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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
6章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・デゼール]下

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110話、水あたりの恐怖、異世界の回復師ヒヒ様

 俺が看病に入ってから半日が過ぎた頃、ベリー達が外から声をかけてくる。


「キンザンさん。そっちはどんな状況になってるの?」


「色々悪いな、ベリー。こっちは早い話が“水あたり”だ」


「水あたりって、あの水あたり?」


「腹痛、嘔吐、下痢……典型的な“水あたり”だ。汚染された水が原因だろうな」


 この説明が通じるのは、ベリーとレイラの2人くらいだろう。こちらの世界で“水あたり”と言われても皆には意味が分からないだろうからな。


「水あたりなのね、脱水とかは何とかなってるの!」

「ああ、何とか食事も食べれてるから、すぐに回復するはずだ。ただ、日にち的には、それなりに時間が必要だろうな」


 軽く今の隔離場所の説明をすると、すぐにベリーはその場を離れていく。

 しかし、それから30分もしないで再度ベリーの声が外から響く。


「キンザンさん! もう少しだけ待ってて、原因が分かったから、すぐに回復師を手配してもらったわ」


 予想外の言葉に俺は驚いたが、本当に回復師という存在が来てくれるなら、かなり助かるだろうから、感謝する。


 ベリーから説明された内容から、本来は回復師は感染者の出た場所には姿を現さないようだが、今回は原因と病名がわかっている事実と、メフィスの存在が大きかったようだ。


 “水あたり”だと分かってベリーは最初にフライちゃん達を連れて、メフィスに即面会を申し込んだらしい。


 最初は部下さん達に止められたようだが、ベリー1人なら止められただろうが、嫁ちゃん達が全員で向かったことにより、メフィスが許可を出したようだった。


 そこからは、ベリーが日本時代の知識と俺から話された内容を細かく伝え、メフィスがすぐに理解してくれた。


「我輩が信じるのは、女神フライでも貴女の言葉でもなく、あの男が話した内容だというからです。本来ならこのような話が信じられることはないことだけは、理解してくださいねぇ」


 そう言うと部下にベリー達が見ている目の前で回復師を手配するように指示を出したそうだ。


「まったく、人の旦那を勝手に連れてって、酷い言い分だったから、ぶっ飛ばしてやろうかと思ったわ!」


 ベリーがそう言い終わると、ミアとニアの声が聞こえてくる。


「オッサン、無事なんだな! 本当に好き勝手しすぎだぞ! もう少し相談しろよな、ったく!」


「そうにゃ! 心配するこっちの身にもなるにゃ〜! お帰りくらい顔を見て言いたかったにゃ!」


 二人からの叱りを受けながら、俺はいい嫁を持ったと改めて感じてしまった。


「本当に悪かったよ。反省してるからさ、他の皆は?」


 俺の問にベリーが返事をする。


「皆はそれぞれの役割を果たしてるわよ。『フライデー本店』は臨時休業にすることに決まったし、その準備にポワゾン、ペコ、グーの三人が掃除と貼り紙に向かってるわ」


 また、臨時休業か……本当に俺は商売人の才能がないなぁ。


「あと、ミト、ナギ、ドーナには、一度、砂漠のオアシス都市[ガルド・ゼデール]に様子を見に行ってもらってるわ。フライちゃんはさすがに疲労困憊で今は寝てるわ……かなり無理に動いてたみたいね」


 俺の勝手な行動もあり、フライちゃんの限界を超えてしまったらしい。本当にすまん、フライちゃん。


 俺は結局、一人で暴走したが、嫁ちゃん達の愛に支えられてるんだと分からされた。


 そして、時間が過ぎていく。夜になり、子供達の体を濡れタオルで親御さんに拭いてもらっていく。

 清潔にすることで弱った体を他の病気から守るのが目的だ。清潔な状態を保つことが一番の近道でもあるからな。


 俺は久しぶりの一服をしていく。

 慌ただしく過ぎた日常で煙草に火をつける時間すらなかったからな。


 咥えた煙草に火を灯し、流れる風に揺らめく白い煙と肺から吐き出された薄い煙が月を滲ませる。


 僅かな癒しというべき時間、俺は奥の部屋から聞こえる親御さん達の感謝の言葉を耳に入れながら、深く息を吐いていく。


 病人がいるのに一服なんて、日本なら、かなり文句を言われそうだが……今回は見逃してほしい。


「さすがに疲れたな……ただ、まだ休むには、はやいよな……頑張らないとな」


 次に始めたのは、衣服の洗濯だ。


 今の状況で体を拭いても汚れた服をそのままは不味い。

 “買い物袋”から替えとして半袖、半ズボン、さらに今は亡き、俺の爺さんのために買った“紙オムツSサイズ”を取り出していく。


 使い方を教える際に、少し罪悪感があったが、許せという気持ちでオムツを少年に巻いていく。


 小学生くらいの男の子だと、本来は泣いて嫌がるだろうが、緊急事態のため、オムツを巻かせてもらう。


 他の親御さん達にも指導しながら、オムツが巻き終わると、親御さん達にも仮眠を取ってもらうことにする。


 僅かな睡眠でも無いよりマシなのは、ブラック企業時代を経験した俺が一番よく知っている。


 その間に、ビニール手袋を装備して、洗濯用洗剤に浸け置きしておいた洗い物を水で流していく。

 洗濯板が無いため、何とか必死に擦って汚れを落としていく。


 臨時の旗立てにノボリ棒(店の外に立てる旗)を取り付けて、紐を通して物干しを作り、洗濯物を干していく。


 俺は朝方まで眠らずに、オムツ交換の時間を見計らい、親御さん達を起こしたりと必死にできることをしていく。


 やっと、仮眠が取れると思えたタイミングで外からメフィスの声が聞こえた。


「我輩です! 貴方の嫁達に言われて仕方なく、仕方なくですからねぇ! 回復師を手配しました。そちらの状態を教えて欲しいのですが!」


 そこから、説明をしていくとすぐに隔離施設を取り囲んでいた壁の一部が開かれ、メフィスと一人の青い服で全身を包んだ女性が姿を現す。


 女性は見るからに、お婆ちゃんといった姿であり、杖をついて、一人、中に歩いてくる。


「我輩は残念ながら、中に入ることを許可されなかったのです……すみませんなぁ」


 そんな会話をするメフィスに青い服のお婆さんが口を開く。


「当たり前じゃろが、お前さんに、なにかあれば、あの我が儘娘が癇癪(かんしゃく)を起こすだろうが!」


「ヒヒ様、さすがに国王陛下にそんな言い方は……」


「事実じゃろうが、お前さんを一番に考えるあの我が儘娘が隔離施設に入ったと知ってみ? この場に飛んでくるぞ」


 二人の話から、国王陛下の印象がかなり変わったが、それ以上にメフィスに対等以上に喋るお婆さん……ヒヒ様と呼ばれるこの婆さんが気になりすぎる。


 俺の視線に気づいたのか、ヒヒ様と呼ばれた婆さんが俺を真っ直ぐに見つめてくる。


「アンタが噂の問題児かい……聞いてたより、普通じゃね? もっと色男かと思ってたがな、見た目よりも魅力的な存在というやつなのだろうねぇ」


「それは、どうも……」


「おっと、悪いねぇ、歳を重ねるごとに小言みたいなのが増えてしまってねぇ、今の状態を見たいが大丈夫かね?」


 そこからの流れは早かった。室内を見てから、患者の容態を確認していく。


「この不思議な布はなんだい?」


 お婆さんの質問に俺は少し悩んだが、素直に説明をしていく。


「使い捨ての下着です。今回は腹痛が酷く、排泄の回数も多いので、使っている感じですね」


「ほうほう、初めて聞いたねぇ? さすがは金持ちの街って感じだね[カエルム]には、そんな無駄な下着まであるんだねぇ、まあ、今の状況には持ってこいだわな」


 話していて分かったが、この婆さん、かなり頭がいい、話した内容をすぐに理解してくれるし、何より使い方なんかを想像して理解してる節がある。


「さて、なら、回復師として働くとするかね【クリーン】【エリアヒール】【異状回復ヒール】」


 突然、婆さんがスキルを発動させると室内が薄緑の幕で包み込まれていく。

 それと同時に子供達だけでなく、俺や親御さん達も含めて全員にヒールが掛けられたことを理解した。


「聞いてた情報の通りで良かったよ。アンタ、よかったら回復師として働かないかい? こんだけ初期症状から、症状を判断できるなら、優秀だからねぇ」


「あはは、すみません。俺は飯で人を喜ばせるのが性に合ってるもんで」


「なんだい、アンタ。欲がないねぇ、回復師になれば、冒険者以上に金も地位も手に入るってのに、料理人として生きるのかい、ははは、素晴らしい人材だねぇ、残念だよ」


 婆さんはすべてを終わらせると、最後に子供達の容態を確認してからニッコリと笑うと隔離施設の外に出ていった。


 外からメフィスに婆さんが語りかけていた。


「全部終わったよ。確かにアンタの言う通り、面白い男だったねぇ、回復師の誘いを断られるなんてびっくりしたがね。ははは」


「な、ヒヒ様! また、勝手なことを、しかも断られたなんて、はぁ、我輩は知りませんぞ」


「なに、本当にいい人材だったんでなぁ。それより、感染の心配はないよ。解除しておやり、報告はアタシからも国に上げておくからねぇ。またね。メフィ坊」


「此度の急な要請に応じていただき、心より感謝致します。ヒヒ様」


「気にすんじゃないよ。メフィ坊が必死になってるなら、助けるに決まってるだろうさ。またねぇ」


 そんな会話が終わると同時に壁が消え去る。


 俺はその場に座り込んでいた。壁が無くなり、昼下がりの日差しと優しい風が俺を包みこんでいく。


 やっと終わったんだと改めて、俺は笑っていた。

読んでくださり感謝いたします。

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