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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
6章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・デゼール]下

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117話、キンザンの気持ちと護りたい存在

 まさかの展開になろうとした瞬間、外から慌てた様子で『星降る砂漠亭』の女将さんとリトちゃんが俺達の元に走ってくる。


「はぁはぁ、大変だよ。キンザンさんを探して、ズナッキーの奴がこっちに向かってるわよ」


 女将さんの言葉に俺の脳裏に嫌な予感が過ぎていく。


 そして、大勢の足音が近づいてくるのがわかる。


 次第に近づく足音に俺だけでなく、嫁ちゃん達も臨戦態勢に入っていく。


 そして、乱暴に解体場の扉が開かれる。


「またやってくれたな、キサマら、許さんぞい!」


 久しぶりに見た、ゆで卵頭に俺は軽くため息を吐いた。


 既に真っ赤になった頭部は今にも湯気が吹き上がりそうにすら見える。


「なんの用だよ? 悪いが、今……俺はお前の顔を見たい気分じゃないんだけどな」


 気怠そうに2階からそう返事をする俺に対して、扉付近からこちらを睨んでくるズッキーニ。


「キサマ……ふざけるんじゃないぞい! 許さんのだぞい!」


「だから、何を許さないんだよズッキーニ? あ、いや、ズッキーナ?」


「ズナッキーだぞい! 馬鹿にしおって!」


 真っ赤になり、怒りを顕にするズナッキーの背後から大人数の男達がニヤつきながら、武器を手にズカズカと室内に入ってくる。


 こいつらに不法侵入って概念は存在しないんだろうなぁ……はぁ、本当に、やんなるなぁ。


 俺の気持ちとは裏腹に嫁ちゃん達は、最近の留守番やお預けの連続だったこともあり、僅かなストレス発散は最近したが、それでもまだまだストレスが溜まっていたようで怖い笑みを浮かべている。


 最初にズナッキー達、グリド商会に対して啖呵を切ったのはミトだった。


「おい、解体屋に喧嘩売るなんて、いい度胸してやがんな? 金貨の問題がない以上、手加減なんかしねぇぞ! 欲張り野郎ッ!」


 それに同調するようにミアも拳を鳴らす。


「ボクも同意見だよ。正直、グリド商会(アイツら)のせいで、オッサンとの時間が本当にないんだからさぁ……」


 怒気を強めた言い方に心なしか、黒いオーラが見えるのは気のせいだろうか……うん、気のせいだと思いたい!


 2人の発言に入口部分から、ズナッキーの手下達が剣や斧を手に前へと一歩踏み出す。

 正直、喧嘩というより、抗争って感じにしか見えない。


「おいおい、マジかよ……さすがにヤバいんじゃ」と、俺が口にした瞬間だった。


 ベリーとフライちゃん以外の嫁ちゃん達全員が笑っていた。

 笑っていた理由はすぐに理解できた。


 二階から飛び降りるミト。着地と同時に一階の壁に立て掛けられていた巨大なハンマーを軽々と持ち上げるとギザギザの歯がギラリッと輝く。


 ミトに気を取られている間にミア達も一階へと降りていく。


 既に得物を構えた状態の嫁ちゃん達はあろうことか、武器を手にした男達に向かって攻撃を開始する。


 俺も慌てて、麺棒を【ストレージ】から取り出して、調理用ゴーグルと手袋を付け、すぐに下に走る。


 一階では、怒りを顕にした嫁ちゃん達が問答無用に男達をシバいていた。


「いつもいつも……オッサンとの時間を台無しにしてさ……ボクは少しでも一緒に居たいのにさ!」


 ミアがそうつぶやきながら、男の髪を引っ張り、力任せに外に投げ飛ばしていく。

 忘れていたが、ミアは立派な鬼人族の娘であり、力は俺なんかよりずっと強い──正直、ミトといい勝負であり、鬼人族は怒りで力を増すため、今のミアはミト以上の怪力になっているはずだ。


 それ同様に、ニア、ナギも獣人としての力を全力でぶつけており、見ているこっちが痛くなるくらいには、男達の顔面が酷いことになっている。


 そんな2人の姿にミトも負けじと巨大ハンマーを振り上げ、1人の男の剣ごと肩口を打ち砕く。ドゴン! という重低音が鳴り響き、他の男たちが一瞬たじろぐ。


 その隙を狙い、ニアが背後から跳びかかる。鋭い爪が装備をかすめ、火花が散る。


「ニアだって、久々にキンザンといっぱい話したり、イチャイチャするつもりだったのにゃ、許さないにゃ!」

「ナギは、マイマスターの料理が食べたかった! お腹空いてイライラする……」


 理由は違うが、2人の心配は大丈夫そうだな……


 そんな中、久々に見るポワゾンの戦闘、戦い方は変わらずといった感じだった。


 相手が麻痺して動けない状態にもかかわらず、ペコとグーからの一撃が放たれており、こちらも余裕の表情を浮かべている。


 ポワゾンにペコとグーの教育係を頼んだことがあるため、違和感はないが完璧すぎるなぁ。


「ペコ、グー、動きが単調です……もっとタイミングを短くして、完璧を目指しなさい!」


「「はい! ポワゾンお姉様ッ!」」


 あれでも、まだ単調なのかよ……


 俺がそんな一言を呟いていると数人の男達が下半身を床に吸い込まれていくのが見えて、慌てて駆け出していく。


 男達の中心にはドーナの姿があり、虚ろな目で男達を見下したように冷めた視線を向けている。


「本当に嫌いなの……ドーナの時間を無駄にさせたり、マスターとの時間を無駄にする奴は本当にイライラするの!」


 当然だが、今のドーナは手加減なんて言葉は頭の片隅にもない……あれはヤバい、ダメだ!


「ドーナ! ストップ、俺の指示に従え!」


 普段なら、絶対に言いたくない言葉だが、今のドーナを止めるために全力で叫ぶ。


 俺の声にドーナの身体が“ビクッ”と反応するといつもの幼さの残る表情に戻り俺を見つめてくる。


「マスタ〜」


「はぁはぁ、ダメだろ……アイツらも生きてるんだからさ、わかったか?」


「うーん? なんで、ドーナには、分からないの〜?」


 俺は背筋が寒くなった。ドーナはふざけてるわけでも、ましてや考えてないわけでもなく、本気で分からないと考えた結果を口にしたのだ。


 しかし、俺が困った表情を浮かべたのを見たミトやポワゾンも不思議そうに俺へと視線を向けて、こちらに向かってくる。


「おっさん! なんの話をしてんだよ? 戦闘中に余裕すぎると逆に危なくなるぞ。気をつけろよな」


「ミトの言う通りかと、考えや会話は戦闘後にすることをオススメします」


 そんな2人にドーナが質問をする。


「ポワちゃん、ミトちゃん、ドーナがまちがってるの? マスターの敵を始末したらダメなの?」


 困惑するドーナの質問に2人が一緒のタイミングで答える。


「間違ってないだろうが?」

「間違いありません!」


 同時に間違ってないと答える2人に俺も困惑した。


「いいですか、ドーナ。身勝手な殺戮はダメですが、今回は相手が武装していて、さらに言えば、殺しにきているんです。それは分かっていますよね?」


 そう口にするポワゾンの視線は俺にも向いていた。


「わかるの、だから頑張ったの……でも、マスターが……」


 そう言うと下を向くドーナ。


「分かりますよ。ドーナは間違っていませんからね。

 ただ、ご主人様は優し過ぎますから、だからこそ、私達が優し過ぎるダメダメなご主人様のためにやるんです。大切な存在を守るためには必要なのですから」


 優しくドーナの頭を撫でるポワゾンの瞳は俺を睨んでくる。


「ご主人様、お言葉ですが……ドーナが手を抜いた結果、私やミア、ニアといった者が死んでも、敵を庇いますか?」


 究極の選択を迫るような言葉に俺が下を向くとミトが仲裁の形で話に入ってくる。


「待て待てって、落ち着けよ? さすがにポワゾンも言い過ぎだって、旦那様も困ってるしさ」


「ミト、貴女は黙って見ていてください。この答えは未来の私達にも関わるものですから……」


「俺は、みんなが死ぬなんて、想像したことがない……だから、みんなにも人を殺めたりして欲しくないんだ、甘いのはわかってる……すまん」


 俺の答えにポワゾンは無言で立ち上がると、反対を向き歩き出す。


「分かりました。なら、最初の犠牲には、私がなりましょう。ご主人様には以前に言いましたが……この世界は優しさだけでは、生きてはいけませんので」


 俺に悲しそうに笑いかけるポワゾンの姿に、俺は自分が馬鹿だと再確認する。


「待て! 俺は誰も失うつもりは無いんだ」


 ポワゾンの手を掴み、無理やり引き寄せる。


 強引なやり方に驚くポワゾンを優しく抱きしめてから、俺はポワゾンの前に出ると大声をあげる。


「俺の嫁は俺が護る! あいつらに好き勝手させねぇ!」


 嫁ちゃん達の前に出て叫ぶ俺に対して、怒りを顕にするズナッキーが部下達を掻き分けて前に出てくる。

 憎しみに満ちた眼で俺を睨みつける姿は本当に不快な気持ちになるが、今はむしろ恨んでくれた方が気楽だとすら感じる。


 今から、俺なりの戦い方を見せてやるから、覚悟しろよ、ズッキーニ野郎!

読んでくださり感謝いたします。

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