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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
6章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・デゼール]下

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143話、オーク天丼のルール。賑やかな食堂

 いくつか、嫁ちゃん達に誤解されてる気がするが、そこはとりあえず置いとく形にして、俺自身の戦いのために食材をチョイスしていく。


 時間を考えれば、昼くらいだろうか? 早朝から迎えが来てバタバタしていて、朝食がプリンアラモードになっていたため、予定通りガッツリメニューにしていく。


 今から俺が作るのは『豚天丼』ならぬ、『オーク天丼』だ。

 作り方は簡単で、豚肉(オーク肉)の薄切りを何枚か重ねてから、バラけないように肉で包み、天ぷら用の粉で揚げていく。


 嫁ちゃん達も何度も繰り返す揚げ物作りのため、卵などの説明はもう不要になっている、俺は簡単な流れだけを説明していく。


 作り方を見せれば、嫁ちゃん達はそれをすぐに理解して、同様の仕込みをしていってくれた。


 あっという間に薄くカットされたオーク肉が本来の厚みに変わっていく。


 そこでキミルが不思議そうに質問してきた。


「分からないな? なぜ、わざわざ薄く切った肉を重ねてるんだ、初めからその厚みに切れば済むだろうに」


「まぁ、そう思うだろうが、一旦、味見用に揚げるから待ってくれ」


 手早く、油の温度を確認してから、薄い肉を重ねたものと最初から厚みがある肉を別々に揚げていく。


 厚みがある肉はじっくりと時間をかけて揚げていき、さらに余熱を通していく。


 両方が揚がり終わると軽く冷まして、丼に使うのは業務用の天丼のタレにする。

 タレを少量かけてから、キミルと嫁ちゃん達に味見をしてもらう。


 本来は一枚をまるまる食べてもらう方が分かりやすいだろうが、そうすると味見というより、食事になってしまうため、今は少量で我慢してもらうことにした。


 肉を食べ比べた嫁ちゃん達はすぐに理解したような表情になる。


「あ、成程な……確かにオッサンが薄切りにした理由がわかるな」


「そうね、私もキンザンさんのやり方に賛成よ」


 ミアとベリーの言葉にニア達が頷いていく。


「こりゃ、選ぶまでもねぇな。料理馬鹿の旦那様らしいって感じだけど、まぁ、どっちも美味いのは間違いないけどな!」


 ミトはそう言いながら、しっかりと味わうと俺に微笑んでくる。


 相変わらず、口調があれだが、ミトも賛成のようで俺は調理法に問題がないことを改めて確信した。


 嫁ちゃん達の様子に驚くキミルから不思議そうに質問が口にされる。


「いや、どちらも美味いんだが……何がダメなんだ? なんでキンザン殿の奥方は厚みのある方をダメだと判断したんだ?」


 その質問にはフライちゃんが返事をしていく。


「いいですか、どちらも美味しいのは、きんざんさんがしっかりと調理しているからです。問題は食感と食べやすさですね」


 キミルは、話を聞いてもまだ分からないという表情を浮かべ、俺の顔とフライちゃんの顔を交互に見ている。


「食べれば厚みのあるお肉の方が食べ応えはありますが、肉が厚い分、タレを掛けた際にバランスが難しくなります」


 言われて、キミルがハッとした表情を浮かべている。


「確かに、言われたら分かるが……そこまでしなくても……」


 そんなキミルにドーナがドヤ顔で声を発した。


「だめなの! ドーナ達の旦那様であるマスターはすごいの! 料理に絶対、手を抜かないの!」


 その言葉にどっと嫁ちゃん達が笑い出す。


「確かにね、キンザンさんだもんね」

「そうだよなぁ、オッサンだしなぁ」

「間違いないにゃ、キンザンはキンザンだからにゃ」


 頷くベリー、ミア、ニアに続いて、ペコとグーが喋り出す。


「「ですね。でも、主様の考えは何となく分かります」」


 そんな最中、ナギがぐっと前に体を乗り出すと、フライちゃんとポワゾンが笑いながら話し出す。


「マイマスターは料理に魂を込めてるから、すごい」

「そうですね。きんざんさんは本当に料理が好きですからね」

「ご主人様なら、どんな料理も完璧に作られます。だからこそ、ワタシ達の旦那様なのですから」


 嫁ちゃん達が俺に対して褒める最中、少し拗ね気味にミトが呟いてきた。


「ふん、結局、料理馬鹿なだけだろ? まぁ、カッコイイんだけどな……」


 嫁ちゃん達が一斉にしゃべり出すと俺は少し照れくさくなるが、それ以上の情報量にキミルが困惑するのが分かり、俺は改めて調理を再開する。



 大量の丼が用意され、俺は魔導釜を“買い物袋”から新たに用意して大量の米を炊いていく。


 炊き上がった米を手早く丼に盛り付ける嫁ちゃん達が次々に並べていく。

 それから揚がったオーク天の油をしっかりと落とし、僅かに冷めた米の上に乗せ、その際に別で揚げたシソの天ぷらも一緒に添えていく。


 鮮やかな緑のシソ天と金色のオーク天が盛り付けられたオーク天丼に甘い香りの天丼のタレをかけていく。


 ある程度、オーク天丼ができ上がった時、昼を知らせる街の鐘が鳴り響く。


 それを合図に俺はキミルと見張りの兵士達に声をかけた。


「悪いんだが、皆を食堂に呼んでくれないか?」


 キミルが不思議そうに「え?」と声を出す。


「いや、これを運ぶのは大変だからさ、皆に来てもらえたら助かるんだが、無理か?」


「いや、しかしだな……はぁ、わかった。声をかけよう」


 キミルが仕方ないと肩を落とすと、見張りに向かって声をかける。


「君達、悪いが頼めるか? 見張りは私1人いれば事足りるだろうからな、手分けして声かけに回ってくれるか」


「え、あ、はい! かしこまりました。キミル中尉!」


 見張りと称して、その場に残ったキミルがオーク天丼を見つめている。


「先に食べるか?」と声をかける俺に首を振る。


「いや、仮にルフレ殿下が来られるとしたら、先に食すわけにはいかないからな」


 食堂に漂う甘い香りと香ばしい匂い、廊下に伸びる香りは次第に人々の足を食堂へと向けさせていく。


 そして、俺達の調理をしていた厨房に駆け足が近づいてくる。


「キンザンよ! お主、余のために料理を作ったとは誠か! 今すぐに余の“ぷりんアリャモードオ”を出すのじゃ!」


 調理場用の入口を勢いよく開いたルフレ殿下は期待に満ち溢れた表情だったが、並んだ丼を見て、何とも言えない表情で口を開いた。


「なんじゃこれは? よく分からぬ鉢を並べているが、それよりも余のぷりんアリャモードオはどこにあるのじゃ?」


「すみません、今回はプリンアラモードじゃなくて、普通に昼食を作ったといいますか、あはは」


 予想外だったなぁ……普通にプリンアラモードが正解だったのか、悪いことしたな、こりゃ……


「なんじゃと! むぅぅぅ、そうなのか……」


 目に見えて凹むルフレ殿下に俺は一つの丼をトレーに置いてから手渡すことにした。


 その光景に、後ろで待機していた側近の一人が口を挟もうとしているのが、見ていて分かったので、先に俺は声を出した。


「丼は自分で運んで、蓋を開くのが一番美味しい食べ方なんです。他人がやると美味しさが半減しますからね。まぁ、皆と食べる丼が一番なんですがね」


 勿論、かなり大袈裟なことを言っているが、(あなが)ち嘘でもないのだ。


 丼の蓋を開いた瞬間の香り、それこそが丼ものの始まりであり、最後に蓋を閉める瞬間までが一つの流れとも言えるのだ。


 また、毒味だと言われて、ぐしゃぐしゃになってしまえば、すべてが台無しになるだろう。そうなれば、美味さは半減してしまうのは目に見るよりも明らかだ。


「そうなのか! なんと……そんなすごい料理なのか……皆、よいか、絶対に余が自ら運ぶ! 手を出すことは許さぬ!」


 ルフレ殿下が、トレーを手に取り、オーク天丼を席に運んで行く。

 その姿に集まった兵士達に僅かながら緊張の色が見え隠れする。


 そんな中、休憩と言わんばかりにミトとミアがオーク天丼を持って、食堂に向かい席に移動するとルフレ殿下にお構いなしに「いただきます!」と声に出していく。


 ルフレ殿下を気にすることなく食事を開始する2人の姿に空気が変な方向に動き出さないか心配したが、予想外なことはやはり起こるんだなと、改めて感じた。


 ルフレ殿下が2人と同じ席に座ったのだ。


「す、すまぬ。余も座ってよいかの?」


「ん? 座りたいなら座れよ。席は空いてるんだからよ」


 ミトがそう口にするとミアも頷いて見せる。


 その様子にやはりと言うか、側近の1人が声を荒げる。


「貴様! 殿下になんて言葉遣いは不敬であるぞ!」


 テーブルを“バン!”と叩かれた瞬間、ルフレ殿下より先にミトが座っていた椅子を片手で掴み、悩むことなくフルスイングで側近に叩きつけた。


 いきなりの出来事に兵士達が慌ててミトを取り囲む。


「飯の席に立場を持ち込むんじゃねぇ! ぶっ飛ばすぞ。クソ無粋野郎!」


「ミト、既にぶっ飛ばしてるから……まあ、オッサンの作った飯を食べてる時に立場とか関係ないしね」


「大丈夫だろ? 手加減したからな、吹き飛ばしただけだし、問題ないだろ? それより飯、食っちゃおうぜ。みんなで交代だしな!」


 何事もなかったかのように食事を続ける2人に兵士達の緊張がピークに達した時、ルフレ殿下が笑いだした。


「ははは、主ら、本当に面白いのぉ! 誰か、やつに回復スキルをかけてやってくれ、余はこの席が気に入った。ここで食べるぞ!」


 そこからは、ルフレ殿下は上機嫌であり、蓋を開けた瞬間の香りを堪能した瞬間、笑みがこぼれ出しているのが俺からも理解できた。


 スプーンで初めてのオーク天丼を食べたルフレ殿下の表情は幸せそうであり、さっきまでピリついていた食堂の空気が大きく変化していくのを感じた。


「皆も、キンザン殿の料理を食べるのじゃ! ただし、自分で運び、蓋を自ら開くのじゃ! そうしないと美味さが半減するのじゃ、よいな!」


「なんだよ。よく分かってんじゃねぇか! ウチらの旦那様の飯は大陸一だからな」


「ふふ、そのようじゃな。余の知らぬ味を作る奥方達の旦那はまさに大陸一の料理人じゃな」


 そんなこんなで、食堂は明るい雰囲気で賑わいを見せていく。


 俺の休憩はまだまだ先になりそうだが、悪くない気持ちだな。

読んでくださり感謝いたします。

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