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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
6章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・デゼール]下

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126話、団長の正体? 絶望の『汚染』

 殺伐とした空気から一転したティータイムの様子、それを見守る住民達の姿。


 素手でクッキーを食べるため、ついでに手をアルコール消毒をさせてもらう。


 猫人族や狼人族は、アルコール消毒液の匂いが嫌なのか、厳しい顔をしていたが、さすがに外で消毒なしに食べ物を触るのは見過ごせない。


 アルコールの香りが漂い出すと、各種族が不思議な表情を浮かべていき、その様子がさらに住民達の視線を集める結果になっていた。


 そして、ティータイムが開始されていく。予想以上に時間が掛かってしまったが、紅茶が少し冷めて飲みやすくなったようにすら感じる。


 はあ、正直言うが、かなり視線が気になるな……普通に全種族が敵味方関係なく砂糖を入れた紅茶に感動する姿は本当に不思議で仕方ない。


 メフィスは、砂糖程度では感情を表に出さないだろうと思っていたが、クッキーの方で感情を表に出しまくっている。


 クッキーは缶からランダムに並べたので、誰にどのクッキーが渡されているか分からないが、チョコの練り込まれた生地と普通の生地で作られたチェック柄のそれには、驚きを顕にしていた。


「なんですか! この素晴らしい柄の焼き菓子は……国王陛下に是非とも食べていただきたい逸品ですなぁ、うむ、実に美味……」


 メフィスの絶賛を後押しするように、配られたクッキーと紅茶を口にした者達が歓喜の声を上げていく。


 蛇人族からも「肉とは違うが、実に美味い!」と声が聞こえてくるくらいには楽しんでくれているようだ。


 クッキーやお菓子といったものは、俺ではなく本来はベリーが専門だ。

 忘れがちだが、ベリーはお菓子作りを基本の商売にしてたくらいには菓子作りが上手いからなあ。


 この世界に来てから、あっという間に時間が過ぎていったがベリーと出会った頃のことを思い出すと少し笑ってしまう。


 色々と懐かしさを感じながら、ゆっくりと紅茶を口に運んでいく。


 よくよく考えたら……本当に驚くことばっかり起きてるんだよな……異世界をなめてたわ。


 俺が思いに耽っていると、ドーナが服の裾を引っ張り、ある方向を指差す。


「マスター、あれ。逃げようとしてるの、構わないの?」


 ドーナの指先に顔を向ける。俺の視界に入ってきたのは、必死に這いずるように移動する警備兵団の団長だった。


「いや、逃がしたらダメだけど……なんて言うか……可哀想にすら見えてきたんだよな……」


 そうなのだ、今の状況を一言で表すなら、四面楚歌なんだよな。


 そんな団長はやはり、動きに違和感を感じさせるような行動をしていた。


 本来なら、逃げるべき状況なのにもかかわらず、逃げずに真っすぐジン達が見守る方角に向かっているように見える。


「はぁ、仕方ないな。俺が直接、捕まえるか……」


 俺は手に持っていたマグカップをテーブルに置く。

 ちなみに今回は“買い物袋”で『100円マグカップ』を大量購入している。

 それでも使い切れないほどの大金があるんだから、金の暴力を自分が使う日がくるなんてな……本当に異世界様々だな。


 立ち上がり、団長へと向かおうとした瞬間、先にミアとニアが駆け出していく。


「オッサンは座ってろよ! ボクが捕まえてくるからさ!」


「ミアは待ってて、大丈夫なのにゃ! いいところを見せるのにゃ!」


 2人が一斉に駆け出すと団長へと向かっていき、凄まじい“ガゴンッ!”と、衝撃音が鳴り響く。


 脱がせようとしていた団長の鎧に2人の拳が直撃した音だと気づいた俺は団長が生きているかが気になり、慌てて走っていく。


 案の定、団長の背中部分には綺麗な拳の凹みが刻まれていた。


 微動だにしない団長に慌てて、駆け寄るとすぐに鎧を外すために仰向けにする。


「ぐっ、ガはッ……」


 生きているのは確認できたけど……間違いなく痛いよな……さすがにこれは可哀想だしな。


 申し訳ないと思いながらも【身体強化】と【リミットカット】を即発動させると、鎧の繋ぎ目を無理やり剥がしていく。


 兜を被ったままの鎧が外れた瞬間、俺は目を疑った。


「な、なんだよこれ……うっ、あぁ」


 驚愕したくなるような団長の全身を覆うような黒い無数のアザ、さらに体を蝕むように黒いアザが本当にゆっくりと動いているのが確認できた。


「アザが……動いてるのか……」


 俺の慌てようにミアとニアが団長の体を確認した途端、2人が抱き合うように驚き飛び上がる。


「オッサン……な、なんだよそれ! ひでぇじゃんかよ……」

「酷いにゃ……もしかして、ニア達の攻撃が原因かにゃ、やり過ぎたにゃ」


 衝撃的な姿に2人が引きつった表情を浮かべる。

 2人がここまで引きつった表情を浮かべるのには、理由がある。

 鎧を外して分かったが、団長は女性だった。その体には黒いアザが這い回るように移動している。


 その姿は、かなり衝撃的な光景だった。


 その光景と姿は各種族も確認することになり、蛇人族は「毒じゃないのか?」と口にする。


 猫人族は「これはきっと寄生虫だにゃ!」と憶測を口にする。


 砂鮫人族は「呪いか……」と呟き、狼人族は「病気じゃないのか!」と慌て出す。


 どれとも言えないが、何よりも問題はこれが何かよりも、これが他人に伝染するのかだった。


「悪い! すぐに警備兵団の連中を連れてきてくれ、ただ、直接、素手で触らないようにしてくれ!」


 内心、ティータイムと称して、おやつタイムを開いたことを全力で後悔していた。

 もしも空気感染が起きたなら、集まったこの場の全員にリスクを与えた結果になってしまった。


 俺の慌てた様子に動ける者が急いで駆け出して行くと、すぐに警備兵団の兵士達が連れてこられる。


「メフィス、悪いが証人になってくれ」


「何をする気なのですか? 証人と言われても、何をするのかの説明もなく了承はできかねますなぁ……」


 言われても仕方ないと理解しながらも、早口で説明をしていく。


「この場にいる警備兵団の体を全員確認する必要がある。その際に俺もだが、囚人として囚われた人、あと“キミ”の体も確認しないとならない」


 俺の説明にメフィスが一瞬、眉を“ピクッ”と動かしたが、すぐに「キミル、来なさい」と指示を出してくれた。


 俺はその間に“買い物袋”から『感染対策用 作業キット』を取り出していく。


 この『感染対策用 作業キット』は、飲食店でノロや他の感染が疑われる嘔吐などがあった際に使うものであり、今回は俺が装備することにする。


 救いだったのは、ティータイムの際に全員のアルコール消毒ができていることだろう。


 もし、消毒もなく、素手でクッキーを食べていた場合、感染源が体内に入ってしまう可能性もあるからだ。


 仮に感染病のようなものだと考えるなら、この場の全員を感染者とそうじゃない者に分けるのは不可能だろう。


 最悪、全員を隔離しないとならなくなるぞ……無理だろ! くそ、何とか考えるんだ。まずは本当に感染する病なのかを調べないと……


 最悪の考えが頭によぎる中、警備兵の鎧を外していく。


「よし、1人目は大丈夫だな……」


 俺は次々に警備兵団の兵士を確認していくことになり、団長については、フライちゃんとメフィスの連れてきた医療班に任せることにした。


 数人の確認が終わった頃、フライちゃん達の方に動きがあった。


「きんざんさん。これは『汚染』です……」


 フライちゃんの言葉に俺は首を傾げた。


「汚染? つまり、病気ってことでいいのか?」


「病気とは少し違います……これは禁術の一つと言えば分かりますか?」


 今まで聞いたことがなかった『禁術』というワードに不安を感じていた。


「フライちゃん、それは誰かにうつるタイプなのか!」


「今は、うつりません……ただ、問題があります」


 フライちゃんの重苦しい表情、俺はその先の説明に耳を疑った。


 この禁忌の『汚染』とは、術がかけられた者は自分の意思とは関係なく、術者に隷属状態となる。

 問題は術をかけられた側には記憶も意思もあるということであり、命令に抵抗しようとすればするほど、反動で汚染が広がり、体を内側から蝕んでいく。


 そして、体が限界を迎えると、『汚染』は宿主の魔力を使い内側から爆発を起こさせて、胞子のようになり、他人に感染して『汚染』していく。


 この、胞子になった『汚染』が問題なのだ。

 そうなった際は術者の命令よりも『汚染』を増やすことを優先して広がっていく。


 『汚染』は過去の人々による争いから生まれた禁術であり、あまりの感染速度にフライちゃんの前任者である管理者が世界に介入して終息させた事実があった。


 前任者は人々に「人の子よ『汚染』を禁忌とし、使用を禁じる」と全ての人と全ての種族に伝えた。


 そのため、禁忌とされたとフライちゃんは教えてくれた。


 話を聞いていたメフィスが渋い表情を浮かべる。


「はぁ……貴方は本当に厄災の才能でもあるのですか? “インク・イナメント”の時も思いましたが、これだけの問題の中心には、いつも貴方がいますからねぇ」


 メフィスの言葉に苦笑いしか浮かべられないが、今は感染の心配がない事実は朗報だった。


「とりあえず、団長を何とかしないとだな、なんか策はないのか?」


 俺はフライちゃんを見つめてそう問いかけた。

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