147話、解除不可能?最高の嫁に支えられて
おいおい、どうするんだよ……これ、本当に収拾がつかなくなるんじゃないか……
俺は小さくなった頭で必死に考えながら、フライちゃん達に向けて手を振る。
「おーい! 来てくれ」
手を振る俺の姿に最初に近づいてきたのは、ミアとミトの2人だった。
何とも言えない表情の2人に俺も苦笑いを浮かべる。
「オッサン、本当に小さくなってるじゃんか、どうするんだよ……」
「マジに小さいな……でも、ウチはそんなチビチビ野郎になっても、見捨てないからな、安心しろよ」
心配するミアと、なぜか嬉しそうな表情に変わったミトの2人にフライちゃんが声をかける。
「盛り上がってるところ、申し訳ありませんが……わたし達はどうするべきか決めましょう。それに解除スキルが本当にできるなら、話は早いですが」
フライちゃんの冷たい視線がナイフの刃先の如くメフィス達へと向けられる。
その視線にメフィスがいまだ警戒する最中、ルフレ殿下は必死に感情を押し殺すようにして立ち上がると部屋に戻ってきたエオナ中佐と部下達に向かって指示を出していく。
「エオナ! すぐにキンザンにかけられたスキルの解除に取り掛かれ、今すぐじゃ! 他の者らは、早急にこの愚かな罪人から、解除につながる方法を聞き出せぃ! 逃がすようなことがあれば、国が滅ぶものと心せよ!」
焦りながら、気絶するズナッキーを指差し罪人と口にしたルフレ殿下にへたりこんでいた兵士達が慌てて立ち上がり、ズナッキーを別室に連れていく。
ここから先のことは想像したくはないが、ルフレ殿下の表情と怒気を孕んだ声から本気の拷問じみた行為になるだろうことは容易に想像がついた。
状況が理解できないといった表情のまま、エオナ中佐は素早く部下の人達と共に複数の解除スキルが次々に掛けられていく。
しかし、俺の身体が元に戻ることはなかった。
落胆したフライちゃん達の表情を見て、俺が心配する最中、ベリーが声をかけてきた。
「落ち着きなさいよ? まったく、本当にキンザンさんは皆に愛されてるわよね。さすがに妬けちゃうわ。ただ、今は怒るより解除スキルについて調べるわよ」
ベリーの言葉がフライちゃんの表情に僅かな変化を与えた。
「そうですね。わたしとしたことが……すみません、冷静にならないとですね」
そこまでの会話を聞いたエオナ中佐が震えた声色で質問を口にした。
「あ、あの……解除スキルにも、色々なものがありまして、もし許されるなら、一度、私の師に相談したいのですが……」
最初で会った頃のカッコイイ女軍人さんのイメージが完全に怯えた子犬みたいになっているが、エオナ中佐から出た「私の師」という言葉に俺は嫁ちゃん達を下から見上げる形で声をかける。
「みんな、俺は今の言葉に賛成なんだが、どうかな?」
最初に賛成したのはベリーだった。
「そうね、フライちゃんが解除できないなら、できる人を探していかないとね。その師匠さんの話を聞いて損はないわ」
「待てよ! なら、その師匠ってやつを連れてきたら済む話なんじゃねぇのか?」
そう口にしたのはミトであり、その言葉に対してエオナ中佐の表情が暗くなる。
「すみません……私の師は知識は豊富のですが……スキルそのものがあまり強力ではないのです……ただ、間違いなく! 私よりも知識はあるんです」
嫁ちゃん達の視線が厳しく突き刺さる中、沈黙していたポワゾンがスッと前に出る。
「分かりました。ワタシとしても、今の状況はよく思っておりません。ですのでフライ様とワタクシを同行させていただきたいのです」
「……え、わたしですか! いきなりなんでそうなるんですか!」
話を聞いていたフライちゃんが慌てて、声を上げる。
「フライ様、今は時間が必要になります。それにフライ様を見る皆様の表情を鑑みれば、一度離れることも大切かと」
ポワゾンの言葉にフライちゃんが悔しそうな煮えきれない表情を浮かべてから「はぁ……」とため息を吐いていく。
「分かりました。まったく……本当に不服です。話は決まりました。案内を頼みます……時間が惜しいので」
フライちゃんの苛立ちに満ちた表情は女神とはかけ離れた般若のようにすら見えるが、想像しないように自分自身に言い聞かせていく。
それから殺伐とした雰囲気の残る室内からエオナ中佐が一度、王都に向かうための許可をルフレ殿下にもらい移動を開始する。
エオナ中佐と共にフライちゃんとポワゾンが部屋を出てから、俺は改めて室内を見回していく。
フライちゃんが移動したことにより、冷静さを取り戻した室内でルフレ殿下が改めて俺の傍にやってくる。
そんな一国、いや、大陸を統べる国王を前にミアやナギ、ペコとグーが警戒するように身構える。
嫁ちゃん達の様子を見て、怯えながらも兵士達が慌てだしたが、ルフレ殿下が手を軽くあげる。
「皆は動くな。余は、余の立場と個人としての両方で謝罪がしたいのだ」
その言葉に俺も嫁ちゃん達に声をかける。
「みんなも落ち着いてくれ! こんな状況でアレだろうが、ルフレ殿下は国王陛下なんだ! 失礼はダメだ」
俺の言葉にベリーが手を数回ならし、嫁ちゃん達を落ち着かせるとルフレ殿下は緊張した表情を僅かに和らげた。
ルフレ殿下の指示と表情、ベリーと俺の言葉に兵士達の中にも安堵の表情を浮かべる者もちらほらおり、俺は改めて、命懸けでルフレ殿下を守ろうとした兵士がいたことに少し安心した。
「本当に済まなかったのぅ、キンザンよ。余が不甲斐ないばかりに……このような事態に巻き込んでしまった事実、心から謝罪する。許してほしい」
「まぁ、気にしないでください。俺も何とかなるって信じてますから、エオナ中佐や、フライちゃん、ポワゾンを信じるだけですよ」
会話を終えてから、数時間が過ぎようとしていた。
俺が小さくされた直後、怒り心頭だった嫁ちゃん達も落ち着きを取り戻してくれていた。
ただ、この僅かな時間で残念な知らせがいくつか増えていた。
その一つは、ズナッキーが【縮小化】の解除が魔導官を完全に破壊されたため、解除ができない事実。
さらにズナッキーは、自分のスキルが禁忌のスキルであった事実が明らかになっていた。
禁忌の品を大量に手に入れていたズナッキーはその中から、自分自身も力を手に入れようと考え、後先考えずに使用していたのだ。
禁忌のスキルだからこそ、解除スキルが通用しなかった事実に俺は何とも言えない表情になっていた。
「まさか、また、禁忌絡みなのか、はぁ……本当に、ズナッキーと関わったせいで……」
額に手を当てて、悩む俺の姿に申し訳なさそうにルフレ殿下が頭を下げていた。
とりあえず、前向きに考えることにする。俺の周りには凹んだ表情の嫁ちゃん達がいた、なんとも言えない気持ちだったがとりあえず声を掛ける。
急な俺の言葉に嫁ちゃん達が一斉に俺を見下ろしてくる。
巨大な嫁ちゃん達の姿に軽く威圧感を感じながらも俺は声を必死に出していく。
「みんな、悪いが頼みがあるんだ。とりあえず、俺のいた世界の言葉に“飯を食わねば戦はできぬ”ってのがあるからな。【フライデー】としてやるべきことをしたいんだ!」
俺が小さなサイズになっても、食の話を出したからだろうか、若干呆れ顔の嫁ちゃん達。
だが、俺はそのまま話を続けていく。内容はいつも通りであるが、今回、俺は手を出せないため、嫁ちゃん達に丸投げになってしまう。
俺が頭を下げようとした瞬間、ミアの指が伸ばされる。
指は俺の頭を下に向くのを止めると、ニッコリ笑った。
「オッサン。ボク達はオッサンの嫁なんだぜ? 頭なんか下げんなよな」
その言葉にベリー達が笑みを浮かべていた。
俺は本当に怒ると怖いが最高の嫁に支えられてるなと素直に感じていた。
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