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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
6章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・デゼール]下

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133話、安堵の先に

 俺の目の前で、団長さんの片手が全て光に包まれると次第に光が縮み、最後はゆっくりと霧散していく。


 静かに一呼吸を入れたい様子のヒヒ様が、ゆっくりとその場に片膝を地面についた。

 その様子にすぐに椅子を取り出しヒヒ様に座ってもらう。


 それと同時にロゼが大興奮でヒヒ様に近づいていく。


「婆ちゃん、凄いなぁ! あんな綺麗な輝き初めて見たよ。あはは。それにさ、お兄ちゃんの考えってやつは当たってたみたいだよ」


 ロゼの視線と言葉の先には、綺麗な白い肌の手が確認できた。


 俺はガッツポーズをしながら、声を上げていた。


「あ、や、やったんだ! 『汚染』の治療法は正しかったんだ!」


 大興奮の俺は、再度フライちゃんから袖を引っ張られる。


「落ち着いてください! 今は時間が停止しているので『汚染』は動いていませんが、時間が動き出したらどうなるか分かりません。確実に全てやらねばならないのですから」


 俺はその場で深呼吸をすると、すぐにヒヒ様に回復ポーションとマジックポーションを取り出し、飲んでもらう。


 その様子にヒヒ様が苦笑いする。


「アンタ、容赦ないねぇ……はぁ、老体を労るくらいしてくれたら、助かるんだがねぇ……」


「すみません、今度、美味い物を作らせてもらうんで、今回は勘弁してください。お願いします」


「ふふ、まさか、アタシに料理で働けなんていう奴が現れるなんてね。楽しみにしてるが、アタシはさっぱりした料理が好みだからね、覚えといておくれよ」


 さっぱりした料理と言われて、揚げ物は出せないなと思えるくらいには、俺にも余裕ができていた。


 小さな安堵があるだけで、これほど気持ちが違ってくる事実を感じて俺自身もびっくりしている。


 それからは数回の休憩を入れながら、ヒヒ様とロゼが全力で仕事をこなしてくれている。


 最初は両手から始まり、次に両足に入り、腕、太ももと、『汚染』が消えていく。


 数時間にわたる作業の中、明らかに疲労が目立つヒヒ様の姿に俺は急いで食事の用意を進めていく。


 ヒヒ様の疲労を考えれば、やはり食べやすくて、サッと食べられる物が一番だろう。


 俺は手早く【ストレージ】からカセットコンロを取り出して鍋に水を入れていく。


 俺の動きにメフィスが興味深そうに見ているので、少しやりづらいが、今は出番のないメフィスからすれば、ロゼとヒヒ様をずっと見ているよりも俺を見ている方が気楽なのだろう。


「メフィス、もし暇なら手伝ってくれ、ネギもどき(ナガネグ)を頼むよ。なるべく細く頼む」


「な、我輩にナガネグ草を刻めというのですか! 我輩は雑用係ではないのですよ!」


 ネギもどきであるナガネグを掴みながら、俺にそう語るメフィス。

 ただ、言葉と違ってしっかりと風魔法で木っ端微塵にするメフィス。


「おい、メフィス? 刻んでくれっていったが、微塵切りじゃなく、輪切りで頼む。細めに頼むぞ」


「な、アナタという人は!」


「頼むよ。俺達がやれることをやらないとさ、なんか格好つかないだろ? 全部任せて、やり遂げましたなんて、格好悪すぎると思わないか?」


「ふん、分かりましたよ! ナイフを貸しなさいッ! 刻んで差し上げます」


 メフィスにナイフ包丁を手渡すと、危なっかしい手使いに俺は慌てて、猫の手の握り方と包丁の使い方を教えていく。


 意外にも不器用な事実と手つきのメフィスに軽く笑ってしまったが、そこからはしっかりと包丁でナガネグを刻んでくれている。


 俺も安心してから、そうめんを茹でていき、別の大鍋に“買い物袋”から取り出した氷と水をたっぷり入れておく。


 そうめんが茹で上がり、すぐに冷水でしめていく。


 無駄な小麦粉を洗い流してから、皿に一掴みずつに分けながら並べていく。


 そして、麺つゆに叩いて潰した梅干しの果肉を混ぜていく。

 ノーマルな麺つゆと、梅入りの麺つゆを用意していく。

 そして、メフィスが用意した薬味と“買い物袋”から天ぷらを取り出していく。

 ・紫蘇の天ぷら

 ・人参と玉ねぎのかき揚げ

 ・かぼちゃの天ぷら

 ・紅生姜の天ぷら

 ・獅子唐の天ぷら

 ・海老天


 とりあえず、そうめんと食べて美味しい天ぷらを人数分に小分けして皿に盛り付けていく。

 俺なりに美味しく食べて貰えるチョイスのつもりだ。自分で揚げてないので少し申し訳ないが今回は許して欲しい。


 自分で揚げても良かったが、今この場で揚げ物を揚げるのは疲れている皆には辛くなるだろう。

 油の匂いは慣れてる俺でも疲れてる際にはキツい時があるからだ。


 そのため、しっかりと見た目を重視した盛り付けにしてある。


 目でも楽しむのが、食の基本だろうから、俺は俺のできる形で全力を尽くしていく。


 ヒヒ様とロゼの疲労が目に見えてわかった時を見計らい、俺は声をかける。


「みんな、飯にしよう。食べないで続けても効率が落ちるだけだからさ」


 その言葉にヒヒ様達が互いの顔を見合わせると、ヒヒ様が頷き、俺の用意したテーブルに移動する。


「なんだい、これは? 見たことない料理ばかりじゃないか」


 ヒヒ様がメフィスを見ながらそう呟くと、メフィスも首を左右に振る。


「我輩も、さすがにこの男の作る料理は説明ができません。いつも、分からない料理ばかりを作る男なのですよ、どの国の料理なのかすら分からないのが、本当にもどかしいものですからなぁ」


 疑うような視線を向けるメフィスの視線、ぎこちなく笑みを浮かべた俺に軽くため息を吐くメフィス。


 緊迫した空気の中での昼食。俺とフライちゃんは箸を使い、他の皆にはフォークを使ってもらう。

 メフィスは箸を使おうとしていたが、やはり上手く使えないのか、早々に諦めてフォークを使っていた。


 ヒヒ様が梅入りの麺つゆを使い、そうめんを食べるとパッと表情が明るくなる。


 俺も梅入りの麺つゆを食べていく。


 さっぱりとした麺つゆにそうめんが絡まり、薬味が加わり、さらに美味しくなる。

 ただ、予想外にさっぱりした料理を求めていた、ヒヒ様は意外にも天ぷらを大量に食べていた。


 用意した昼食があっさりと食べ終わり、ヒヒ様は疲労が少し回復したようで、団長さんの治療を再開する。


 それから数時間が過ぎていく。団長さんの体は既に黒い痣が綺麗に消えており、俺は少し照れくさくなりながらも団長さんの体を直視する。


 しっかりと確認と言っても、大切な部分はフライちゃんとヒヒ様が確認してくれた。


 いや、実際にはフライちゃんから見たら目を潰すと言わんばかりの笑顔で止められたというのが正しいだろう。


 とにかく、団長さんの全身から黒い痣が消え去り、最後に俺はヒヒ様に真剣な表情で口を開く。


「最後は頭の中になります……この部分は凄く繊細で、もしも、何かミスがあれば、団長さんの命に関わるかもしれません……」


 そう、脳内の血液については、外見や体内の臓器と違い、時間が停止していても傷つけば、障害が残る可能性がある。


 そんな俺の不安そうな言葉にヒヒ様が杖で頭をポカっと叩いてきた。


「馬鹿たれ! お前さんの目の前にいるのは、王国でも五本の指に入る回復師なんだよ。任せな。全力でやってみせるからねぇ」


 フフっと笑うヒヒ様に俺はしっかりと頷いた。


 最後の大仕事を俺はゆっくりと見つめていく。


 ロゼとヒヒ様が団長さんに向き合っていくとゆっくりと光が頭部に集中していく。


 そこからは、ありったけの時間を使っての長い戦いになった。

 やがて、光がゆっくりと霧散すると、ヒヒ様が深く息を吐いた。


「ふぅ、何とかなったよ……もう、こんな無茶はしたくないねぇ、寿命が十年は縮んだ気分だよ、まったく」


 ヒヒ様は椅子に座ると、そうつぶやいた。

 俺は深く頭を下げてから、団長さんの容態を確認していく。


 顔色、肌の色、すべてが正常であるのを確認して、静かに呼吸して眠る団長さんを見て、俺は安堵の表情を浮かべていた。

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