらえたとは思えないくらいに黒い輝きを放っていた。
確認が終わり、俺はミアに頼んで、皆を中庭に呼んできてもらう。
そこからは長かった餃子作りの最終段階に入る。
ミアが食堂にいた全員に声をかけて連れてきてからは、焼き餃子、水餃子、揚げ餃子を作ることになる。
ベリーが最初に焼き餃子の手本を見せる形になり、蒸らしの際にはキャルベトの蕾の葉を被せることで蓋替わりにしていく。
一度作り方を見せれば、ミア達があとは上手く焼いてくれるだろう。
水餃子は煮るだけだが、別に鍋を用意して“買い物袋”から“鶏ガラスープの粉”を大量に取り出してやり、鶏ガラスープを作ってから水餃子にかけていくことにした。
ベリーには、基本揚げ餃子を任せることになる。揚げ餃子は見た目よりも難しいため、地球の揚げ物を理解してるベリーが一番的確だと思うのでお願いした。
俺自体は焼き餃子を担当するミア、ニア、ミト、ドーナの側で見守ることになる。
水餃子はペコとグー、ナギの3人が担当する事になる。その際に、餃子作りを手伝っていた兵士から何人かが、皿の用意などを手伝ってくれた。
餃子が焼かれていき、美味そうな香りが中庭に漂いだし、水餃子は湯気をあげて、鍋で茹でられていく。
心地のいい揚げ餃子の音がそこに加わり、すべての五感が餃子に占領されていくように広がる。
「焼き餃子上がるよ〜」
「こっちも焼けたにゃ! あ、1人、一皿にゃ! オカワリは並ぶのにゃ!」
焼き餃子ゾーンは賑やかであり、活気に溢れる雰囲気に列ができている。
逆に水餃子ゾーンは熱々のスープが掛けられた器を手に微笑む兵士さん達の姿があった。
揚げ餃子ゾーンでは、真ん丸に並べられたフライパンが複数並べられ、次々に揚げられた揚げ餃子が綺麗に剥がされて盛り付けられていく。
そんな、皆がワイワイと楽しむ中、俺は必死に醤油の大ボトルを開き小皿──まぁ、今の俺から見たら巨大な大皿に醤油を入れていく。
焼き餃子のため、俺なりにできることを頑張っていく。
そんな俺のいる焼き餃子ゾーンにルフレ殿下とメフィスがやってくる。
今回は腰巾着のようにいつも張り付いていた側近達の姿はないのが分かる。
「お、おう、キンザンよ。その……余にも一皿もらえるかのぉ……」
どこか遠慮した様子に質問するルフレ殿下の姿に俺は首を傾げつつ、醤油の入った小皿(俺から見たら巨大な皿)を笑いながら、持ってってもらう。
皿を手に取ったルフレ殿下に向かってミトが慌てて焼いた餃子を皿に乗せて手渡す。
「姿が見えたから焼いといたぞ! お前が作った餃子だからな。絶対に美味いからしっかり食べろよ! あとウチが作ったヤツもサービスでつけてやるから」
ミトは不器用なやつだが、本当は優しすぎるんだよな。
ルフレ殿下も自分が作った餃子を自分で食べれると思っていなかったのだろう。素敵な笑みを浮かべていた。
「あ、ありがとうなのじゃ! 余はこういうとき、どんな反応をしたらいいか分からぬのじゃが、その、本当に感謝している! キンザンの件は絶対に何とか──」
ルフレ殿下が喋る途中で、被せる様にミトが声を出す。
「いいから、味わえよ! あと、火傷すんなよ? 箸で少し穴を開けたら、熱が逃げるみたいだからよ」
「あ、ありがとうなのじゃ。気をつけて食べさせてもらうぞ。ミト、感謝なのじゃ」
「おうよ! アンタも食うんだろ? 早く持ってけよ! ルフレが待ってんだろ!」
笑うルフレ殿下の横に立つメフィスに焼き餃子の皿を渡すミト。
「我輩は別に、それよりも、貴女……殿下を呼び捨てとはいけませんなぁ。殿下もどんな場に置いても威厳が大切なのですよ」
「あ? いいから食べろよ、堅物野郎! ルフレが何を食べて味がどうなのかを知るのも仕事だろう? それに餃子を食べる場所の威厳ってなんだよ?」
「貴女という人は……はぁ、頭が痛くなりますなぁ、キンザン……もう少し奥方には注意するように頼みます」
「ま、待つのじゃ、余はミトと餃子を作った戦友なのじゃ! だからメフィスよ。ミトが余を呼び捨てにするのは許すのじゃ!」
「はあ、かしこまりました。ただ、公の場においては殿下と呼んでいただきますよう、重々、お願いします」
喧嘩腰で話すミトにヒヤヒヤしたが、ルフレ殿下もメフィスに食べるように説得すると仕方ないといった様子でメフィスも焼き餃子を受け取っていく。
なんとも、この2人は馬が合わないみたいで心配になるが、そんなやり取りにルフレ殿下は可愛らしい笑みを浮かべていた。
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