第十三話
『さぁ間もなくシクステット二回戦第一試合が始まります。数多の強者を降し頂点に輝くのは一体どのパーティなのか!?掲示板ではまことしやかに囁かれる事実上の決勝戦と名高いこの二組の登場だー!西よりアーハー率いる極光騎士団!そしてそして東からは聖女ちゃんの寵愛を一身に受けるこの人達…聖女見守り隊ー!』
「お、始まりましたね。スノウさんはどっちが勝つと思います?」
「ん…個人的にはステラを応援してるけど、極光が勝つと思う。極光はメンバー全員レベルカンストだけど、見守り隊はステラともう一人だけで他は実力不足。それに聖女の側付きだからフィールドにもあまり出れてない。」
「なるほど。私も見守り隊を応援したいんですけどね。ステラさんキャラデザ凝りまくってて凄い可愛いですもん。」
真っ赤な髪に切れ長な瞳。
聖職者として必須な純白で清潔な衣装。
うーん、何度見ても可愛い。
「ハルカがそこまで褒めるの珍しい。少し妬いちゃう…」
ぷくーと頬を膨らましているのが仮面越しに分かるくらいスノウさんが嫉妬しているのが分かった。
「あはは、でも所詮はゲームですから。スノウさんのキャラクターも十分可愛いですし、個人的には可愛さで勝ってると思いますよ?」
フォローも忘れない。
三年くらい前に嫉妬した後輩の女の子に刃物を突き付けられた事があってアフターケアの大事さを学んだ。
「ほんと…?私が一番?」
「ええ。スノウさんが一番ですよ。」
頭なでなで、スノウさん御満悦、ton点館さんギリギリ歯軋り…もうやだこの人。
「テン、落ち着け。補足するが見守り隊のナンバー2、オロチはゴリゴリの戦闘職だ。リアルでは格闘家で中々の結果を残している。」
「はえー。エトワールさん詳しいんですね。」
「まぁね。情報収集は大事だよ。相手がどんな物を好むか、或いは嫌うか。それを知っているだけで世界はぐっと広くなる。そして自分の価値も上がる。覚えておくといい。」
ton点館さん避けに私の反対側にアカネさん、スノウさんの後ろに座っていたエトワールさんがton点館さんを宥めてくれる。
この人、言動はしっかりしてるんだよね。
そういう所では一定の信頼は持てる。
「やべえのは極光だ。ただでさえアーハーが居るってのに宇治晴…ウーハーとめめたんがいやがる。ウーハーはあんたもソロで手合わせしたから分かるだろうが、アイツと同等の実力を持ったのが他に三人。めめたんは気分屋で、本気を出せばアーハー以上のポテンシャルを持ってるとも言われてる。」
「ほえー…」
ton点館さんの言葉に私は頷くばかり。
ウーハーさんの実力は…
見る前に終わってしまったから、どの程度なのかイマイチ掴みづらい。
「あはは、てんちゃん。ハルカちゃん一撃で倒しちゃったからイマイチ掴めてないみたいだよ?んー、そうだなー…サクヤ級のプレイヤースキル持ちが六人って考えれば少しは分かる?アーハーは…ハルカちゃんと同等?いや少し劣るか…?」
「サクヤちゃんが六人…絶望じゃないですか!」
私模擬戦でサクヤちゃんに1勝しかしたことないんだもん。
そんかサクヤちゃん級の人達が群れで襲ってくると考えたら恐ろしい。
「まぁそれだけ厄介な相手ってわけ。順調に勝ち進めば戦うことになるし、よく観察しておいて損は無いよ。」
「あら、あーし達に勝つつもり?そう簡単には行かないんだからねッ!」
「はい、見ときます!マリンさん、負けませんよ!」
試合は気付いたら始まっていた様で魔法が飛び交う中、オロチさんらしき人とウーハーさんが素手喧嘩している最中だった。
アーハーは長剣を振りステラさんを攻撃しているが、何かバリアの様な物で防いでいてダメージは与えられてない。
やがて戦況が動いた。
ステラ、オロチ以外の見守り隊のメンバーが極光の一人を討ち取るとそこから二人目三人目と崩していく。
が、見守り隊の大躍進はここで幕を閉じる。
大鎌を手に不敵に笑う極光のメンバーが四人やられてしまった。
すかさずステラさんはオロチさんとウーハーの戦いに介入しウーハーは倒される。
その一瞬の隙にオロチさんがやられてしまうがカウンターを返し両者相討ちとなった。
残るはアーハーとステラさん。
これは勝負が分からなくなってきた。
ステラさんが何かを詠唱している。
すると空から何かが降ってくる。
それは一張の弓だった。
「この一撃に全てを掛けましょう…アーハーさん、覚悟!穿て、神の一矢!」
膨大な魔力が込められた一射が放たれる。
アーハーは避けようともせず、真正面からその一撃を一振りの長剣で耐える。
真上から振り下ろす動作で反発し合う二つ力。やがて勝敗が決した。
アーハーの長剣は砕け朽ち果てるも予備の二振り目の短剣でステラさんの首を掻き斬った。
ここに一試合目の勝者が決まった。
「下馬評通りの結果になったが中々見応えのある試合だったな。」
「ステラのあの技、ユニークと関係あるのかな?最終的に押し負けたけど、アーハーのメイン武器を壊す程の威力が分かったのは良いことだね。」
「さーて、あーし達は先にいくかねー。野郎共ー行くよー」
「野郎は居ませんよーキャプテン?」
「細かいことは言うなー。ハルカ、マヂのマヂで行くから覚悟してなさい!」
「はい!楽しみです!」
マリンさんがいそいそとメンバーを引き連れて通路に向かうのを私は見守る。
海賊ロールプレイしてるだけあって、中々堂に入ってるが口調が統一されてないのはマリンさんの個性だし仕方ないか。
「さて、時間だねー。皆用意は良いー?私達は東側から入場だって。」
「じゃあ行きましょうか。エトワールさん、ton点館さん、リンネさん、ほかの方々も失礼しますね!」
「頑張ってこーい!」
「オデ、ハルカ勝つ。信じてる。」
ʕ•ᴥ•ʔもとい、コアラさん…!
どうしよう、私この人めっちゃ好きだ…
私はコアラさんに頭を下げ、感謝を述べる。
片言なの、可愛いかも…
東ゲートに向かう途中、反対側から歩いてくる人達が…見守り隊の人達だ。
「あの、お疲れ様です!試合応援しながら見てました。惜しかったですね…」
「貴方は…華天のハルカさんでしたね。応援ありがとうございます。ですが結果が全てなのに…ユミル様に叱られてしまいますね…」
「あの、大じょーー」
「うふふふ…アハハハ!ユミル様にどう怒られるのかしら、今から楽しみだわ!フフフ…」
全然大丈夫そうだった。
まぁ…その、そういう変わった趣味を持ってる人も世の中には一定数居るらしいからね、うん。
「ハルカさん。私の仇を貴方に取って貰います。託しましたよ?」
フレンド申請が飛んでくる。
まぁね、受けますよ。
だって結構お気にのアバターだし。
それを言ったらスノウさんがまたぷくーってしちゃうから本人の前では言わないけど。
「宜しくお願いします。そうだ、時間が有ったらこの後の試合が終わったら一緒に観戦しませんか?」
「分かりました。連絡をお待ちしています。」
そう言って、すっと去っていく後ろ姿を見つめアカネさんに声を掛けられるまで、その場で固まってしまった。
いけない、試合に集中しないと。




