149話、みんなで餃子を作ろう2
餃子の皮作りが終了すると手早く次の作業である餡作り(餃子の中身)を仕込んでいく。
嫁ちゃん達は餃子の皮を作った後でもやる気満々な感じなので、軽く一息入れてから、餡を仕込んでいく。
「みんな、キャルベトの蕾を細かく刻んで塩もみするんだ。しっかりと微塵切りで頼む」
切り方を説明する最中、ミアが小さく笑いながらつぶやいた。
「なんか普段、オッサンの用意した食材ばっかり使うから、市場とかの食材を買って使うの変な感じだな」
「にゃは、確かににゃあ? ニアとナギの土産はともかく、普段は狩った魔物以外は使わないにゃあ〜」
ミアとニアの会話が楽しそうに進む最中、大量のキャルベトの蕾の微塵切りが山のようにでき上がっていく。
そして、ここからは小さくなった俺の出番となる……と言ってもこちらの世界でまだ見つけていない食材が複数あるため、“買い物袋”で調達することにしたわけなんだが。
俺は“買い物袋”からネギを大量に取り出していく。
サイズで言えば、既に小さくなった俺に合わせて刻みネギサイズになっているが逆に今はそれが丁度よくも感じる。
今回はネギの根っこの髭部分も含めてすべて入れていく。
ミニサイズということもあり、刻む必要がないため、俺は本当に取り出していくだけの作業になっている。
次に塩揉みしたキャルベトの蕾とネギ、それとニラ、ニンニクのような味がする市場の名もない食用以外の別用途で売られていた植物を混ぜていく。
しっかり混ぜてから、乾いた清潔な布で包み、水気をなくしていく。
ニラもどき、ニンニクもどきについては、本来は獣避けに使われるようで、俺の【食材鑑定】で以前に、今いる砂漠のオアシス都市【ガルド・ゼデール】の市場で見つけていたものだ。
普段は地球産の食材を“買い物袋”で用意するため、実際に使うのは初めてなので僅かに不安があるが、【食材鑑定】では間違いなく、ニラとニンニクと出ていたので、それを信じたい。
そんなことを思いながらも、味が気になった俺は嫁ちゃん達が作業をしている間にニラもどきとニンニクもどきをミア達サイズでいう、爪の先ほどのサイズちぎってもらう、チビチビになったカセットコンロとフライパンで火を通して味見をしていく。
生で味わっても良かったが、今回は火を通した際の香りや、味を知りたいため、こちら側を選択した。
すぐに火が通り、小さいながらにしっかりとパンチの効いた香りが鼻をくすぐる。
間違いないと確信しながらも俺は炒めたニラとニンニクもどきをゆっくり口に運んでいく。
口に入れた瞬間、ニンニクの香りとピリッとした辛味、さらにニラ独特の香りが混ざりあって鼻から抜けていく。
「おぉー! マジにニラとニンニクじゃんか!」
小さな俺がはしゃぐ様に喜ぶ向こう側で、ナギとニアは、かなり嫌そうな表情を浮かべながら、二つの食材が混ざりあったそれを見つめていた。
「いくら……キンザンでもありえないにゃ……獣避けの植物を混ぜるにゃんて……」
「ニアに同感……そのニオイ、危険な香りする……」
獣人のニアやナギは、この刺激的な香りが苦手らしい──たしか、猫や犬なんかにニンニクをあげたりすると毒になるんだっけ……
今まで、普通の猫にあげたらダメな食材でも問題なく食べていたから、気にしなくなってたが今回はもしかして食べさせない方がいいのかな、なんかあったら大変だしな?
考えている俺に対して、ニアとナギの2人が怪訝な表情を向けながら見下ろしてくるのがわかった。
「キンザン! 今、なんか悪いこと考えてたにゃぁ!」
「うん。マイマスターの顔が悪い顔だった……っと思う」
そんな濡れ衣? をかけられながらも俺は次の作業について説明を開始する。
次は肉、つまり、オークミンチを作る作業になるのだが、今回、俺はこのサイズのため、ひき肉マシーンである秘密兵器、『肉をひきに君』(15980円)も【ストレージ】の中で小さくなってしまっている。
つまり、手でミンチを作らないといけないのだ。
木製のまな板に薄切りの肉を並べて、両手に包丁を握り、肉を叩いてもらう。
とはいえ、俺も見ているだけってわけにもいかないのでスライスする前のオーク肉の塊に必殺『肉叩き』で叩いていく。
筋肉も脂肪も、柔らか仕上げにできるため、俺も役に立てると少しだけドヤっているのは内緒だ。
そのため、包丁だけで作ったオークミンチは普段よりも少し歯ごたえがありそうな感じの素晴らしいミンチができ上がった。
・醤油
・味噌
・砂糖
・酒
・オイスターソース
・ごま油
調味料を大量のオークミンチに混ぜ、先に刻んだキャルベトの蕾などを混ぜ合わせてもらう。
調味料がすべてミニサイズのため、大量に混ぜていくことになり、俺は人生で摂取した醤油と同じくらいの量を使うことになった。
小さくされたから分かるが、俺が渡された“買い物袋”は本当にすごいと思う。
結果から言えば、金さえあれば、何百本でも取り寄せられるし、醤油の銘柄や、砂糖に味噌の種類まで自由自在なのだ。
「とりあえず、餡も完成だな。ベリー、包み方を教えてやってくれ、俺がやったら、俺が餃子になっちまいそうだからな」
我ながら、想像したらあまり笑えない。ただ、実際に俺から見た餃子の皮は掛け布団と同等のサイズのため、洒落ぬきで巻き込まれたらキンザン餃子になってしまう。
餃子を作ったことのあるベリーが手早く皮を手の平にのせて、餡を皮にのせると綺麗に包んでいく。
「まぁ、こんな感じに皮を折ってから、上を重ねていくのよ」
その様子に嫁ちゃん達が真似していくが、この餃子作りが一番難しいようで、かなり手こずっているのが分かる。
しかし、予想外の声が俺達に対して向けられた。
「あ、あの……パイを作ったりはしたことがありますので、手伝いましょうか……」
兵士の女性がそう口にしてくれた。
ベリーが優しく微笑むと質問してきた女性兵士に手招きをしていく。
「なら、お願いするわ。他にもいてくれたら、お願いできるかしら?」
そんな言葉に男女数人が手をあげる。
「えっと、村で俺の家は食堂だったから、多分できる……と思います」
「ウチも宿屋で手伝ってたから、できると思う」
「私も両親の手伝いしてたから、できます!」
餃子作りに人手が増えると、生地と餡を追加で作り出すベリー達。
俺が不思議そうに見つめると、そこにはさらに手伝いを申し入れる兵士達の姿があった。
そこからは最初の蟠りが嘘のように皆が協力して餃子を作るという、不思議な光景が広がっていく。
当然ながら、兵士が参加する姿にルフレ殿下も既に最初の恐怖がなくなったのだろうか、こちらを気にしたような視線を向けている。
「はぁ、やりたいなら早く来いよ! ただでさえ、数が多いんだからよ! 旦那様がちびちび野郎になって、人手が足りないんだからよ!」
ルフレ殿下に向かって叫ばれたであろう言葉、またしても、室内の空気が凍りつきそうになったが、そんなことを気にしない様子にルフレ殿下は困惑した様子で自身を指さした。
声の主はミトであり、ギザ歯を見せる様に笑みを浮かべている。
「早く来いよ? 興味あるんだろうが、やらないなら、構わねぇけどさ?」
「む、よ、余も手伝ってよいのか?」
そんな質問にミトが自分の隣の席を指差す。
「早く作るぞ! 不器用野郎ばっかりなんだから、手伝えよな!」
「う、うむ! 余に任せるのじゃ!」
立場を気にしないミトの行動は本来なら問題発言なんだろうが、ルフレ殿下からすれば、新鮮なのだろう。
餃子を作る嫁ちゃん達もルフレ殿下や兵士の皆もいい顔をしているな。
俺は次の流れのためにナギとベリーに別の作業をお願いすることにした。
「──と、いう訳でメフィスに許可はもらえたから、2人に頼めるか? 大変なら他のみんなにも声をかけるが?」
「構わないわよ。キンザンさんのために頑張るわ。行きましょう、ナギ」
「うん。ベリーと頑張る。マイマスターのために絶対やり遂げる」
俺は必要なやり方を教えると、2人が退室していく後ろ姿に軽く手を振って見送った。
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