134話、嫁の手土産、祝いの宴は大騒ぎ
長い結界での治療という名の作業が終わり、俺達は24時間ぶりに結界から解放された。
結界から出て最初にやるべきことは団長さんの湯浴みだった。
ただ、いきなり熱い湯を使うのは危険だと判断した俺は、何が起こるか分からないため、ぬるま湯からスタートしていく。
当然ながら、団長さんの体を拭いたりするのは、メフィスの部下さんが行ってくれている。
最初に俺が湯浴みをさせようとしたら、砂漠のオアシス都市[ガルド・ゼデール]に戻っていた嫁ちゃん達から本気で叱られる結果となった。
理由はかなり理不尽なもので、俺と女性を二人きりにさせたくないというのが一番の理由だったようだ。
さすがの俺も予想外すぎる理由だと思ったが、さらにフライちゃんからの追撃の一撃を脇腹にもらい、余計なことを考えないようにした。
結局、メフィスの部下さん達が丁重に団長さんの看病をすることになり、俺は久しぶりに嫁ちゃん達とゆっくりした時間を過ごすことができた。
故郷の土産だとニアとナギが色々と持ち帰っており、俺達はその量に本当にびっくりさせられた。
本来は大量の物資などは商人くらいしか持ち運べない決まりだが、ニアとナギの一族は、個々に荷物をギリギリまで持ち、転送陣を往復して土産として置いていったようだった。
俺は2人の説明を聞いてから、改めて土産を見て、頭を抱える結果になった。
ナギ側の手土産は、見たことのない肉であり、量も多く、大宴会を数日ぶっ通しでやっても大丈夫であろう量が山積みになっている。
フライちゃんにより作られた臨時の転送陣がある解体広場が埋め尽くされるほどであった。
ニア側からは、果実と魚、スパイスといった色々な珍しい物が運ばれており、数は、ナギ達蛇人族ほどではないが、それでもかなりの量になっている。
「こりゃ、本当に凄いなぁ……とりあえず、【ストレージ】に入れないとだよな……」
呆気に取られながら、必死に頭を回転させる。
当然というべきなのかは分からないが、ナギとニアは互いにどちらの手土産が嬉しかったかを話し合いながら、言い合いになっていた。
「ニア達の方がすごいにゃ!」
「違う、ナギ達の方が量があるから偉い!」
「にゃにゃにゃ! 量より種類だにゃ!」
「違う! 量が一番大切、間違いない!」
両者が珍しく譲らない雰囲気に俺が頭を抱えていると、ベリーとミアがやってくる。
「何してんだよオッサン? てか、すごい食材の山じゃんか!」
「あら、本当にびっくりな量ね。キンザンさん。これだけの量になると本当に見ててワクワクしちゃうわね」
気楽な2人に、俺は言い争いをしているニアとナギに人差し指を伸ばすと「何とかできるか?」と質問をする。
「あ、なんか大変そうだな? オッサンが止めたら早くないか?」
ミアは俺を見てそう口にしたが、俺は首を横に振る。
「いや、俺が口出ししたら、どっちかを選ぶことになるだろうからな……それが一番ダメな結果になる気がするからな」
「確かにそうね。ミア、私達で止めにいくわよ。キンザンさんはすごく疲れてるでしょうし、喧嘩する姿は見てて良くないわ」
「へいへい、仕方ないなぁ。なら、止めるか! おーい! ニア、ナギ! それくらいにしろよ!」
ミアとベリーが2人の言い争いを仲裁することで、何とか収まったので、ホッと安堵する。
久しぶりのゆっくりとした会話を期待していたが、賑やかな雰囲気に俺は軽く苦笑していた。
二人が言い争いを辞めた時点で、俺は土産の食材を一部残して、全て【ストレージ】に収納する。
そんなやり取りが終わった頃、ミトとペコ、グーの3人が戻ってくる。
3人は少し服が汚れており、俺が慌てて心配すると軽く笑いながら理由を話してくれた。
「大丈夫だよ。少し命知らず野郎がいたから、ぶっ飛ばしてやっただけだからよ! そ、それより、そっちこそ、大丈夫なのかよ、だ、旦那様……」
最後に照れたように「旦那様」って口にするミトはやはり可愛いな。
うん。俺の嫁ちゃん達は本当に可愛いから仕方ないか。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとうな。嬉しいぞ」
「はぁ、し、心配なんかじゃ!」とミトが言おうとする最中にペコとグーが横から言葉を被せていく。
「「ミトは、主様が大好きで、ずっと心配してました」」
ペコとグーの言葉にミトが拳を握って真っ赤な顔で怒り出す。
「い、いつ、ウチが大好きって言ったよ!」
「「図星なのに、怒ったよ!」」
「うわぁ、逃げるよグー!」
「はーい。逃げるねペコ!」
「逃がす訳ないだろうが! 待ちやがれ!」
「「待たないよ!」」
とにかく賑やかな、嫁ちゃん達を見て、俺はやっと終わったような嬉しい気持ちになっていた。
「何を黄昏ているのですか、貴方という方は本当に、我輩達が必死に働いている最中に、仕方ない方ですなぁ」
俺のささやかな幸せを中断させるメフィスの声。
「はは、そう言うなよ。これでも必死に頑張ってきたつもりなんだからさ」
「確かに貴方はすごいですよ。えぇ、本当に素晴らしい結果なのですからなぁ、失われた治療法とされた『汚染』の治療法を見つけ、実際に患者を完治に導いたのですからねぇ、実に素晴らしい功績です」
「メフィスがそんなに褒めるなんて、珍しくな」
訝しげな俺の表情にメフィスがニヤリと笑顔を作り出すと口を開く。
「えぇ、今回はかなり無茶なことばかりしましたからなぁ、ヒヒ様を何度も呼び出したりと、我輩自体も帰還命令を先延ばしにしたりと、まぁ……分かりますなぁ?」
凄まじい圧を言葉に込めながら語るメフィスに俺が引き気味で話を聞いていく。
「つまり、今回、功績がでなければ、我輩は国王陛下からの信頼を大きく失う結果になっていたわけですなぁ……これだけの貸しを貴方に作ったのですから、分かりますなぁ!」
メフィスが言っている「分かりますなぁ!」は、多分、王様との謁見のことであり、さすがに今回は逃げられないと理解している。
「わかってるよ。グリド商会の件が解決したら、すぐにでも会いに行かせてもらう予定だから、だから、落ち着け、メフィス」
「本当でしょうなぁ! 再三の謁見に対して、これ以上の無礼は正直に言いますが、我輩でも庇いきれませんからなぁ!」
うーん、俺から謁見を願い出たわけじゃないのに、理不尽すぎるだろう。
正直、なんで、俺なんかにそんなに会いたがってんだよ……まじに意味がわからないんだがな。
メフィスが言いたいことを伝えると部下さん達を連れてその場を後にする。
その際に団長さんをどうするかを聞いたのだが……
「それに関しては、部下を数名ですが置いていきますのでご心配には及びません。完全な完治が確認でき次第、こちら側で話を聞くことになるでしょうからなぁ」
不敵に笑うメフィスの表情に不安を感じつつも、俺も団長さんの回復を願うことにする。
その日は賑やかに明るい夕食になり、俺達はナギとニアの手土産を使って豪快な宴を開催していく。
今回はジンさん達や他にもグリド商会の被害者の人も集めて一気に盛り上げていく。
ベリーや『星降る砂漠亭』の女将さんであるミネさんにも頼んで出店のような形で料理をしていく。
そうなれば、やることは一つ、俺は大量の油を用意して、火に掛けていく。
大量の小麦粉とスパイスを用意したら、手土産の肉を【解体】で一口サイズにして一気に揚げていく。
ウサギタイプの魔物肉があったため、最高のラビカラが次々に揚がっていく。
ベリーには、お好み焼きを大量に作ってもらうことになり、ミネさんには鉄板焼きをお願いしていく。
『フライデー』なりの大宴会を開くと騒ぎを聞いて住民達もチラホラと集まってきたので、宴から急遽、祭りという形に変更していく。
さすがに人数が厳しくなるので、他の嫁ちゃん達にも手伝いを頼み、さらに焼き魚や果物といった食材も出していく。
「やばいにゃ! なんで、こうなるにゃァ! キンザンとご飯を食べるはずじゃなかったのかにゃ」
「つべこべ言うなよ。オッサンの考えはいつも無茶苦茶なんだからさ! こっち焼けたよ!」
「わかってるにゃ! ニアもゆっくり食べたいにゃ!」
「ナギがやるから、ニア食べてていい。マイマスターの役に立つならナギが頑張る」
「にゃにゃ! ニアもやるにゃ! キンザンに褒めてもらうのはニアなんだにゃ!」
多少喧嘩みたいになってるが、賑やかな雰囲気がウチらしくていいな。
「ペコ、グー悪い、揚がったラビカラを五個ずつに分けて紙コップに入れてくれ!」
「「はい、任せて。主様」」
手際よく作業が進む最中、解体広場の入口付近が騒がしくなる。
人混みが真っ二つに割れると大勢の武装した集団が姿を現す。
この場に相応しくないその姿に俺は慌てて、油の火を消してから、武装した集団に向かって駆け出していた。
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