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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
6章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・デゼール]下

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119話、牢屋のジン・グランツ

 突然現れた【ガルド・ゼデール】の警備兵団。

 言われるままに指示に従い、俺は歩いて連れていかれていく。


 街中をわざわざ目立つように、わざと移動しているように感じる。

 複数の冷たい視線、犯罪者に向けられるそれを自身で感じる日がくるなんてな……


 ただ、嫁ちゃん達が心配で仕方ないんだよな。馬鹿なことをしないといいんだがな……


 考え事をしている俺に警備兵の1人がニヤリと笑う、次の瞬間、脇腹に拳が撃ち込まれる。


「──うっ、ぐっ……」


 さすがにいきなりの行動で【調理器具マスター】を発動していなかった俺の腹部には、一瞬で熱い電流を流されたような痛みが走る。


「お前は、逆らったら駄目な人に逆らったんだ……お気の毒様だな、人生終わったぞ。ははは」


 こいつら……やっぱり、繋がってるよな、嫁ちゃん達を連行させなくて良かったよ、本当に……


「人生が終わるか……本当にそうなら、最悪だな」


 俺の返事に苛立ったのか、殴ってきた警備兵の男は先ほどよりも強い力を込めて、腹部を殴る。しかし、二回目も素直に受ける気はない。

 しっかりと【調理器具マスター】を発動して、ノーダメージにしていく。


 調理用の服ってのは、料理に特化してんだ……殴った拳を片手で握り、痛みに耐える姿を見て、俺は心で『ざまぁみろ!』と悪態をついていた。


 ただ、一番先頭を進むのが団長なのだろうが、反応からして、この行動を容認しているのか、気づいていないのかが分からない。


 正直、容認された行動なら、街中でこんなことをするのは他の民衆への脅しも目的なのだろう。

 しかし、それならコソコソと男達が俺を囲む様にして殴ってきた理由が分からないんだよな。


 そんなことを考えていると警備兵団の動きが止まり、街の中心地に作られた警備兵団の本部に到着する。


 俺は中に連行され、地下にある牢屋へと連れられていく。


 階段を降りた先には牢屋へと続く鉄格子があり、その手前に椅子やテーブルの置かれた空間がある。多分、監視する奴らのための部屋だろう。


 鉄格子の扉から見える先に縦長に広がる牢屋があり、奥が暗く、外から見た建物のサイズを考えていた。

 目の前に広がる地下空間はそんな外観から見た際に感じた建物を遥かに超えていることが理解できる。


 建築法なんてないんだろうな、地下だからって、色々と本当に問題だらけだな。


 俺は服の中などに武器が無いかを調べられてから鉄格子の扉が開かれ、奥に連れていかれる。


 一つ気づいたのは、手前側の連中についてだ。


「おい! 出しやがれ!」

「早く外にだせや!」

「飯はまだかよ! 早くもってこいや」


 発言や行動が暴力的で本当に犯罪者なんだろうなと感じる。


 俺が奥に進むに連れて、叫ぶような人の姿は少なくなり、諦めたような表情を浮かべる者の姿が目につく。


 薄暗い廊下を照らす小さな魔石。天井に点々と設置された光が変な緊張感を俺に与えていく。


 少なくともいい待遇は期待できないことは理解したので、気を引き締める。


 10分程度進んだ先で、先頭を進む警備兵と俺を囲むように連行していた警備兵の足が止まる。


 正直、予想していたより、ずっと牢屋の通路が広く長いことに驚いた。

 複数の別れ道もあったが、少なくとも俺は真っ直ぐに歩いてきただけなので、いざとなれば迷うことはないだろう。


「さぁ、ここが今日からお前の寝床だ! 入れ!」


 俺以外にも他の牢屋には複数の人影があり、少なくとも孤独な時間にはならなそうだ。まぁ、仲良くなる予定はないんだがな。


 開かれた牢屋に後ろから蹴り入れられる形で押し込まれる。


「いてて、もう少し丁重に扱えよな!」


 牢屋の床に寝そべる形でそう呟く俺、蹴りをくれた警備兵が嫌味に笑う。


「ケッ、何言ってやがる? お前も他の奴等も全員、人生終わりだってんだよ! 大人しく刑罰が決まるのを待つんだな!」


 そう言うと勝ち誇ったように警備兵の男は消えていった。


 悔しい気持ちになりながらも、冷静になろうと頭を整理する俺に正面側の牢屋から声が掛けられる。


「よう、新人。何をやらかしたんだ?」

「え、あぁ、特に何もしてないんだけどな……押し入ってきた連中を吹き飛ばしたら、捕まった感じかな」


 俺の説明に声の主が笑う。


「はははっ、そいつは災難だな。よっぽど、派手にやったんだな、まぁ、だとしてもこっち側に入れられるんだから、相手が悪かったんだろうな」


 牢屋越しに見える姿は、ガタイのいい筋肉質の男であり、見るからに裏稼業って感じの傷が顔に刻まれている。

 ヤクザ映画に出ても違和感がないくらいにはいい顔をしているのが、逆に怖さを増している印象だ。


 取り敢えず、相手から話しかけてくれたので質問をすることにする。


「アンタは誰なんだ?」


「あ? 名前を聞く際に自分から名乗るのが常識だろうが、まぁ、質問したのはこっちだから、しゃあないか……オレの名前はジン。ジン・グランツだ」


「あ、俺は金山(かねやま)幸大(こうだい)、まぁ、皆はキンザンって呼ぶからそう呼んでくれ」


 久しぶりのフルネームを名乗ったが、やはり、聞き取れないと言った表情をされた。


「キンザン、アンタ、貴族なのか?」


「いや、貴族なんかじゃないさ……多分、貴族からしたら、敵だろうな?」


「貴族の敵って、アンタ、義賊かなんかしてたのかい?」


 俺達は見張りが傍にいないのため、情報共有をしていく。


 外の様子を話すと、ジン・グランツは頭を抱えていた。


「たった数週間でそうなったか……いや、今まで頑張って街の皆が耐えてきたんだな……」


 ジンの言葉に俺は不思議なものを感じた。


「なぁ、ジンさん? 街の皆が耐えてたってどういう意味なんだ?」


「あぁ、ここ一年くらい前の話だがな、グリド商会の会長が倒れてしまってな……それから馬鹿息子が副会長を名乗り出してたんだ……」


 ズナッキーが一年の間に金貨の力で街中の店舗を狙って色々と問題のある貸付、地上げ屋のような真似をして、商会の関係者が経営する形にした店舗を増やしていたらしい。


 街そのものを、グリド商会の管理下にするのが目的らしく……既に警備兵団や裁判所などにも、かなりの影響が出ているようだ。


 そして、何よりもこの異常事態を未だに、他の街などが気づいていない事実が一番の問題だとジンは語った。


 既に多くの街々にはグリド商会の看板が並んでいるが、どこも小さな店を構えるばかりであり、店を持たずに、商品を運びながら露天商として活動する商会メンバーもいる。


 そのため、グリド商会が街を支配するなどと口にしても、誰も信じることはないのだ。


 話を聞いていて、グリド商会は実際にかなり、やばい所まできている事実を再確認する。


「グリド商会って、たしかに俺も【ガルド・ゼデール】に来るまで知らなかったけど、かなり手広くやってるみたいだしな」


「ああ、奴らは、目立たない様にして、行動しているみたいだからな、損しても権力者を味方につけるやり方は悪質としか言えないな。

 真っ当な商人や商会なら損は出さないだろうが、損すら計画のうちだから、タチが悪い」


「それって?」と俺が質問をしようとした時、ジンの腹の虫が豪快に鳴る。


「すまんな、数日、飯を食べてなくてな……許してくれ、それより話したが」


「いやいや、なんで飯を食べてないんだよ? まさか、飯が出ないのか?」


 そんな質問にジンは首を左右に振る。


「奴らはゲームをしてやがるんだよ。オレ達、奥側の人間の食事に微毒だろうが、毒を混ぜてきやがる……食ったら、腹を下すからな……限界まで耐えるしかないんだよ」


 俺は話を聞いていて、腸が煮えくり返る思いに襲われた。


「待っててくれ」


 俺は手枷を【ストレージ】に入れるイメージをして、手の自由を確保するとすぐに“買い物袋”からパンとハム、チーズ、レタス、マヨネーズ、マスタードを取り出していく。

 

 簡単になるがサンドイッチを作っていく。

 パンにマヨネーズとマスタードを塗り、レタス、ハム、チーズ、ハム、レタスと重ねて、パンではさみ、【ストレージ】から取り出したアルミホイルでしっかりと包み、正面の牢屋に向かって投げる。


「お、なんだこりゃ?」


 俺は分かりやすくアルミホイルを取るように説明してから、一緒にペットボトルの水を取り出してキャップを回して、開け方を教えてからそれも同様に投げ込んでいく。


 ジンは少し困った表情を浮かべていたが、覚悟を決めたように俺を見る。


「なあ、キンザンよ? アンタの大切な人ってやつを聞いていいか?」


「え、いきなりだな? そうだな、家族かな、これでも可愛い嫁がいるからな」


 俺の言葉を聞いてから、ジンはニッコリ笑った。


「オレはアンタの笑顔を信じるよ。そんな笑顔を浮かべれる奴が作ったなら、信じたいしな……それにここの飯なんて、もうゴメンだからな」

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