145話、ズナッキーの裁きと禁忌の代償
ズナッキーを捕まえることに成功した俺は食材を使って拷問じみた真似をしたことを後悔しながら、ズナッキーをルフレ殿下の元に連れていく。
ここからは少し、ややこしくなりそうな予感がしたので、嫁ちゃん達には隣の部屋で待機してもらうことにした。
同行する気満々だったドーナを影から出して、僅かな時間だが、嫁ちゃん達に笑いかける。
「すぐに終わるから、今回は引き渡しと説明だけで他はルフレ殿下に任せるしな」
嫁ちゃん達が納得してからすぐに俺はルフレ殿下達の待つ、会議室へと向かっていく。
今回はサイズを自在に変えられる可能性があるため、ズナッキーが普通サイズに戻ったとしても、兵士さん達がすぐに捕えられる位置を保ちながら移動していく。
俺がズナッキーを捕らえた事実にルフレ殿下とメフィスが驚いたように小さくなったズナッキーを確認する。
「こやつがズナッキーか? 小さくなるスキルとは、本当に厄介なスキルじゃな……しかし、よく捕まえられたと驚くべきかのぅ……」
話をする最中、ズナッキーがゆっくりと隙を窺っていることに気づいたメフィスが指をシュッと、動かし、風の刃がズナッキーの真横に放たれる。
風の刃がテーブルの一部を瞬時に削り、ズナッキーの全身が震えているのがわかった。
「すみませんなぁ、あまり要らないことを考える真似、あと行動は控えていただけますかなぁ、我輩も手元が狂って、木っ端微塵の肉片にしてしまうかもしれませんからなぁ」
今までの日々の流れを考えれば、メフィスの苛立ちはずっと前から限界突破していたのかもしれない。
単純に今も我慢しているんだと考えたら、軽いお仕置きって感じだな。
ルフレ殿下がメフィスを落ち着かせてから話が再開されると俺は話に耳を傾ける。
厳しい表情でズナッキーを見つめるルフレ殿下は、室内にいた兵の中からエオナ中佐に声をかける。
「エオナよ! 解除スキルが使えるであろう、すぐにこの者のスキルを解除してくれるかのぅ?」
「はい、すぐに!」
エオナ中佐は言われてすぐに解除スキルを試していく。
しかし、そこでズナッキーのスキルが解除スキルの対象にならないことが判明する。
「おかしいですね……解除のスキルを発動しても反応が見られません……もう一度!」
数回の解除スキルの発動を行うエオナ中佐を見て、ルフレ殿下が即座に防御魔法を発動させる。
「まさか、解除スキルが効かぬとは、本当に厄介なものじゃなぁ! ただ、これでスキルを受けたことがない者に対する防御は完璧じゃ」
俺はそれとなくメフィスに質問する。
「今の防御スキルなのか?」
「そうですねぇ、殿下のスキルはいくつかありますが、未知のスキルや一度も目にしていないスキルであれば、絶対防御の結界になります」
「ふーん、なんかすごいなぁ、絶対防御とかあるんだな?」
「はぁ、貴方は既に女神フライという世界に影響を与える存在を身近に置いているでしょうに?」
メフィスの言葉に苦笑を浮かべながらも俺の視線は裁きの言葉を突きつけようとするルフレ殿下に向けられる。
「これより、余の持つ総ての権限を行使して、グリド商会、会長代理である副会長ズナッキー・グリドに対し、その罪をその身に伝えよう! 心して聞くがよい!」
ズナッキーが覚悟を決めたように両膝を床について、視線をルフレ殿下に向ける。
「貴様の罪は重い。禁忌の品に触れたのみならず、それを行使し、大陸全土に混乱を広めた事実、余はすべてを知っておる。
さらに禁忌を解き放ったその所業──極刑を免れることなど決して許されぬと知るがよい!」
極刑が免れない事実にズナッキーの表情が絶望に染まっていく。
その表情はお世辞にも反省しているという顔ではなく、自分がなぜ、罰せられないといけないのだと言わんばかりのそれだった。
「……なぜだぞい……すべて上手くいってたはずだったのに……クっ! 貴様が貴様が! 貴様さえ現れなければ! 許さぬ、許さぬぞい、キンザン!」
そう口にした途端、ズナッキーが俺を睨みつけてくる。
その鬼気迫る姿に俺は何とも言えない気持ちになってしまった。
「貴様だけでも、くらぇッ! 【縮小化】ッ!」
ルフレ殿下のスキルである絶対防御スキルが発動すると室内が眩い光で包まれていく。
光はズナッキーのスキルを弾き飛ばし、火花のようにズナッキーの【縮小化】スキルを霧散させていく。
それと同時にズナッキーが自身の姿を本来のサイズに戻すと慌てて逃亡しようと駆け出していく。
「くっ! 往生際の悪いバカ者が、そやつを叩き斬れ! 陛下に攻撃した痴れ者を生かすなッ!」
側近の1人が放った声に兵士達が腰の剣を抜き、ズナッキーに向かう最中、ルフレ殿下が声を張り上げる。
「ま、待つのじゃ! 殺してはならぬ!」
咄嗟の声に兵士の放った斬撃がズナッキーの背中に切りつける。
「ぎゃああああ!」という声と同時にズナッキーが転倒すると魔導師の1人が、慌てて呪文を口にして、細い針をズナッキーの背中に複数本の針を刺していく。
「大人しくしろ! これで貴様の魔力官を完全に塞いだからな、二度とスキルは発動できないぞ!」
俺はすべてを見てから、申し訳ない気持ちで姿を見せる。
俺の姿を見たメフィス達が慌て出すのが分かった。
「あんまり近づくなよ、マジに怖いって……」
そう、俺だけ絶対防御スキルの対象外になっていた。
俺の全身はズナッキーの【縮小化】により、縮められてしまっていた。
幸いだったのは、ズナッキーが切られた際に【縮小化】のスキルが中断されたため、サイズはハムスターくらいの背丈にとどまったことだろう。
メフィスに掴み上げられ床からテーブルの上に持ち上げられる。
「ちょ、わ、メフィス、ゆっくり頼む! 絶対に落とさないでくれよ、マジに頼むぞ!」
「分かっています。それより……貴方のことをどう説明するかの方で、頭を悩ませてます……今の姿を見たフライが何をしでかすか……想像もしたくないですがねぇ」
そう語るメフィスの横でルフレ殿下がすぐ、エオナ中佐に声をかける。
「えぇい、何とかせぬか! キンザンにかけられたスキルを解除するのじゃ! エオナよ。お主の部下も連れてまいれ! 絶対に解除するのだ、よいな!」
ルフレ殿下の指示に即座に部屋を飛び出すエオナ中佐、それからすぐに扉が勢いよく開けられる。
「おい! なんかあったのかよ……え、あ、あれ、なんで小さくなって……ちびちび野郎になってんだよ! 説明しろよ!」
扉から入ってきたミトの声に室内からは怒りに満ちた怒鳴り声が返される。
「キサマ、またか! 無礼にもほどがあるぞ。ダミオ騎士団長! その女を取り押さえよ!」
少し偉そうな長い髭の老人が真っ赤な顔で指示を出した瞬間、ダミオが前に出る。
「お任せを! すぐにアイツを捕まえます! うおぉぉぉッ!」
ミトに掴みかかろうと手を伸ばすダミオ、俺が慌てて止めようとしたが、その勢いが止まることはない。
「ミトォォォォォォッ!」
小さくも必死に叫び声に気づいたミトが後ろに手を伸ばして、室内に響き渡るように声を張り上げる。
「ウチの旦那に心配かけさせんじゃねェッ! クソ野郎があぁッ!」
突然、ミトの影から巨大な解体用のハンマーが出現するとダミオの顔面に炸裂する。
「ぐああああ!」
ミトの怪力から予想外のリーチを得た強烈な一撃。
フルスイングで吹き飛ばされたダミオが壁に叩きつけられる。
その背後からも数名の兵士がダミオに続きミトに向かって飛びかかっていく。
しかし、影からハンマーが出てきたということは、ミトの影にはドーナがいるわけで、向かってきた兵士達がダミオ同様に吹き飛ばされていく。
あっという間に騎士団長と兵士を吹き飛ばした嫁ちゃん達にメフィスが頭を抱えながら、一歩前に踏み出した。
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