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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
6章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・デゼール]下

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109話、真の恐怖、“水あたり”と隔離施設

 水源での作業が全て終わり、俺達は長く離れていたわけではないが、気持ち的なものだろう、[カエルム]を懐かしく感じながら帰路を急いでいた。


 最初と違い、ロゼの操る水の龍の背に乗り、一気に森を空から超えていく。

 最初こそ、不気味に見えた森も今となれば何ら変哲もない物に感じる。


 俺とナギは水龍に乗るのは二度目のため、何ら問題なく快適な移動になったが、ドーナやウルグ達は初めての空の移動に驚きと恐怖を感じていたように見える。


「主殿! これ、本当に落ちないんだよな! ウチら、まだ死にたくないぞ!」

「ね、ネェ様、木があんなに小さいです!」


「こんな高くに、早く降ろしてくれ! こんな高い場所なんか無理だよ!」

「うわぁ、ネェ様、高いんですから暴れないでくださいよ!」


 ウルグが意外にも高所恐怖症だと分かり、普段の姉御肌はどこへやらと言わんばかりにフェイとファンにしがみついている。


「大丈夫だから、落ち着けって、ウルグ。ロゼの操る水の龍は安全だから大丈夫だぞ?」


「そんなこと、言って私が安心したら急に揺れたりするんだろ! 私はわかってるんだからね」


「誰がするかぁ!」


 怯えるウルグをなんとか落ち着かせ、俺達は[カエルム]の外を任せたダイン達と合流することになった。


 既にダイン達は疲れきって休んでおり、俺達が到着した時にはブルーノ達がダイン達を手伝うように作られた煮込み料理のようなものを器に盛っている真っ最中だった。


「おう! 兄弟! 無事に戻ったんだな。嬉しいぞ。戻ったなら、早くかわってくれ」


 警備兵団のブルーノは疲れきった表情で俺達の帰りを出迎えてくれた。


 あまりの疲れように俺は何と言おうかと悩んだが、後ろからメフィスが空中に浮遊しながら、俺を見ると軽く苦言を口にした。


「被害が酷かった外側で食料を配るとなれば、命がけになりますからなぁ、心身共に与えられた疲労は相当でしょうな」


 俺は改めて、自分が酷く危うい指示を出していたことを理解した。同時に、もしもの事態を想定していなかったことに気付かされた。

 2号店の皆からしたら、俺の指示はオーナー指示という絶対的なものであり、それを否定や拒否などできるはずがなく、従う以外の選択肢などありはしないのだ。


「やっちまった……皆になんてことを」


 そんな俺の発言にナギがすぐに反応してくる。


「皆、頑張った。マイマスターは正しい判断をしたから、皆が助かった。良かった……っと、おもう」


 シンプルなフォローだったが、そんな言葉に救われながら、俺達は地上に降りて今の状況をブルーノに説明してもらう。


 ブルーノ達が交代したのは、一時間程前の話であり、それまで夜通しでダイン達は料理の提供をし続けていたらしい。


「兄弟の仲間だからよ。警備兵団の面々も、問題が起こらないように見張りと足りない食材に関しては、悪いが兄弟の嫁さん達に話して分けてもらってたんだわ」


 俺が離れてる間も[カエルム]と壁の外側ではかなり大変なことになっていたようだが、そこを上手くブルーノ達が解決してくれていた事実に本当に感謝した。


 ダイン達を寝かしたまま、ブルーノに飲水が無事に飲めるようになったことを伝えた。だが、何故か渋い顔をされてしまった。


「どうしたんだよ。ブルーノ?」


「いや、すまねえ……実は言いそびれてたが、その水のせいで、かなり厄介な事態になってるんだわ」


 ブルーノはそこから、俺達に説明を開始してくれた。


 俺達が森に向かってすぐに、水を求める人々がダイン達の元に押し寄せたようで、人の波がダイン達の許容範囲を超えていった。


 ブルーノ達も必死に誘導と人の整理をしたが、やはり、全てを把握することは不可能だったらしい。


 そんな中で、またしても余計なことをやらかしたのは、グリド商会だった。


 俺達、いや、メフィスにボコボコにされた、グリド商会の商人アロガンテが警備兵団が動けないのをいいことに“汚染された川の水”と“持ち込んだ水”を半々に割った物に“レモの実”を搾り入れて『レモ水』として、販売したのだ。


 臭みなどはレモの実や果汁により、マシになっていたらしく、喉の乾きが我慢できなくなった者達が買って飲んでしまったらしい。


 確かにレモの実には、レモンと同じ殺菌成分はある。しかし、今回のような汚染された川の水にそんなことをしても焼け石に水であり、何よりも、もっと深刻な問題が発生していることに俺は気づいていた。


「飲んだ奴らは、酷い腹痛と嘔吐なんかをしてないか?」


「おう、兄弟……なんで見ないで分かるんだよ。他にも川の水を飲んだ奴らがいてな、すぐに吐き始めて、熱を出したりしてるが、グリド商会の『レモ水』を飲んだ奴らはそれよりずっと酷い状態でな」


 俺はレモンの注意点を思い出していた。レモの実は、こちらの世界のレモンみたいなもので、【食材鑑定】でも、一致している。


 問題は、ビタミンCを過剰摂取すると下痢や吐き気、胃痙攣(いけいれん)を引き起こす恐れがある。

 ましてや、グリド商会は水を売るために大量のレモの実を搾って入れたはずだ。


「最悪だな、クソ! 汚染された水だけでも、ヤバイのにレモの実の果汁でそれがさらに酷くなっているんだ」


 俺はグリド商会の汚いやり方に苛立ちを感じていた。

 殺菌に関しては多分、偶然だろうことは、すぐに予想がついた。

 レモの実によって臭いを消し去ることと味を誤魔化すのが目的だったのが、話を聞いてて明らかだったからだ。


 俺は悩んでしまった。ブルーノは俺の発言の後にさらに悲しい事実を伝えてきた。

 本来、この世界でこんな状況になった場合、感染者は隔離されて、原因が完全に解明されるまで投獄生活になる。

 そうなれば、腫れ物を扱うような扱いになるそうだ。


「つまり、感染が拡大しないために……切り捨てるってことかよ」


「兄弟、そんな言い方すんなよ……感染症ってのは、一度でも拡散したら、街そのものが地図から消えるなんてこともあるんだ……分かってくれ」


 ブルーノは拳をグッと握り、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。


「本来は、やりたくなかったんだが……やるしかないか……」


 俺は症状が出ている人達の居場所をブルーノから聞き出すと、悩まずに向かっていく。


 到着してすぐに『調理用マスク』『調理用ゴーグル』『調理用ヘアキャップ』を上から次々に装備していき、最後に『調理着』を身に着けていく。

 全身を白一色に包んだ俺は、見るからに食品生成現場にいそうな見た目になっていることだろう。


 入口で見張りの警備兵に止められたが、俺は強行して、隔離施設となっていた巨大な木造の小屋に飛び込んでいく。


 見張りの警備兵達が、困った顔を浮かべたが俺はすぐに説明をする。


「俺はこの状態を何とかできる! ブルーノにも俺が何とかすると伝えてくれ。キンザンが何とかするって言えば分かるはずだ」


 当然だが、俺が感染者隔離施設に入ったことにより、さらなる問題に発展した。


 俺の行動をフライちゃんから聞いた留守番組だったミアやベリー達は慣れた様子でため息をついていた。


 ただ、メフィスやロゼに関しては、本気で心配してくれており、メフィスに関しては俺がこうなった原因であるグリド商会に対して、報復を誓う程だった。


 こんな状態になって分かったが、感染した被害者の大半が幼い子供達だった。

 水を求めた親達は、何とか苦しむ我が子に水を飲ませたいと願った結果、この悲劇に繋がってしまったことが分かった。


「本当に胸くそ悪い話だ……皆、すぐに何とかしてやるからな」


 俺は室内にいた親御さん達にまずは食事を振る舞っていく。


 次に建物の外側にもスペースを確保してほしい旨をメフィスに伝える。


 メフィスは仕方ないといった表情で建物を囲うようにして、外から中が見えなくなる高さの壁を作り出してくれた。


「我輩を気軽に使う貴方は本当に恐れ知らずですねぇ。本当にその病は広まらないのですね!」


「ああ、この病は“水あたり”だ。汚い水なんかを飲んで起こるんだ。最悪、『カンピロバクター食中毒』だとしても、人から人に感染はしないからな安心しろ」


「カンピロ? 知らぬ名前ですが、貴方の言葉を信じます。我輩の信頼を裏切るような真似はゆるしませんからなぁ、絶対に無事に戻りなさい」


「恩に着るよ。ありがとうな、メフィス」


 俺はすぐに、親御さん達の体力を復活させるために必要な料理作りから開始していく。


 ただ、本当にショックと自身を責める親御さん達の姿には胸が痛くなる。


 だからこそ、子供達のためにも、まずは親がまともにならないと共倒れになっちまう。


 まずは食材を選んでいく。


 ネギ、玉ねぎ、キャベツ、ブロッコリー、ゴボウ、こんにゃく、ニラ、大根を“買い物袋”から次々に取り出していく。


 すべての食材を【ストレージ】から取り出した手動式ミキサーでペースト状にしていき、その際に野菜の芯や皮などもしっかりと刻んで同様にペーストにする。


 ペーストにしてから、それを水と一緒に鍋で煮込んでいく。

 味付けは味噌にする。今回は出汁に昆布とカツオの合わせ出汁を使うことにする。

 理由としては、カツオ出汁には疲労回復効果のあるヒスチジンが含まれている事と昆布出汁のミネラルの良いとこ取りだからだ。


 それを発酵食品の味噌と合わせて味噌汁を作っていく。

 できあがった味噌汁を火から移動させて、水を加えて薄味にすると同時に飲みやすい温度まで下げていく。


 それを親御さん達に飲ませてから、少量ずつ、苦しむ子供達にも飲ませていく。

 その際に“吸い飲み”を使ってもらう。そうすることで無理なく摂取してもらえるだろう。


 僅かな量でも、確実に飲んでいく姿に俺はホッと子供達の顔を見る。

 子供達が吸い飲みから味噌汁を飲む姿に涙を流す親御さん達の姿。俺は軽く感情移入してしまった。


「さあ、ここからが大変ですよ。時間を空けながら、何回かにわけて飲ませていってもらいます」


 余った分の味噌汁は【ストレージ】に入れて、悪くならないようにして、必要に応じ、取り出しながら、看病を続けていくことになる。

読んでくださり感謝いたします。

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