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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
6章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・デゼール]下

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137話、国王ルフレ・イルミネイト。グリド商会の運命

 突然の俺の声に、一瞬、空気が凍りつきそうになるが、そんなことは完全に無視して、俺は慌ててラビカラにつけるための各種ソースの入ったソースポットを指差す。


「今回のラビカラは、即席だから味が薄いんだ。ソースをつけて食べた方が絶対に美味いからさ!」


 立場を完全に忘れた俺のセリフに明らかに苛立つ護衛達に対して、口にラビカラを運ぼうとしていたルフレ・イルミネイト殿下が興味深そうにテーブルに置かれた複数の小壺(ソースポット)を見つめている。


「ふむふむ……ならば、余はどれを試せば良いのか教えてもらえるだろうか? 余は用意された料理を食すことはあるが、自らソースを選ぶようなことはなくてな」


 しっかりとした口調でありながら、まるで子供のような質問に俺は不思議な表情を浮かべていた。


「なんじゃ? 余の質問はそんなに変な問だったのか、もしや、余が知らぬだけで……民の間では、基本のソースが決まっておるのか?」


「いや、むしろ、これは『フライデー』の特別製だから、味は多分、真似されてないと思いますが……」


 一瞬、冷静になった俺が敬語を取り入れたことで少し不機嫌そうになるルフレ殿下に俺は慌てた。


「気楽に会話をしてくれる方が余も気兼ねなく話せるのだがのぅ……それとも其方(そなた)は、余と気兼ねなく話すことを不服に感じるのかの?」


「え、いや、あの……なんと言いますか」


 俺は慌てて、ルフレ殿下の背後で待機する護衛と侍女に視線を向ける。


 その視線を素早く逸らす護衛と侍女に俺は軽くイラッとしてしまった。


 コイツら、偉そうにさっきは色々言ってたのに、選択肢から逃げやがった!


「──はぁ、殿下は辛い物は食べられますか?」不意に俺は質問を口にした。


 それから、ルフレ殿下の好みが、味の濃いめで濃厚、食べ応えがある物と分かり、俺はタルタルソースをオススメすることに決めた。


 それと同時に、食べ応えがあると聞いてすぐにもう一つ、ラビカラのカップを取ると、紙皿に移してから、チーズをたっぷりとかける。

 手早くラビカラの乗った紙皿にラー油を作る際に温めていた“レッドスコーピオン”の殻からお玉でラー油もどきを掬い上げてチーズにかけていく。


 熱々のラビカラと“ラー油もどき”に挟まれたチーズが一気に溶けだし、黄色と赤のチーズソースへと変わっていく。


「な、なんじゃコレは……禍々しい赤色のソースに鮮やかな黄色……余が初めて見る料理じゃ」


 ただ、さすがに真っ赤なラー油もどきを見た護衛が慌て出し、毒味を申し出る。


 再度、叱咤が飛ぶが、それでも今回ばかりは譲れないと護衛が最初に“ラビカラのチーズとラー油ソース”を口に運ぶ。


「な、う、うぅぅぅ……」


 護衛が口にラビカラを放り込んだ途端に、下を向き、両膝に手をつき、微動だにしない。


 俺は慌てて、ペットボトルの水を取り出し、キャップを外してから護衛の男に手渡す。


 一気にペットボトルの水を飲み干した護衛に俺は心配そうに声をかける。


「おい、大丈夫か? 揚げたての唐揚げを一口で口に入れたら危ないぞ。口の中を火傷してるだろうから、口内の皮を弄るなよ」


 俺はあたりを見渡し、調理を手伝っていたフライちゃんに手を振る。


「なんですか? きんざんさん。どうしたのですか」


 とりあえず、状況を説明して、フライちゃんが護衛の回復をしてくれた。


「はい、終わりましたよ。本当に、きんざんさん? 火傷の注意はしっかりしてあげてくださいね。私はまだ焼きそばを作らねばならないのですから、では、戻りますね」


 フライちゃんは焼きそば用のスペースに戻っていく。


 そんなやり取りを見ていたルフレ殿下は、ラビカラにジッと視線を向ける。


「余が先に食べていたら、今みたいになっておったかもしれんな……むむ、油断ならぬな、ラビカラ……」


 まるで『ねぎまの殿様』みたいな展開になってしまったが、ルフレ殿下に火傷がなくてよかった。


 それから火傷しないための食べ方を教えていき、半分になったラビカラにタップリとチーズラー油ソースをつけて、食べてもらうことにした。


「おぉ〜! なんじゃこれは、おい、お前達も食べてみよ! なんと濃厚で深い味なのじゃ、臭みのないチーズなどがあるとは、実に赤色のソースも刺激的ではないか」


 部下達に対して、自身が口にしたチーズラー油ソースを進めていく。


 そこから、ルフレ殿下は追加でラビカラをもう二皿食べてから、他の料理へと向かっていく。


 俺はフライちゃんに念話を飛ばして、嫁ちゃん達、みんなにルフレ殿下が向かうことを伝えてもらう。


 やはりと言うべきか、全ての場所で騒ぎになっていたが、俺はそんな様子を軽く笑いながら、ラビカラを揚げていく。


 最後には、来た人達が幸せな笑みを浮かべて家路についていく。


 知り合い達も俺に頭を下げながら帰宅する最中、ルフレ殿下達が戻ってくる。


 焼きそばにお好み焼き、鉄板焼きに焼き菓子と俺達『フライデー』が作ったすべての料理を堪能したらしい。


「いやはや、まさか彼の地でこれほどの料理を食せるとは思わなかったぞ。本当に有意義な時間だった」


 そう語るルフレ殿下はいまだに紙皿に乗った焼きそばを使い捨てフォークで食べている。

 歯に青のりが付いている事実を後で教えないといけないのは、かなりネックだな。


「満足してもらえたなら、本当によかったですよ」


「な、其方! またその喋り方、余が許したのだから、堅苦しい言葉はなしだと言うておろうに!」


 軽く拗ねた表情でそう語るルフレ殿下に軽く謝罪していると“スッ”とメフィスが姿を現す。


「国王陛下、あまり困らせてはなりません。立場を考えればこその口調なのですからなぁ」


「お、メフィス。余を放ってどこに隠れておったのだ!」


「申し訳御座いません。ダミオ騎士団長を王都のヒヒ様に預けて来ておりまして、遅れてしまいました。お許しくださいませ」


 頭からすっかり忘れていたが、俺が殴り飛ばす結果になった団長さんは帰還したんだな……そんなことを考えているとメフィスから鋭く熱い視線が向けられている。


 視線の理由は多分だが、“厄介事を起こすな”みたいなことだろう。

 そこから、メフィスとルフレ殿下が軽く話してから俺に再度視線が向けられる。


「ゴホン、余としたことが大切な話をし忘れておった。すまぬな。此度、世が自ら足を運んだ理由は古の災いを余の統治する時代に漏れだした事実を耳にしたからに他ならん」


 メフィスから報告を受けた内容を聞いているからこそ、事態を重く見ての行動なのだろう。

 少なくとも“海の巨大な魔物”、“インク・イナメント”、“禁忌の『汚染』”──


 すべてがいっぺんに起こるなんて、本来ならありえないことだ、俺もルフレ殿下の立場なら自ら動いてしまうだろう。


 そして、俺が耳を疑うような一言が口にされる。


「此度の一件は、一商会が間違いで関わったにしても、許されることではない。むしろ、例外を作り甘い判断をすれば、次の厄災が顔を出すだろう……そうなれば苦しむのは民であり、滅ぶは国となるだろう」


 真剣な表情でそう語るルフレ殿下は険しく冷たい瞳でそう語ったのだった。


 そこから、俺達は解体広場の片付けを開始する。

 メフィスと共に軽く挨拶をしてきたルフレ殿下達はそうそうにその場から姿を消した。


 俺は、食事を楽しそうに食べていたルフレ殿下の姿と厳しい表情でグリド商会を処罰する事実を語ったことを思い出していた。


「どちらも、あの子なんだろうが……責任ってのは、本当に人を不自由にさせるんだな……」


 幼さが残るルフレ殿下の姿を考えながら、俺は煙草に火をつけて肺に煙を吸い込むのだった。

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