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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
5章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・ゼデール]上

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101話、重傷者とメフィスの教育

 俺が見つけたのは、奴隷として引き取ったウルグ、フェイ、ファンの獣人3人娘だった。


 慌てて駆け付けた俺が見たのは、必死に2人の傷を汚れたタオルで拭いているファンの姿だった。


「あぁ、うぅぅぅ、主さん、ひぐぅ……うぅ、姉さま達が、姉さま達が、うぅぅぅ」


 3人の中では一番幼く元気なイメージだったファンは泣きながらも必死に横に寝かされた2人の傷についた虫を払っていた。


「悪い、汚れたタオルはダメだ! 退いてくれ、2人を見るから」


「あ、うぅぅ、お願いじます……姉さま達をだずけで……お願いじまず……うぅぅ」


 地面に額をつけて、尻尾を地面に沈めるようにした土下座の姿勢に俺はすぐに頭を撫でるとそれを止める。


「大丈夫だ、まだ息があるからな、傷も欠損がないなら、なんとでもなるからな。任せろよ」


 無言で、再度深く頭を下げるファン。


 その様子を見ていたメフィスが小さく呟いた。


「獣人が服従のポーズとは……本当に驚かされますねぇ、予定が狂うのは本来は嫌いなのですが……はぁ、仕方ありませんなぁ……皆さん、怪我人を確認、早急にリストアップしなさい!」


 メフィスの指示で一斉に動き出す部下さん達、その姿に、警備兵団に向かっていた人達の動きが停止した。


 今まで、この場にいる者達は、差別的に搾取されるのみであり、貴族から施しや救いが与えられるような経験はなかっただろう。


 周囲からの視線が無言でそう訴えてきている。


 そんな場所にいきなり現れた俺達の行動にその場が動揺する中、メフィスは同行させていた医療班に指示を出していく。


「重傷者を優先しなさい! 大小の傷もあるでしょうが、勘違いはしないように助かる者を優先するだけでなく、全ての者に最善を尽くしなさい!」


「「「はい! メフィス・フェレ様ッ!」」」


 各自が最善を尽くす最中、俺もすぐに横に寝かされたウルグとフェイに回復ポーションを与えていく。


 冒険者に使った時にかなり問題になったが、非常事態であり、何より今何とかしないと助からない奴らが目の前にいるなら救いたい。


「きんざんさん。私が手伝います! ナギ、ドーナさん、重傷者を集めてください!」


「フライの指示に従う、すぐに集める!」

「ナギちゃんと頑張るの! ドーナの力で皆を運ぶの!」


 ナギはその巨体を活かして、重傷者を運び、ドーナは影をスライドさせて、一気に重傷者が集められていく。


 そんな2人の働きに俺もすぐに声を上げる。


「メフィス! 悪い、重傷者をこっちに集めてくれ!」


 そんな叫びにすぐにメフィスは部下に対して叫ぶ。


「聞きましたね! 重傷者をあちらに、1人で運べない重傷者を動かす際は数人で運びなさい!」


 すぐに重傷者達が集められる最中、怪我人を掻き分けるように、身奇麗な男が姿を現す。


「まて、まずはワタシから治せ! ワタシは大商人のアロガンテだ。グリド商会の人間だぞ! 今すぐ従えば、礼は弾んでやる!」


 片腕を三角巾で縛っており、骨折かなんかをしていることは何となく理解はできた。


「悪いなおっさん。今は重傷者が優先だ。待てば治してやるから、待っててくれ」


 俺は目の前に集められた重傷者達を見つめながらそう口にすると、アロガンテが怒鳴り声をあげる。


「キサマ、私を後回しにするだと! 私を敵に回すということは、グリド商会を敵にすることになるんだぞ!」


 俺は散々叫ばれているグリド商会の言葉にため息を吐いた。


「はぁ、グリド商会ってオアシス都市[ガルド・ゼデール]のグリド商会で間違いないか?」


「おお、この様な地にまで、名が知られているのだな! ならば、理解できるであろう! 我らが商会を敵に回せば、タダでは済まないぞ!」


 商会の名前を出した瞬間、さらに偉そうになるアロガンテに俺は冷めた口調でしっかりと呟く。


「俺は、ズッキーニとは敵みたいな存在だ!」


「きんざんさん違いますよ! ズバッキーですよ!」


「二人とも違うの、ズツッキーなの! 間違いないの!」


「皆……違う。あれは、ズナッキー」とナギが答えてくれた。


 俺は少し恥ずかしい気持ちになったが、それでもアロガンテへの対応は変わらない。


「まぁ、お前のボスは知ってるから、脅しても無駄だ。あと、それくらいにしないと、俺より怖い人が我慢の限界みたいだぞ?」


 その言葉に背後を振り向くアロガンテ、振り向いた先には、予定がさらに狂いだして、怒り心頭となったメフィスの姿があった。


「邪魔です……今すぐに消えなさい。さもないと怪我を気にしなくてもいいように器ごと粉々にしますよ!」


 器と言ってるが、間違いなく全身を吹き飛ばすって脅しだな……ただ、それを理解できるのか?


 案の定、理解できなかったようで、アロガンテの部下であろうゴロツキ達がメフィスを取り囲む。


 しかし、それが一番ダメな選択だったと思う、その途端、メフィスの部下達が一斉に殺気を放つ。


「はぁ、皆さん! 重傷者を最優先と言ったはずです! それに我輩は、バカに教育するのが食後のデザートよりも大好きでしてなぁ、我輩の邪魔をしてはいけませんねぇ」


 メフィスの発言に部下達は、スっと身を引いた。

 本来はダメな行動だろう、しかし、メフィスとその部下さん達だからこそ有り得る行動なのだと理解した。


 既にメフィスのいう教育というやつは始まっているようだった。

 重傷者を運んできた部下の人が教えてくれた。


「既に、あの連中は動けないハズですから、可哀想に……」


 可哀想の意味をすぐに知ることになるが、まずは目の前にいるウルグとフェイに回復ポーションを次々に使っていく。


 その行為に驚くファン、泣きながらさらに感謝の言葉を叫んでいた。


 俺はウルグとフェイの傷が塞がり、次第に呼吸も安定してくると一安心した。


 こんな安堵の瞬間をぶち壊すような絶叫が背後から聞こえてきたので、声の方向に振り向く。


「ぎゃああああぁぁぁ! やめてくれ、ぎゃああああ助けて!」

「ぷぎゃあぁぁぁ! 腕がぁぁぁ! うわぁぁぁ!」


 メフィスは囲んでいたアロガンテの部下達の足を地面にめり込ませて動きを封じていた。

 その結果、一方通行の暴力が目の前で顕現している。


 笑うメフィスを殴ろうとしているが、足が拘束された状態からの攻撃が当たるわけもなく、軽く回避される。


 回避されるだけならいいが、伸ばされた腕がそのまま掴まれると、ありえない方向にへし折られていく。


 正直、血の気が引く光景だった。ついさっきまで、重傷者のために部下に指示を出していたとは思えないな。


「ぎゃああああぁぁぁ!」


「本当に耳障りな声ですねぇ……本当に不愉快で仕方ありません。えぇ、実に不快ですなぁ」


 満面の笑みのメフィスに軽く引きながら、俺はフライちゃんに視線を向ける。


「悪い癖ですね。あのお馬鹿さんたら、まったく。さて、あちらは放置して、こちらの治療を開始しましょうか」


 フライちゃんは気にしないと言わんばかりに重傷者が集まった広場に結界を作り出して時間の流れを停止させた。


 一日1回のフライちゃんの特別な力をまた俺の勝手な行動で使わせてしまったことは本当に申し訳ないと思う。

 ただ、この判断をしてくれるフライちゃんの存在が、そして、ナギやドーナの存在が本当に心強い。


 結界内で俺はすぐに治療という名の回復ポーションの大盤振る舞いを開始する。

 回復ポーションでどうしようもならない重傷者に関しては、フライちゃんが全力で治療スキルを発動していく。


 さすが、女神というべきなのだろう──回復ポーションでは一時しのぎだった重傷者が次第に治っていく事実に本当に驚かされた。


「フライちゃん、無理しないでくれよ」


「大丈夫です! それに目の前で命が失われるなんて、女神として見逃せません! だから、無理をする価値があるんですよ」


 俺はその言葉に、自分の覚悟が甘かったことを再確認させられた。


 ただ、そんな俺の心を覗かれたのか、フライちゃんは、優しく微笑んできた。


「何も間違ってませんよ。無理したいと思うのも、時には必要な決断ですからね。だから、気にしないでくださいね」


 素直な言葉に俺がフライちゃんを見つめているとグッとナギの手が背後から伸ばされ、急に抱きつかれた。


「マイマスター、いつも皆ばっかり見てる……少し寂しい」


 ナギが抱きついて呟いた瞬間、ドーナも腕にしがみついてくる。


「そうなの! 平等がいいの〜! いつも皆ばっかりずるいの〜」


 二人の態度にフライちゃんがクスッと笑った。


「きんざんさんは本当に人気ですね。女神なのに、ヤキモチで溶けちゃいそうですよ、まったく、ふふっ」


「俺は皆を平等に愛してるんだがな、もし足りないならすまないな」


 俺はナギに掴まれたまま、回復ポーションを次の重傷者にかけながら返事をする。


 その行動を見て、ナギが手を離す。


「邪魔してごめん。マイマスター……」


「大丈夫だよ。むしろ、最近は忙しくてバタバタしてたから、不安にさせちゃったよな。許してな」


 俺はナギの頭を撫でてから、ドーナとフライちゃんの頭を順に撫でていき、みんなが満足してくれたのを確認してから、作業を再開させる。


 本当に不謹慎だと怒られても文句は言えないだろうが、今はこれが正解だと思う。


 ただ、そんなやり取りを全て見ていたファンは顔を赤らめていたので少し申し訳ない気持ちになった。 

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