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第99話 発見!!

 明くる日。


 いつも通り、パチリと目が覚める。


 カーテンの隙間から明るい光が差し込んでいた。


 すっかり日が昇っちゃってるみたい。


「めちゃくちゃ寝たかも」


 昨日あんなことがあったせいか、ぐっすり寝てしまったらしい。陰鬱な気分だったのに、寝て起きたら心がスッキリしていた。超健康って凄い。


「起きたようだな」

「ピィ」


 アークが目を覚まし、いつもより柔らかい顔で私を見つめた。すぐにエアも起きて、私の頭に抱き着いて頭を擦り付ける。


「ごめんね、心配かけて」

「心配などしておらん。だが、たまには休むのもいいのではないか?」

「ピピッ」


 お言葉に甘えて今日はゆっくり過ごすことにした。


 昨日の私が相当ひどかったのかもしれない。


 ひとまず、三人でゆったりと宿の朝食を楽しむ。いつもながら高級宿だけあってとても美味しい。昨日いろんなことで頭が一杯になってあまり食べていなかったせいか、沢山おかわりしてしまった。


 お茶を飲んで一休みした後、腹ごなしがてら散歩に出る。


 最初に子どもたちの様子を見に孤児院に顔を出した。帰ってきた時はロビン君以外目を覚ましていなかったので、他の皆の状態が気になる。


『ごめんなさい!!』


 子どもたちはもう目を覚ましていて、私が尋ねるなり皆で深々と頭を下げた。


 立って、話して、動いている姿を見てホッとする。


 今回は相当堪えたみたい。まぁ、これだけ痛い目を見れば、またバカな真似をするようなことはないと思う。


 この子たちや今後襲われたかもしれない冒険者たちを、初心者狩りの魔の手から救えたと思えば、私が手を下したことにも意味があったかな。


「しばらくは体を休めるように」

『はーい』


 子どもたちは昨日初心者狩りに襲われたばかりだし、刺されて沢山血を流している。しばらくダンジョン探索はお休みになった。


 孤児院を出たら、そのまま街を見て回る。


「ピピッ」

「エアはあれが食べたいの?」

「ピヨッ」


 屋台や露店が立ち並ぶ区画でエアが食べたがる物を買ったり、装飾品や工芸品を冷やかしたり。


「あっ、これはいい薬草だ」

「お嬢さん、目が効くね」

「これでも薬師なので」

「若いのに凄いじゃないか。贔屓にしておくれ」

「はいっ、ぜひ」


 薬草を扱っているお店に寄って、消費した薬草をたくさん補充できた。


 思えば、前世の記憶を取り戻してから、こうしてのんびりと過ごすことはなかったかもしれない。


 バンドールでは、毎日お金を稼ぐのにいっぱいいっぱいだったし、モスマンでもミノスでもなんだかんだずっとダンジョンに潜ってきた。


 たまには立ち止まってゆっくりするのも悪くないと思う。


「なんで外に来てるんだ?」

「いや、他にも薬草ないかなと思って」

「今日は休むのではなかったのか?」

「これは趣味みたいなものだから」


 薬草を見ていたら、新鮮な薬草が恋しくなって街の外に出ていた。


 街から少し離れた場所に森を発見。


「我とエアは狩りに行ってくる」

「うん、気を付けてね」


 アークはエアに狩りを教えるために連れていった。


 一人になるのは久しぶりだ。私は無心で薬草がないか探して回る。


「うひょー、大量大量!! ん? この匂いって……」


 森の中を散策している中で、とても懐かしい匂いを感じた。


 匂いがする方に歩いていくと、その匂いはますます強くなっていく。この匂いが私が考えている通りなら、私が欲してやまないものが作れるようになる。


「これだ……」


 匂いの元はブドウのように黒っぽい実。手触りもぷにぷにしていてよく似ている。


 私はその実を取り、少しだけ齧る。


 ――プシュッ


 中身はほとんど液体に近くて、あふれ出す果汁を吸った。


「しょっぱ!! でも、これやっぱり醤油だ!! きたぁあああああっ!!」


 この実は植物図鑑の中に載っていたのを見たことがあるけど、薬とは関係なかったし、内容も醤油と結びついてなかったから全然気づかなかった。


 でも、これは大発見だ。


 大豆も見つかっていなかったので、少し諦めていたけど、まさかド直球で醤油にたどり着けるとは思わなかった。


 しかも醤油の実はこの辺りに沢山自生していた。私は薬師としての本分も忘れ、バッグに入るだけ採集していく。


「なんだこの匂いは……」

「ピピッ」


 私は昨日の出来事も忘れて夢中で醤油の実を採っていると、アークとエアが帰ってきた。


 空中に体長三メートルは超えそうな巨大なボアが浮かんでいる。


 風で浮かせているのかな。


 エアがアークの背中から降りて私の胸に飛び込んできた。


「お帰り。それは?」

「うむっ、エアが一人で仕留めた獲物だ」

「えぇ~、エア凄いね」

「ピピピッ!!」


 私の胸に顔を埋めるエアの頭を撫でると、嬉しそうに鳴いた。


 そこふと閃く。ボアの肉と言えば、ほとんど豚肉のようなもの。醤油、豚肉と来たらあれを作るしかないよね? 日本人が愛してやまないあの料理を。


 ついに地球の料理でアークを虜にする時が来たみたい。


「アーク、エア。お腹は空いている?」

「ある程度食ってきたが、まだ入るぞ」

「ピピッ」


 二人ともまだお腹には余裕があるようね。


 くっくっくっ、見てなさい!!


「それじゃあ、私が取っておきの料理を作ってあげる」


 私は内心でほくそ笑んだ。

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。


「面白い」

「続きが気になる」


と思っていただけたら、ブクマや★評価をつけていただけますと作者が泣いて喜びます。


よろしければご協力いただければ幸いです。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
異世界の空想物、加えて日本人の転生物とはいえ、まさか、醤油が実の汁として存在する植物を登場させ、魔獣の肉を使い、生姜焼きを調理しようとするとは。
とうとう手に入れたか、禁断の調味料を・・・。
生姜焼き?肉じゃが?何だろ?
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