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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
6章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・デゼール]下

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122話、嫁と両親、怒りの矛先

 慌てて階段側に向かうと、入口付近の囚人達は牢屋の隅で怯えており、警備兵団の連中は、ナギの仲間達に酷くボロボロにされていた。


「マイマスター、ちゃんと食べたらダメって言ってあるから大丈夫!」


 ドヤ顔で褒めてほしそうに笑ったので、俺はナギの頭を撫でてやる。


 その様子に気づいたナギの仲間達が俺に視線を向けてくる。

 その内の2人の蛇人族の男女が俺の前にやってくる。


 片方の男性は目を最大まで開いて、俺を吟味するように下から上まで見てくる。

 もう片方の女性はそれをクスクスと笑って見ている。


「こやつが、ナギのつがいか? 弱そうだが」

「ナギが選んだなら、構わないわ、ただ、弱そうね?」


 いきなりの言われようになんと返すか悩んでいるとナギが間に入ってくる。


「マイマスターは強い! 何より、優しい! ナギの旦那だ!」


 そう語るナギの頭を、優しく撫でる2人の蛇人族。


「わかってる。だから、我々は助けに来た。ナギが泣いて頼んだからだ」

「ナギが泣く程助けたい相手なら、助けるだけよ」


「ありがとう。パピィ、母さん、ナギは嬉しい」


 え……パピィ、母さん、って!


「ナギのパパとママなのか!」


 慌てる俺に男性の蛇人族が前に立つと、なぜか抱きしめられた。


「会えて嬉しいぞ。群れの長にして、優しき人族よ。娘を群れに迎え入れてくれたようで安心した」


 群れ? 家族のことか……ただ、すげぇ怖いんだが。


「娘を頼む。異種の群れでうまくやってるかは後で聞かせてくれ」


 そう言うと、俺は離され、蛇人族のパパさんは手に鉾を握ると雄叫びを上げる。


 複数の蛇人族が同時に雄叫びを上げた瞬間、嫁ちゃん達が一気に階段を降りて俺の元にやってくる。


「オッサン! うわぁぁぁ、無事だったんだな……マジに心配したんだからな!」


 泣きじゃくるミアの頭を撫でるとその後ろから、ニアが抱きついてくる。


「キンザン! 馬鹿、心配したにゃ! 話したいって、言っても会えなかったから本当に寂しかったんだにゃぁ」


 本当にすごい力で俺を抱きしめる二人。


「こら……ニャア! コイツが、お前の選んだ雄かにゃ!」

「アナタ、ダメにゃ。ニアにゃ。ちゃんと呼ばないともう、人妻なんだからにゃ〜」


「むむ……わかってるニャ! おい、娘の雄! 後で話があるにゃ! わかったかにゃ!」


 この2人はニアのパパとママさんかな……


「わ、わかりました」


「あ、あと、別にお前が嫌いとかそういうのはないからにゃ! わかったにゃ!」


「ふふ、すみませんにゃあ、ウチの人ったら、久しぶりにニャアと喋れて嬉しさと、ヤキモチが混ざってるのにゃ、本当に困った人だにゃ」


 なんか、思ってる何倍も大変な騒ぎになってる気がしてきたな……


 そんなことを考えていた俺は階段を上がり地上の様子を確認する。


 そこには、猫人族や蛇人族の他にも狼人族や砂鮫人族といった複数の種族達が集まった集団が警備兵団と戦闘を行っており、警備兵団がボロボロにやられていた。


「ウルグ姉さん! 主殿です!」

「お、無事だったみたいだね。主殿。本当によかったよ。アンタ達、ウチらの主殿は無事だ! 遠吠えを鳴らすよ!」


「「「ワオォォォオンッ!」」」

「「「ウオォォォオンッ!」」」


 男女に分かれた狼人族の遠吠えが街中にこだまするように叫ばれる。


 俺は本当に何がどうなっているか理解できずにいる中、ベリーとフライちゃんが頭を悩ませるようにやってくる。


「キンザンさん、大丈夫? 無事みたいでよかったわ。もうすぐ【バリオン】からも冒険者ギルドの職員と冒険者の皆が到着するわよ。調理師ギルドからも来るみたい」


「え、調理師ギルドに冒険者ギルドからも? ベリー、なんでなんだ?」


「皆で知り合いに助けを求めることにしたのよ。それに【カエルム】からも間違いなく人が集まるわ……グリド商会は本当に手を出したらダメな人に手を出しちゃったわね」


 俺はあまりに話が大きくなりすぎていて、理解が追いつかなくなっていた。


 話は数日前に遡り、俺が拘束されてすぐにミア達は俺の釈放を要求したが、警備兵団は話を聞かなかった。


 その結果、ミトやドーナは警備兵団に乗り込むと言い出した。

 ただ、少数で行くのは無駄だろうという結論に至ったらしい。


「なら、仲間を呼ぶ」とナギが口にしたことで、全員が呼べる仲間を呼びに数日動いていたようだ。


 転送の問題もフライちゃんがいれば解決する。


 説得さえできれば大丈夫な状況になると、ナギは自分の仲間が住む森に転送陣で移動し、次にニアが同様に移動を開始する。


 家族や種族的に頼れないミア達はギルドなど、知り合いに声をかけたらしい。


 結果はミトの砂鮫人族からも数百人という数の仲間達が助けにやって来てくれた。

 各ギルドからも俺の拘束に異議を唱える者たちがミアにより集められた。


 ナギは久々の両親との再会であったが、蛇人族の群れの長をしている両親は俺を見たいという理由から、参戦を決めてくれたようだ。


 ニアの両親は、家を飛び出したニアが名前を変えて、結婚していた事実にパパさんが血の涙を流しそうになりながらも、ニアが頭を下げた事実に仲間を集めて参戦してくれた。


 この三種族だけでもかなりの人数だったが【カエルム】に向かったドーナ、ペコ、グーにより、2号店のメンバー達が手分けして、内容を説明して回った結果、俺に恩がある人達が集まってくれていた。


 こうして、集まった数百人を超える集団が警備兵団を襲撃したのだ。


 本来なら想像すらできない他種族連合軍が俺のために結成され、それが今まさに一つの街を守護するための警備兵団へとその強固なキバを向いたのだ。


「ガハハハッ! 弱い、弱いぞ人間の戦士よッ!」

「ケッケッケ、我ら蛇人族。敵として対峙した以上、全力で行かせてもらうぜ!」


 ナギの行動から予想はしていたが、蛇人族の力は凄まじく、1人を相手に数人で攻撃する警備兵団を容赦なく吹き飛ばしていく。


 しかし、そんな蛇人族達もナギの父親が鉾を握った手を天に翳し、雄叫びをあげた瞬間、黙って胸に手をあてた。


 勝利の儀式と言うべきか、日本で言う勝鬨(かちどき)と言うべきなのだろうか……


 ただ、そんな勝利の流れが各種族で行われていくと、警備兵団の戦意が完全に折れていき、抵抗がなくなっていく。


 完全に戦闘が終了したと思ったその時、警備兵団の団長が立ち上がり、剣を手に無言のまま、ナギの父親へと向かって駆け出していく。


 ナギの父親もそれに気づくと鉾を前に構え、力を込めるのが見てわかった。


 そんな両者の間に、俺は慌てて走り出すと、警備兵団の団長に向けて【ストレージ】からロックドラゴンを解体した際にでた甲羅を叩きつける。


 ボゴンッ! と、鈍い音が鳴り、勢いよく駆け出していた団長がロックドラゴンの甲羅に激突する。

 悲鳴も叫びもないまま、その場に倒れ込んだ団長の姿にナギのパパさんは口をポカンと開いていた。


 俺はすぐにナギのパパさんに謝罪する。


「なんか、すみません。ただ、あのままだと、死人が出ちゃいそうだったんで、手を出してしまいました。本当にすみません」


 冷静に謝罪して、頭を下げると凄まじい速度で俺の目の前へとナギのパパさんが移動してきた。

 一瞬、覚悟を決めた俺にナギのパパさんは語りかけるように口を開いた。


「森の獲物を奪われたならば、我々も怒りを感じただろう、しかし、我々は人を獲物にしない。むしろ、敵を殺傷せずに生け捕りにしたのだから、誇るべきだろう、感謝するぞ」


 まさかの好感度アップに俺は複雑な気持ちになりながらも、笑みを浮かべた。

 相手が上機嫌なら今それを訂正するような無粋な真似をする必要はないし、結果的にそうなったが、どちらも助けたいという気持ちに嘘はないからだ。


 何より、この全身鎧の団長さんには、色々と聞かないといけないことがあるため、生きててもらわないと困る。


 結果的に、囚人は逃がすことなく、無事な牢屋に戻すことができた。

 警備兵団はキミ以外の全員を拘束することができた。

 この結果が本当に良かったのかと聞かれると少し複雑な気持ちになるが、今はよしとしたい。


 ただ、街の人々からしたら、かなり衝撃的な状況になっている事実は変わらない。


 ミトと仲間の砂鮫人族がそんな不安な気持ちの住民に対して、事の経緯を説明して回ってくれた。

 事実、ジンさん達が拘束されていたことを知った住民の怒りは警備兵団に向くことになり、俺達は警備兵団を怒り狂う住民から守る形になってしまっていた。

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