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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
6章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・デゼール]下

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125話、戦場にティータイムを

 メフィスの登場により、場の空気が一変すると各種族の戦士達がメフィスと、その背後に控える大軍勢に対して、睨みつけるように視線を向ける。


 視線に気づいたメフィスの連れてきた軍勢からも殺気立った雰囲気が漏れ出しており、再度、緊張感が戻ろうとしていた。


 だが、こういう時に1人や2人は空気を読まない奴が絶対にいる。


 それは紛れもなく俺の嫁であり、今も影から飛び出して、苛立ちを顕にしている。


 その存在はドーナだった。


「うぅぅぅ! マスターとの時間がまた無くなるの! これ以上は我慢できないのォォォォッ!」


 怒り任せに影を操り、無数の影が触手のようになりドーナの影から飛び出していく。


「ま、待て! 影って、そんな風にはならないだろ!」


「マスターも悪いの! いつも、いつも……ドーナを置いていくから、許せないの!」


 ドーナの操る影が俺を捕まえようと、こちらに向かって動き出す。


 その場の全員を無視した行動に視線が集まる最中、怒り狂うドーナの背後にポワゾンが“スッ”と移動する。


「ドーナ、そんなやり方では、ダメですよ。いいですか? 素直に甘える方が時としては上手くいく場合があるのですよ」


 予想外すぎる展開に俺が動けずにいると、背後からミア達に背中を叩かれる。


「オッサン、早く慰めてこいよ……このままだと、ドーナの奴、敵とか味方とか、関係なく全員に襲いかかるぞ」


「そうにゃ、ドーナを落ち着かせられるのは、キンザンだけだにゃ、早くするにゃ!」


 俺は言われるままに、ドーナに向かって両手を開くようにして、片膝を地面につける。


 ゆっくりと照れくさそうにドーナが歩き出し、次第に駆け足になっていくと、全力で俺の胸に飛び込んでくる。


「マスターァァァ! ゴメンなさいなの、うわぁぁぁ、いつも、マスターがいなくなるから、ゴメンなさいなの……」


 怒りの表情から一変して、泣き顔になったドーナの頭を優しく撫でながら、ゆっくりと抱きしめていく。


 落ち着いたように幸せな表情を浮かべる姿に俺も安堵の表情を浮かべた途端、ミアやニア、ポワゾンまでもが俺に抱きついてくる。


 そんな姿を数分間、静かに見守っていたメフィスから大声で声をかけられる。



「それくらいでいいでしょう? 我輩達も暇じゃないのですよ。本題に入りたいのですが、よろしいですかなぁ?」


「あ、ああ、なんか……すまんな」


 片手で申し訳ないとジェスチャーをしながら、頭を下げるとメフィスは再度、ため息を吐いて、頭を抱えた。


 空中から地上に降りたメフィスと兵士達。

 そんな状況を不安そうにジンと住民達が固唾をのんで見守っている。


 地上にメフィス達が降りると、当然ながら、各種族からも視線が集中する。

 そんな視線を全く気にしないと言わんばかりに俺へと真っすぐに向かってくるメフィス。


「さて、本題に入らせていただきます……」

 そう言い笑みを浮かべたメフィスに肩をグッと掴まれる。


「あ、あのメフィス……すごく痛いんですけど」


「当たり前じゃないですか……貴方を野放しにしたせいで、この惨状なのですよ……言いたいことはお分かりいただけますかなぁ?」


 笑顔の圧力に俺は素早く首を縦に振る。それと同時にメフィスに向けて、嫁ちゃん達から本気の怒りに満ちた視線と殺気が放たれる。


 一番槍と言わんばかりに砂鮫人族を背にしたミトが口を開く。


「おう、いきなりウチらの旦那様を捕まえて、何言ってんだ! 貴族野郎が!」


 ミトの言葉にメフィスの連れて来た兵士達が装備に手をかけようとする。


 その様子に砂鮫人族も斧や槍を握る手に力が入っていく。


 一切、譲る気がないと言わんばかりに仁王立ちするミトにメフィスが視線を向けながら、兵士達に待てと手で指示を出す。


「勘違いはよくありませんなぁ、我輩達は友人であり、知人でもありますが……互いの立場は別物なのですよ? 言葉の意味が分からないわけではないでしょう」


 メフィスの言う立場とは、王国からの命令で今回は来ているという意味なのだろうと俺は理解した。ただ、ミトは多分、理解していない。


「立場なんか知るか! テメェがウチの大切な旦那様に力込めてんだろうが! 立場とか言ってんじゃねぇぞ、堅物野郎!」


 ミトがそう口にした瞬間、メフィスの額にシワが浮かび上がる。


「ほう、我輩の立場を……今すぐ謝罪しないと後悔させますよ……」


 メフィスの声が重く、キツい言い方に変わり始める。


 このままはマズイ、絶対にこのままはダメだ!


「まて! ミトもメフィスも落ち着けよ! とりあえず、俺は大丈夫だから!」


 そう言いながら、ミトとメフィスの間に入る。正直、メフィスもミトもキレたらかなり面倒なことになる。今のうちに何とかしないと。


 俺の行動にミトが何かを言うと思っていたが、意外にも何の反応もなかった。


 逆にメフィスが面倒くさそうに口を開いた。


「貴方は……なんでいつも、平然と人前でイチャつくのですかねぇ……さすがの我輩も言葉を失ってしまいますよ本当に……はぁ」


 言葉の意味が分からず、後ろを振り返るとミトが真っ赤になって、さっきまでの勢いが嘘のようにモジモジしていた。


「まさか、庇われるなんて思わなかったから……すごく嬉しいよ、旦那様……あ、ありがとうな」


 ミトの言葉に俺まで気恥ずかしくなる。


 そんな雰囲気を落ち着かせるようにメフィスが咳払いをする。


「ゴホン、はぁ、我輩も言い過ぎました。とりあえず、本題に入らせていただきます、構いませんかなぁ?」


「あ、悪いな、頼むよ。ありがとうな」


 メフィスに折れてくれたことへの感謝を口にしつつ、話を聞いていくことにした。


 ただ、この雰囲気で話すのは少し、良くない感じがしたため、少しだけ時間をもらうことを了承してもらい、すぐに俺は嫁ちゃん達と雰囲気を改善させるために動き出す。


 この場合の雰囲気改善は少しでいいので、ギスギスした空気を取っ払うことを最優先にする。


 メフィスから後で色々と突っ込まれそうだが、今回は仕方ないと割り切り、【ストレージ】から大量の椅子とテーブルを取り出していく。


 蛇人族の人達には椅子は難しそうなので、ブルーシートとフカフカのマットレスを“買い物袋”から大量に買って並べていく。


 即席だが、その場に全種族が休憩できる席とテーブルを用意する。


 俺は急いで湯を沸かしていき、沸いたお湯をポワゾンが用意した茶葉を入れて紅茶にしていく。


 そこに俺が容赦なく、砂糖を投入していく。


 当然だが、お茶菓子も用意していくことも忘れない。

 今回は紅茶なので、“買い物袋”からクッキー缶を取り出して紙皿に数枚を並べていく。


 全体を見れば、400近い人数が集まっているのだ。

 用意だけでかなりの時間がかかるのは必然だったが、俺達が必死に用意している姿に、狼人族のウルグ達が手伝いを申し出ると、ナギの母親やミアの母親からも声が出始める。


 そうなれば、各種族から女性陣が手伝ってくれることになり、顔見知りだったメフィスの部下さんもメフィスに許可をもらって参戦してくれた。


 そんな協力のおかげで、無事に紅茶とお菓子が全種族の手元へと渡されていく。


 最初はぎこちなかったが、別々の種族が敵味方関係なく、紅茶とお菓子を渡し、受け取る姿は本当に素敵だと思うし、不思議にも感じてしまう光景だった。


 一つ言えるのは、互いに争う気がないことと、両者や、各種族の頭が受け入れてくれたからに他ならない。


 本当に恨み合っている戦場だったなら、こんな雰囲気にはならなかっただろう。

読んでくださり感謝いたします。

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