第67話 報酬
「ギャアアアアアアアアッ」
ダンジョンボスが大きな叫び声をあげた。
一瞬前まで元気そうに飛び回っていたけど、アークが横を通り過ぎて着地した瞬間、体に一本の筋が入る。
ボスはどうにかしようと動くけど、すでに終わっていた。
体がズレて真っ二つになったボスは、力を失って地面に落ちる。
――ズシンッ
ピクリとも動かなくなった。
空鳴と別れた私たちは、全速力で六階を駆け抜けた。
その結果、七階層への階段を発見。結局、このダンジョンは十階まであった。でも、状態異常が効かない私にはただの洞窟でしかなかった。
途中、沢山のモンスターがひしめき合っていたけど、アークが元のサイズに戻ってなぎ倒して、あっという間に殲滅。
そして、一番奥の如何にも雰囲気がある重厚な扉の奥の部屋にいたボスは、おっきな目玉に翼が生えたようなモンスター。
空を飛んでる以外に特徴はなくて、たった今、アークに瞬殺されてしまった。
「これでボスを倒したはずだよね」
「そのはずだ」
ゲームなら踏破したかどうかがすぐ分かる。でも、当事者だとなんらかの演出がないと何も分からないね。
「あっ」
不安になっていると、ボス部屋の真ん中に変化が起きた。
複雑な模様の魔法陣みたいなものが青い輝きを放つ。多分、あれがダンジョンを踏破すると発生する帰還魔法陣ってやつだね。
そして、その傍の地面がせり上がって台座みたいなのが出てきた。
私たちはそこに近づいてみる。
「ペンダント?」
台座にはペンダントが載せられていた。
「それがダンジョン踏破者に与えられる証なのだろう」
「へぇ、そうなんだ」
とりあえず、もらえる物は貰っておく。
「おおっ、宝箱!! しかも虹色と金ピカ!!」
その直後、どこからともなく二つの宝箱が金色の光とともに突然現れた。
虹色に輝いているのと、金色に光ってるのがある。
虹色の宝箱は超レアなアイテムが入っているのが相場というもの。金色の宝箱もかなりレアなアイテムが入ってるに違いない。
一階では肩透かしを食らったので、俄然期待が高まる。
「さっさと開けろ」
「ちょっと待ってよ」
アークに促されて私は金色の宝箱から開ける。とっておきは後に開けたいよね。
「ん~? これは?」
中に入っていたのはバングルだった。
なんだかよく分からないけど、腕に通してみる。
「おおっ」
ぶかぶかだったバングルが勝手に縮こまって腕にぴったりとフィットした。
これがかの有名な自動サイズ調整機能!!
ファンタジー系作品によく出てくる超便利装備だ。私が着ている服や防具は、そういう特殊な機能は搭載されてない。
初めて目の当たりにしたファンタジー機能に感動してしまう。
「アーク、これ何か分かる?」
「そんなもの我は知らぬ」
「そっか」
ただ、アークもそれ以上のことは知らなかった。後で空鳴の人に聞いてみよう。
次に虹色に輝く宝箱を開ける。
「これは……卵?」
中に入っていたのは大きな卵。私の両手で支えて丁度いいくらいはある。
私はそっと持ち上げる。
「むっ!?」
なぜか警戒するように身構えるアークに尋ねた。
「どうしたの?」
「こやつ、お前の魔力を吸い取っている!! すぐに手を離せ!!」
「ん? 別に何ともないし、大丈夫だよ?」
アークが歯茎をむき出しにしているけど、私の体には何の異常もない。
魔力を吸われているという感覚さえなかった。
私の返事にアークは目を剥いた。
「本当になんともないのか!?」
体をあちこち確認してみるけど、やっぱりなんともない。
「うん、全然」
「はぁ……やはり、お前はもはや人間ではないぞ」
アークが呆れたような顔をする。心外だ。
「何もしてないのにそれは酷くない?」
「その卵はおそらくかなり高位の幻獣の卵だ。幻獣は魔力を吸って育つが、普通の人間がそれほど魔力を吸われたら、もう干からびて死んでるぞ」
「えっ、嘘!?」
アークが嘘をつく理由はない。また人間離れしたことをやってしまったらしい。
「本当だ。諦めろ。お前はどう考えても人間を辞めている」
「そんなぁ……」
こうも何度も証拠を見せつけられると、私も少し自信がなくなる。でも、誰に何を言われようと、私が人間だと思っている限りは人間……のはず、多分。
そうこうしている内に、卵に植物の蔓のような紋様が浮かび上がった。まるで中の幻獣の鼓動のように模様が明滅している。
「それはその幻獣の主になった証だ。もうお前以外の魔力は受け付けん。お前が定期的に魔力を与えねば、その幻獣は死んでしまうだろう」
「いきなりだね。でも、ペットを育ててみたいと思ってたから、ちょうどいいかも」
前世では動物を飼ってみたいと思っても飼えなかったし、アークは従魔だけどペットってより相棒って感じだから、飼ってるって感じしないし。
ここでこの卵と出会えたのは女神さまのお導きなのかも。女神様、ありがとう。
「あっ、他にも入ってる……これは銃?」
ここにきて少しファンタジーっぽくない武器が出てきた。
全体は黒色で、地球にあった銃よりも、近未来や宇宙を舞台にした作品に出てきそうなSFチックな見た目をしてる。
今まで素手で戦ってきたけど、遠距離攻撃の手段が欲しいと思ってたんだよね。空鳴を助けようとしたときもアークがいなければ、間に合わなかった。
これが使えるならこれから楽になりそう。
「むっ、それも魔力を吸うようだぞ?」
「なるほど」
これは魔力を弾にして打つタイプなのかも。試し打ちしたいところだけど、今はダンジョンから脱出するのが先。
手に入れたアイテムをアイテムバッグに仕舞い、空鳴の許に走り出した。
帰りはよりスムーズで、戻るのに一時間もかからなかったと思う。
「ただいま戻りましたぁ!!」
『はぁあああああああっ!?』
そしたら、なぜかめちゃくちゃ驚かれた。
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